結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2005−31047(T2005−31047/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4126255号商標(以下「本件商標」という。)は、「らくらく」及び「ラクラク」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成8年4月4日に登録出願され、第16類「文房具類」を指定商品として平成10年3月20日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べている。
(1)請求の理由
請求人の調査するところによるも、本件商標は指定商品について継続して3年以上日本国内において商標権者により使用されている事実は、発見することができなかった。また、本件商標について、専用使用権、通常使用権の登録もされておらず、したがって、これらの者による使用の事実もない。
よって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
(2)弁駁の理由
(ア)乙第1号証及び乙第2号証について
乙第1号証及び乙第2号証は、被請求人が考案したとされる「現金入出金らくらく伝票」(以下「本件伝票」という。)の解説をした被請求人著作の書籍であって、被請求人自身が認めるように、本件商標の使用を何ら立証するものではない。
(イ)乙第3号証について
乙第3号証は、被請求人のあるクライアントが平成16年9月1日から同17年8月31日までに記入し同人に返送してきた本件伝票の一年分の写しである。
商標法上の商品とは、同法が商品の販売等によって商標に化体した業務上の使用を保護する趣旨のものである以上、有償の対価をもって取引の対象となるものと解されている。しかるに、乙第3号証によっては本件伝票が有償の対価をもって取引の対象とされたことが何ら立証されていない。
本件取消審判が予告登録されたのは平成17年9月9日であるが、乙第3号証によっては該日から3年以内に本件伝票が販売されたことが何ら立証されていない。
本件商標は、平仮名「らくらく」と片仮名「ラクラク」とが二段に横書きしてなるものであるが、本件伝票上に表示されている商標とされるものは、「現金入出金らくらく伝票」(以下「使用商標」という。)であって同一のものではない。そして、使用商標は、同一の書体、同一の大きさ及び同一の色彩の文字で一体不可分に記載されており、この構成からして使用商標が「らくらく」なる商標と捉えられるとは考えられない。また、使用商標は全体として「現金入出金の起票が楽々できる伝票」なる意味合いが感得できる点でも一体不可分のものとして捉えられる。この観念的に一体性のものである使用商標が「らくらく」なる商標と捉えられるとは考えられない。
以上述べた2点から、使用商標は本件商標とは同一のものとは認められない。
使用商標の「現金入出金」の部分が商品「伝票」の用途を表示するものであり、同じく「伝票」の部分が商品の普通名称であることから、使用商標が時として「らくらく」とも称呼される、それ故本件商標と同一であるという論理で被請求人は本件商標と使用商標とは社会通念上同一であると主張していると推測される。しかしながら、この論理は問題となる商標が類似するか否かの判断手法の一つであって、商標が同一か否かの判断手法でない。類似の商標は、同一の商標ではないが出所の混同を生じるおそれがあるものをいうものであって、同一の商標の範囲外にあるものである。このように、使用商標は本件商標とは類似するものとされる可能性はあるが、同一のものとはなり得ない。
以上述べたことから明らかなように、使用商標は、本件取消審判の予告登録前3年以内に本件商標が商品「伝票」に使用されていたことを何ら立証するものではない。
(ウ)乙第4号証及び乙第5号証について
乙第4号証及び乙第5号証は、被請求人の名刺の写しであるから本件商標の使用を何ら立証するものではない。
(エ)乙各号証についての総括
以上詳述した如く、被請求人が提出した証拠方法のいずれも、本件取消審判の予告登録前3年以内の本件商標の指定商品についての使用を何ら立証するものではない。
本件商標の取消を免れるためには本件商標の使用を客観的に立証する必要があり、そのためには請求書、納品書等の取引書類、商品のパンフレット等の宣伝広告資料を提出することが求められている。そして、本件伝票が実際に販売されていれば、これら資料の提出は容易である。にもかかわらず、これら資料が提出されていないことから、本件商標は使用されていないものと推測される。
さらに、商品「伝票」の商標はその書面上に様々な文字及び数字を記載する性質上被請求人が提出したように目立つ位置に大きく表示されるものではない。この点でも本件伝票が商標法上の商品とは考えられない。
(オ)まとめ
以上述べたことから明らかなように、本件商標が本件取消審判の予告登録前3年以内に取消請求に係る指定商品に使用されていたことが立証されていない。
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第5号証を提出している。
(1)本件商標は、税理士である商標権者が、その事務所において多数の依頼者に販売する「伝票」を商品として長年継続して使用している。
請求人の請求の理由は、その事実を知らなかった誤解に基づくものである。
(2)商品の特殊性
本件商標を付して使用を継続している商品は本件伝票である。もちろん、通常の伝票はめずらしくない。
しかし、本件商標権者が特に「らくらく/ラクラク」と名付けた本件伝票は、経理処理の専門の担当者を置きにくい、中小、零細企業の経営者がきわめて簡単に記入できる特殊な様式の伝票である。
この簡易性、利便性、迅速性、正確さ、などの効果を一語に集約して表現したのが、本件商標「らくらく/ラクラク」である。
どのように「らくらく」であるか、という点はすでに平成6年6月17日に、本件商標権者らが著者となり、日経BP出版センターから発行された「パソコン流経営改造ブック」に記載してあるが、そこでは多数の頁において「らくらく伝票」の文字が使われている(乙第1号証)。
また、平成15年7月23日に本件商標権者が著し、水曜社から発行された「コスト管理」にも本件伝票の例が記載してある(乙第2号証)。
(3)発行日のある伝票はクライアントが保存
以上の説明は、出版物への記載であるから、本件商標の「使用」についての説明ではない。
ここで説明したいことは、本件商標の指定商品のひとつである本件伝票の使用の実態である。
本件伝票は、「らくらく」の商標を見出しに入れた白紙の伝票として、まずクライアントの各企業の会計年度のはじめに数十枚を、商標権者の税理士事務所からクライアント企業に販売する。
本件伝票を購入した企業は、上記の出版物でも分かるとおり、本件伝票の所定の欄の該当項目に○を付け、出金金額を記入してゆく。この記入の量は、企業の規模によってことなり、毎日1枚の本件伝票に記入をする企業もあれば、週に1枚、あるいは毎月1枚の本件伝票を使う企業もある。
記入の終わった本件伝票は、決算期まで企業側で保管し、決算の時期に一度に商標権者の税理士事務所へ持ち込まれる。税理士事務所では短時間の間に本件伝票のチェックを行い、これをもとに納税申告書を作成する。税務申告が終了すると、本件伝票及び領収書類はすべてクライアントに返却してしまう。
したがって、税理士事務所である商標権者の下には、複数の種類の本件伝票が白紙の状態で存在するが、販売後に使用された日時の明確な本件伝票はすべてクライアントの手元に返却され、保存されている。
以上説明したように、本件商標の商品である本件伝票の中で、使用されている日時が明確なものは、ほとんど商標権者の手元にはない状態であることを説明しておく。
(4)使用の実態
本件商標が、指定商品「伝票」について、継続して3年以上、日本国内で使用されている事実を証明する証拠として、あるクライアントが記入した本件伝票の1年分を提出する(乙第3号証)。
乙第3号証は、該クライアントが購入した本件伝票の該当する項目に○を付し、毎月1枚ごとに、その項目に相当する出金金額を記入し、領収書などとともに1年間保存しておき、税務申告の時期に、商標権者が経営する税理士事務所へ領収書類と共に1年分を一括して送ってきた実物のコピーであり、平成16年9月1日から平成17年8月31日のものである。
したがって、本件伝票はその日以前に商標権者からクライアントへ販売されたものであることは明らかである。
なお、秘密保持義務から、左上の「社名」欄の企業名を開示することはできないので、削除してある。
本件商標権者は、多数の中小、零細企業が、決算期になると領収書の山を事務所へ運び込んできた時代に、本件商標が示す本件伝票を着想するにいたり、零細企業に導入を指導することによって多くのクライアントが本件伝票を購入するに至った。
そのようなクライアントが300社以上に達しているから、クライアントの許可さえ得られれば、必要に応じて日時の記入された本件伝票をいくらでも提出することができる。
(5)本件商標の使用者
本件商標権者は、前記したように税理士であり、「井上一生税理士事務所」(乙第4号証)を経営していたが、時代とともに「井上経営会計事務所」、「しんわ経営会計」(乙第5号証)と名称を代え、さらに「株式会社アドバンスブレイン」及び「株式会社経営サポートステーション」も経営している。
そのために、対外的には本件伝票の販売元の名称が代わっている場合があるが、税務申告は税理士井上一生の独占業務であるから、本件商標の実際の使用者は商標権者「井上一生」である。
(6)実質的同一性
本件商標は、平仮名の「らくらく」と、片仮名の「ラクラク」の二段書きであるが、実際の使用は、「現金入出力らくらく伝票」「振替らくらく伝票」「らくらく仕訳日記帳」「らくらく預金通帳伝票」のように「らくらく」の平仮名の一段書きであり、登録商標とは完全に同一ではない。
しかし、この点は、改正後の商標法第50条第1項かっこ書にある「その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」に該当するものである。
(7)結論
以上の証拠から明らかなように、本件商標は、税理士である商標権者によって、その事務所の事業において、多数のクライアントに販売する「伝票」を商品として継続して3年以上、日本国内において使用されているものである。
(1)被請求人は、税理士である商標権者(被請求人)がその事務所において依頼者に販売する商品「伝票」について本件商標を使用している旨主張し、その使用を立証するための証拠を提出しているので、提出に係る各乙号証について検討する。
(ア)乙第1号証は「パソコン流・経営改造ブック」と題し、乙第2号証は「なるほど即効!小さな会社のやる気が出るコスト管理」と題する、いずれも書籍の抜粋写しと認められるが、これらの書籍自体は、本件商標の指定商品には含まれないものである。そして、これらの書籍中には、「らくらく伝票」、「現金入出金らくらく伝票」等と題する伝票、つまり本件伝票について図解入りで記載されていることが認められるものの、その記載は、本件伝票の内容、使用方法等について説明するものであって、本件伝票が市場において実際に取引されたことを具体的に示すものではない。
そうすると、乙第1号証及び乙第2号証は、本件商標がその指定商品について使用されていることを示すものとはいえない。
(イ)乙第3号証は、被請求人の顧客が平成16年9月1日から同17年8月31日までの間に実際に使用した本件伝票の写しと認められるものの、これは本件伝票が被請求人の顧客によって使用されたことを示すにすぎず、該顧客に対し未使用の本件伝票が商品として、市場に流通し販売されたことを示すものではない。
もとより、本件商標の指定商品「文房具類」に含まれる商品としての「伝票」は、企業、商人等が各種の取引において入金、出金、振替、売上、仕入等を記入するために使用するものであって、記入箇所が空欄になっているものであり、これに使用される商標は、一般に、表面の目立つ所に大書されることはなく、片隅に小さく表示されることが多いといえる。
被請求人は、本件伝票は特殊な様式の伝票であり、白紙の状態の本件伝票が顧客たるクライアント企業に対し被請求人によって販売されている旨主張するが、乙第3号証は、その販売の事実を具体的に示すものではないし、他に本件伝票が商品として取引されたことを示す証拠はない。被請求人の説明によれば、本件伝票は、むしろ、被請求人の主たる業務である税理士の職務を遂行するために、予め顧客に配布して記入を依頼するための、いわば税理士の事務という役務の提供を受ける者の利用に供する物ともいえるものであり、独立した取引の対象としての商品とはいい難いものである。
(ウ)乙第4号証及び乙第5号証は、被請求人の名刺の写しと認められるところ、それには本件商標はもとよりその指定商品の記載もなく、本件商標の使用を何ら立証するものではない。
(エ)その他、本件商標がその指定商品について使用されていることを具体的に示す証拠はない。
(2)以上のとおりであるから、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定商品について使用されていなかったものというべきであり、また、使用されていないことについて正当な理由があるものとも認められない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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