Trademark Appeal Case
称呼の類似性と要部抽出
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2005−90591(T2005−90591/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4894751号商標(以下「本件商標」という。)は、「長城冠丹元」の文字を標準文字で書してなり、平成16年12月10日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同17年9月16日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
(1)引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する登録第3156554号商標は、「冠元顆粒」の文字を書してなり、平成5年3月16日に登録出願、第5類「顆粒状の血流改善剤」を指定商品として、同8年5月31日に設定登録されたものである。同じく登録第3179879号商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成5年4月5日に登録出願、第5類「顆粒状の薬剤」を指定商品として、同8年7月31日に設定登録されたものである。以下、これらの登録商標を一括して「引用商標」という。
(2)理由の要点
(ア)本件商標は、構成中の「長城」が中国の著名な観光地である「万里の長城」を容易に想起され、特に漢方薬との関係においては、これに接する取引者、需要者は、当該地で生産された商品ないし当該地に何らかの由来を有する商品であると認識するにすぎない。また、構成中の「丹」の文字が「薬のこと、丸薬の名に添える語」を意味する語であり、特に漢方薬との関係においては、識別力を欠き、「冠元」の文字が商品の出所の識別標識として強く支配的な印象を与える。他方、引用商標中の「顆粒」は、薬剤の形状を表示するにすぎず、識別力を欠くから、「冠元」が要部として分離ないし抽出される。
さらに、「冠元」は、申立人による造語であって本来識別力が強いうえ、薬剤、特に漢方薬を取り扱う取引者・需要者の間に周知著名であった。
かかる具体的な取引状況を考慮して、本件商標と引用商標が取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、相紛らわしく出所の誤認混同を生じることは明らかであり、両商標は類似する。
また、本件商標と引用商標は、同一又は類似する商品に使用するものである。
(イ)別掲(2)に示した標章(以下「引用標章」という。)は、平成3年より約15年の長期にわたり申立人に係る商品に付して日本全国において使用されており、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人に係る商品を表示するものとして取引者・需要者の間で周知著名であった。
そして、本件商標と引用標章とは、「冠元」の文字を共通にする類似のものであり、同一又は類似する商品に使用するものである。
よって、構成上類似するほか、具体的出所の混同を生じるおそれがある。(ウ)商標権者は、本件商標の登録直後から、本件商標の「丹」の文字を殊更に小さく「冠元」が目立つ態様で使用していることに照らせば、本件商標が申立人の業務上の信用にフリーライドしようとする意図で登録出願し登録されたことは明白であり、不正の目的をもって使用をするものである。
(3)結論
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであるから、その登録を取り消されるべきである。
3 当審の判断
(1)本件商標と引用商標の類否について
本件商標は、前記のとおり「長城冠丹元」の文字が標準文字をもって外観上まとまりよく一体的に表されていて、その文字数も5文字の一語とみて何ら不自然なものではなく、また、全体をもって称呼してもよどみなく一連に称呼し得るものである。そして、たとえ構成中の「長城」の文字部分が「万里の長城」を認識する場合があって、「丹」の文字部分が、それ自体としては「薬のこと、丸薬の名に添える語」を意味する語であり、自他商品の識別力を欠くものであるとしても、かかる構成においては、その全体をもって一体不可分のものと把握し認識されるとみるのが自然である。
してみれば、本件商標は、その全体の構成文字に相応して「チョウジョウカンタンゲン」の称呼のみを生ずるものといわなければならない。
申立人は、本件商標中の「丹」の文字は特に漢方薬との関係においては、識別力を欠き、「冠元」の文字が商品の出所の識別標識として強く支配的な印象を与える。他方、引用商標中の要部として分離ないし抽出される「冠元」の文字は、申立人による造語であって本来識別力が強いうえ、薬剤、特に漢方薬を取り扱う取引者・需要者の間に周知著名であった。かかる具体的な取引状況を考慮して、本件商標と引用商標が取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、相紛らわしく出所の誤認混同を生じることは明らかであり、両商標は類似する旨主張する。
しかしながら、本件商標中の「丹」の文字は第3文字の「冠」と第5文字の「元」に挟まれる位置に配されており、「丹」の文字のみを抽出して申立人の述べる意味を有するものと認識される構成のものではなく、これら3文字に均等に注意が注がれるものというべきであるから、申立人の使用する「冠元顆粒」の文字からなる商標が薬剤、特に漢方薬を取り扱う取引者・需要者の間に周知著名であり、「冠元」の文字部分が該商標における要部であると認識される場合のあることを前提としても、本件商標に接した者が、これから「冠元」の文字が商品の識別標識として強く支配的なものという印象を受けるとは認められず、この点を認め得る証拠もない。
そうとすれば、本件商標より「カンゲン」の称呼をも生ずるとし、その上で本件商標が引用商標と称呼上類似するとする本件登録異議申立ての理由は、妥当でなく、その理由をもって両商標を類似のものとすることはできない。
その他、本件商標が引用商標に類似するとすべき理由は見いだせない。
(2)出所の混同について
本件商標が引用商標と類似するものでないこと上述のとおりであり、申立人が上記2の(2)で述べる引用標章の事情を考慮しても、本件商標は、引用標章とも相紛れるおそれのない非類似のものといわざるを得ず、かつ、本件商標から引用標章を連想・想起し得るなど、引用標章と同一の出所を表すものと認識するとみるべき格別の理由も見いだせないから、本件商標をその指定商品に使用した場合、申立人又は申立人と何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その出所について混同を生ずるおそれはないといわなければならない。
(3)不正の目的について
以上からすると、本件商標は、引用標章と類似しないばかりでなく、引用標章の著名性にフリーライドするものでもなく、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的など不正の目的をもって使用するものということもできない。
申立人は、本件商標の商標権者は本件商標の登録直後から本件商標の「丹」の文字を殊更に小さく「冠元」が目立つ態様で使用していることに照らせば、本件商標が申立人の業務上の信用にフリーライドしようとする意図で登録出願し登録されたことは明白であり、不正の目的をもって使用をするものである旨主張する。
確かに、申立人の提出に係る甲第21号証及び検甲第2号証によれば、商標権者の使用する「長城冠丹元」の文字からなる商標は、「長城」の文字を他の文字よりも小さく表示し、「冠丹元」の文字については、「冠」と「元」の両文字に較べて「丹」の文字が小さく表示されていることが認められるが、上記各号証に表された「冠丹元」の文字は、「冠元」の文字が独立するものとして際立った印象を与え、記憶にとどめさせるほど大きさが異なるものではなく、全体として「冠丹元」の文字に変化をもたせて表したと認識し得る程度のものというべきである。
そして、実際に商標として使用する場合に、構成中の一部の文字の大きさを変え、書体を変え、あるいは図案化させ、また、文字の一部を重ねて表すなど、構成する文字に変化を与えて登録商標と異なる態様で表すことは、商標の訴求力を強めるために少なからず行われているところである。このような取引の実情に照らせば、この点に関する申立人の主張は、上記判断を左右するものではない。
(4)結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号及び同第19号のいずれにも違反して登録されたものではない。
したがって、本件商標は、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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