結論テキスト
その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2005−89089(T2005−89089/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4771002号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成15年2月14日に登録出願、第14類「キーホルダー,貴金属製食器類,貴金属製宝石箱,貴金属製のがま口及び財布,宝玉及びその模造品,貴金属製コンパクト」を指定商品として、平成16年5月14日に設定登録されたものであるが、その後、その指定商品中の「宝玉及びその模造品」についての商標権は、放棄により抹消され、その登録が平成17年10月5日にされたものである。
請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する国際登録第803932号商標(以下「引用商標」という。)は、「EGERIE」の文字を横書きしてなり、2003年2月13日にスイス国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して2003年5月15日に国際登録され、第14類「Cuff links,rings,bracelets,earrings,necklaces,brooches;watches,chronometers,pendulum clocks.」(和訳:カフスボタン、指輪、ブレスレット、イヤリング、ネックレス、ブローチ,時計・クロノメーター・振り子時計)を指定商品として、平成16年1月9日に我が国において設定登録されたものである。
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第8号証及び甲第13号証ないし甲第15号証(枝番号を含む。なお、甲第9号証ないし甲第12号証は、提出がないから欠番とする。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、その構成中の欧文字部分の1番目と3番目の「E」の上部にアクサン・テギュが付されているが、その綴りは、引用商標と同一であるから、本件商標と引用商標は、「エジェリ」の称呼を共通にするだけでなく、フランス語で、「政治家や芸術家に強い影響力を持つ女性」という観念も共通にする(甲第5号証)。
また、本件商標の指定商品中の「宝玉及びその模造品」は、引用商標の指定商品「rings,bracelets,earrings,necklace,brooches」に類似する。
したがって、本件商標の登録は、指定商品「宝玉及びその模造品」について、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
(ア)「EGERIE」商標(以下「引用標章」という。)の周知性
請求人は、カルティエ、モンブラン、ダンヒル等の有名ブランドを数多く傘下に収めており、高級腕時計ブランド「ヴァシュロン・コンスタンタン」もその1つである。
ヴァシュロン・コンスタンタン(以下「ヴァシュロン社」という。)は、1755年にスイス国ジュネーブにおいて創立されて以来、250年の歴史を誇る最古の時計メーカーであり、高級腕時計のメーカーとして、需要者の間ではよく知られている。
そして、ヴァシュロン社は、2003年10月頃から我が国において、引用標章を付した女性向け高級腕時計(以下「EGERIE商品」という。)の販売を開始し、EGERIE商品のみを紹介するためのパンフレット(甲第6号証)を作成するなど、EGERIE商品について積極的に広告・宣伝活動を行った。その結果、EGERIE商品は、高級感のあるエレガントな時計としてファッションに敏感な女性の注目を集め、数多くの雑誌等においても紹介された(甲第7号証の1ないし15)。また、EGERIE商品は、最も安い商品でも、その価格は95万円もする高額商品であるが、2003年10月の販売開始から現在までに、168本も販売されている(甲第8号証)ことからも、その人気の高さがうかがわれる。
(イ)混同のおそれ
本件商標は、周知・著名な引用標章と、同じ綴り字の「EGERIE」よりなるものである。
また、上述のとおり、本件商標の指定商品の内「宝玉及びその模造品」については商標法第4条第1項第11号に該当するが、それ以外の「キーホルダー,貴金属製食器類,貴金属製宝石箱,貴金属製のがま口及び財布,貴金属製コンパクト」についても、高級腕時計と商品の提供者、販売場所、需要者の範囲が共通することが多く、密接な関係が認められることから、これらの商品に本件商標が使用された場合にも、ヴァシュロン社又は同社と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものである。
(1)商標法第4条第1項第15号について
(ア)引用標章の使用態様について
被請求人主張のとおり、EGERIE商品の文字盤には、引用標章は表されておらず、該商標は腕時計の裏蓋に刻まれているが、腕時計の文字盤にはそのブランド(製造・販売する者)のみが刻まれ、個々の製品名が文字盤に表されないことは普通に行われているところである。例えば、カルティエ社の「パシャ」「タンクフランセーズ」「サントス」といったモデルは、同社を代表する腕時計であり、カルティエ社の業務に係る腕時計を表す商標として、我が国の需要者に広く知られているが、それらの商品名が文字盤に表されることはなく、文字盤には「CARTIER」の商標のみが表示されている(甲第13号証)。同様に、パテック・フィリップ社の「カラトラバ」も同社の代表的な腕時計であるが、その商品名は、腕時計の文字盤には表されていない(甲第14号証)。
そうすると、EGERIE商品に接する需要者が、引用標章をこの腕時計の商品名として認識するのは、明らかであり、文字盤の表面に商品名が刻まれていないことは、こうした認識に何ら影響を及ぼすものではない。
したがって、引用標章が文字盤に表されていないことをもって、請求人が引用標章を商標として使用していないという被請求人の主張は、誤りである。
(イ)引用標章の周知性について
被請求人は、2003年9月から2005年3月までのEGERIE商品の販売数量はわずか168個であり、これをもって引用標章の周知性を認めることはできない旨主張する。
しかし、EGERIE商品は、高額なものであるから、わずか1年半で168個という販売数量は、この種の高級時計の販売実績としては、決して少ないものではない。
また、販売実績(甲第8号証)は、請求人の日本における輸入総代理店であるリシュモンジャパン株式会社を通じて販売された数量のみである。高級輸入時計は、総代理店以外の並行輸入業者も多数輸入して販売していることが多いため、実際に日本国内で販売された数量は、甲第8号証に示したよりも多いものと推測できる。
さらに、EGERIE商品は、2003年にスイス国ジュネーブで開催された高級時計国際見本市において、ヴァシュロン社の新作として発表され(甲第15号証)、発表と同時に話題となり、我が国の高級腕時計の需要者にも知られることとなったのである。
したがって、引用標章は、請求人によって商標として使用された結果、我が国の需要者に周知となっている。
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当し、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証を提出した。
(1)請求人は、2003年10月に、我が国でEGERIE商品の販売を開始し、現在までに168個販売したと主張するが、その販売数は、僅か168個の販売であり、しかも、すべて本件商標の登録出願後の販売数であって、それ以前に販売されたのはゼロである。
(2)また、請求人は、甲第6号証をもって、EGERIE商品を販売したとするが、実際に時計の商標として使用されているのは、「VACHERON CONSTANTIN」であり、引用標章ではない。しかも、甲第6号証は、いつ、どこに、どのくらい配布されたものかも不明である。いずれにせよ、EGERIE商品が現実に販売されたのは、2003年10月以降であるから、その発行時期も、それとほぼ同じ時期と考えられ、本件商標の登録出願前に発行されたものとは、到底考えられない。
また、甲第6号証以外の雑誌広告類をみても、それらは、いずれも本件商標の登録出願後に発行されたものであって、本件審判における著名の立証とは、関連がない。
さらに、引用標章は、時計の個別ブランドとしての使用というよりは、その時計について何らかの特定の雰囲気付けを与えるために用いた形容詞ともいうべきであって、一種のキャッチフレーズ的使用態様である。本来、時計のブランドを表示すべき場所は、時計の文字盤の内側部分であり、需要者は、そこを見てブランドを認識するのである。しかるに、本来、ブランドを表示すべき部分には、請求人の代表的商標である「VACHERON CONSTANTIN」が示されているだけであり、引用標章は、需要者からは見えない時計の裏側に刻まれているにすぎない。
したがって、EGERIE商品に使用している商標は、「VACHERON CONSTANTIN」であり、引用標章ではない。
(3)以上のように、請求人の主張は、すべて本件商標の登録出願日以降に生じたことに関するものであり、これらの証拠をもって、本件商標の登録出願時において、引用標章が著名であったとすることはできない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
(4)本件商標の使用実績
本件商標の登録出願日は、2003年2月14日であるが、被請求人は、本件商標の採択及び登録出願時において、請求人が引用商標を1日違いでスイスに出願していたなどとは、知る由もなかった。被請求人は、フランス人女性デザイナー(ソフィー・ヴィルピーグ)のデザインに係るジュエリーについて2003年3月頃より、また、時計について同年ll月頃より、本件商標の使用を開始し、相当規模の宣伝広告も行い、独自の営業努力で商品展開を開始したのであるが、我が国商標法の下での周知・著名性を立証するには困難であること、さらに、我が国商標法が先願主義を基本とするため、やむなく引用商標の指定商品と抵触する「時計、アクセサリー」等については、販売中止を決定したのである。
したがって、被請求人は、本件商標について圧倒的使用実績をもっていたのであり、請求人が、後から採択し登録出願した引用商標に基づき、すでに現実に相当規模で使用されていた本件商標に対し、著名性を主張するのは、見当違いも甚だしい。
被請求人は、平成17年9月21日付けで「商標権の一部抹消登録申請書」(乙第1号証)を提出し、本件商標の指定商品中の「宝玉及びその模造品」について放棄した。
よって、本件商標が商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたとする請求人の主張は、もはや理由がない。
以上のように、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第11号に該当するものではないから、請求人の主張は理由がない。
(1)本件商標は、別掲のとおり、「EGERIE」(1字目と3字目の「E」にアクサン・テギューが付されている。以下同じ。)の文字を大きく横書きし、その下に、該「EGERIE」の半分ほどの幅をもって、「エジェリ」の文字を横書きしてなるものであるから、本件商標に接する需要者は、「EGERIE」の文字部分に強く注意を引かれ、印象づけられるというの相当である。
これに対し、引用商標は、前記のとおり、「EGERIE」の文字を横書きしてなるものである。
そうすると、本件商標は、その構成中、看者の注意を強く引く欧文字部分において、引用商標とは、1字目と3字目の「E」にアクサン・テギューを有するか否かの差異を有するにすぎないから、両商標は、時と所を異にして離隔的に観察した場合は、外観上互いに紛れるおそれがあるものといわなければならない。
また、本件商標は、その構成文字に相応して、「エジェリ」の称呼を生ずるものであり、引用商標は、本件商標中の欧文字部分と同一の綴り字よりなるものであるから、これに倣い、「エジェリ」の称呼を生ずるか、若しくは、英語読み風にした「エジェリー」の称呼をも生ずると見るのが相当である。
そうすると、本件商標より生ずる称呼は、引用商標より生ずる称呼と同一であるか、又は、末尾における長音の有無の差異を有するにすぎない称呼上きわめて近似したものといわなければならない。
したがって、本件商標は、引用商標と外観及び称呼において類似する商標というべきものである。
さらに、本件商標の指定商品中の「宝玉及びその模造品」は、引用商標の指定商品中の「rings,bracelets,earrings,necklace,brooches」と製造業者、販売場所等を同じくする場合が多い類似の商品と認められる。
(2)前記のとおり、本件商標は、平成15年2月14日に登録出願されたものであり、引用商標は、2003年(平成15年)2月13日にスイス国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して2003年5月15日に国際登録されたものである。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品中の「宝玉及びその模造品」について、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものというべきである。
なお、被請求人は、上記に関し、平成17年9月21日付け「商標権の一部抹消登録申請書」により、本件商標の指定商品中の「宝玉及びその模造品」についての商標権を放棄したから、請求人の主張は理由がない旨主張するが、本件商標が商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるか否かの判断基準時は、その査定日(平成16年4月20日)であるから、査定日後に、本件商標の指定商品について、引用商標の指定商品と抵触する指定商品の放棄を行ったとしても、本件商標が上記条文の適用を免れることはできない。したがって、被請求人の上記主張は、採用することができない。
ヴァシュロン社の取扱いに係る女性向け高級腕時計(EGERIE商品)について使用される引用標章が、本件商標の登録出願前より我が国において、その需要者の間に広く認識されていたものであるか否かについて検討するに、甲第6号証ないし甲第8号証及び甲第15号証によれば、引用標章がEGERIE商品について使用されていることは、認めることができる。
しかしながら、甲第6号証(EGERIE商品のパンフレット)は、いつ発行され、どの程度の部数がどの地域に頒布されたものであるかは、明らかではない。また、甲第7号証の1ないし15(雑誌による広告)は、いずれも本件商標の登録出願後に発行されたものである。さらに、甲第15号証(傑作腕時計百年図鑑2004年版、2003年12月1日発行)に、EGERIE商品の掲載があったとしても、これも新作腕時計としての紹介にすぎないものであり、加えて、請求人の主張によれば、EGERIE商品の我が国での販売開始が本件商標の登録出願後の2003年(平成15年)10月からであること、本件商標の登録出願前に我が国において、EGERIE商品が販売されたという証拠は、存在しないことなどを総合すると、引用標章は、ヴァシュロン社の取扱いに係るEGERIE商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時、すでに我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることは、困難であるといわざるを得ない。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品中、「宝玉及びその模造品」以外の商品について使用しても、該商品がヴァシュロン社又はこれと営業上何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品中の「宝玉及びその模造品」以外の商品について、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものと認めることはできない。
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中の「宝玉及びその模造品」について、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきである。
しかし、本件商標の指定商品中の「宝玉及びその模造品」以外の商品についての登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから、これを無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
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