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Trademark Appeal Case

称呼類似と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2004−89098(T2004−89098/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4770996号商標(以下「本件商標」という。)は、平成14年11月12日に登録出願、「ザアスパラ」の片仮名文字と「THE ASPARA」の欧文字とを二段に併記してなり、第44類「美容,理容,入浴施設の提供,庭園又は花壇の手入れ,庭園樹の植樹,肥料の散布,雑草の防除,有害動物の防除(農業・園芸又は林業に関するものに限る。),あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり,医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤,栄養の指導,動物の飼育,動物の治療,植木の貸与,農業用機械器具の貸与,医療用機械器具の貸与,漁業用機械器具の貸与,美容院用又は理髪店用の機械器具の貸与,芝刈機の貸与」を指定役務として、同16年5月14日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、「本件商標の指定役務中の『医療情報の提供』についての登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証(枝番含む。)を提出した。

1.請求人の使用する商標

請求人「田辺製薬株式会社」は、昭和37年に商標「アスパラ」を付した商品「薬剤」の発売を開始した。以後、「薬剤」、特に「滋養強壮剤」に「アスパラ」の片仮名文字と「ASPARA」の欧文字とを二段に併記してなり、第1類「薬剤、その他本類に属する商品」を指定商品とする登録第2256412号商標(以下「引用登録商標」という。)及び「アスパラエース」「アスパラドリンク」「アスパラMAX」等、「アスパラ」を要部とする商標(以下「アスパラを冠した各商標」という。)を使用して「アスパラ」シリーズの商品として40年以上にわたって継続的に製造・販売を行ってきた。

(1)アスパラを冠した各商標を付した商品の宣伝広告について

請求人は、引用登録商標又はアスパラを冠した各商標を付した「滋養強壮剤」及び「薬剤」の宣伝広告を当該商品の販売当時から大々的に行っており、近年においても、主要な全国紙における広告(甲第4号証の1ないし3)、陣内孝則、中畑清、草▲なぎ▲剛等、著名タレントを起用したテレビコマーシャル及び野球場での大看板の設置等(甲第5号証の1ないし3)を通じて行っている。また、その費用についても、例えば、平成2年から平成12年3月までをみても「アスパラドリンク」「アスパラエース」「アスパラMAX」に関して総額76.3億円に上る(甲第6号証)。

(2)アスパラを冠した各商標が付された薬剤の売上げについて

アスパラを冠した各商標が付された商品の売上げに関しては、「滋養強壮剤」についてのみ見れば、例えば、昭和62年以来10年以上にわたって、毎年1,500万本から1,800万本を売り上げており(甲第7号証の1)、この数値は年々競合品が増加している同業界においても常に上位を占めるものである(甲第7号証の2、3)。さらに、滋養強壮剤以外の薬剤も含めた場合は、平成4年度から平成13年度について総売上げは総額263.5億円に上る(甲第7号証の3)。

(3)まとめ

以上より、請求人の使用する引用登録商標又はアスパラを冠した各商標は、特に「滋養強壮剤」について一般需要者の間で周知・著名な商標として認識されており、また、その周知・著名性は本件商標の登録出願日(平成14年11月12日)及び現在に至るまで維持されているものと思料する。

2.混同を生じるおそれ

(1)商標の類似性について

本件商標は「ザアスパラ」の片仮名文字と「THE ASPARA」の欧文字とを二段に併記してなるものであるが、この中で「ザ」と「THE」の部分が英語の定冠詞であることは明らかであり、この部分が特に識別力を有するものとして認識されることはない。よって、本件商標に接した需要者は「アスパラ」と「ASPARA」の部分を自他役務の識別標識として認識し、これから生ずる「アスパラ」の称呼をもって取引に資すること決して少なくないものと考えられる。一方、アスパラを冠した各商標は「アスパラ」を要部とする一連の商標であるため、「アスパラ」シリーズを示す商標として「アスパラ」なる称呼で需要者に親しまれている。そうすると、両者は称呼が同一であり、全体として類似するものであるといえる。

(2)役務「医療情報の提供」と商品「薬剤」の関連性について

本件商標はその指定役務に「医療情報の提供」を含んでいるが、これは単に医療従事者を対象にした、疾病の治療等についての専門的な情報提供のみならず、一般需要者を対象にした、健康や体力の増進に関わるいわゆる「健康情報の提供」をも含み得るものであると考えられる。

ところで、ある商品の製造企業が一般需要者に対する啓蒙のため自社製品と関連する分野の情報の提供をセミナーの開催等を通じて行うということは従来から行われていた。特に近年ではインターネットの普及に伴い自社ホームページを通じてこれらの情報を発信するということが一般的になってきている。とりわけ製薬企業は薬の開発・製造・販売等を通じて健康の回復と維持に貢献することが企業目的であると共に社会的存在意義の一つであるため、このような目的を果たすことで企業に対する社会的要請に応えるべく各社とも健康情報の提供を積極的に行っている。そして、証拠にも示すとおり、実際に国内の製薬企業の殆どが企業の規模の大小を問わず、そのホームページ上で健康情報の提供を行っている(甲第8号証の1ないし40)。特に、アスパラを冠した各商標は健康や体力の増進を目的とした商品「滋養強壮剤」につき周知・著名となったものである。そうすると、「健康情報の提供」と「滋養強壮剤」の目的は共に「体力・健康の増進」という点で共通するため、それぞれの役務・商品に密接な関連を有するものとして認識されると考えられる。

また、昨今の健康ブームによる一般需要者の健康への関心は高まっているが、上述のような製薬企業各社の健康情報の提供サービスの充実を背景に、一般需要者が製薬企業のホームページを通じて健康に関する情報を入手することも多いと考えられる。

これらを総合すると「健康情報の提供」なる概念を包含する「医療情報の提供」と「滋養強壮剤」とは現実に密接に関連を有し、また一般需要者にもそのように認識されているものと考えられる。

(3)まとめ

以上より、請求人の使用するアスパラを冠した各商標の周知・著名性、本件商標とアスパラを冠した各商標の類似性、及び「医療情報の提供」と「滋養強壮剤」との関連性を総合的に考慮すると、被請求人が本件商標をその指定役務中「医療情報の提供」につき使用した場合、一般需要者をして、該役務が請求人たる田辺製薬又はこれと経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるといえる。

(4)結 語

以上のとおり、本件商標は、その指定役務中「医療情報の提供」について、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により無効とされるべきものである。

3.答弁に対する弁駁

(1)請求人は、アスパラを冠した各商標の使用状況を甲第3号証ないし甲第7号証として提出したが、2002年度から2004年度までの同各商標の使用状況を示す証拠を改めて提出する。

(ア)「滋養強壮剤(ドリンク剤)」についての売上げ

甲第9号証は2002年度から2004年度におけるアスパラを冠した各商標が付された「滋養強壮剤」についての売上本数を示す。証拠に示すとおり、毎年5,700万本から7,200万本を売り上げており、3年間の合計は約2億本に上る。因みに甲第7号証で示した売上本数と甲第9号証で示す売上本数の合計、即ち1987年度から2004年度までの過去17年間の売上総本数は4億本以上に上る。

(イ)「薬剤」全般についての売上げ

甲第10号証は2002年度から2004年度における、アスパラを冠した各商標が付された「滋養強壮剤」以外の商品も含めた「薬剤」全般の売上げについては証拠に示すとおり、上記3年間の売上総額は137.4億円に上るものである。因みに既に提出した甲第7号証の3と甲第10号証から分かるように、1992年度ないし2004年度までの過去13年間での売上総額は400億円を超える。

(ウ)「アスパラを冠した各商標」を使用した商品の宣伝・広告

請求人は2002年から2003年の間も、アスパラを冠した各商標を付した「薬剤」につき、継続的に宣伝広告を行っている。甲第11号証ないし甲第13号証はこの点につき示すものである。具体的には、著名タレント草▲なぎ▲剛を起用したテレビコマーシャル(甲第11号証の1ないし3)に加え、ニッポン放送等のラジオコマーシャル、及び大阪ドームでの大看板の設置、サンケイスポーツ等の主要スポーツ新聞における広告等がある。その費用についてみると、テレビコマーシャルにつき約4.5億円、ラジオコマーシャルにつき約1,000万円、野球場大看板設置等につき約1,300万円、また、新聞広告につき約1.2億円、雑誌広告費用につき約400万円(甲第12号証)であり、これらの総額は約6億円にのぼる。

上記広告に加え、ビデオレンタル店「TSUTAYA」を通じたキャンペーン企画(甲第13号証)や、「アスパラを冠した各商標」による全日本GT選手権等のモータースポーツやバレーボールチーム「堺ブレイザーズ」へのスポーツ協賛も行っている。

(エ)アスパラを冠した各商標を付した「薬剤」の販売期間

請求人は、引用登録商標又はアスパラを冠した各商標を付した「薬剤」について昭和37年以降現在に至るまで、40年以上にわたって販売を継続しているものである。

2002年度から2004年度までの間においても、アスパラを冠した各商標を付した「薬剤」の販売、宣伝広告は上述のとおりの規模にて行われてきており、また2005年度以降もこれらは継続して行われるものである。

なお、被請求人は引用登録商標の周知・著名性の根拠として、アスパラを冠した各商標を付した商品の近年のシェアが以前に比して幾分低下したことのみを挙げている。

しかし、単にシェアの低下のみをもって周知・著名性を否定する根拠となり得ないことは明白である。けだし、商標の周知・著名性は使用開始時期、使用期間、販売数量、宣伝広告の規模等を総合的にみて判断されるものであることは審査基準にも示されており、シェアの高低は単に営業規模を示す一つの指標にすぎない。

市場規模が特に小さいとはいえない滋養強壮剤の分野においては、たとえシェアが上位5位以内でなくとも、売上等の規模は相当のものとなる。実際に、引用登録商標を付した滋養強壮剤、薬剤の売上額、宣伝広告費用等の規模の大きさ、及び使用期間の長さは上述のとおりである。

さらに付言すると、引用登録商標は2004年発行の「日本有名商標集(第3版)」にも掲載されている(甲第14号証)。

以上のような事実が存在するにも関わらず、単にシェアの低下のみをもって、引用登録商標又はアスパラを冠した各商標が本件商標の出願時及び登録査定時において出所の混同を生じるほど著名ではなかったとする被請求人の主張は到底認められるべきものではない。

(2)引用登録商標が創造商標であるか否か、又はハウスマークであるか否かは、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するかを判断するための一要素に過ぎないことは、審査基準においても明白であると共に、被請求人も自認するところである。

引用登録商標の著名性、及び引用登録商標の指定商品と本件商標の指定役務の密接な関連性に比すると、引用登録商標が創造商標でない点、及びハウスマークでない点はさほど大きな影響を与えるものではない。よって、これらの2点を殊更重視する被請求人の主張は妥当ではない。

(3)インターネット上での情報提供がウェブサイトの構築者たる企業名で行われているという被請求人の主張は根拠のあるものとはいえない。

インターネット上で企業名以外の名称を出所標識として特定の情報を提供することは頻繁に行われている。請求人が既に提出した証拠中においても、例えば、甲第8号証の3で「アレルギーi」、甲第8号証の19で「Livita−Life」、甲第8号証の21で「頻尿.jp」等がその例として挙げられる。閲覧者はサイトに付けられたこれらのタイトルを目印にし、リンクを辿る等して特定のウェブサイトに到達するのであって、必ずしもウェブサイトの構築者たる企業名を目印にしているわけではない。これはインターネット上での情報提供につき、ハウスマーク以外の名称も出所標識として機能しているということに他ならない。

(4)「医療」には単に「治療」のみならず、疾病等にかからないようにするいわゆる「予防医療」も含まれることは明らかである。さらに近年、生活習慣病の予防や治療においては、特に日々の適切な健康管理や健康の維持が重要であるという認識は需要者にも十分浸透している。「医療」をことさら「治療」という意味のみに限定した被請求人の主張は一方的かつ独自のものであり、このような主張は認められるべきものではない。

(5)2002一35557号審決における、「アスパラ」が「エスパラ」と出所の混同を生じるおそれがあるか否かの判断については、本件とは事案を異にするため、その判断を採用するのは妥当ではない。よって前記審決に基づき本件商標と引用登録商標又はアスパラを冠した各商標との出所混同のおそれがないとする被請求人の主張は失当である。

一方、「滋養強壮剤」は体力の増進・健康の維持を目的とした薬剤であるため、需要者は「滋養強壮剤」を健康に密接に関連するものとして認識しているといえる。このことは、例えば、インターネット検索において「滋養強壮」を検索すれば約20万件のウェブサイトが検出され、そのうち健康に関するものは約13万件に上ること、また、「滋養強壮剤」やその他の「薬剤」の商品名を用いて健康情報が提供されている例が多数存在することからも明らかである。後者の証拠としてその一部を示す(甲第15号証の1ないし7)。

よって、「滋養強壮剤」と「医療情報の提供」が性質、状態を異にするために関連性がないとする被請求人の主張は、現実の取引等の実態を全く考慮しておらず、根拠のないものであるといえる。

(6)以上のとおり、アスパラを冠した各商標の使用状況は上記したとおりであり、さらに「滋養強壮剤」と「医療情報の提供」、特に「健康情報の提供」とはきわめて密接な関連性を有することは上記(5)で述べたとおりである。これらの状況を総合的に考慮すると、本件商標が「医療情報の提供」につき使用された場合には、一般需要者をして請求人の代表的商品となった「ASPARA」を用いて健康情報の提供を行っていると誤認せしめるおそれが皆無であるとは決して断ずることは出来ず、少なくとも被請求人はこの点につき立証しているとは到底考えられない。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。

1.請求人は、引用登録商標「アスパラ/ASPARA」は、商品「滋養強壮剤」に使用して著名なものである旨主張しているが、被請求人が本件商標をその指定役務中の「医療情報の提供」に使用した場合に役務の出所について混同を生ずるおそれがある程に引用登録商標が著名なものとは認め難い。

請求人が本件商標に対し、商標法第4条第1項第15号を根拠に登録の無効を主張する場合には、本件商標の出願日である2002年(平成14年)11月12日から登録査定時の2004年(平成16年)2月16日の間において著名であったことを立証すべきである。

しかしながら、請求人が提出した証拠ではこの時期に該当するものは全く見られない。請求人が「アスパラドリンク」などドリンク剤の売上順位を示すものとして提出している甲第7号証の2は1987ないし99年までの資料であり、甲第7号証の3の「アスパラドリンク」などの製品売上高も1992年度ないし2001年度のものである。甲第6号証にある宣伝広告費の表も、1990年4月ないし2000年3月までの資料であり、いずれも「アスパラドリンク」「アスパラエース」「アスパラMAX」という「ドリンク剤」についてのものである。

また、甲第7号証の1も「アスパラドリンク剤」の売上本数に関する1987年ないし2000年の資料である。

甲第7号証の2によると、1999年のドリンク剤「アスパラ」の売上順位は第10位であり、1999年のミニドリンクの売上順位は第15位である。

しかし、近年の「ドリンク剤・ミニドリンク剤」における市場占有率(シェア)について乙第1号証ないし乙第4号証のデータを見ると、いずれもこの業界では上位5社だけで全体の70%以上のシェアを確保しており、残りの企業はそれ以外の約25%の中に入っているようである。

これらのデータからすると、この業界においては、上位5社以外のシェアは全体においてかなり低いことが推察される。

請求人が審判請求書で引用している審決(無効2002一35557)にしても、その審決中、「請求人の使用に係る商標『アスパラ』は、本件商標の登録出願時までには、取引者、需要者の間において広く認識され、周知・著名であったものと認められ、その周知・著名性は、本件商標の登録審決時においても継続していたものと認め得る」とあるが、これは1992年(平成4年)8月7日の登録出願時、2001年(平成13年)8月31日の設定登録時点でのことであり、本件商標の登録出願時(2002年(平成14年)11月12日)の1年以上も前のことである。ましてや、登録査定時(2004年(平成16年)2月16日)に至っては2年5カ月以上が経過しており、近時、引用登録商標の周知度が低下している傾向にあると推定されることに鑑みれば、請求人の提出した証拠によっては、上記の期間に引用登録商標が著名であったことを立証するに十分なものではない。

上述の乙第1号証ないし乙第4号証から明らかなように、請求人は上位5社に入っていないので、その残りの一部分のシェアを持っているに過ぎず、そのような低いシェアでは本件商標の登録出願時及び登録査定時において、出所について混同を生じるほど著名だったとは考えられない。

また、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」であるか否かの判断にあたっては、引用登録商標の周知度のほかに、(1)その他人の標章が創造標章であるかどうか、(2)その他人の標章がハウスマークであるかどうか、(3)商品間、役務間又は商品と役務間の関連性についても併せて総合的に勘案して決めるべきものであるとされている。

(1)引用登録商標が創造標章であるかどうかについて

引用登録商標の構成は「アスパラ」「ASPARA」の文字を2段に書してなるものであるが、「アスパラ」は角川外来語辞典に「アスパラガスの略称」と記載されており、他の辞書においてみても、2004年12月の時点で、「三省堂国語辞典」第5版、「角川必携国語辞典」第6版、「三省堂新小辞林」第5版、大修館「明鏡国語辞典 携帯版」(初版)、「学研 現代新国語辞典」改訂第3版、小学館「大辞泉」(第1版第2刷)にも「アスパラ」は「アスパラガスの略称」である旨が明記されているとおり、「アスパラガスの略称」として広く認識され、使用されているものであって、「ASPARA」はその字音を表したものであるから、引用登録商標は創造標章ではない。このことは、青果店での品名「アスパラ」ならびに飲食店におけるメニュー等にも「アスパラ妙め」「アスパラの肉巻き」等の如く広く使用されている例に見るも明らかである。

このように引用登録商標は、何人にも採択されやすく、親しまれた観念を有するものであるから、これに接する需要者はこの観念に強い印象を受けるものというべく、創造標章であるかどうかは周知度の認定にあたって重要な判断要素の一つとなるものと思料される。

(2)引用登録商標がハウスマークであるがどうかについて

ハウスマークは、例えば「サントリー」「SUNTORY」、「ソニー」「SONY」、「キヤノン」「Canon」等のように、会社の商号の要部を構成するものや、会社の社章など、会社を代表するマークとして各種商品に広く使用されているものであるから、ハウスマークであるかどうかは商品・役務について混同を生じさせるおそれがあるか否かを決定するにあたって重要な要件となるものであるが、引用登録商標は、市販されている商品の一つである「滋養強壮剤」に使用されている商標(マーク)であり、上述のようなハウスマークではない。

現に請求人のホームページを見ても引用登録商標で健康情報を提供しているわけではない(甲第8号証の23)。当該ページにおいてもページ最上部と最下部に「田辺製薬株式会社」が行っているサービスであることが明示されている。これは「田辺製薬株式会社」がハウスマーク的な機能を発揮し、引用登録商標は商品の一名称に過ぎないことを示すものにほかならない。

なお、請求人が証拠として提出している甲第8号証の1ないし40を見るところ、他社でも同様に請求人がいうところの「健康情報」は、すべて企業名やハウスマークのもとに提供されており、企業の商品の一名称で行われているものは見られない。

(3)役務「医療情報の提供」と「健康情報の提供」「滋養強壮剤」との関係について

請求人は、「医療情報の提供」の中に「健康情報の提供」が含まれている旨主張しているが、「健康情報」と「医療情報」についてみてみると、一口に「健康情報」といってもその素材となるものは、例えば「薬剤、サプリメント、体操、ウオーキング」等々その他にも多くのものがあり、巷間一般に健康によいものはすべて健康に関する情報として宣伝広告されている実情から考えても「健康情報」なるものの概念は極めて広く抽象的で不明確なものであるといわざるを得ない。

この点に関連して請求人は、甲第8号証の1ないし40を提出しているが、これは健康情報を発信していると請求人が考える、製薬企業各社のインターネットのホームページを印刷したものであるが、これらの資料が「医療情報の提供」の中に「健康情報」が包含されていることを証する資料の一つになると理解することはできない。

また、役務の「医療情報の提供」と商品の「滋養強壮剤」との関係にしても、両者はその性状を異にする別異のものである。

請求人が審判請求書で引用している審決(無効2002一35557)によると、「請求人の使用に係る商標『アスパラ』の著名性、売上高、取引の実情等を考慮したとしても、人の口に入れる商品『滋養強壮変質剤』と、人の口に入れることのない商品『防虫剤・防臭剤(身体用のものを除く。)』とが、たとえ、同一店舗において販売され得るとしても、それぞれの置き場も相違し、先ず充分に吟味して購入され、一般需要者等による誤認・混同可能性も低いと予測されることよりすれば、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、請求人の使用に係る『アスパラ』商標を連想、想起するとはいえないだけでなく、請求人又はそれと経済的あるいは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について誤認、混同を生ずるおそれはないものといわなければならない」とある。

この審決は取引の実情等個々の実態を十分考慮し、同一店舗において販売され得る商品同士であっても、誤認、混同はないと判断されたものといえる。まして店舗等で販売される「滋養強壮剤」とインターネット等で提供される「医療情報の提供」は全く異なるものである。

2.以上のとおり、上記の点を総合的に勘案すると、被請求人が本件商標をその指定役務中「医療情報の提供」に使用した場合、引用登録商標と役務の出所について混同を生じさせるおそれなどないと思料する。

したがって、本件商標の指定役務中「医療情報の提供」の登録は、商標法第4条第1号第15号に該当しないものであるから、無効とされるべきものではない。

第4 当審の判断

本件商標は、「ザアスパラ」と「THE ASPARA」の文字とを併記してなり、「医療情報の提供」ほか、第44類に属する役務を指定役務とするものである。

これに対して請求人は、その指定役務中「医療情報の提供」についての登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるとして、その登録の無効を求めるところの理由は大旨、1.「アスパラ」と「ASPARA」の文字とを併記してなる引用登録商標、及び滋養強壮剤に使用する「アスパラエース」、「アスパラドリンク」、「アスパラMAX」等の「アスパラ」の文字を冠した商標は、一般需要者の間で周知・著名なものであること、2.これら商標と本件商標とは類似すること、及び3.「健康情報の提供」なる概念を包含する「医療情報の提供」と「滋養強壮剤」とは密接な関連性を有していることから、本件商標をその指定役務中「医療情報の提供」について使用するときは、その出所について混同を生じさせるおそれがあるというものである。

そして、上記の引用した商標の周知・著名性、及び「医療情報の提供」と「滋養強壮剤」との関連性等を証明するものとして甲第3号証ないし甲第15号証(枝番含む。)を提出しているので、その当否について判断する。

1.商標「アスパラ」の周知・著名性について

(1)請求時提出の証拠(甲第3号証ないし甲第7号証)

a)社史(甲第3号証)

「田辺製薬三百五年史」(昭和58年10月発行)において、「アスパラギン酸製剤の製造」を小見出しとする箇所で「・・・当社は昭和37年(1962)5月にL-アスパラギン酸塩製剤をアスパラの製品名で医家向に上市、・・・引続きアンプル剤・シロップ剤・ドリンク剤などを一連の製剤を上市するとともに,テレビ・ラジオ・新聞などによる大キャンペーンを展開し,その販売促進を図った」の記載、また「アスパラの宣伝」を小見出しとする箇所や「宣伝史」とする箇所の「宣伝諸活動」の欄をみると、請求人が「アスパラ」の文字を使用して「アスパラギン酸塩製剤」に係る商品を昭和37年ないし同42年頃迄は、多彩な宣伝諸活動をしていたことの記載があり、その後の昭和43年及び昭和45年ないし同52年迄の宣伝諸活動の欄が空欄になってはいるが、昭和53年から当該社史の発行前年まで再度宣伝諸活動を開始したことの記載がある。

b)日刊紙への広告(甲第4号証の1ないし3)

1989年(平成元年)2月17日付、1990年(平成2年)10月23日付で滋養強壮ドリンク剤「アスパラエース」を、及び1998年(平成10年)11月12日付で滋養強壮錠剤「アスパラメガ」の各広告が朝日新聞に掲載されていること(甲第4号証の1)

1989年(平成元年)7月23日付で滋養強壮ドリンク剤「アスパラエース」と「アスパラゴールドA」を、1990年(平成2年)5月17日付と1991年(平成3年)4月23日付で滋養強壮ドリンク剤「アスパラエース」を、及び1998年(平成10年)12月9日付で滋養強壮錠剤「アスパラメガ」の各広告が讀賣新聞に掲載されていること(甲第4号証の2)

1989年(平成元年)10月24日付で滋養強壮ドリンク剤「アスパラエース」と「アスパラゴールドA」を、1990年(平成2年)4月26日付、及び1991年(平成3年)5月16日付で滋養強壮ドリンク剤「アスパラエース」の各広告が毎日新聞に掲載されていること(甲第4号証の3)

c)社内報(甲第5号証の1ないし3)

請求人の編集・発行になる「MARUGO」を題号とする1997年(平成9年)5月・6月号の社内報に滋養強壮ドリンク剤「アスパラドリンク」に係る掲載(甲第5号証の1)、同報1999年(平成11年)7月・8月号に滋養強壮ドリンク剤「アスパラドリンク」と「アスパラMAX」に係る掲載(甲第5号証の2)、及び同報2002年(平成14年)5月・6月号に滋養強壮ドリンク剤「アスパラドリンク」に係る掲載(甲第5号証の3)がされていること、

d)宣伝広告費・売上げ等(甲第6号証、甲第7号証の1ないし3)

請求人ヘルスケア事業部営業推進部長の平成15年1月24日付けで陳述します。とした「1990/4−2000/3宣伝広告費」と題する書証(甲第6号証)において「アスパラドリンク」「アスパラエース」及び「アスパラMAX」に係る新聞及びテレビを媒体とした1990/4ないし2000/3に係る各期間の広告費用の記載、同「アスパラドリンク剤(1987−2000)売上本数」と題する書証(甲第7号証の1)において「アスパラドリンク剤」及び「アスパラミニドリンク剤」に係る「1987(S62)ないし2000」に係る各発売年毎の売上本数の記載がされていること、

同「ドリンク剤(1987−1999)売上順位」及び「ミニドリンク売上順位」と題する各書証(甲第7号証の2)において「1987ないし1999」に係るドリンク剤売上順位として「アスパラ」が他社製品とともにNo.7ないしNo.10及びミニドリンク売上順位がNo.8ないしNo.20に位置する記載がされていること、

同「全アスパラ製品売上高/92年度〜01年度」と題する書証(甲第7号証の3)において「アスパラドリンク」「アスパラエース」及び「アスパラC」ほかの各製品の1992年度ないし2001年度に係る各年度毎に億単位での数字の記載がそれぞれされていること、

(2)弁駁時提出の証拠(甲第9号証ないし甲第14号証)

a)売上げ・宣伝広告費(甲第9号証、甲第10号証、甲第12号証)

請求人ヘルスケア事業部営業企画部長の平成17年4月13日付けで陳述します。とした「アスパラ全ドリンク剤売上本数/2002年度〜2004年度」と題する書証(甲第9号証)において「アスパラドリンク」「アスパラMAX」「アスパラドリンクX」「アスパラドリンクII」及び「アスパラエース」ほかの各製品の2002年度ないし2004年度に係る各年度毎に万本単位での数字の記載がされていること、

同「全アスパラ製品売上高/2002年度〜2004年度」と題する書証(甲第10号証)において「アスパラドリンク」「アスパラエース」「アスパラMAX」「アスパラドリンクX」及び「アスパラドリンクII」ほかの各製品の2002年度ないし2004年度に係る各年度毎に億単位での数字の記載がされていること、

同「新聞広告掲載状況および費用」とする項目において「サンケイスポーツ」「デイリースポーツ」及び「東奥、福井、沖縄等24紙」ほかの掲載紙欄に沿って2001/1ないし2004/12の月毎の費用の記載、「雑誌広告掲載状況および費用」とする項目において「ホットヒペッパー」に「2003/4、460,000」、「講談社ヤングマガジン」に「2003/7、2,007,900」ほか掲載雑誌等欄に各一回の「2003/8、1,164,000」「2003/9、51,000」「2004/7、329,600」の記載、「テレビCM広告放送費用」とする項目において「福岡RKB」「日本テレビ」「フジテレビ」ほかのテレビ局への広告放送費用が2003/4ないし2003/9と2003/9の月毎の費用の記載と「読売テレビ」への「2003/11/1、952,381」とする記載ほか、「ラジオCM広告放送費用」とする項目及び「その他広告費用」とする項目からなる書証(甲第12号証)にそれぞれ広告費用とする記載がされていること、

b)ニュースリリース(甲第11号証の1、2)

2002年4月23日付けの見出しを「田辺製薬「アスパラドリンク」CMキャラクターに草▲なぎ▲剛さんを起用/〜4月27日より全国放送開始〜」とするニュースリリース(甲第11号証の1)に「アスパラドリンク」CMキャラクターとして草▲なぎ▲剛を起用することに係る記述がされていること、

2003年4月28日付けの見出しを「田辺製薬(株):「アスパラドリンク」新CMについて」とするニュースリリース(甲第11号証の2)に引き続き「アスパラドリンク」CMキャラクターとして草▲なぎ▲剛を起用することに係る記述がされていること、

c)社内報(甲第11号証の3)

請求人の編集・発行になる「MARUGO」を題号とする2003年(平成15年)5月・6月号の社内報に上記「アスパラドリンク」に係るところの新CMについてのニュースリリース(甲第11号証の2)に照応する掲載がされていること、

d)キャンペーン企画(甲第13号証)

欄外に、責任部門:ヘルスケア事業部 製品育成部 推進課 発信日:2003/7/25との記載がされた、TSUTAYAのビデオレンタル店(全国約1,000店舗)での2003年8月8日(金)〜9月7日(日)の期間中、草▲なぎ▲剛が主演の映画「黄泉がえり」のレンタル開始に合わせ、裏面に「アスパラドリンク」の広告が掲載された「うちわ」のプレゼントほかのキャンペーン企画に係ることを内容とする書面、

e)日本有名商標集(甲第14号証)

AIPPI・JAPANの発行になる「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN 日本有名商標集」に「アスパラ」の片仮名文字と「ASPARA」の欧文字とを二段に併記してなる引用登録商標及び登録第845681号商標(商標の構成を「ASPARA」の欧文字とし、指定商品を第1類「薬剤、その他本類に属する商品」とする。)の掲載がされていること、

(3)まとめ

(ア)請求時提出の証拠(甲第3号証ないし甲第7号証)は、被請求人が主張するように、本件商標の登録出願日である2002年(平成14年)11月12日ないし登録査定時の2004年(平成16年)2月16日における引用登録商標又はアスパラを冠した各商標の使用状況を直接的に証明するものではない。また、日刊紙への広告(甲第4号証の1ないし3)以外の a)社史(甲第3号証)及び b)社内報(甲第5号証の1ないし3)は、請求人の編集・発行になるものであって、その発行部数や頒布状況は不明である。さらに、「ドリンク剤(1987−1999)売上順位」及び「ミニドリンク売上順位」と題する各書証(甲第7号証の2)が如何なる事実に基づき作成されたものかも不明であって、その他、引用登録商標又はアスパラを冠した各商標の商品への使用に関し、公的機関、同業者組合及び同業者等による証明を含め第三者による証明もないところである。

(イ)しかしながら、「1990/4−2000/3宣伝広告費」(甲第6号証)と「全アスパラ製品売上高/92年度〜01年度」(甲第7号証の3)とをみれば、例えば、98年度の「アスパラMAX」に係る売上高が「3.6億」であるのに対して「8億9千万」をテレビによる宣伝広告費としていること、99年度の「アスパラドリンク」に係る売上高が「15.0億」であるのに対して「18億7千万」ものテレビによる宣伝広告費としていること、及び「アスパラドリンク剤(1987−2000)売上本数」(甲第7号証の1)とをみれば、例えば、1999年を発売年とした場合、売上本数がアスパラドリンク剤(100mL) 1,681万本/アスパラミニドリンク剤(100mL以下) 181万本、合わせて「1,862万本」であり、99年度の全ドリンク売上高が「27.4億」であること、同2000年を発売年とした場合、売上本数は合わせて「1,877万本」であり、00年度の全ドリンク売上高が「38.2億」であること、また、2001年を発売年とした売上本数は不明ではあるが、01年度の全ドリンク売上高が「40.2億」であること等の記載が認められ、宣伝広告費、売上高及び売上本数がこれらの記載とおりであることを前提として、また、無効2002−35557号審決(平成16年(行ケ)第113号 審決取消請求事件)の認定・判断とを考慮してみれば、少なくとも請求人により、1987年(昭和62年)ないし2001年(平成13年)の間において、アスパラを冠した「アスパラドリンク」「アスパラドリンクA」「アスパラMAX」等の滋養強壮ドリンク剤が製造・販売され、「アスパラ」の文字自体が滋養強壮ドリンク剤に係る商標として、取引者・需要者間において広く認識され、周知・著名となっていたものということができる。

(ウ)被請求人は、「ドリンク剤・ミニドリンク剤 ベスト5」(乙第1号証)、「シェア2004Book」(乙第2号証)、「2002年「主要商品・サービス100品目シェア調査」(乙第3号証)及び「市場占有率2005年版」(乙第4号証)によれば、いずれもこの業界では上位5社だけで全体の70%以上のシェアを確保しており、請求人は上位5社に入っていないので、その残りの一部分のシェアを持っているに過ぎず、そのような低いシェアでは本件商標の登録出願時及び登録査定時において、出所について混同を生じるほど著名だったとは考えられない旨述べている。しかし、これらは国内出荷額シェア等により、上位5社をランク付けしたものであって、「ドリンク剤」と「ミニドリンク剤」(乙第1号証)を合わせみた場合に、「大正製薬(リポビタンD)」や高価格帯商品が多いミニドリンク剤において「佐藤製薬(ユンケルシリーズ)」が抜きんでていることは認め得るとしても、これらのランク付けにより、個々の製品の宣伝広告費や売上本数にまで結びつくものでなく、直ちに6位以下にランク付けされるであろう製薬各社の製造・販売に係る「ドリンク剤」や「ミニドリンク剤」の周知・著名性を否定し得るとまでいえない。

なお、「ドリンク剤(1987−1999)売上順位」(甲第7号証の2)の1999年で「アスパラ」は、No.10になるところ、「シェア2004Book」(乙第2号証)の「ドリンク剤(薬系ルート)」2002年 販売とを比較すると売上又は販売時期の違いはあるとしても、前者の売上順位で「グロンビター」がNo.2と5に重複して位置付けられているのに対し、後者では5位になっていること、「新グロモノト」が前者の売上順位では、No.18に位置付けられているのに対し、後者では4位になっていること等においてみれば、各ドリンク剤の売上順位は年毎の変動がみられる。

(エ)そして、弁駁時提出の証拠(甲第9号証ないし甲第14号証)は、2002年(平成14年)度ないしの2004年(平成16年)度におけるアスパラを冠した各商標の実際の使用状況を示すものとして提出されたものであるが、b)ニュースリリース(甲第11号証の1、2)は、「アスパラドリンク」CMキャラクターとして草▲なぎ▲剛を起用することについての報道機関に提供されたであろう資料であって、実際のテレビCMの放送状況を示すものでなく、かつ、これに関連する掲載のある c)社内報(甲第11号証の3)も、その発行部数や頒布状況は不明である。また、「新聞広告掲載状況および費用」「雑誌広告掲載状況および費用」「テレビCM広告放送費用」等の項目からなる書証(甲第12号証)にそれぞれ広告費用とする記載がある以上に、如何なる商品についての広告であるかは不明である。そして、d)キャンペーン企画(甲第13号証)に基づくキャンペーンが行われ、プレゼントされるうちわの裏面にアスパラドリンクに係る広告掲載があるとしても、これが特定ビデオをレンタルした者を中心にプレゼント等がされるとするようなものであり、そのキャンペーン期間(約1ヶ月)とを合わせみれば、この企画にのみよっては、引用登録商標又はアスパラを冠した商標の周知・著名性を確証づけるものとまで認め難いものである。さらに、e)日本有名商標集(甲第14号証)に引用登録商標の掲載があることが認められる以上に、これがその掲載商標の使用状況を直接的に証明するものではない。

(オ)しかしながら、「アスパラ全ドリンク剤売上本数/2002年度〜2004年度」(甲第9号証)と「全アスパラ製品売上高/2002年度〜2004年度」(甲第10号証)とをみれば、2002年度が売上本数がアスパラドリンク 1,881万本/アスパラドリンクX 3,569万本、アスパラドリンクII 1,231万本ほかアスパラ全ドリンク剤売上本数が合わせて「7,212万本」であり、全ドリンク売上高が「45.5億」であること、同2003年度の売上本数は合わせて「6,057万本」であり、全ドリンク売上高が「36.9億」であること、及び同2004年度の売上本数は合わせて「5,728万本」であり、全ドリンク売上高が「33.6億」であること等の記載が認められ、この売上本数がその記載とおりであることを前提としてみれば、上述の1987年(昭和62年)ないし2001年(平成13年)の間におけるアスパラを冠した各商標を使用した滋養強壮ドリンク剤の売上本数に比して各年度とも3倍を越える売上本数である。

(カ)以上のとおり、ドリンク剤売上本数や売上高ほか、社史、日刊紙への広告等の甲各号証を善解してみれば、昭和37年(1962年)5月にL-アスパラギン酸塩製剤を「アスパラ」の製品名で、アンプル剤・シロップ剤・ドリンク剤などを一連の製剤として売り出して以来、本件商標の出願日である2002年(平成14年)11月12日ないし登録査定時の2004年(平成16年)2月16日の間においてもアスパラを冠した「アスパラドリンク」「アスパラドリンクX」「アスパラMAX」等の滋養強壮ドリンク剤が製造・販売され、「アスパラ」の文字自体が滋養強壮ドリンク剤に係る商標(以下「アスパラ商標」という。)として、取引者・需要者間において広く認識され、周知・著名となっていたものといわなければならない。

2.請求人商標と本件商標との類似について

上述のとおり、「アスパラ」は、「アスパラギン酸塩製剤」に係る商品の商標として採択され、永年に亙る使用の結果、滋養強壮ドリンク剤に係る商標として、取引者・需要者間において広く認識されているといえるものである。

他方、本件商標は、「ザアスパラ」の片仮名文字と「THE ASPARA」の欧文字とを二段に併記してなるところ、被請求人は、本件商標の採択・使用の意図を直接的に述べるものではないが、「アスパラ」は、角川外来語辞典に「アスパラガスの略称」と記載されており、他の辞書においてみても、2004年12月の時点で、「三省堂国語辞典」第5版、「角川必携国語辞典」第6版、「三省堂新小辞林」第5版、大修館「明鏡国語辞典 携帯版」(初版)、「学研 現代新国語辞典」改訂第3版、小学館「大辞泉」(第1版第2刷)にもその旨が明記されおり、「アスパラガスの略称」として広く認識され、使用されているものであって、青果店での品名「アスパラ」並びに飲食店におけるメニュー等にも「アスパラ妙め」「アスパラの肉巻き」等の如く広く使用されている例に見るも明らかであると述べている。

確かに、「アスパラ」の文字からは、滋養強壮ドリンク剤ほか薬剤に係る商標として使用されるものは別として、常に前者のアスパラ商標又はアスパラを冠した各商標を連想し想起し得るものということはできないが、本件商標の構成文字にあって各冒頭の「ザ」と「THE」は、英語の定冠詞(又はその読み仮名表記)と理解され、それぞれ「アスパラ」と「ASPARA」の文字に冠したものであり、この場合の該定冠詞が特段の意味を表すものとは理解し得ず、かつ、これを冠するや否やによりその片仮名文字及び欧文字全体として別異な意味合いが生ずるものともいい得ないないことから、その構成において「ザ」と「THE」の文字に較べ圧倒的に顕著に表された「アスパラ」と「ASPARA」の文字に印象付けられ、これを取引指標と認識し、「アスパラ」と称呼して取引に当たる場合があること決して少なくないものというのが取引の実際に照らし相当である。

そうすると、本件商標はその構成文字に相応し、一連に「ザアスパラ」の称呼のほか、単に「アスパラ」の称呼をも生じるものといわなければならない。したがって、アスパラ商標とは、定冠詞の有無及び構成全体の外観においての差異があり、また、使用する商品又は役務によっては、必ずしも定着した一義的な観念を有するものとまでいい得ないが、両者は「アスパラ」の称呼を共通にするところから、同一又は類似の商品又は役務に使用する場合には、相紛れるおそれのある類似の商標ということはできる。

3.役務「医療情報の提供」と商品「滋養強壮剤」の関連性について

(1)医療情報の提供に係る役務

本請求は、本件商標の指定役務中「医療情報の提供」についての登録を無効とすることを求めるものであるところ、その指定役務である「医療情報の提供」については、如何なる情報までがその範囲になるかは明確に定義することはできないとしても、「医療」の語が「医術で病気を治すこと」(広辞苑第五版)の意味からして「病気、疾患、症状や治療法に係る情報」「病院、診療所等の医療施設やその診療に係る情報」「治療や治験過程で生じた患者等に係る個別情報」「医薬品やこれに伴う副作用、相互作用に係る情報」「医療器機に係る情報」及び「医学、薬学の分野における調査、研究に係る情報」等ほか、直接的な治療とはいえないが「病気予防のための健康管理に係る情報」も含み医療に係る情報一般を提供する役務ということができる。

そして、一般に役務とは他人のためにする労務又は便益をいうと解されるところ、商標は、商品又は役務に使用され、自他商品又は役務の識別機能を有し、出所表示機能、品質保証機能を果たし得るものでなければならないから、商標法にいう「役務」とは、他人のためにする労務又は便益であって、かつ、付随的でなく独立して市場において取引の対象となり得るものをいうと解するのが相当である(平成12年(行ケ)第105号参照)とされる。

(2)製薬企業各社のホームページ情報

そこで、製薬企業各社のホームページをプリントアウトしたとする甲第8号証の1ないし40及び甲第15号証の1ないし7を検討するに、これらは会社概要(事業情報)、自己製品紹介(製品情報)等とともに、当該製薬企業あるいはそのグループ企業の使用する同一のドメイン名又は医薬品の商標をドメイン名とするWebサイト上で公開されているデーターに係るWebページ(Webサイト上で公開されているデータでWebブラウザー画面に一度に表示されるデータのまとまりを指し、これを「ホームページ」という場合がある。日経パソコン用語事典 2004年版)をプリントアウトしたものであり、企業情報、製品情報等とともに健康に関する情報の見出しをWebサイトの入り口として位置付けられている最初のページ(厳密にはこれを「ホームページ」という。前出「用語事典」)や関連Webサイトへのリンク先への小見出しとして使用し、これらとリンクさせて健康に関する情報を掲載し発信していることは認められる。

しかし、これらはいずれも主として、当該製薬企業の概要(事業情報)やその取り扱う商品(医薬品)に関する宣伝広告の類になるWebサイト情報というべきものであって、これらに伴って行われる情報の提供は、それ自体に着目すれば他人のためにする労務又は便益に当たるとしても、その情報の入手については、不特定の者が任意にアクセスすることが可能であり、かつ、対価の支払が生じるものでないばかりでなく、これにアクセスする一般需要者がこれら製薬企業のホームページに掲載されている「健康に関する情報」を本件商標の指定役務中の「医療情報の提供」に含まれる役務取引と認識してアクセスしているとは到底いえない。

したがって、請求人提出に係る製薬企業各社のホームページ情報(Webページ:甲第8号証の1ないし40、甲第15号証の1ないし7)は、いずれも商標法にいう「役務」には該当しないというべきであって、製薬企業が「病気予防のための健康管理に係る情報」も含み「医療情報の提供」について、独立した取引の対象となる役務をしていると認定するのは困難である。

(3)商品「滋養強壮剤」と役務「医療情報の提供」の需要者等について

請求人のアスパラを冠した各商標に係る商品「滋養強壮ドリンク剤」は、健康や体力の増進を目的とした商品であって、一般需要者に馴染みのある大衆的な商品といえるものであり、日常的な市場に流通する商品の取引であるのに対し、役務「医療情報の提供」は、顧客に対し専ら上述したとおりの「病気、疾患、症状や治療法に係る情報」「医学、薬学の分野における調査、研究に係る情報」等を提供する事業所に係る役務であって、その需要者は、疾病の治療等についての専門的で特別な情報の入手を求めるものに限定されるとみて差し支えなく、一般の需要者は、格別な事情がない限り「医療情報の提供」を役務取引の対象として求めるという実情があるということはできない。

そうすると、本件商標の指定役務中の「医療情報の提供」と請求人のアスパラを冠した各商標に係る商品「滋養強壮剤」等とは、その役務の提供と商品の製造、販売とが同一事業者によって行われていないこと、また、前者はその取引の対象が他人のために提供する労務又は便益というべき取引であるのに対し、後者は市場に流通する商品の取引であって、その取引対象及び取引方法を著しく異にする異種の産業分野に属するものであるというのが相当である。しかも、その主たる需要者は、前者が医療機関、医学・薬学分野における調査、研究機関、製薬・医療器機メーカー等を対象にした専門的な顧客であるといえるのに対し、後者が健康や体力の増進を求める一般世人であって、両者に密接な関連性が存するものということはできない。

4.出所混同の可能性について

以上よりすると、「アスパラ」の文字自体が、請求人の製造・販売に係る商品「滋養強壮ドリンク剤」等に係る商標として、需要者間において広く認識され、周知・著名となっていたものであるとしても、「アスパラギン酸塩製剤」に係る商品の商標として採択された商標自体と本件役務の分野における需要者の注意力、取引事情の違い等を併せ考慮し、また、一般論としてみれば、製薬企業各社が自己の事業に係るノウハウというが如き「医薬品における調査、研究に係る情報」「治験過程で生じた患者等に係る個別情報」や「医薬品やこれに伴う副作用、相互作用に係る情報」等の蓄積した情報を「医療情報の提供」にかかる役務として市場において独立した取引の対象とするような可能性が存するということもできない。

そうすると、請求人のアスパラ商標の著名性は、「アスパラドリンク」「アスパラドリンクX」「アスパラMAX」等の滋養強壮ドリンク剤を含む滋養強壮剤等の薬剤に止まるものとみるのが相当であって、本件商標の指定役務に係る分野に及ぶとみるのは困難といわなければならないから、商標権者が、本件商標をその指定役務中の「医療情報の提供」に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、請求人のアスパラ商標を連想又は想起させるものとはいい難く、その役務が申立人又は同人と経済的又は組織的に、何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのごとく、その出所について混同を生じさせるおそれはないと判断し得る。

5.結語

したがって、本件商標の登録は、その指定役務中「医療情報の提供」について、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから、その登録を同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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