Trademark Appeal Case
書体名の品質表示性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成6年審判第15529号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「TIMES NEW ROMAN」の欧文字を横書きしてなり、第11類に属する願書記載の商品を指定して、昭和62年5月21日に登録出願されたもので、その後、指定商品については、「コンピュータープログラムを記録した磁気テープ及び磁気ディスク、その他本類に属する商品」と補正されたものである。
2 原査定の理由
原審においては、登録異議決定において、「本願商標はその指定商品中、欧文字書体の種類の一つを指称する語「TIMES NEW ROMAN」の書体を使用したコンピューター用プリンターあるいはワードプロセッサー等に使用するときは、これに接する需要者等は、該商品がタイムスニューローマンの書体を使用したものであること、すなわち、商品の品質を表示したものと認識するに止まり、自他商品の識別機能を有しないものであって、また、前記以外のコンピューター用プリンターあるいはワードプロセッサー等に使用するときは、商品の品質について誤認を生ずるものと判断するのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 請求人の主張
請求人は、原査定に対して、以下のように主張し、証拠方法として甲第1号証乃至4号証を提出している。
(1) 請求人は、自ら考案したタイプフェイスに「TIMES NEW ROMAN」と命名すると共に、これを請求人が販売する活字等の商品に商標として使用してきた。
1970年版「ENCYCLOPAEDIA OF typeface」には「TIMES NEW ROMAN」が単にタイプフェイスの一つとして紹介されていたが(甲第1号証)、請求人の申し入れの結果、1990年版には、請求人の所有に係る商標であることが明記されるに至っている(甲第2号証)。他の書籍においても、「TIMES NEW ROMAN」が請求人の商標であることが明示されている(甲第3号証)。これらのことからも、本件商標が、請求人によって使用されている商標の一つであることが明らかである。
(2) なお、請求人は、平成7年1月13日付けで、本願に係る指定商品から、「コンピューター用プリンターあるいはワードプロセッサー」外を放棄し、「コンピュータープログラムを記録した磁気テープ及び磁気ディスク」に補正した。一部放棄後の指定商品は、タイプフェイスと関連性がないため、「TIMES NEW ROMAN」の語が、一部放棄後の指定商品の品質を表示するものとは到底考えられない。
したがって、本願商標を一部放棄後の指定商品に使用しても、商品の内容を表示することはないというべきであり、仮に上記商品以外の指定商品に使用しても、商品の品質の誤認を生ずるおそれもないから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものではない。
4 当審の判断
(1) 原審における登録異議申立てなどにおいて提出された証拠である欧文印刷研究会編「欧文字活字とタイポグラフィ」印刷学会出版部 昭和41年7月発行70頁、日本印刷学会編「新版 印刷事典」大蔵省印刷局 昭和54年5月15日発行付録75頁、河原英介「デザイナーのための写真植字」有峰書店 1978年3月10日発行82頁、日本写真タイプ企画室編「写真タイプハンドブック」石崎日出夫 昭和45年4月1日発行142頁、大日本印刷「写真植字」1979年発行31頁、及び澤田和雄「和欧文書体とその取扱い」印刷業務研究会 昭和53年12月1日発行46頁,48頁によれば、「TIMES NEW ROMAN」又は「タイムス(ズ)ニューローマン」は、印刷において使用される活字の書体等の一種類を指称するものとして記述されていることが認められる。
以上による印刷業界の実情によれば、我が国においては、「TIMES NEW ROMAN」又は「タイムス(ズ)ニューローマン」の語は、印刷業界における取引者、需要者においては印刷用活字体の一種類を表す用語として、認識されているものと認められる。
(2) 請求人は、請求人本人が考案したタイプフェイスに命名したもので、商標として長年使用している旨及び辞書への記載を訂正させた旨主張する。
しかしながら、訂正の事実を証明する甲第2号証は外国(イギリス)で発行された辞書に係る一例であって、当該辞書が我が国に輸入されて又は訂正の事実が我が国の印刷業界において知れ渡って、我が国の取引者、需要者の認識に変化があったとする事情は窺い知れないところである。そうすると、甲第2号証のみをもっては、先の認定を覆すに足りないと言うべきである。
(3) してみれば、本願商標は、前示した「TIMES NEW ROMAN」の文字を表示してなるものであるから、その指定商品中、「コンピューター用プリンター又はワードプロセッサー等」に使用するときは、該商品が「タイムス(ズ)ニューローマン」の書体を使用して同書体の印字が可能であることを示すものであり、単に商品の品質を表示するにすぎないものであると言うべきである。
また、「タイムス(ズ)ニューローマン」の書体以外を使用するコンピューター用プリンター等に使用するときは、その品質に誤認を生ずるおそれがあると言わなければならない。
(4)なお、請求人は、平成7年1月13日付け「指定商品の一部放棄書」をもって、本願に係る指定商品を一部放棄したので、原査定に係る拒絶理由は解消した旨主張する。
しかしながら、本願においては、既に平成2年3月16日付け発送をもって出願公告の決定の謄本の送達がなされているものであり、その後は平成6年法律第116号による改正前の商標法第17条で準用する同特許法第64条に規定する場合又は期間内以外は指定商品の補正ができないところ、前記の場合等以外は指定商品の一部放棄もできないと解されるところである(最高裁昭和59年10月23日判決 民集38巻10号1145頁参照)。
仮に、一部放棄が有効としても、放棄後の指定商品「コンピュータープログラムを記録した磁気テープ及び磁気ディスク」についてみても、本願商標は、コンピューター又はワードプロセッサーの印字機能を制御するコンピュータープログラムを記録した磁気テープ及び磁気ディスクについて使用するときは、商品の品質を表示するにすぎないものと認められ、それ以外の商品に使用するときは品質の誤認のおそれがあるものである。
5 結論
以上のとおり、本願商標は商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、本願を拒絶した原査定は正当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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