結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2005−89124(T2005−89124/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4871691号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成15年8月27日に登録出願、第29類「さんま(生きているものを除く)」及び第31類「さんま(生きているものに限る)」を指定商品として、同17年4月20日に登録をすべき旨の審決がなされ、同年6月17日に設定登録されたものである。
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第19号証を提出した。
(1)請求の理由
(ア)請求人の請求の利益
請求人は、漁業協同組合を組織する組合員が漁獲する水産物の販売を主たる業とする漁業協同組合である。請求人の組合員が漁獲する「さんま」については、組合員(歯舞さんま部会)がブランド化の為に設備投資を積極的に推進し、漁獲されたさんまは「舞さんま」と表示して、現在は、請求人が販売しており、取引者・需要者間において広く知られている。
請求人とは何ら関係の無い被請求人が本件商標を使用すれば、取引者・需要者は、当該商標が付された商品を請求人が水揚げし、販売しているものと誤認混同することは必定であり、著しい不利益を受けるものである。かかる状況が看過されるとすれば、請求人が長年にわたる事業活動により築き上げてきた業務上の信用及び名声を損なうことにつながりかねず、到底許されるものではない。更に、被請求人は、本件商標譲渡の交渉の場において、法外な金銭の要求をしている。
以上のとおり、請求人は、本件審判請求をするにおいて利害関係を有する者であり、請求人適格を有するものである。
(イ)標章「舞さんま」について
請求人は、自己が漁獲する商品「さんま(生きているものを除く)、さんま(生きているものに限る)」について、他の産地(漁港)の「さんま」との差別化とブランド化を図るための検討を行ってきた。その結果、特別な鮮度保持行程によって、商品の高品質化を図ることとする結論に達した。
そこで、平成14年8月に「さんま漁船腸炎ビブリオ菌」等の対策として、海水殺菌機を購入し設置をした。機械の設置に伴い、請求人は、自己の水揚げに係る「さんま」について、「歯舞漁業協同組合サンマ部会」の名称から歯舞の「舞」を採って「舞さんま」と命名し、取引者、需要者間に浸透を図る努力を続けてきた。
また、「舞さんま」のネーミングとともに、漁船に設置の集魚灯の切換えに反応し、さんまが舞い上がるようにぴちぴち元気一杯跳ね上がり、踊る姿をデザインし、全体標章を完成させている。
請求人は、商品「さんま」に関し、品質の向上を図り、「舞さんま」のブランド化を目指して、船内ばかりでなく、漁船が接岸する市場においても、紫外線殺菌装置、フローアイスシステム等を設置して「さんま」の品質管理を徹底的に行うとともに、請求人の構成員である船主、乗組員の衛生管理を徹底するための講習会を開催し、手引き書等を配布するなどして品質の向上に努力している。
請求人が他漁港水揚げの「さんま」との差別化の検討を開始したのは、平成14年2月頃からであり、「舞さんま」を使用することを決めたのは、平成14年のさんま漁に間に合わせてのことである。「舞さんま」は、請求人の徹底した管理下により漁獲された「さんま」にのみその使用が許されるものであって、請求人以外の者が「舞さんま」の使用は許されていない。
(ウ)商標法第3条第1項柱書きについて
本件商標の商標権者は、一個人であって、漁業又は水産を業とするものではない。「さんま」等の漁獲に関しては、漁業許可を得る必要があり、日本国内許可については、北太平洋さんま漁業許可証(甲第2号証)、さんま棒受け網漁業許可証(甲第3号証)、ロシア海域許可証(甲第4号証)が発行され、各漁業協同組合に所属する組合員により行われるものであって、一個人が行うということは考えられないことである。まして、漁業協同組合が検討を行い、そこで水揚げされる「さんま」について、団体標章的に使用しようとする標章を一個人が権利を取得することは、わが国商標法の目的である「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保持すること。」との法目的を著しく逸脱する行為であって、到底許されるものではない。
よって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書きの規定により無効とされるべきものである。
(エ)商標法第4条第1項第7号について
請求人は、平成14年8月より、本件商標と同一の商標を商品「さんま」に使用してきている。使用するにあたっては、商品の品質等の管理を厳しく行うと同時に、取引者・需要者への浸透を図る努力をしてきた。
これに対し、被請求人は、本件商標と同−又は類似する商標について、請求人が使用を検討していた事実、また、標章を採択した事実を知りながら、自らは使用する意思もないのにもかかわらず、本件商標を取得したことは明らかである。
すなわち、被請求人は、本件商標取得にあたり、平成16年3月16日付特許庁よりの拒絶理由通知に対する意見書(甲第5号証)において、「この商標願いは、北海道道東産、釧路及び根室の歯舞沖を中心に水揚げしたさんまを、歯舞漁協及び歯舞漁業協同組合の〔舞〕を取り、商標登録願いを致しました。」と認め、かつ、参考資料を提出している(登録出願時の資料参照)。また、同人の2004一21468号審判事件に対し、早期審理を請求し、その事情説明書中(甲第6号証)の「緊急性を要する状況の説明」において、本件商標が請求人すなわち歯舞漁業協同組合さんま部会及び根室市のブランドの名称であること、また、本件商標が付される商品「さんま」は、一定の品質管理が施された高品質の商品であることも十分認識していることも自白している。
そうとすると、被請求人は、請求人が商標登録出願をしていないことを奇貨とし、本件商標を独占的に取得し、請求人の使用を不可能又は困難にさせる意図の下に、請求人の了解を得ないままに登録出願を行い、権利を取得したものであるといわなければならない。
そして、本件商標を含む商標を使用し、商品「さんま」について取引者、需要者をして知らしめた請求人に対し、被請求人が法外な金員をもって権利譲渡の交渉を行うという虚にでた行為は、不当の利得を得ようとする意思の下で権利を取得したものといわざるを得ない。
このような行為は、公正な競業秩序を害するものであって、公序良俗に反すること明らかであり、許されるべきものではない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号により無効とされるべきものである。
(オ)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、請求人が本件商標登録出願前より使用している商標と同−又は類似する商標であることは明らかであり、本件商標を商標権者が商品「さんま(生きているものを除く)」及び「さんま(生きているものに限る)」に使用するときは、請求人使用の商標に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがある。
請求人は、平成14年のさんま漁に合わせて、本件商標と同ー又は類似の商標を使用しており、使用の事実は、甲第7号証ないし甲第18号証より明らかである。
また、請求人は、インターネット上に自己のホームページを立ち上げ、商品の販売の普及に努めてきた(甲第18号証)。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号により無効とされるべきものである。
(2)答弁に対する弁駁
(ア)商標法第3条第1項柱書きについて
被請求人は、水産物、農産物等を指定商品とする商標登録が多数なされている例を挙げて反論しているが、これら商標の登録が認められていることと、「自己の業務に係る商品について登録をうけることができる。」との同法第3条第1項柱書きとは何ら関係を有するものではない。
被請求人は、登録出願当初から、自分で使用する意思は全く持っていなかったものであることは、答弁からも窺えるものである。すなわち、被請求人は、「父・若山敏次は、昔から独自の機械を発明したり開発することに長けており、平成9年8月ころから、さんま船などの漁船に搭載する紫外線海水殺菌装置などの開発をしておりました。その後、殺菌装置やフローアイス冷凍装置の開発が進んだ平成12年の夏頃、父より、これら装置を統合した海水滅菌冷却装置の名称を考え始めるようにと、昭和冷凍社員や、母や私などの家族に依頼がありました。」と陳述している(乙第43号証)。そうとすれば、被請求人に依頼があったのは、「海水滅菌冷却装置」の名称であって、本件商標の指定商品である「さんま(生きているものを除く)、さんま(生きているものに限る)」ではなかったことは明らかである。
更に、被請求人は、「被請求人は、当初から、請求外昭和冷凍に独占的に使用させる目的で本件商標出願をしたものであり」と自認している(答弁書12頁7.(1)オ.)。
また、被請求人は、「専用使用権者の使用は、不使用を理由とする商標登録の取消審判(商標法第50条第1項)の請求さえ抗しえるものであるから、専用使用権者に使用させる目的をもった商標登録出願が、『自己の業務に係る商品について使用する』ものであるというべきである。」と答弁している。
しかしながら、商標法第3条第1項柱書きの立法趣旨は、いったん取得した商標に関する不使用取消審判の場面では、自らは商標を使用していなくとも使用許諾を受けた者が使用していれば取消を免れるのに対して、他者に使用させる意図があるというだけでは登録を認めない趣旨であると解されるのであって、当初から自ら使用するものでないものに排他独占的な権利を設定するのは妥当ではないというものであり(特許庁編 工業所有権法逐条解説 第16版)、被請求人の上記主張は、正に本件商標の無効を自認するものと言わざるを得ない。
また、被請求人は、昭和冷凍が平成14年のさんま漁の時期に、札幌や首都圏の料理研究家や寿司屋にフローアイス装置にて鮮度保持された「舞さんま」を航空便などにより届けて、食べてもらった感想を手紙等でやり取りしていることを挙げ、あたかも、これを「さんま」が自己の商品であるかの如く主張している。
しかしながら、このような無償の贈り物は、自己の商品ではなく、被請求人及び昭和冷凍の行為は、あくまでも機械システムの宣伝広告活動に他ならないものである。かかる主張は、被請求人が商品「さんま」について、本件商標を使用する意思が出願当初からなかったものであることを一層如実に物語っているものと言わざるを得ない。
以上のとおり、被請求人の、商標法第3条第1項柱書きに対する答弁は、客観的、合理的根拠のないものである。
(イ)商標法第4条第1項第7号について
被請求人が昭和冷凍から名称の検討を依頼されたのは、あくまで海水滅菌冷却装置に対するものであって、「さんま」についてのものではない。登録出願にあたって、被請求人が指定商品に「さんま」を指定したことは、請求人の業務に係る商品を意識してのことであって、被請求人の登録出願は、剽窃的であると言わざるを得ない。
被請求人は、本件商標登録出願はあたかも請求人に許可を受けての上でのことであると主張しているが(答弁書7頁)、商品「さんま」についてのものであったのか、また、商品「海水滅菌冷却装置」についてのものであったのかは明確でないばかりではなく、当事者が被請求人ではないことは明らかである。
よって、被請求人の本件商標登録出願は、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護する」(商標法第1条)という商標法の予定する秩序に反するものというべきである。
(ウ)商標法第4条第1項第15号について
被請求人は、平成14年当時、本件商標を使用したのは、被請求人である旨主張している。
しかしながら、平成14年より、被請求人が商品「さんま」に本件商標を使用していた事実は全くなく、前述したごとく、使用に当たると主張しているのは、請求人が水揚げした「さんま」を料理研究家や寿司屋に贈呈したものであって、これらの行為をもって、商品「さんま」についての本件商標の使用とは認められないものである。
請求人が機械を購入し、設置し、その機械装置を使用して商品の質を向上させ、商品の優越性を広告、宣伝することは当然の行為であって、機械を販売、取り付けを行った被請求人又は昭和冷凍が商品「さんま」について、本件商標を使用したとの被請求人の主張は、到底認められるものではない。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第46号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)本件商標をめぐる事実関係について
被請求人は、請求外株式会社昭和冷凍プラント(以下「昭和冷凍」という。)の代表取締役、若山敏次(以下「代表者若山」という。)の長女である。被請求人は、昭和冷凍とは法的には雇用契約を締結していないが、家業である昭和冷凍及び実父である代表者若山の業務を日常的に支援していた者である。
昭和冷凍は、製氷、冷凍、冷蔵、冷暖房及び化学工業用定温装置の製造、販売、船舶用各種高圧機器の製造等を業とする会社である。
被請求人は、昭和冷凍の業務に供するために、本件商標の図案や称呼を考案しており、昭和冷凍に対し、被請求人が考案した本件商標と同一称呼(「舞さんま」)の商標(乙第3号証、以下「旧商標」という。)について、平成13年8月頃から使用許諾を与え(乙第43号証)、本件商標についても、専用使用権設定契約を締結し(乙第46号証)、平成17年10月13日に専用使用権設定登録が完了している(乙第2号証)。
(2)本件商標作成の目的及び旧商標の作成・使用の経緯について
(ア)昭和冷凍は、平成9年8月上旬より、さんま船に搭載する紫外線海水殺菌装置の開発を進め、更に、平成12年8月上旬には、さらに殺菌力が強化されたオゾン発生装置の開発を進め、順次複数のさんま船において搭載テストを行っていた。また、昭和冷凍は、平成12年8月以降、これら殺菌装置と海水冷却装置を統合することにより近い将来実現化を目指すフローアイス海水滅菌冷却システム(昭和冷凍独自の開発商品)の実用化とともに、このフローアイス海水滅菌冷却システム自体及びこれら装置を使用して保存・陸揚げしたさんまに対し商標を付することにより、本来回遊魚であり、どこの港で陸揚げしても品質に差がないさんまの差別化が図れるとともに、フローアイス海水滅菌冷却システムのブランド化を図りたいと考え、商標作成の検討に入った(乙第44号証)。
(イ)平成13年8月上旬、被請求人は、本件商標の基礎となった旧商標を作成した(乙第43号証)。昭和冷凍は、被請求人より商標使用許諾を得て、平成13年8月より、「漁船用海水浄化装置システム」のパンフレット(乙第4号証)に旧商標を付し、また、昭和冷凍の装置を搭載した厚岸港のさんま船操舵室横に旧商標が付されたシール(乙第5号証の1及び2)を貼り、装置及びこの装置を使用して鮮度を保ちつつ陸揚げされたさんまの宣伝・普及に努めた。また、昭和冷凍は、平成14年に入り、海水紫外線殺菌浄化システムと海水冷却システムを統合したフローアイスシステムが実用試験段階に入ると、昭和冷凍の会社カタログにも旧商標を付するようになった(乙第6号証)。
(ウ)平成14年6月末頃、被請求人及び昭和冷凍は、旧商標をさらに親しみやすく洗練されたデザインに改変したいと考え、有限会社デザインルーム・コスモス(以下「デザインルーム・コスモス」という。)に対し、「舞さんま」という躍動感溢れる称呼にふさわしいデザインを複数点作成するよう発注した。同年7月10日頃、デザインルーム・コスモスよりデザイン数点が被請求人及び昭和冷凍に納入され、全てのデザイン図案につき被請求人、昭和冷凍両名に対し、著作権譲渡が行われた(乙第8号証及び乙第9号証)。この複数点のデザインのうちの1点が本件商標である。
(エ)本件商標の普及においては、当初、代表者若山自らが昭和冷凍の開発したフローアイス海水滅菌冷却システムに関連づけて、舞さんまサンプルを懇意の寿司屋、料理作家等に発送するほか、積極的にテレビ媒体、新聞媒体等のメディアに働きかけを行い、あるいは大手ビール製造会社の景品として採用してもらうなどをして、広告・宣伝活動を行っていた(乙第36号証及び乙第37号証)。
(3)その他の関連事実について
(ア)平成14年5月以降、代表者若山は、請求人に対し、旧商標が付された昭和冷凍の会社カタログ(乙第6号証)を持ち込み、フローアイスシステムの漁船搭載につき営業を行い、その結果、請求人は、所属漁船の一部(当時25隻のうち13隻)につき、昭和冷凍の製造にかかる海水紫外線滅菌装置システムを搭載するようになり(乙第15号証)、これら海水紫外線滅菌装置搭載漁船全船の船体に旧商標が付されたステッカーが貼付されるに至った。また、平成15年8月には、同所属船22隻の漁船にフローアイスシステムが搭載され(乙第7号証及び乙第16号証)、本件商標が付されたステッカーやのぼりが使用されるに至った。
(イ)平成14年7月20日頃、昭和冷凍代表者若山は、デザインルーム・コスモス社員・大野嘉弘立会いのもと、本件商標を旧商標と切り替えて、昭和冷凍が製造したフローアイスシステム搭載船舶に貼付してもらう為に、請求人に本件商標を持ち込んだ。この席上において、請求人は、昭和冷凍側が商標権を取得する予定であることを承知していたものである。なお、代表者若山と請求人側とのやりとりについては、同席していた大野嘉弘(当時、デザインルームコスモス社員)も事実関係を確認している(乙第42号証及び乙第44号証)。
(ウ)請求人は、平成14年8月から平成17年8月までの4年間にわたり(さんまは、日本海近海を回遊する回遊魚であり、北海道にあっては毎年8月がさんま漁の季節である)、乙第7号証の1及び2の標章を付した旗、のぼり、ステッカーを用いてさんま漁を行い、また、パンフレットやインターネットサイトの記事中等においては、昭和冷凍が製造した冷凍冷蔵装置・海水冷却殺菌装置「フローアイスシステム」(なお、「フローアイス」は、被請求人が商標権を有している。登録4786431号)を用いたさんま漁であることを離れて、乙第12号証、乙第13号証、乙第17号証ないし乙第23号証、乙第25号証ないし乙第29号証、乙第38号証及び乙第39号証中に記載されている標章を用いている。
(エ)昭和冷凍の商標は、歯舞を産地とするさんまに限定せずに、全国どこの港で水揚げされたさんまであっても、昭和冷凍の製造に係る装置を用いて保存されたさんま全てについて用いる可能性のある商標であるにもかかわらず、請求人は、「舞」の字が「歯舞」の地名を構成する一文字と共通であることを奇貨として、フローアイスシステムと離れて、産地ブランドであるかのような宣伝広告を行うに至った。
また、請求人は、自身が使用する標章を自己の所有であると虚偽の事実を告知し、新聞などを通じて流布しており(乙第15号証及び乙第22号証)、更には、昭和冷凍が独自で開発したフローアイス海水滅菌冷却システムについても、請求人が構想し昭和冷凍に指示をして製造させたかのように広告するまでに至っている。
(オ)そして、被請求人が商標登録をしている事実を知るや、本件商標の取得に要した実費で譲り渡すように圧力をかけ、平成16年10月以降、小杉氏より代表者若山に対し、再三にわたり電話が入るようになり、出願取下げを強要し続け、平成17年4月中旬以降は、請求人関係者から毎日のように電話が入り、代表者若山ほか家族は心身共に相当疲弊したという背景事情がある(乙第30号証及び乙第44号証)。
(カ)これに対し、昭和冷凍は、東京地裁に対し、本件商標権侵害差止、不正競争防止法に基づく損害賠償等を求めて、平成17年10月19日に訴訟提起を行い、現在訴訟係属中である(平成17年(ワ)第21749号)。
(4)商標法第3条第1項柱書き違反の主張について
商標法上、商品について用いる商標は、「業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの」(商標法2条1項1号)である。魚を指定商品とし、魚の名前を含む商標を取得することは、漁獲をする者に限らず、広く魚をめぐる業務にかかわる者に認められることは、数多くの登録例から明らかである。
被請求人は、昭和冷凍の代表者の家族である。そして、昭和冷凍は、「フローアイス」装置をはじめとする鮮魚の鮮度保持を目的とするシステムの開発、製造、販売を業とする会社であり、この画期的な海水滅菌冷却システムの導入があってはじめて、「舞さんま」という新鮮さを売りにした商品が誕生したのである。そのシステムの普及のために付帯的な事業として、そのシステムにて鮮度保持されたさんまを取り扱う者である。そのことは、昭和冷凍が、平成14年のさんま漁の時期に、札幌や首都圏の料理研究家や寿司屋にフローアイス装置にて鮮度保持された「舞さんま」を航空便等により届けて、食べてもらった感想を手紙等でやり取りしていることなどから明白である(乙第35号証ないし乙第37号証)。
被請求人は、当初から、昭和冷凍に独占的に使用させる目的で本件商標登録出願をしたものであり、商標登録直後に、昭和冷凍に対して専用使用権を設定している(乙第2号証)。そして、専用使用権者の使用は、不使用を理由とする商標登録の取消審判(商標法50条1項)の請求にさえ抗し得るものであるから、専用使用権者に使用させる目的をもった商標登録出願が「自己の業務に係る商品について使用をする」ものであるというべきである。
したがって、請求人の商標法第3条第1項柱書き違反であるとの主張は、失当である。
(5)商標法第4条第1項第7号違反の主張について
被請求人は、昭和冷凍に対して、無償で使用許諾する目的で、本件商標登録を受けたものであって、実際、その使用許諾契約書にも対価を求めない旨を約している(乙第10号証及び乙第11号証)。
なお、被請求人又は昭和冷凍は、請求人の申し入れに応じて、商標権の譲渡交渉に応じた事実は認める。そして、被請求人の妥当と思う金額を提示した。しかし、それは、請求人の求めに応じて、提示したものであって、売りつけようとした事実はなく、ブローカー呼ばわりされるいわれは全くない。
(6)商標法第4条第1項第15号違反の主張について
請求人は、本件商標と同−又は類似の商標を平成14年のさんま漁当時から使用していると主張する。確かに、新聞記事、ウェブページ等にそれらしきものが見受けられるが、それらは被請求人が本件商標について使用許諾を与えているところの昭和冷凍が使用主体として用いている標識である。
本件商標は、昭和冷凍の提供する「フローアイス」システムなる鮮魚保持システムにて鮮度を保持された「さんま」であることを示す標識として、被請求人がそのネーミング及びデザインを考案し、昭和冷凍の提供する機械にそのシール(旧商標)を貼るようにしたことから始まったものである。したがって、請求人が証拠としてあげる標章使用なるものは、昭和冷凍の使用する標識の使用であって、被請求人又はその独占的使用許諾を受けた昭和冷凍のための使用といわざるを得ない。
昭和冷凍は、平成14年度のさんま漁の時期に合わせて、請求人の構成員が所有する漁船に「フローアイス」装置を販売し、取付けて、平成14年度から平成16年度のさんま漁の時期に至るまで、50数回(延べ日数でいえば、100日を越える日数)のメンテナンス作業を有償又は無償にて施しており、フローアイス装置という鮮度保持システムについて、昭和冷凍が関わっていることを示し、そのシステムを扱う者に対し、正しくそのシステムを用いてさんまの鮮度をできるだけ保持するように仕向ける目的でその標識を用いてきた。
このような継続的な協力関係、信頼関係に基づいて、昭和冷凍が本来の使用主体である標識について、請求人が新聞紙上、ウェブサイト上で宣伝広告するのを容認してきた。それは、請求人の宣伝広告が鮮度保持システムについての言及とともになされ、「舞さんま」の文字商標及び本件商標が昭和冷凍が使用主体である標識であるとの了解が請求人と昭和冷凍との間に存在するものとの信頼関係に基づくものであった。
商標法第4条第1項第15号は、他人の商標との混同防止のための規定であって、本人の使用との関係で、この規定に該当する余地はない。
したがって、請求人の商標法第4条第1項第15号違反であるとの主張は失当である。
(1)本件商標及び請求人の使用に係る商標等について
本件商標は、別掲(1)に示したとおり、中央に「舞」の漢字を大きく表し、その下部に、「さんま」の文字を左上から右下に筆記体風に書し、「舞」と「さんま」の文字の間に「MAI−SANMA」の欧文字を小さく表し、「舞」の漢字の左右を刀状のさんまで囲むように、左側のさんまをやゝ高く、右側のさんまをやゝ低く配した構成からなるものである。
また、被請求人が本件商標の基になった商標であると述べている旧商標は、別掲(2)に示したとおり、大小のさんまを交差させるように描いた上部に、「舞」の漢字を大きく表し(「舞」の文字の中に「マイ」の文字が小さく書されている)、その下部に、「さんま」の文字を表した構成からなるものである(本件商標及び旧商標には色彩が施されている)。
一方、請求人が制作し、使用していると主張している商標は、甲第7号証ないし甲第10号証、及び甲第15号証ないし甲第17号証の新聞・雑誌の記事中に表示されており、その態様は、別掲(1)に示した本件商標と同一の構成からなるものである。
なお、本件審決を通して、本件商標、旧商標及び請求人の使用に係る商標を特に区別することなく、単に「舞さんま」とも称している場合がある。
(2)商標法第3条第1項柱書きについて
(ア)請求人は、本件商標の商標権者は一個人であって、漁業又は水産を業とするものではなく、「さんま」等の漁獲に関しては、北太平洋さんま漁業許可証(甲第2号証)等の漁業許可を得る必要があり、各漁業協同組合に所属する組合員により行われるものであって、一個人が行うことは考えられないことである旨主張している。
しかしながら、商標法第2条第1項第1号によれば、商品について使用される商標は、業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするものである。
本件商標の指定商品との関係についてみれば、第29類「さんま(生きているものを除く)」及び第31類「さんま(生きているものに限る)」を指定商品とする商標を取得しようとする者は、漁業に携わる者に限られるものではなく、魚の販売等、広く魚をめぐる業務にかかわる者全てがその対象となり得るものということができる。
してみれば、被請求人(商標権者)が漁業許可を受けていない一個人であることのみを理由に、本件商標が商標法第3条第1項柱書きの規定に反して登録されたものということはできない。
(イ)請求人の主な反論について
(a)被請求人は、答弁書において自認しているように、登録出願当初から、自分で使用する意思を全く持っていなかったものであり、商標法第3条第1項柱書きの立法趣旨は、他者に使用させる意図があるというだけでは登録を認めない趣旨である旨の主張について
確かに、特許庁編「工業所有権法逐条解説(第16版)」の商標法第3条の解説において、「・・・当初から自ら使用をするものでないものに排他独占的な権利を設定するのは妥当ではない・・・」と記載されており、被請求人の主張によれば、「被請求人は、当初から、昭和冷凍に独占的に使用させる目的で本件商標登録出願をしたものである」旨述べているものであるから、形式的にみれば、被請求人(商標権者)は、「当初から自ら使用をするものでないもの」に該当するということができる。
しかしながら、我が国商標法は、登録主義を採用しており、登録するための要件としては、登録出願された商標の現実の使用を必要とせず、使用の意思を有すれば足りることとされている。そして、審査・審判の運用においても、商標法第3条第1項柱書きの要件を満たさない事例としては、例えば、出願人の業務の範囲が法令上制限されているために、出願人が指定商品又は指定役務に係る業務を行わないことが明らかな場合とか、指定商品又は指定役務に係る業務を行うことができる者が法令上制限されているため、出願人が指定商品又は指定役務に係る業務を行わないことが明らかな場合等に限られており、極めて限定的に解されている。
これを本件の場合についてみるに、被請求人の主張によれば、被請求人は、昭和冷凍の代表者若山の長女であって、昭和冷凍とは法的には雇用契約を締結していないが、家業である昭和冷凍及び実父である代表者若山の業務を日常的に支援していた者であり、昭和冷凍の業務に供するために、本件商標の基礎となった旧商標や本件商標の作成に関わっており、昭和冷凍に対し、無償にて使用許諾を与えていたものである。そして、昭和冷凍は、さんま船に搭載する紫外線海水殺菌装置の開発を進め、フローアイス海水滅菌冷却システムを実用化するとともに、これらの装置自体及びこれら装置を使用して、鮮度を保ったまま陸揚げした「さんま」に商標を付することにより、さんまの差別化を図り、フローアイス海水滅菌冷却システムのブランド化を図ろうとしていたものと認められる。
上記のような事情からみれば、被請求人と昭和冷凍とは、法的には別人格の者ではあるが、経済活動の観点からみれば、被請求人は、昭和冷凍の事業活動を補完するような形で活動しており、しかも、比較的小規模な事業者においては(乙第44号証によれば、昭和冷凍も社員8名の会社である)、会社とその家族との協力関係のもとに事業を行っているケースをしばしば見受けるところであるから、被請求人と昭和冷凍とは、経済活動上は、密接不可分的な関係にあったものとみるのが相当である。
そうとすれば、例えば、専ら、不特定の第三者に使用権を与え使用料を得ることのみを目的に、商標の登録出願をして商標権を取得しているような場合は別にして、本件商標の場合は、たまたま、商標の発案をした若山真歩(被請求人)を出願人にしたにすぎないものというべきであって、被請求人が当初から昭和冷凍に独占的に使用させる目的で本件商標の登録出願をしたからといって、そのことを理由に、商標法第3条第1項柱書きの要件を満たしていないとみるのは、商標法の目的及び商標法第3条第1項柱書きの趣旨からみて、適切なこととはいえない。
(b)被請求人は、昭和冷凍が首都圏等の料理研究家や寿司屋に、フローアイス装置にて鮮度保持された「舞さんま」を航空便等により届け、食べてもらった感想を手紙等でやり取りしていたことをもって、あたかも、「さんま」を自己の商品であるかの如く主張しているが、このような無償の贈り物は、自己の商品ではなく、被請求人及び昭和冷凍の行為は、あくまでも機械システムの宣伝広告活動に他ならないから、このことは、被請求人が商品「さんま」について、本件商標を使用する意思が登録出願当初からなかったものであることを一層如実に物語っているものである旨の主張について
昭和冷凍が料理研究家や寿司屋に「舞さんま」を送り届けていた行為が商標法第2条第3項第2号に掲げる商標の使用行為にあたるか否かはさておくとしても、料理研究家等がフローアイス装置の需要者になるものとはいえないから、該行為は、フローアイス装置の宣伝のための基礎資料の収集活動であるとともに、「舞さんま」そのものの宣伝活動にもなっていることを否定できない。
そうとすれば、「舞さんま」が好評であれば、業としての販売も検討するであろうことは容易に推認し得るところであるから、商標法第3条第1項柱書きとの関係においては、被請求人における本件指定商品についての業務を行う蓋然性を肯定することにはなっても、使用意思を否定することに繋がるものとはいえない。
してみれば、これらの点についての請求人の主張は、いずれも採用できない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書きの規定に違反して登録されたものとはいえない。
(3)商標法第4条第1項第7号について
(ア)請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する理由として、被請求人は、請求人が平成14年2月頃より、商品「さんま」に「舞さんま」の標章を使用することを検討し、同年8月より使用していた事実を知りながら、自らは使用する意思もないにもかかわらず、本件商標を取得したことを挙げ、被請求人の登録出願は剽窃的である旨主張している。
(a)そこで、まず、請求人の提出に係る証拠についてみるに、請求人は、自身が「舞さんま」の標章を検討・使用していた事実を裏付ける証拠として、甲第7号証ないし甲第16号証の各種新聞・雑誌を提出している。
このうち、例えば、平成14年8月26日発行の「週刊水産新聞」(甲第8号証)によれば、「歯舞の19トン型/全船に海水浄化装置」の見出しのもとに「根室管内、歯舞漁協のさんま部会(小杉和美部会長)は、同漁協所属の一九トン型漁船の歯舞さんま船団(十二隻)の全船に、魚槽内に送る海水を紫外線で滅菌する紫外線浄化装置を設置、今操業から使用している。小杉部会長は『水揚げしたサンマの鮮度保持を図ることで、消費者に新鮮で安心して食べられる魚を提供したい』と話している。・・・『安全性を求める消費者のために、生産段階でできることはないかと部会で話し合った。そして海の上から食の衛生を考えた』(小杉部会長)。その結果、より鮮度の高いサンマを消費者に供給するため、船団ぐるみで装置の導入を決めた。・・・この装置は、ゴールドシステム(株)(大阪)の紫外線殺菌装置を使用し、(株)昭和冷凍プラント(釧路)がシステム製作・施工に当たり、ニチモウ(株)釧路営業所(釧路)が販売した。・・・また、同部会は『舞さんま』のロゴを制作した。『これはブランド化という考えではなく、消費者に安心して食べてもらえるサンマを獲ろうと考える漁業者の意気込み。鮮度のよい、舞い上がるようなサンマを獲ろうという気持ちが込められている』(小杉部会長)。これまでにロゴをあしらった旗とステッカーが作られ、十二隻全船に張られている。・・・」と記載され、「海水を紫外線で減菌する浄化装置」の説明が付けられた写真と「歯舞19トン型船団が掲げる旗に描かれているロゴマーク」の説明が付けられた本件商標と同一の構成からなる標章が掲載されている。また、その他の新聞・雑誌にも、同趣旨のことが記載されている。
上記の「週刊水産新聞」は、その記載からみて、歯舞漁協のさんま部会の小杉部会長等を取材して得られた話や資料に基づいて書かれた記事と認められるものであり、新聞記事としては、小杉部会長等から得られた説明や資料に基づいて忠実に報道されているものということができるものであって、多くの部分については事実に則ったものと認められるものである。
しかしながら、本件審判事件との関係においてみた場合、請求人(歯舞漁業協同組合)に有利な記述、例えば、「同部会は『舞さんま』のロゴを制作した。」との記述部分については、小杉部会長あるいは同部会の説明をそのまま記事にしたものと推認されるものである。
そうとすれば、他に、「舞さんま」のロゴを制作した経緯や作成者、制作に至る具体的な事実関係を示す証拠の提出がない限り、前記甲各号証の新聞・雑誌の記事のみをもってしては、同部会が「舞さんま」のロゴを制作したとする事実を証明するものとして充分なものということはできない。
(b)次に、被請求人の提出に係る証拠についてみるに、乙第3号証は、別掲(2)のとおりの構成よりなる旧商標(本件商標の基になった商標)が表示されている。乙第4号証は、「漁船用海水浄化装置システム」のパンフレットであり、該システムの紹介とともに、旧商標が表示されている。乙第5号証の1及び2は、船体貼付用のシールであり、海水浄化装置の名称と旧商標とともに、株式会社昭和冷凍プラントの社名が表示されている。乙第6号証は、昭和冷凍の会社カタログであり、漁船用海水浄化装置システムの紹介とともに、旧商標が表示されており、海水浄化装置自体に旧商標が表示されている写真も掲載されている。乙第8号証は、有限会社デザインルーム・コスモス作成の著作権の譲渡を内容とする確認書であり、「別紙デザイン図案は、平成14年6月末頃、西尾真歩(若山真歩と同一人物)及び株式会社昭和冷凍プラントより発注を受け、・・・平成14年7月10日頃、・・・納品するとともに、デザインの著作権を全て譲渡しております。」旨の記載があり、添付資料には、「舞さんま」に係るデザインが複数点掲載されている。そして、その中の一点が本件商標であることを認めることができる。乙第9号証は、有限会社デザインルーム・コスモスから昭和冷凍へ宛てた平成14年9月30日付のデザイン作成料についての領収証である。乙第15号証は、甲第8号証と同じ平成14年8月26日発行の「週刊水産新聞」であるが、コピーが鮮明であり、写真に写っている海水浄化装置には旧商標が表示されていることを認めることができる。乙第16号証は、平成15年8月18日発行の「日刊水産経済新聞」であり、ここにも乙第15号証と同様に、写真に写っている海水浄化装置には旧商標が表示されており、「株式会社昭和冷凍プラント」の社名が表示されている。
上記証拠に照らしてみるに、乙第4号証のパンフレットや乙第6号証のカタログには作成日や発行日の記載がないため、被請求人が主張しているように、平成13年8月より「漁船用海水浄化装置システム」のパンフレット(乙第4号証)に旧商標を付し、平成14年には昭和冷凍の会社カタログ(乙第6号証)にも旧商標を付するようになったとの事実を確認することはできないが、「週刊水産新聞」(乙第15号証)に掲載されている写真には、旧商標が表示されている海水浄化装置が写されており、この事実からみれば、本件商標の基になる旧商標は、遅くとも、該新聞が発行された平成14年8月26日以前には既に作成されていたことは明らかであるといわなければならない。そして、平成15年8月18日発行の「日刊水産経済新聞」(乙第16号証)の写真には、旧商標の下部に「株式会社昭和冷凍プラント」の社名のみが表示されていて、請求人である「歯舞漁業協同組合」の表示がないことからみれば、旧商標は、昭和冷凍(被請求人を含む)により作成されたものとみるのが相当である。
そして、本件商標の作成に至る経緯を乙第8号証(有限会社デザインルーム・コスモス作成の著作権の譲渡を内容とする確認書)に照らしてみれば、本件商標の候補となったデザイン図案は、有限会社デザインルーム・コスモスが平成14年6月末頃、西尾真歩及び昭和冷凍より発注を受け、平成14年7月10日頃、納品したものであることが認められ、この間の事情については、有限会社デザインルーム・コスモス代表取締役小川光雄は、「同上事実について、相違なき事を又、いかなる場合においても証言致します。」と述べている(乙第41号証)。
また、乙第44号証(東京地方裁判所における株式会社昭和冷凍プラント代表取締役若山敏次の陳述書)によれば、平成14年7月20日頃、昭和冷凍代表者若山は、デザインルーム・コスモス社員・大野嘉弘立会いのもと、本件商標を旧商標と切り替えて、昭和冷凍が製造したフローアイスシステム搭載船舶に貼付してもらう為に、請求人に本件商標を持ち込んだ際、さんま部会長小杉は、昭和冷凍側が商標権を取得する予定であることを承知していたものである旨の事情が記載されている。そして、この点については、当時、有限会社デザインルーム・コスモスの社員であり、その後独立して有限会社ファメートの社長となっている大野嘉弘は、「同上事実について、相違なき事を又、いかなる場合においても証言することの証と致します。」と述べている(乙第42号証)。
(c)以上、本件商標の基になった旧商標から本件商標の作成に至る一連の経緯及びその背景となった事情を総合してみれば、本件商標は、旧商標をベースにして、有限会社デザインルーム・コスモスが作成したデザイン図面を基に、被請求人(昭和冷凍を含む)側において、検討・作成されたものとみるのが相当であり、請求人が制作した商標を被請求人が剽窃したものということはできない。
(イ)請求人の主な反論について
(a)被請求人が昭和冷凍から名称の検討を依頼されたのは、あくまでも海水滅菌冷却装置に対するものであって、被請求人が指定商品に「さんま」を指定したことは、請求人の業務に係る商品を意識してのことであって、剽窃的であると言わざるを得ない旨の主張について
確かに、昭和冷凍は、製氷、冷凍、冷蔵、冷暖房及び化学工業用定温装置の製造、販売、船舶用各種高圧機器の製造等を主たる業務とする会社であり、「舞さんま」の商標は、当初はフローアイス海水減菌冷却システムに対する名称として検討され始めたものであることは、被請求人の主張からも窺われるところである。
しかしながら、昭和冷凍の代表者若山は、本件商標の登録出願前である平成14年10月頃から既に、「舞さんま」のPR活動を盛んに行っていた事実が認められる(乙第37号証)。前記冷却システムと「さんま」との関係は表裏一体的なものであり、該冷却システムの品質が良ければ、同冷却システムを使用して漁獲・管理した「さんま」の鮮度も良くなり、該「さんま」の評価が高ければ、事業者としては、フローアイス海水減菌冷却装置の成果ともいえる「さんま」の販売をも検討することは自然なことであり、被請求人側が「舞さんま」の商標を「さんま」を指定商品して登録出願したことも自然なことというべきである。
(b)被請求人は、本件商標の審査・審判段階において提出した意見書及び早期審理に関する事情説明書において、本件商標が請求人すなわち歯舞漁業協同組合さんま部会及び根室市のブランドの名称であること等を認めていた旨の主張について
確かに、被請求人が本件商標の審査・審判段階においてした主張と本件審判における主張との間に齟齬のあることは認められる。しかしながら、フローアイス海水減菌冷却装置や「舞さんま」の標章等に関して、請求人と被請求人(昭和冷凍を含む)とは、最初から紛争状態にあった訳ではなく、被請求人の主張によれば、むしろ、当初は、互いに協力的な関係にあったものと推測されるところであるから、被請求人が本件商標の権利化のために、審査・審判段階において、請求人側に属する事情を併せ主張したとしても、一概に論難されるべきものとはいえない。
そうとすれば、これらの点についての請求人の主張は採用できない。
(ウ)そして、他に、被請求人の登録出願が剽窃的であることを認めるに足る証拠は見当たらない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号について
請求人は、被請求人が本件商標を商品「さんま」に使用するときは、請求人使用の商標に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがある旨主張して、甲第7号証ないし甲第18号証を提出している。
しかして、本件商標は、前記したとおり、平成15年8月27日に登録出願されたものであるから、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するといい得るためには、少なくとも、本件商標の登録出願時である平成15年8月27日の時点において、請求人の使用に係る商標がその取り扱いに係る「さんま」について、取引者・需要者の間において広く知られていたことを要するものである。
そこで、請求人提出の前記甲各号証の新聞・雑誌をみるに、本件商標の登録出願時である平成15年8月27日以前の日付を確認できる証拠は、甲第7号証(平成14年8月11日付朝日新聞)、甲第8号証(平成14年8月26日付週刊水産新聞)及び甲第9号証(平成15年7月28日付週刊水産新聞)のみである。
そして、これらの新聞記事によるも、前述のとおり、例えば、甲第8号証には、「歯舞漁協のさんま部会(小杉和美部会長)は、同漁協所属の一九トン型漁船の歯舞さんま船団(十二隻)の全船に、魚槽内に送る海水を紫外線で滅菌する紫外線浄化装置を設置、今操業から使用している。・・・同部会は『舞さんま』のロゴを制作した。・・・」等の記載は認められるが、請求人の使用に係る「舞さんま」の商標が「さんま」について使用され、取引者・需要者間において広く知られていた旨の記載はない。むしろ、平成16年9月15日発行の「水産世界9月号」(甲第16号証)によれば、その67頁において、小杉・歯舞漁協・さんま部会長への質問事項として、「『舞さんま』昨年から実施していますが、その結果(効果)はいかがでしたか。」との質問に対して、小杉部会長は、「当地区のサンマ水揚げの内、舞さんま扱数量の絶対数が少なかったため、その効果については把握し切れなかった面があり、舞さんまの比率を高めることが先決と考える。」と答えている。
そして、その他の甲号証に照らしてみても、請求人の取扱いに係る「舞さんま」の漁獲量、売上高、シェア等についての具体的な記載はなく、本件商標の登録出願時点において、請求人の使用に係る「舞さんま」の商標が「さんま」について、取引者・需要者間において広く知られていた旨の記載は見当たらない。
そうとすれば、請求人の使用に係る「舞さんま」の商標が請求人により制作されたものであるとしても、該商標は、本件商標の登録出願時において、請求人の業務に係る「さんま」の商標として、取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
してみれば、被請求人(昭和冷凍を含む)が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者をして、その商品が請求人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書き、同法第4条第1項第7号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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