結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2005−31227(T2005−31227/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4553601号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成12年6月26日に登録出願、第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,美容,理容,入浴施設の提供,写真の撮影,オフセット印刷,グラビア印刷,スクリーン印刷,石版印刷,凸版印刷,気象情報の提供,求人情報の提供,結婚又は交際を希望する者への異性の紹介,婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供,葬儀の執行,墓地又は納骨堂の提供,一般廃棄物の収集及び分別,産業廃棄物の収集及び分別,庭園又は花壇の手入れ,庭園樹の植樹,肥料の散布,雑草の防除,有害動物の防除(農業・園芸又は林業に関するものに限る。),建築物の設計,測量,地質の調査,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらにより構成される設備の設計,デザインの考案,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,農業・畜産又は水産に関する試験・検査又は研究,機械器具に関する試験又は研究,著作権の利用に関する契約の代理又は媒介,通訳,翻訳,施設の警備,身辺の警備,個人の身元又は行動に関する調査,あん摩・マッサージ及び指圧,きゅう,柔道整復,はり,医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤,栄養の指導,家畜の診療,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,編み機の貸与,ミシンの貸与,衣服の貸与,植木の貸与,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,会議室の貸与,展示施設の貸与,カメラの貸与,光学機械器具の貸与,漁業用機械器具の貸与,鉱山機械器具の貸与,計測器の貸与,コンバインの貸与,祭壇の貸与,自動販売機の貸与,芝刈機の貸与,火災報知器の貸与,消火器の貸与,タオルの貸与,暖冷房装置の貸与,超音波診断装置の貸与,加熱器の貸与,調理台の貸与,流し台の貸与,凸版印刷機の貸与,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)の貸与,美容院用又は理髪店用の機械器具の貸与,布団の貸与,理化学機械器具の貸与,ルームクーラーの貸与」を指定役務として、平成14年3月22日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
請求人は、「本件商標の登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第156号証を提出した。
(1)商標権者による本件商標の不正使用について
商標権者(被請求人)は、平成16年(2004年)12月1日に開業された羽田空港の第2旅客ターミナルの「マーケットプレイス」と呼ばれる商業施設(以下「マーケットプレイス」という。)に、店舗名を「ドンサバティーニ」とするイタリア料理を提供するレストランを営業しているところ(甲第3号証ないし甲第5号証)、その看板に、別掲(2)のとおり、「DON」の文字を白抜きの籠字で表し、「SABATINI」の文字を黒字で表した「DONSABATINI」の文字を使用している(甲第6号証、以下「使用商標1」という。)。また、上記被請求人の営業するレストランで顧客等に配布する名刺兼店舗案内に、別掲(3)のとおり、「DON」の文字を青地の籠字で表し、「SABATINI」の文字を白字で表した「DONSABATINI」の文字を使用している(甲第7号証、以下「使用商標2」という。使用商標1と使用商標2をまとめていうときは、以下「使用商標」という。)。
以上のように、商標権者は、本件商標が設定登録された平成14年3月22日以降、指定役務「飲食物の提供」について、本件商標の使用態様を変更して、即ち、「DON」の文字と「SABATINI」の文字とを色分けして、不正に使用しているものである。
(2)請求人標章の周知・著名性の立証
請求人は、イタリア国ローマに本店を置くレストラン「SABATINI」の海外進出の一環として、1981年(昭和56年)に、日本国内でイタリア料理を提供するレストラン(請求人の営業に係るレストランを、以下「請求人レストラン」という。)の営業を開始し、「SABATINI」、「サバティーニ」(請求人の使用する「SABATINI」又は「サバティーニ」を、以下「請求人標章」という。)を上記役務について使用したものであり、以後二十数年にわたって営業活動し、かつ、請求人標章を雑誌等を通して、継続的、定期的に宣伝広告した(甲第9号証ないし甲第134号証)。
また、請求人は、1992年(平成4年)より今日に至るまで数多くの商標登録出願をし、登録を得ている(甲第135号証ないし甲第153号証)。
さらに、1989年(平成1年)にイタリア大使館が発行した証明書(写し及びその訳文、甲第154号証)には、「SABATINI」は、国際的なレベルで知られたイタリアンレストランであり、日本国とりわけ東京において広範囲にわたる名声と知名度を取得するために業務が開始されたことが証明されている。
その結果、請求人標章は、請求人の業務に係る役務「イタリア料理の提供」を表示するためのものとして、需要者の間に極めて広く認識された周知・著名な商標となるに至った。
(3)出所の混同について
請求人標章の周知・著名性に鑑みれば、使用商標に接する需要者は、その構成中の「SABATINI」の部分に注意を喚起されるのみならず、「DON」の文字は、イタリア語で「師、卿」の意味を有する(甲第155号証)から、全体として「サバティーニ師」又は「サバティーニ卿」なる観念を生ずるものであり、使用商標を使用したレストランがあたかも請求人レストランの系列店であるかのように、誤認する可能性が極めて高いものである。
現実に、使用商標の使用により、請求人レストランと出所の混同が生じている。甲第8号証は、上記「ドンサバティーニ」の顧客が、該レストランの営業主を請求人であると誤認し、請求人に対して、提供するサービスの質の悪さを指摘し、謝罪を要求したことを内容とする電子メールである。
(4)使用商標と本件商標との類似性及び故意について
商標法第70条第3項によれば、登録商標に類似する商標であっても、色彩のみが異なる類似商標は、商標法第51条第1項における「登録商標に類似する商標」に含まれない旨を規定しており、本件の場合も、本件商標の色彩を変更したものにすぎないので、商標法第70条第3項により、形式的には「登録商標に類似する商標」に含まれないことになる。
しかしながら、請求人標章は、周知・著名な商標であるところ、本件商標の商標権者は、「DON」と「SABATINI」とを分離して、請求人標章との出所の混同を惹起させることを承知の上で使用商標の使用をし、請求人標章に化体した業務上の信用にフリーライドしようとする商標権者の意思が推認されるものであるから、使用商標は、商標法第51条第1項の「登録商標に類似する商標」に該当するものである。また、請求人標章の周知・著名性に鑑みれば、商標権者が使用商標を使用することは、商標法第51条第1項の「故意」に該当することは自明である。
(1)使用商標と登録商標の類似性について
そもそも、商標法第51条第1項は、商標権者の不当な使用により一般公衆の利益が害されるような事態を防止し、かつ、そのような場合に当該商標権者に制裁を課すことをその立法趣旨とするものである。また、商標法第70条第3項の立法趣旨は、色違いの商標を使用することにより、商標法第51条第1項の取消審判を請求されるという不都合を回避するものであり、少なくとも多少の色彩の相違は同一のものとして取り扱われているとの取引の実情を鑑みたものである。
本件において、使用商標は、商標法第70条第3項の範囲内における使用ではなく、「DON」と「SABATINI」の各文字を意識的に色分けして使用しているものであり、これは、以下の理由によるものといわざるを得ない。
すなわち、商標権者は、周知・著名な請求人標章を使用したいが、請求人が既に当該標章について商標登録を得ているので、これを指定役務に使用すると商標権の侵害となるから、本件商標の登録を得ておき、使用に際して「DON」と「SABATINI」の各文字を色分けして使用すれば、顧客は、あたかも請求人標章のセカンドブランドであると認識し、労を厭わずして、顧客を吸引することができる、と。もしそうであるならば、これは明らかに請求人標章の周知・著名性にフリーライドしようとするものである。とりわけ、被請求人が飲食物を提供する事業を展開している事実に鑑みれば、請求人商標の著名性にフリーライドしようとする意思がないということはできない。
そして、このようなフリーライドの意思が推認されるにも関わらず、商標法第70条第3項の適用により、使用商標の使用は、本来的使用権の範囲であり、「登録商標に類似する商標」の使用には該当しないなどと主張することは、論理のすり替えである(甲第156号証参照)。
(2)出所の混同について
被請求人は、「SABATINI」、「サバティーニ」の文字よりなる標章(被請求人の使用する「SABATINI」又は「サバティーニ」を、以下、「被請求人標章」という。)がより周知・著名性を獲得しているから、請求人標章にフリーライドする意思はない旨主張する。
しかしながら、被請求人標章の著名性と使用商標の使用とは、何らの関係がなく、「DON」と「SABATINI」の各文字に色分けして使用することの正当な理由にはならない。
また、被請求人は、混同の事例が相当規模にわたって起きているのではなく1件だけしか起きておらず、それだけの事例で出所の混同を生じるというには取るに足りないと主張する。
しかし、電子メールの送信先の混同か営業主体の混同かは別にして、現実に請求人の業務に係る役務と混同が起きているのは事実であり、また、今後そのような混同が生じないとも限らない。よって、被請求人による使用商標の使用によって混同が生じていること明らかである。
さらに、被請求人は、色違いのデザイン手法は常套手段であって、これを「故意」ということはないと主張するが、周知・著名な請求人標章を利用したいとするのは当然のことだからである。
以上のように、使用商標の使用は、商標法第51条第1項に該当するものであるから、本件商標の登録は取り消されるべきである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第141号証を提出した(但し、乙第59号証、乙第64号証ないし乙第67号証、乙第70号証ないし乙第75号証、乙第77号証、乙第78号証、乙第81号証ないし乙第87号証は、欠番である。)。
(1)使用商標と本件商標との類似性について
使用商標1は、白と黒の文字の色彩、使用商標2は、青と白の文字の色彩のみが本件商標と相違する点であり、使用商標の構成文字は、同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔をもってまとまりよく一連に表されているものであるから、色彩が相違する以外、登録商標の使用そのものである。
したがって、使用商標は、登録商標に単に色彩的変更を加えたにすぎないものであり、この程度の変更は本来的使用権の範囲であるので、商標法第51条第1項で規定する「登録商標に類似する商標」ではない。このことは、商標法第70条第3項の規定からも明らかである。
(2)請求人標章と被請求人標章の周知・著名性について
(ア)請求人は、請求人レストランに使用される請求人標章が、あたかも請求人だけが使用して周知・著名性を獲得しているかのような主張をするが、被請求人も被請求人標章(「SABATINI」、「サバティーニ」)を長年使用し続けており、被請求人標章こそが周知・著名性を獲得しているから、請求人標章をフリーライドする意識など皆無である。以下、述べる。
被請求人は、ミヨシコーポレーショングループ最大の事業展開を図るレストラン企業であって、イタリア国で歴史がある「サバティーニ・ディ・フィレンツェ本店」(1930年営業)と1979年(昭和54年)12月8日に契約を交わし(乙第3号証)、1980年(昭和55年)12月5日に、東京・銀座のソニービル7Fに、1店舗目の「サバティーニ・ディ・フィレンツェ」を開業した(乙第4号証ないし乙第6号証、東京・銀座の「サバティーニ・ディ・フィレンツェ」を以下「被請求人レストラン」という。)。その後、1983年(昭和58年)10月20日に、東京千代田区の大丸東京店8Fに、2店舗目の「サバティーニ・ディ・フィレンツェ」を開業し、さらに、1990年(平成2年)5月5日に、大阪・梅田の阪急三番街B2に、3店舗目の「リストランテ・サバティーニ」を開業し、サバティーニ・ディ・フィレンツェ本店の歴史とノウハウをそのまま持ち込んで、以来今日まで継続的に営業を続けてきている(上記被請求人の営業に係るレストランをまとめていうときは、以下「被請求人レストラン」という。)。
その間、継続的に宣伝広告を行い、積極的に販促活動を行った結果、マスコミ各社や各界から多数紹介されて、需要者の間で認知され、その人気は不動のものとなった。
来店した著名人を挙げれば、サバティーニ・ディ・フィレンツェ本店では、ケネディ大統領(米国)、フォード大統領(米国)、マリア・カラス(オペラ歌手)、ソフィア・ローレン(女優)、アルトウールリレーピンシュタイン(ピアニスト)、リッカルド・ムーティ(指揮者)などが訪れており、被請求人レストランでは、コール首相(ドイツ)、ネタニエフ首相(イスラエル)、イヴ・モンタン(俳優)、スタニスラフ・ブーニン(ピアニスト)、中曽根康弘(元首相)、江川卓(元プロ野球選手)、貴乃花(元横綱)、ボン・ジョヴィ(歌手)、デヴィ・スカルノ(インドネシア元大統領夫人)、日野皓正(ジャズトランペッター)、大橋巨泉(タレント)、山本陽子(女優)、林秀彦(作家)、ポリス・ビアンケリ(駐日イタリア大使)夫妻などが訪れている。
さらに、テレビ放映は、1989年4月19日OA「おいしいフライパン」(フジテレビ)、1990年10月31日OA「遊々!お昼です」(TBS)、1994年6月9日OA「列島くらべてグルメ」(銀座大特集)(日本テレビ)、1994年6月12日OA「日曜ビッグスペシャル一流シェフが教える厳選うまい店15」、1994年6月18日OA「TVコロンブス」(超一流店で味わえる○特グルメ)、2001年6月27日OA「せきらら白書」(一度は行ってみたい憧れの店」(テレビ朝日)など多数取り上げられている。
また、乙第7号証ないし乙第122号証からも明らかなように、被請求人の企業努力の末、各被請求人レストランがイタリア料理の提供について、独自の周知・著名性を獲得していることは明らかである。
(イ)請求人レストランは、請求人が主張するように、イタリア国ローマに本店を置くレストラン「SABATINI」の海外進出の一環として、当社営業より約9ヶ月遅い1981年(昭和56年)9月1日より、日本国内で請求人標章を使用して業務を開始(乙第90号証)したのであるが、被請求人の契約先であるサバティーニ・ディ・フィレンツェ本店とは何ら接点がなく、互いに独自の営業を続けているのが現状である。
上記のように、被請求人がいち早く被請求人標章を使用している。また、両者のイタリア本店についても、ローマ本店(請求人側)が1958年の営業で、フィレンツェ本店(被請求人側)が1930年の営業であり、28年も早くフィレンツェ本店が営業を開始している。
よって、被請求人が不正な目的で、使用商標や被請求人標章を使用したとはいえない。
加えて、互いの国内の営業は、1980年ないし1981年当時から現在に至るまで認識しあっており、請求人が商標権を取得した平成8年以降、問題提起されたことが全くないし、また、長年両者において係争がなかったのであるから、互いの店舗が混同しているという事実や認識も全くない。
被請求人レストランは、長年メディアなどで紹介され、レストラン業界において先陣をきって営業を開始し、高級レストランブームの火付け役としてその存在感を高めているものである。これらの中には、被請求人の店舗のみ取り上げられて請求人の店舗は取り上げられていないものも多数あり、被請求人レストランは、被請求人独自の周知・著名性を獲得しているものである。
被請求人の「サバティーニ・ディ・フィレンツェ」が営業を行っている銀座と丸の内は、日本人なら誰もが知っている場所であり、これらの有名な場所に店舗を構えるという立地条件も、被請求人標章の周知・著名性獲得に多大な貢献をしているものである。
少なくとも周知・著名性を獲得するには、東京都内のみだけではなく、その隣接県にも及ぶものであると思うが、請求人レストランをどこまでの需要者が認識しているかどうか疑問であり、周知・著名であるのは、むしろ被請求人の方でなかろうかと思う次第である。
(3)出所の混同について
(ア)請求人は、請求人レストランと出所の混同を生じている証拠として、顧客からの電子メール(甲第8号証及び乙第123号証)を提出しているが、該電子メール中「あのサバティーニのセカンドブランドだと聞いて」の文面からは、差出人が「ドンサバティーニ」を、請求人レストランのセカンドブランドと混同していたのか、あるいは被請求人レストランのセカンドブランドと正しく認識していたかは不明であり、少なくとも「あのサバティーニ」が請求人レストランと断定することはできない。しかも、電子メールの内容を見ると、差出人は、1回目の電子メールの最初に「ドン・サバティーニヘ伺いました」と記載しており、また、2回目の電子メールでも「羽田空港のドンサバティーニで食事した」と記載している。
そうすると、請求人は、使用商標中の「SABATINI」の部分が単独で認識されることにより、需要者にあたかも請求人が提供する役務と関連があるかのように混同されるおそれがある旨主張するが、電子メールの差出人は、標章「SABATINI」を単体で認識しておらず、「ドンサバティーニ」と一連で正しく認識しており、何ら混同をしていないことが、この一文から明白である。
商標法第51条は、公益保護の観点、すなわち、商標の不正使用によって一般公衆の利益が害されることを防ぐために設けられているものであり、商標法第51条が要求する混同とは、相当規模の混同が起き、需要者の利益を害している場合であるところ、世界で4位、日本最大の空の玄関であり、年間約6300万人にも及ぶ利用客がある羽田空港で、たった1件のクレームを内容とする電子メール(送信先を誤ったと思われる電子メール)は、出所の混同を生じるというには取るに足りない件数であり、これで「混同」が認定されるとしたら、あまりにも商標権者にとって不利な制裁規定ではないかと思われる。
(イ)他方、使用商標は、前記のように、視覚上一体的に看取され得るものであり、「DON」と「SABATINI」が分離して観察されるとするのは、特許庁の審査例からみても不自然である(乙第124号証ないし乙第133号証)。
本件商標は、マーケットプレイス内の被請求人の営業するレストランで使用されているが、パンフレット(乙第136号証)には、一連に書した店舗名「ドンサバティーニ」が掲載され、その右横に「銀座サバティーニ ディ フィレンツェのセカンドブランド、本場のパスタ・ピザ」と記載している。また、ピッツァ、ケーキ用シール(乙第137号証)の使用商標1の下に商品名として一連に「ドンサバティーニのピッツア」、「ドンサバテイーニの洋菓子」と記載し、さらに、その下に店舗名として一連に「ドンサバティーニ」と記載している点や、羽田空港内のテナント用パンフレット(乙第138号証)の使用商標1の右横に、「第2旅客ターミナル4階のドンサバティーニでは・・」と記載している。加えて、マーケットプレイス内にあるショップ案内掲示板(乙第139号証、Aタイプ、Bタイプ)には、一連の「ドンサバティーニ/DONSABATINI」の文字を使用しているので、請求人レストランと認識することはない。
また、被請求人は、請求人レストランにフリーライドする意思があるか否かというよりも、そもそも請求人レストランと間違われるのは、被請求人にとっても迷惑な話なのである。
(4)故意について
被請求人が使用商標を顧客に「SABATINI」を単独で認識させる意図がないことは、前記(3)のとおりであり、顧客が使用商標を「DON」と「SABATINI」とに区別して認識することはあり得ない。この色違いのデザイン手法は、商取引においては、常套手段と認識されるもの(乙第140号証及び乙第141号証)で、これを「故意」ということはない。
また、被請求人レストランが周知・著名性を獲得している以上、故意に請求人の店舗を認識させようとする必要もないのである。
以上、使用商標は、登録商標と社会通念上同一のものと認識されるものと理解した上で、請求人標章及び被請求人標章は、共に長年にわたり継続して使用しており、需要者が混同している事実がなく、ましてや、使用商標が請求人レストランと相当規模の混同を生じている事実もないのである。
以上のように、本件商標の使用は、商標法第51条第1項の規定には該当しないから、本件商標は、その登録を取消されるべきものではない。
(1)本件商標は、別掲(1)のとおり、「DONSABATINI」の文字を同一の書体、同一の大きさ及び同一の間隔で一連に横書きし、その上段に、該「DONSABATINI」の片仮名表記と認められる「ドンサバティーニ」の文字を同一の書体、同一の大きさ及び同一の間隔で一連に横書きしてなるものである。
使用商標1は、別掲(2)のとおり、「DONSABATINI」の文字を横書きしてなるところ、「DON」の文字部分を、縁を黒くした籠字で表し、これに続く「SABATINI」の文字部分を黒色の文字で表してなるものであり、また、使用商標2は、別掲(3)のとおり、紺地矩形内に、「DON」の文字部分を、縁を白くした籠字で表し、これに続く「SABATINI」の文字部分を白色の文字で表してなるものである。
そして、使用商標が、商標権者(被請求人)により、2004年(平成16年)12月1日に開業した羽田空港の第2旅客ターミナルの商業施設(マーケットプレイス)内の被請求人の業務に係るレストランに使用されたことは、当事者間に争いがなく、したがって、その使用時期は、2004年12月1日以降ということができる。
しかして、本件商標と使用商標は、ともに、一連に書され、かつ綴りを同じくする「DONSABATINI」の欧文字をその構成中に有するものであるから外観において類似し、また、その構成より生ずる「ドンサバティーニ」の称呼をも共通にする、外観及び称呼において類似する商標であるというべきである。
(2)商標法第70条第3項について
本件商標と使用商標は、片仮名文字部分の有無に相違があり、また、ローマ字部分の文字の態様を異にするものであるから、商標法第70条第3項の「登録商標に類似する商標であって、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められる商標」であるとはいえない。
使用商標は、別掲(2)及び(3)の構成よりなるものであるところ、「DON」と「SABATINI」とは、文字の態様を異にしており、外観上分離して把握し得るものであるから、両者は、それぞれ独立して自他商品識別標識としての機能を果たしているといわなければならない。
そうとすれば、使用商標は、構成全体より生ずる「ドンサバティーニ」の称呼のほか、「SABATINI」の文字部分から「サバティーニ」の称呼をも生ずるというのが相当である。
一方、請求人標章は、「SABATINI」又は「サバティーニ」の文字よりなるものであるから、その構成文字に相応して「サバティーニ」の称呼を生ずる。
してみると、使用商標と請求人標章は、「サバティーニ」の称呼を共通にする類似の商標である。
また、両者は「SABATINI」の文字部分において、外観上類似する商標である。
そして、使用商標は、「首領」、「親分」などの意味を有する語「DON」と請求人の名を想起させる「SABATINI」を結合した造語を表したと理解されるものであるから、観念上比較することはできないとしても、外観及び称呼において、類似する商標であるということができる。
(1)甲第8号証、甲第10号証、甲第12号証ないし甲第64号証、甲第71号証、甲第110号証、甲第111号証、甲第115号証ないし甲第119号証、甲第121号証ないし甲第132号証、甲第134号証及び乙第90号証(甲各号証及び乙第90号証の発行日については、当事者間に争いはない。)を総合すると、請求人は、イタリア国ローマに本店を置くイタリア料理のレストラン「SABATINI」の海外進出の一環として、1981年(昭和56年)9月に東京・青山に、正式名称を「リストランテ・イタリアーノ・サバティーニ・アオヤマ」とするイタリア料理のレストラン(請求人レストラン)を開業したこと、上記ローマ本店のレストランの名称は、その開業者の姓名に由来するものであり、「SABATINI」なる姓は、イタリア国では比較的多い姓の部類に属すること、請求人レストランは、ローマ本店と同様の調度品等を取り揃え、本格的イタリア料理を提供する店舗として、1985年(昭和60年)ころより、様々な雑誌等に取り上げられ、これらの紹介ないし宣伝広告は、2004年12月に至るまで継続的に行われていたこと、そして、請求人レストランを紹介する雑誌等においては、その多くは、「リストランテ・サバティーニ・アオヤマ」、「リストランテ・サバティーニ・青山」、あるいは、「リストランテ」の語を省略した「サバティーニ・アオヤマ」、「サバティーニ・青山」の表示が使用されているが、「SABATINI/ROMA」(「SABATINI」の文字部分が大きく表示されている。)、「サバティーニ」と紹介する場合も少なくなく、店舗の看板には、「SABATINI」の文字部分を大きく表して表示していることなどが認められる。
(2)一方、乙第3号証ないし乙第23号証、乙第25号証ないし乙第30号証、乙第35号証ないし乙第37号証、乙第40号証、乙第41号証(2004年12月までに発行されたと認められるものに限る。)、乙第42号証(2004年12月までに発行されたと認められるものに限る。)、乙第48号証、乙第54号証、乙第55号証、乙第58号証、乙第60号証ないし乙第63号証、乙第68号証、乙第69号証、乙第76号証、乙第79号証、乙第80号証、乙第88号証ないし乙第122号証(乙各号証の発行日については、当事者間に争いはない。また、発行日の記載のない証拠について、証拠中に記載された東京都区内の市内局番が3桁のものについては、平成3年以前に発行されたものとみて採用した。)を総合すると、被請求人は、レストラン業を展開する三好興産グループの法人であって、三好興産株式会社は、1979年(昭和54年)12月8日に、1930年にイタリア国フィレンツェにおいて開店した老舗のイタリア料理のレストランとして知られている「サバティーニ・ディ・フィレンツェ」との間で、同「サバティーニ・ディ・フィレンツェ」の東京店を開店することについての契約を交わし、翌1980年(昭和55年)12月5日に、東京・銀座のソニービル7Fにおいて、被請求人レストランを開業したこと、その後、1983年(昭和58年)10月20日に、東京千代田区の大丸東京店8Fに、2店舗目の「サバティーニ・ディ・フィレンツェ」を開業し、さらに、1990年(平成2年)5月5日には、大阪・梅田の阪急三番街B2に、3店舗目の「リストランテ・サバティーニ」を開業したこと、各被請求人レストランは、イタリアのサバティーニ・ディ・フィレンツェ本店と業務提携し、提供に係る料理などのノウハウを取り入れた高級イタリアレストランとして、今日まで営業を続けていること、各被請求人レストランの名称中の「サバティーニ(SABATINI)」は、フィレンツェの本店を開業したイタリア人の姓名に由来するものであること、各被請求人レストランは、本場のイタリア料理を提供する高級レストランとして、1981年(昭和56年)初めころから様々な雑誌等に取り上げられ、「フィレンツェの名店『サバティーニ・ディ・フィレンツェ』の姉妹店です。」などと紹介され、これら雑誌等による紹介、宣伝広告は、2004年12月に至るまで継続的に行われていたこと、各被請求人レストランは、「サバティーニ・ディ・フィレンツェ」、「リストランテ・サバティーニ」と表示されることが多いが、また同時に、単に「サバティーニ」、「SABATINI」と略称されて表示され、紹介されていることも多くあり、さらに、これら店舗の看板、パンフレット、メニューなどには、「SABATINI」の文字部分を大きく表して表示していることなどが認められる。
(3)以上によれば、被請求人レストランは、本格的イタリア料理を提供する高級レストランとして、1980年12月に、東京・銀座に開業されたものであって、1981年ころより、様々な雑誌等を通して紹介された結果、被請求人レストランは、使用商標が使用された2004年12月の時点においては、その需要者の間に広く認識されていたものと認めることができる。このことは、甲第3号証(マーケットプレイスの新聞記事)において、「多店舗展開していないような有名店を百社以上、候補としてリストアップ。最終的に九十三店舗に絞り込んだ。・・マーケットプレイスに導入した飲食店では東京・銀座のイタリア料理店『サバティーニ・ディ・フィレンツェ』の姉妹店『ドンサバティーニ』や東京・神田の老舗てんぷら料理店・・などが目をひく。」などのような記事からも認め得るところである。そして、同時に、「サバティーニ」、「SABATINI」の表示(被請求人標章)も、2004年12月までには、被請求人レストランの略称を表示するものとして、その需要者の間に広く認識されていたものと推認される。
一方、請求人レストランは、本場ローマの本格的イタリア料理を提供する店舗として、1981年9月に、東京・青山に開業されたものであるところ、1985年ころより、雑誌等を通して盛んに紹介され結果、使用商標が使用された2004年12月の時点において、請求人レストランの略称といえる「リストランテ・サバティーニ・アオヤマ」、「リストランテ・サバティーニ・青山」、あるいは、「リストランテ」の語を省略した「サバティーニ・アオヤマ」、「サバティーニ・青山」の表示のほか、「SABATINI」、「サバティーニ」の表示(請求人標章)は、請求人レストランを表示するためのものとして、その需要者の間に広く認識されていたものと推認することができる。
そうすると、「SABATINI」、「サバティーニ」の表示は、被請求人及び請求人の、それぞれのレストランの営業が開始された時期、宣伝広告が開始された時期からみて、請求人レストランの営業が開始された1981年9月ころにおいては、被請求人レストランを表示するものとして、その需要者の間に広く認識されていたと推認し得るところであるが、その後、当事者双方の活発な宣伝広告活動等により、使用商標が使用された2004年12月の時点においては、「サバティーニ」、「SABATINI」の表示は、被請求人レストラン及び請求人レストランを表示するものとして、いずれもその需要者の間に広く認識されていたものとみるのが相当であるから、単に「サバティーニ」、「SABATINI」の表示のみでは、請求人又は被請求人のいずれのレストランを指すものであるか判然としない実情にあったものと認められる。そして、需要者は、各被請求人レストランを指称する場合は、「銀座のサバティーニ」、「丸の内のサバティーニ」等と、また、請求人レストランを指称する場合は、「青山のサバティーニ」のように使い分け、これらの表示をもって、各被請求人レストランと請求人レストランとを識別していたものとみるのが相当である。
そうとすれば、被請求人による使用商標の使用が、取引者、需要者をして、出所の混同を生ずるおそれがあるとはいえない。
前記4によれば、被請求人は、請求人の業務に係るイタリア料理の提供と同一の役務に本件商標と類似する使用商標の使用をしていたといえるところ、被請求人レストランは、その営業開始時期が請求人レストランよりも約9ヶ月早く、請求人レストランの営業開始当時には既に、「サバティーニ」、「SABATINI」の表示をもって紹介され、宣伝広告がされたこと、各被請求人レストランと請求人レストランの名称中の「SABATINI(サバティーニ)」の部分は、いずれもイタリア人の姓名に由来するものであって、イタリア国内では比較的多い姓であること、使用商標の使用が開始された2004年12月の時点においては、請求人標章及び被請求人標章は、いずれもその需要者の間に広く認識されており、「サバティーニ」、「SABATINI」の表示のみをもってしては、請求人又は被請求人のいずれのレストランを指すものであるか判然としない実情にあったことなどを併せ考えると、故意に、使用商標を被請求人の業務に係るイタリア料理の提供に使用していたものとは認めることができない。
このことは、例えば、甲第5号証及び乙第136号証ないし乙第138号証において、「ドンサバティーニ」と一連に書された表示、「銀座サバティーニディフィレンツェのセカンドブランド、本場のパスタ、ピザ」との表示、あるいは、被請求人レストランの紹介記事において、「なお、サバティーニ・アオヤマとはまったく別の店。」(乙第18号証)、「青山のサバティーニはローマが本店。こちらはフィレンツェのサバティーニ。お間違いなく。」(乙第62号証)などと表示していることなどからも窺い知ることができるのである。
以上のとおり、使用商標の使用が、取引者、需要者をして、出所の混同を生ずるおそれがあるとはいえず、また、故意に、使用商標を被請求人の業務に係るイタリア料理の提供に使用していたものとも認めることができない。
したがって、被請求人による使用商標の使用は、商標法第51条第1項の要件を欠くというべきであるから、本件商標の登録は、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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