Trademark Appeal Case
ヴェルサーチの周知性と混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成7年審判第15643号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別紙に示すとおり、「alfredo」、「versace」の欧文字をそれぞれ上下二段に表してなり、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、平成3年3月12に登録出願され、同4年6月19日付で出願公告の決定(平成4年商標出願公告第121726号)がされたものである。
2 原査定の拒絶の理由
原審において、本願に対して、商標法第4条第1項第11号、同第8号、同第10号及び同第15号を理由とする登録異議の申立てがあった結果、原査定は、本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するものとして、その出願を拒絶したものである。
3 当審の判断
原審における登録異議申立人「ジャンニ ヴェルサーチ エスピーエイ」(以下、「申立人」という。)は、イタリア国ミラノ在住の法人と認められるところ、申立人は、本願商標は商標法第4条第1項第15号に該当すると述べ、関連証拠(甲各号証)を提出しているので、この点について判断する。
申立人提出に係る甲各号証によれば、以下の各点が認められる。
▲1▼ 株式会社研究社1990年発行「英和商品名辞典」(甲第13号証)、「Versace」(ヴェルサーチ)又は「Gianni Versace」(ジャンニヴェルサーチ)の項によれば、「イタリアMilanoのデザイナー、Gianni Versace(1946−)のデザインした衣料品、靴など、そのメーカー(1978年創業)Milano(1979年開店)・Romaにある直営店。・・・1978年に独立し、自分の名でコレクションを発表、元来婦人服専門だったが、1978年以降紳士物カジュアルウエア・皮革衣料にも領域を拡げた。ベルト、靴なども手がけている。香水Gianni Versaceを1982年に発表(男性用香水は1984年)、・・・1988年より腕時計をデザイン・・・」との記述内容が認められる。
▲2▼ 株式会社洋泉社1991年発行「キーワード事典ファッション」(甲第11号証)、「ジャンニ・ヴェルサーチ」の項によれば、「イタリア、ミラノファッション界の大御所ともいえるジャンニ・ヴェルサーチは、1946年南イタリアのカラブリ生れ。ミラノで育つ。ファッション関係の仕事をしていた母の影響で幼い頃からデザイナーとしての勉強をしていた彼が独立した店を持ったのは79年のことだ。以来、完壁ともいえるデザインとカッティングで、たちまちミラノを代表するデザイナーとなった。・・・」との記述が認められる。
▲3▼ 株式会社織部企画1990年発行「新ファッションビジネス基礎用語辞典」(甲第12号証)、「ジャンニヴェルサーチ」(Gianni Versace)の項によれば、「1946〜,・・・78年〈ジャンニヴェルサーチ〉として、初のコレクションをミラノで発表。・・・女性美を表現するテクニックは現代イタリア・モード界の第一人者に数えられ、・・・オペラやバレエ(モーリス・ベジャール作品他)の舞台衣裳も手がける。・・・」との記述が認められる。
▲4▼ 株式会社講談社発行「世界の一流品大図鑑1983年版」(甲第37号証)及び「同1985年版」(甲第40号証)、「GIANNI VERSACE」(ジャンニ・ヴェルサーチ)の項によれば、「当年34歳。イタリアのファッション関係者、ジャーナリストの間でいちばんもてはやされているデザイナーのひとりです。・・・」、「カッティングとテクニックのよさはオートクチュールのプレタポルテといわれるほど。既に82年にはフランスの金の指ぬき賞に対応するイタリアの金の目賞を受賞」、「いまやミラノファッションから世界をリードするデザイナーになったヴェルサーチ」等々と解説され、また、別項において、「輸入元三井物産(株)、発売元(株)ジャンニ・ヴェルサーチジャパン」なる記載が認められる。
同じく、株式会社講談社発行「男の一流品大図鑑1981年版」(甲第38号証)、「GIANNI VERSACE」(ジャンニ・ヴェルサーチ)の項においても、前記同様の記述解説が認められる。
▲5▼ 世界文化社昭和58年発行「家庭画報編・世界の特選品’84・LADIES’」(甲第39号証)、「GIANNI VERSACE」(ジャンニ・ヴェルサーチ)の項によれば、「イタリアンコレクションならではの色づかい、ヴェルサーチ35歳、イタリアの名高いデザイナーのなかでも、その若さを生かした大胆なカッティング、色づかいは常に注目を集めています」、「小粋なカジュアルウエア、今シーズンはモダン・スポーツをテーマに繰り広げるヴェルサーチ」等々と解説され、また、別項において、「輸入元三井物産(株)、発売元(株)ジャンニ・ヴェルサーチジャパン」とあり、同時に、「販売店」が国内各地の百貨店に及んでいる旨の記載が認められる。
同じく、「世界の特選品(別冊家庭画報)’90年版」(甲第41号証)、「GIANNI VERSACE」(ジャンニ・ヴェルサーチ)の項によれば、「’90のエクセレントなブランド10を特集」とする記事見出しの下、「ミラノの知性派の代表デザイナーとして・・・」、「イタリアの粋と知性を合わせて意欲的に展開する美の秘密は・・・」等々の解説と共に、そのデザインに係る男性用、女性用の衣服が紹介されていて、さらに別項において、「輸入元三井物産(株)、発売元(株)ジャンニ・ヴェルサーチジャパン」とあり、同時に、「販売店」が国内各地の百貨店、衣料品店に及んでいる旨の記載が認められる。
▲6▼ 日本交通公社出版事業局1989年発行「ヨーロッパの一流品(’90EUROPIAN BEST)」(甲第42号証)、「GIANNI VERSACE」(ジャンニ・ヴェルサーチ)の項によれば、「現代そのものを哲学とし、知性を不可欠な要素と考えるジャンニ・ヴェルサーチは、卓越した感性で世界のファッションリーダーとして活躍している。・・・優れたデザイナーに贈られるゴールデン・アイ賞をはじめとして、数々の栄誉ある賞が与えられている」等々の解説と共に、そのデザインに係る紳士服、インテリア用品等が紹介され、別項において、「紳士・婦人服」、「輸入・発売元 ジャンニ・ヴェルサーチ ジャパン」とする旨の紹介記事が認められる。
▲7▼ 平成元年4月27日付読売新聞(夕刊)(甲第17号証)は、同年日本武道館にて開催された「東京国際モードフェスティバル」と銘打つ世界各国のデザイナーの参加によるファッションの祭典を紹介する広告記事とみられるところ、ジャンニ・ヴェルサーチもその参加予定者の一人として他の参加予定者と共に掲載・紹介されていることが認められる。
▲8▼ 繊研新聞の1991(平成3年)年9月9日から同9月14日にかけて連載された「軌跡」、「ジャンニ・ヴェルサーチ・ジャパンの10年」と題する特集記事(甲第20号証乃至甲第25号証)によれば、「イタリアを代表するデザイナーブランド『ジャンニ・ヴェルサーチ』を展開しているジャンニ・ヴェルサーチ・ジャパンが今年十周年を迎えた。設立されたのは1981年7月である」、「売上高の推移は86年度が19億5千万円、87年度27億8千万円、88年度34億9千万円、89年度54億4千万円、90年度77億3千万円であった」、「直営店は、1981年9月に高島屋大阪店に25平米の店を出したのが第一号。続いて、高島屋京都店(82年3月)、サンローゼ赤坂店(同9月)と出店していき、販路獲得の突破口にしていった」、「同社の営業の柱になってきたのは24店舗の直営店網だ・・・」等々の記事解説が認められる。
同じく、1991年1月8日付繊研新聞(甲第27号証)によれば、「伊ヴェルサーチ・グループ」、「日本市場は合弁3社体制に」、「中核はヴェルサーチ・ジャパン」、「3月にヴェーザ・ジャパン設立」とする記事見出しの下、第一面のトップ記事として取り上げられたことが認められ、或いは、1991年9月19日付繊研新聞(甲第14号証)によれば、「ヴェルサーチ展・・・」とする神戸ファッション協会に係るイベントの広告記事が認められる。
同じく、1991年2月12日付及び同5月13日付繊研新聞(甲第28号証、甲第29号証)は、「ヴェルサーチ社長」(サント・ヴェルサーチ社長)に係る申立人会社の事業運営に係る談話及び「ヴェルサーチスポーツ」なるブランドを紹介する記事であって、申立人会社に係る国内における事業展開の状況を報ずる記事と認められる。
さらに、1991年9月5日付繊研新聞(甲第43号証)によれば、「インポートブランド売上高ランキング」として、ジャンニ・ヴェルサーチに係る売上高は、「ルイ・ヴィトン」、「シャネル」、「ハンティング・ワールド」に次いで国内第4位であったことが認められ、また、これと同様の内容が同年8月4日付日本繊維新聞(甲第44号証)において報道されたことも認められる。
▲9▼ 申立人会社は、わが国において早い時期から「VERSACE」、「ヴェルサーチ」及び「GIANNI VERSACE」、「ジャンニ・ヴェルサーチ」又はこれら文字を主要部とする商標を「第21類,装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、商標登録し(商標登録第1562787号,同第1478212号,同第1626994号,同第2570527号)、その販路確保を図っていた事実が認められる(甲第1号証乃至甲第4号証)。
以上、認定の事実を総合するに、「GIANNI VERSACE」、「Gianni Versace」(ジャンニ・ヴェルサーチ)又は「VERSACE」、「Versace」(ヴェルサーチ)の標章(以下、これら標章を一括して、「Versace商標」という。)は、イタリアの服飾デザイナーとして世界的に知られるGianni Versace氏の氏名又はその著名な略称を表すものとして、また、同氏に係るいわゆるデザイナーブランドを表彰するものとして、本願商標の登録出願前より、わが国の取引者、需要者一般において広く認識せられていたものと認められる。そして、同氏又は申立人会社に係る衣料品その他の商品は、国内輸入会社(三井物産株式会社)、国内販売会社(株式会社ジャンニ・ヴェルサーチ ジャパン)又はその国内各地の直営店を通じて、当時より現在に至るまでの間、営々として消費者の需要に供されてきた状況が認められる。
ところで、前記認定のGianni Versace氏がその後1997年7月、米国マイアミビーチにて不慮の死を遂げたことは、当庁において顕著な事実といえるものであるが、その後の新聞報道その他の客観状勢よりすれば、同氏に係る事業運営は、兄弟、遺族等により受け継がれ、引き続きそのデザイナーブランドに係る衣料品等は、前記輸入・販売会社を通じて輸入、販売されている状況が認められるから(前出「世界の一流品大図鑑’98」等より)、該ブランドが依然わが国ファッション界の一角を占める輸入ブランドであることに変わりなく、その知名度、シェア等がその後急速に衰えたとする事情は見出せない。
そこで、本願商標についてみると、該構成は「alfredo」、「versace」の各文字を上下二段に表してなり、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品とすること前記のとおりである。
そして、本願商標の指定商品は、人が日常的に身に着け携行するという点で衣料品等とその用途向き及び需要者を共通にする場合が多く、かつ、両者は共にファッション的性格の強い商品という共通性を有するものと認められる。
しかして、本願商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者・需要者は、前述Versace商標の著名性その他の事情からみて、構成中下段の「versace」の文字部分に着目し、容易にVersace商標を想起し、或いはその事業主体又はその取扱いに係る商品等と関連づけて認識するとみるのが相当である。
請求人(登録出願人)は、請求の理由において、本願商標は実在する人物の氏名であって、Versace商標とは関係ない旨述べているが、なるほど、本願商標が米国ニューヨーク在の「Alfredo Versace」(アルフレッド ヴェルサーチ)なる者の氏名と符合するものであることが、平成9年10月15日付商標登録出願人名義変更届より認め得るとしても、当該出願人がその名称をもってわが国の需要者一般に広く認識せられている場合であれば格別、かかる事実は見出し難く、かつ、そのような状況を窺わせる事情も全く見出せない本件にあっては、前記認定・判断を相当とするものといわなければならない。
また、請求人は、Gianni Versace氏は本願指定商品についての業務は行っておらず、また、商標「GIANNI VERSACE」、「VERSACE」は申立人又はその関連会社の商標として需要者間に周知されていない旨述べているが、たとえ、Gianni Versace氏が直接本願指定商品に係る業務を行っていなかったとしても、申立人会社は本願指定商品と密接に関連するというべき皮革製品その他の商品を取り扱っており、かつ、本願商標の指定商品と申立人に係る商品とは共にファッション性を有する点に鑑み、商品の出所について混同を生ずるかどうかの判断は、その指定商品の分野における需要者一般の注意力、当該他人の使用にかかる商標の著名性及び両商品間の関連性等、取引の実情に照らして総合判断すべきものであって、この観点に立ってなお本願商標が他人の業務にかかる商品と混同を来すおそれがあるとした前記認定・判断は相当といわなければならない。よって、この点について述べる請求人の主張は採用の限りでない。
そして、前記認定のとおり、Gianni Versace氏に係るいわゆるデザイナーブランドの事業活動が申立人会社及び国内販売会社(株式会社ジャンニ・ヴェルサーチ ジャパン)等により展開されてきたものであって、その状況は例えば申立人会社代表者「サント・ヴェルサーチ社長」の談話記事(甲第28号証)に照らし明らかであって、Versace商標と申立人会社又は国内販売会社との関係も明瞭であるから、この点について疑義を述べる請求人の主張は、採用することができない。その他、請求人の主張を認めるに足りる証左は見出せない。
してみれば、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといわざるを得ないから、本願は、この理由をもって拒絶すべきものである。
なお、原査定は、商標法第4条第1項第11号該当を理由に本願を拒絶したものであるが、本件については、前記法条の規定を適用すべきものと判断した。
よって、結論のとおり審決する。
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