Trademark Appeal Case
著名商標と氏名商標の混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2003−90203(T2003−90203/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4636031号商標(以下「本件商標」という。)は、平成13年9月4日に登録出願、「PATRIZIA GUCCI」の欧文字(標準文字)よりなり、第14類「貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製の花瓶及び水盤,貴金属製針箱,貴金属製宝石箱,貴金属製のろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製のがま口及び財布,貴金属製靴飾り,貴金属製コンパクト,貴金属製喫煙用具,身飾品,時計,記念カップ,記念たて,キーホルダー」を指定商品として、平成15年1月17日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立の理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標の登録は取り消されるべきであるとして、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第45号証(枝番を含む。)を提出している。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、申立人の著名商標「GUCCI」を含んでいるものであるから、申立人の有する登録第1545439号商標、登録第1594771号商標、登録第1846781号商標、登録第1856139号商標、登録第2444938号商標、登録第2512800号商標、登録第2714528号商標及び登録第2723173号商標と類似する商標であり、本件商標の指定商品は、各引用商標の指定商品と相抵触する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
申立人は、世界的なファッションメーカーであり、同社が各種商品に登録を受け、使用する「GUCCI」という商標は、申立人のハウスマークであり、かつ申立人が製造・販売する商品に使用する商標として、わが国のみならず、世界的に著名である。申立人の著名商標「GUCCI」を含む本件商標は、これがその指定商品について使用された場合、あたかも申立人の業務と一定の関連性があるかの如く需要者・取引者をして認識させる可能性が高く、申立人の業務に係る商品と現実に混同を生ずるおそれがあるものである。
3 本件商標に対する取消理由
当審において、平成16年5月10日付けで商標権者に対し通知した取消理由は次のとおりである。
申立人の提出に係る甲第12号証、甲第25号証及び甲第27号証ないし甲第41号証によれば、申立人は、「GUCCI」の文字よりなる商標をかばん類、靴類、被服、時計、香水、装身具、身の回り品、文房具類等の商品に使用し、我が国において、本件商標の登録出願時を経て登録査定時に至るまで継続して取引者、需要者の間に広く知られ周知著名になっていたものと認められる。
そこで、本件商標をみると、本件商標は「PATRIZIA GUCCI」の文字よりなるところ、該文字よりは、ファションデザイナー名として認識、理解されるとしても、本件商標の指定商品が申立人の使用する商品「身飾品,時計,靴飾り」等を含むものであることからして、本件商標に接する取引者、需要者は、その構成中の「GUCCI」の文字に着目し、申立人の使用する「GUCCI」商標を連想、想起するものというのが相当である。 そうすると、本件商標がその指定商品に使用された場合は、申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係ある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
4 商標権者の意見
上記3の取消理由に対して、商標権者は、次のように意見を述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第25号証を提出している。
(1)権利者の氏名「PATRIZIA GUCCI」が、申立人とは別個無関係の、権利者に固有のものとしてすでに一般に周知である。
現在、申立人とイタリア出身のデザイナーズファミリーGucci家の人々との間になんらの関係がないことも、申立人も認めるとおり、業界はもとより一般に周知の事実である。
なお、種々の媒体における「グッチ家の女性」「グッチ家4代目」「アルド・グッチの孫娘」等の表現は、すべて権利者についてのプロフィルたる事実そのものを指しており、「グッチ社の人物」とされているのではないから、そこになんら誤解はない(申立人のいう「GUCCI」とは申立人の商標を指すはずであり、申立人の主張においては「GUCCI」と「Gucci家」とを混同して用いているように思われる)。
すなわち、権利者「PATRIZIA GUCCI」と申立人の商標「GUCCI」とは、取引者・需要者の認識の中で完全に切り離されている。
(2)権利者には、自身の氏名の商標登録を維持する必要がある。
権利者が日本で展開するブランドの名称は「PATTiPATTi」であるが、広告等では一貫して、この「PATTiPATTi」のロゴと「Designed by PATRIZIA GUCCI」の文字および出願人の肖像をセットにして使用し、「PATTiPATTi」のブランドイメージを創出している。
また、権利者は世界各国で頻繁にメディアに登場し、その作品を発表し、そのデザインにかかる商品を販売している。これらによって、権利者の肖像および氏名である「PATRIZIA GUCCI」の文字そのものが有名となり、これらが独自の顧客吸引力を伴う財産的価値を有するに至っている。
事実、2001年には日本国内で、権利者の氏名および肖像が盗用され、偽商品が販売される事件があった。
すなわち、「PATRIZIA GUCCI」には、単なる人格権を超えて、権利者に固有のパブリシティ権が発生している。
本件の登録は、すでにある権利者のパブリシティ権の存在を、商標登録という明示的な手段により確認したものである。
(3)申立人の商標「GUCCI」は周知であり、その周知度は、本件商標「PATRIZIA GUCCI」とは明らかに識別できるほどのものである。
なお、本人が自身の氏名を商標登録することと、その氏名の持ち主以外の者が登録しようとする場合とでは、前提が大いに異なる。Gucci家がGucci社の経営にかかわっていた時代と、Gucci社とGucci家とがかかわりをなくした現在とでは、登録正当性に関する事情はおのずから異なる。
本件商標は申立人の商標と混同を生じることはない。現に混同が生じた事実もない。
(4)権利者の、日本での商標代理人であるインテレクチュアル プロパティ株式会社の代表者 近藤克俊氏の陳述書を提出する。
近藤氏が陳述書の前半で触れている、これまでに契約が成立したサブライセンシー15社の一覧は、乙第2号証の広告にある。中ほどで述べる有名人リストは、乙第3号証のものをいう。後半で引用する、権利者パトリチア グッチの発言は 乙第4号証の雑誌に関するものである。なお、権利者の同趣旨の発言は、乙第5号証の新聞紙上でもされている。その後の「PATRIZIA GUCCI」の氏名の盗用に関する別の資料として乙第6号証(無許諾商品)がある。最後に触れている、グッチ家を取材したテレビ番組に関する書籍は、甲第42号証を指している。
(5)平成14年8月15日付意見書に添付して提出したものに加え、権利者自身または権利者の最近のデザインワーク等を紹介した新聞・書籍・インターネット等の記事のうちの一部を提出する。権利者の氏名ががますます周知性を獲得しつつあることを証明する。
5 当審の判断
本件商標は、「PATRIZIA GUCCI」の欧文字よりなるところ、上記3の取消理由は妥当なものであって、周知著名な「GUCCI」の文字を有する本件商標を、その指定商品について使用するときは、その商品があたかも申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係ある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものと認める。
そして、これに対し、商標権者は、「PATRIZIA GUCCI」が、申立人とは別個無関係の、権利者に固有のものとして一般に周知であり、申立人の商標「GUCCI」とは、取引者、需要者の認識の中で完全に切り離されている。「PATRIZIA GUCCI」には、単なる人格権を超えて、権利者に固有のパブリシティ権が発生している。また、現在、申立人とGucci家の人々との間になんらの関係がないことも、一般に周知の事実である。さらに、申立人の商標「GUCCI」は周知であり、その周知度は、本件商標とは明らかに識別できるほどのものであって、本件商標は申立人の商標と混同を生じることはないし、現に混同が生じた事実もない旨主張している。
しかしながら、申立人とGucci家の人々との間になんらの関係がないことは、本件商標が他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標かどうかの判断に影響を及ぼすことではなく、また、「PATRIZIA GUCCI」がデザイナー名として認識、理解されるとしても、乙各号証からは、これが周知著名な「GUCCI」とは全く関連性のない商標として認識される程の周知著名性を獲得しているとまではいい難いものであるから、本件商標に接する取引者、需要者は、その構成中の「GUCCI」の文字に着目して、周知著名な「GUCCI」商標を連想、想起するものと判断するのが相当である。
そうとすれば、商標権者の主張は採用することができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その商標登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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