Trademark Appeal Case
称呼の類似性と要部抽出
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2005−90277(T2005−90277/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第4843527号商標(以下「本件商標」という。)は,「SHELL FLAT SEAT」の文字を標準文字で書してなり,平成16年2月13日に登録出願,第39類「道路情報の提供,自動車の運転の代行,航空機による輸送,貨物のこん包,貨物の輸送の媒介,貨物の積卸し,引越しの代行,船舶の貸与・売買又は運航の委託の媒介,船舶の引揚げ,水先案内,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,寄託を受けた物品の倉庫における保管,他人の携帯品の一時預かり,ガスの供給,電気の供給,水の供給,熱の供給,倉庫の提供,駐車場の提供,有料道路の提供,係留施設の提供,飛行場の提供,駐車場の管理,荷役機械器具の貸与,自転車の貸与,船舶の貸与,車いすの貸与,自動車の貸与,航空機の貸与,機械式駐車装置の貸与,包装用機械器具の貸与,金庫の貸与,家庭用冷凍冷蔵庫の貸与,家庭用冷凍庫の貸与,冷凍機械器具の貸与,ガソリンステーション用装置(自動車の修理又は整備用のものを除く。)の貸与」を指定役務として,平成17年3月4日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由
本件登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,その理由を以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第71号証を提出した。
1 申立人について
申立人は,英米の7社からなる,いわゆるメジャー(国際石油資本)の一つとし有名なロイヤル・ダッチ/シェル グループの中核企業であり,国際的に著名な企業として,我が国においても広く知られている。
我が国においては,1876年頃より,その前身の「サミュエル商会」として活動を開始し,1900年に石油部門を独立させた「ライジングサン石油株式会社」を設立した。海外では,1907年に「シェル・トランスポート・アンド・トレーディング・カンパニー」という別会社を設立し,ロイヤル・ダッチ・ペトロリアム・カンパニーの前身のオランダ領東インド石油開発会社との合併を経て,「ロイヤル・ダッチ/シェルグループ」となった(甲第8号証)。
その後,我が国では,戦後になって「ライジングサン石油株式会社」を「シェル石油株式会社」と変更し,1985年に昭和石油株式会社と合併して「昭和シェル石油株式会社」となって,現在に至っている(甲第8号証)。
現在,申立人は,「昭和シェル石油株式会社」のほか,「シェルケミカルズジャパン株式会社」「シェルガス&パワージャパン株式会社」「シェル サービスインターナショナルジャパン株式会社」等の多くの関連会社を有し,その業務分野は,多岐にわたっている(甲第8号証)。
そして,これらの社名の一部に「シェル」の表示が使用され,これらの会社が取り扱う商品や役務について「Shell」「シェル」の商標が永年にわたって使用されている。
2 申立人の「Shell」及び「シェル」の表示について
申立人の「Shell」及び「シェル」の表示は,昭和シェル石油株式会社の全国で7000以上のガソリンスタンドの広告等に顕著に表されていること,昭和シェル石油株式会社やシェルケミカルズジャパン株式会社等によって,各種の媒体を通じて行われてきた長年にわたる広範囲の宣伝広告活動,長年にわたり昭和シェル石油株式会社等の関連会社の社名の一部に使用されてきたことにより,申立人の略称及び商標として,本件商標の出願日より前から,周知著名となっている(甲第4号証ないし甲第11号証)。
3 商標法第4条第1項第8号について
本件商標は,申立人及びその関連会社の略称として,我が国において著名な「SHELL」を含んでいるものであり,本件商標の出願人は,申立人とは他人であり,その登録について,その承諾を得たものではない。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものである。
4 商標法第4条第1項第15号について
本件商標の構成中「FLAT SEAT」の文字は,「自在に角度調節できる座席」「ほとんど平らな状態にリクライニングできる座席」を示す語として,本件商標の出願日以前から,航空業界で盛んに使用されており(甲第3号証),また,特許庁における同様の内容の過去の判断例がある(甲第2号証)とおり,本件商標の要部は,「SHELL」の部分である。
したがって,本件商標は,「シェル」の称呼を生ずるものであり,この称呼は,申立人の著名商標「Shell」「シェル」から生ずる称呼「シェル」と共通にするものであって,本件商標は,申立人の著名商標「Shell」「シェル」と類似する。
また,前記1で述べたように,申立人は,多岐にわたる事業を営んでおり,航空用燃料・潤滑油の供給業者としてよく知られている。さらに,自動車はもとより,船舶用燃料・潤滑油の供給業者としてよく知られており,運輸業界において,「Shell」の商標及び「Shellグループ」を知らないものはいないと言っても過言ではない。
さらに,申立人の主たる取扱製品であるガソリン,灯油等の需要者は,一般消費者でもあり,昨今では,自家用車の普及が進んでいるため,ガソリンスタンド等を通じて,商標「Shell」は,一般需要者の間でもよく知られている。
一方,商標権者の主たる役務「航空機による輸送」の需要者も,一般需要者であるから,申立人の製品の需要者と本件商標の指定役務の需要者とは,一致しており,これらの役務と商品との関連性は,強いといえる。
してみれば,本件商標をその指定役務について使用するときは,申立人の著名商標「Shell」を想起し,申立人又は申立人と業務上何らかの関連性を有する者の取扱に係る役務であると,誤認,混同を生ずるおそれがある。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
第3 取消理由通知
審判長が商標権者に対し,相当の期間を指定して通知した本件商標の取消理由は,以下のとおりである。
1 登録異議申立人が,世界的に著名な石油関連企業であることは,我が国においてもよく知られているところであり,かつ,「Shell」,「シェル」の商標(これらの商標をまとめて,以下「申立人商標」という。)が,申立人及びその関連会社の取扱いに係る商品「石油,石油製品」等を表示する代表的な出所標識として,あるいは,申立人の略称を表すものとして,我が国の石油関連の商品分野をはじめとする各種商品分野の取引者及び一般の需要者の間に広く知られているものであることは,甲第4号証ないし甲第9号証及び甲第11号証によっても認め得るところである。
2 本件商標は,前記(1)のとおり,「SHELL FLAT SEAT」の文字を書してなるものであるところ,該文字は,構成全体をもって,親しまれた熟語的意味合いを有するものではないのみならず,その構成中の「FLAT SEAT」の文字部分は,自動車,航空機等の輸送用機械器具の分野において,「ベッドのように,ほぼ水平にすることができる座席」の意味合いをもって,本件商標の査定時には,普通に使用されていた語であることが甲第3号証によっても認め得るところであるから,本件商標を,例えば,その指定役務中の航空機による輸送等について使用する場合は,該「FLAT SEAT」の文字部分の自他役務の識別力が極めて弱いものということができる。
そうすると,本件商標は,その構成中の「SHELL」の文字部分が独立して,把握,認識されるというのが相当であって,該「SHELL」の文字部分は,申立人商標中の「Shell」と同一の綴り字よりなるものであり,「シェル」の称呼を生ずるものである。
したがって,本件商標は,他人の著名な略称を含む商標であって,その他人(申立人)の承諾を得たものとは,認められない。
3 以上のとおりであるから,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第8号に違反してされたものといわざるを得ない。
第4 商標権者の意見
1 本件商標の構成と外観について
本件商標は,その欧文字「SHELL」「FLAT」「SEAT」の間に一字分の空間を有するものではあるが,これらの語は一連に構成されており,その空間は,特に広くはなく,看者をして容易に本件商標が「SHELL FLAT SEAT」であることを一体として認識できるから,外観上からは,「SHELL」と「FLAT SEAT」とを分離すべき特段の事情は,存在しない。
2 本件商標の称呼について
本件商標の称呼についても,本件商標は,欧文字のみから構成され,その欧文字に照応する片仮名が配されていない。このような欧文字商標においては,特段の理由がない限り,英語風あるいはローマ字風に称呼されるとするのが商標類否判断において確立された審査経験則である。しかも,本件商標の構成する各欧文字「SHELL」,「FLAT」そして「SEAT」の語は,いずれも我が国において熟知された英語であるから,本件商標よりは,「シェルフラットシート」と称呼されるのが自然であり,その全体の称呼も10音であり,特に冗長でないから「シェル」と「フラットシート」に分離して称呼しなければならない理由はない。したがって,本件商標は,その称呼上においても,特に「SHELL」部分を抽出すべき特段の理由を有しないものである。
3 本件商標の観念について
当該取消理由は,本件商標より,「SHELL」部分を抽出する理由として,第1に,申立人が著名な石油関連企業であること,第2に,本件商標「SHELL FLAT SEAT」は,構成全体をもって,親しまれた熟語的意味合いを有するものでないこと,第3に,本件商標の構成中の「FLAT SEAT」文字部分は,自動車,航空機等の輸送機械器具の分野において「ベッドのように,ほぼ水平にすることができる座席」の意味合いをもって,本件商標の査定時には,普通に使用されていた語であることを挙げている。
(1)第1の点について
商標権者も,申立人が著名な石油関連企業であることは認めるが,それは,石油関連製品の分野のことであって,本件商標の指定役務は,主として輸送関係の役務であるところ,輸送関係の航空機あるいは自動車による輸送には,石油が燃料として使用されているが,第39類の輸送関係の役務とは,直接的な関係はなく,間接的なものにすぎないから,申立人が著名な石油関連企業であるからといって,第39類の分野においても著名であるという事はできず,第39類の輸送関係の役務については,商標権者の方がより著名である。
さらに,申立人の正式名称は,「シェル インターナショナル ペトロリウム カムパニー リミテッド」であり,単なる「シェル」ではなく,「シェル」あるいは英語「SHELL」の語は,我が国においても「貝殻」を意味する普通名称として極めて熟知された語であり,「KODAK」あるいは「SONY」のような造語商標と同列に扱うことは公平ではない。
したがって,このような任意的商標(arbitrary marks)の周知性の範囲は,当然厳格に制限されるべきであり,むやみに,その保護範囲を広くすべきでないから,申立人が著名な石油関連企業であることを根拠とすることはできない。
(2)第2の点について
本件商標「SHELL FLAT SEAT」は,構成全体をもって,親しまれた熟語的意味合いを有するものでない点については,本件商標「SHELL FLAT SEAT」がその構成全体をもって,親しまれた熟語的意味合いを有するものでない点も認めるが,本件商標は,全体として一体不可分の関係を有するものである。すなわち,本件商標「SHELL FLAT SEAT」は,航空機の座席では,世界で初めての座席をシェル(=貝殻状のカバー)で包み込むデザインである(乙第1号証及び乙第2号証)。
本件商標の由来は,「お客様がリクライニング時に肘掛が座席と一緒に沈みこむことで寝返りができるほどにゆとりがありフラット化したフットレストによる脚のサポートがあり,貝に包み込まれるような安心感を作り出し,心地よい眠りを誘う座席」,すなわち,「シェル形状の水平になる座席」を意味するものである。この「シェル(貝殻)」という新しい発想により,航空部品には稀な,曲線/曲面を多用して就寝時のお客様のプライベートな空間を確保するとともに,その洗練されたデザインで,未来感覚あふれるスタイリッシュな機内空間を演出している。そして,このように商標権者の航空機には,エグゼクティブクラス向けに「SHELL FLAT SEAT」の語が付された「座席」が使用されているものである。
本件商標は,航空機による輸送の分野においては,全体として一連不可分に一般需要者及び取引者の間において広く認識されているものであり,特に「SHELL」のみを分離・抽出すべき特段の理由を有しないものである。(3)第3の点について
本件商標の構成中「FLAT SEAT」の文字部分は,自動車,航空機等の輸送機械器具の分野において,「ベッドのように,ほぼ水平にすることができる座席」の意味合いを有するとの点については,先に述べたように本件商標は,一体に「シェル形状の水平になる座席」の意味合いを全体として有するから,特に,「SHELL」部分を抽出すべき特段の理由を有しない。
そして,本件商標の「FLAT SEAT」の部分が,第39類の航空機による輸送において「水平の座席」の意味合いを有し,商標としての自他商品・役務識別力が弱いことを全く否定するものではないが,ある程度の識別力を有するものである。商標権者は,その前に「SHELL」の語を一体とすることで新たに作り出した造語であって,本件商標の由来は,先に述べたように「お客様がリクライニング時に肘掛が座席と一緒に沈みこむことで寝返りができるほどにゆとりがありフラット化したフットレストによる脚のサポートがあり,貝に包み込まれるような安心感を作り出し,心地よい眠りを誘う座席」を意味するものである。
4 結び
したがって,本件商標は,全体として一連の観念を有し,特に「SHELL」のみを分離されるべき特段の理由を有しないものであるから,例え,本件商標の構成の一部に「SHELL」の語を有したとしても,一般需要者及び取引者は,申立人を認識することはなく,人格権の保護を規定した商標法第4条第1項第8号の規定に違反して登録されたものではない。
第5 当審の判断
当審は,前記第4の商標権者の意見を検討したが,前記第3のとおり,商標権者に示した「取消理由通知」が妥当なものと判断する。
したがって,申立に係るその余の理由について論及するまでもなく,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものであるから,同法第43条の3第2項により,その登録を取り消すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
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