結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2005−89157(T2005−89157/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4738664商標(以下「本件商標」という。)は、「PRET」の文字を標準文字で表してなり、平成14年12月20日に登録出願、同15年10月30日に登録査定、第29類「食用油脂,乳製品,家禽肉,鳥獣肉,その他の食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,卵,冷凍野菜,冷凍果実,加工野菜及び加工果実,食用野菜エキス,スープ,カレー・シチュー又はスープのもと,豆」、第30類「茶,コーヒー及びココア,菓子及びパン,調味料,香辛料,穀物の加工品,ぎょうざ,ラップサンドイッチ及びその他のサンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,野菜パイ,ラビオリ,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,サゴ」、第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料,飲料用野菜ジュース」、第39類「飲料食品の輸送・梱包・保管及び配達,インターネットウェブサイトもしくは電話回線により受注した飲料食品の輸送及び配送,鉄道による輸送,車両による輸送,船舶による輸送,航空機による輸送,貨物の梱包,貨物の輸送の媒介,寄託を受けた物品の倉庫における保管」及び第43類「セルフサービス式レストラン・レストラン・カフェ・カフェテリア・食堂における飲食物の提供,仕出しによる飲食物の提供,その他の飲食物の提供,飲食物の提供及びケイタリングに関するコンピューターデータベースもしくはインターネットからのオンラインによる情報の提供,その他の飲食物の提供及びケイタリングに関する情報の提供」を指定商品又は指定役務として、同16年1月9日に設定登録されたものである。
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2431348号商標(以下「引用商標」という。)は、「PRETZ」の文字を書してなり、平成1年8月21日に登録出願、第30類「菓子、その他本類に属する商品」を指定商品として、同4年6月30日に設定登録され、その後、平成14年4月2日に商標権存続期間の更新登録がされ、指定商品については、同14年4月24日に第30類「菓子,パン」とする書換登録がされたものである。
請求人は、「本件商標の登録を無効にする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第84号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 指定商品の同一性
本件商標及び引用商標の指定商品は、それぞれ上記のとおりであるところ、本件商標の指定商品中には、引用商標の指定商品と共通する「菓子及びパン」が含まれている。
したがって、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品中の「菓子及びパン」とは同一のものである。
イ 商標の類似性
(ア)称呼上の類似性
本件商標は、「PRET」の標準文字より構成されるものであり、これをローマ字読みした「プレット」の称呼が生ずるほか、本件商標の構成文字中の「PRE」の欧文字は、「プレ」の外に「プリ」とも発音されるものであるから、「プリット」の称呼も生ずるものである。このことは、我が国で広く親しまれている英語の「PRETY」、「PREVIOUS」、「PREVENT」、「PREPARE」などのように「PRE」を「プリ」と発音する中学又は高校で習得すべき基本英単語が多数存在するほか、種々の語の接頭語として用いられる「PRE−」が存在することからも、「PRE」は「プリ」ともごく自然に発音・称呼されるものであることは明らかである。
そうとすれば、本件商標は、「プレット」のほかに「プリット」の称呼をも生ずるものというべきである。
これに対し、引用商標は、「PRETZ」の欧文字を横書きするものであり、これより生ずる称呼は、「プリッツ」及び「プレッツ」である。
そこで、「プリット」と「プリッツ」並びに「プレット」と「プレッツ」の両称呼を対比すると、両者は、共に促音を含めて同数の4音の構成中、称呼上の識別に重要な語頭音を含む前半部の「プリッ」又は「プレッ」の3音を同じくし、語尾音の「ト」と「ツ」の音の差異を有するにすぎないものである。唯一の差異である「ト」と「ツ」の音も、同行に属する近似音であることに加えて、促音を伴い明瞭に称呼される「プリッ」の後で、しかも、聴き取りにくい語尾音に位置するものである。
したがって、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、両者は全体の語調、語感において一層紛らわしいものとなるから、本件商標と引用商標は称呼上類似の商標というべきである。
(イ)外観上の近似性
本件商標構成中の「PRET」と引用商標を構成する「PRETZ」とは、比較的印象の薄い語尾に「Z」の欧文字の有無がある点においてのみ相違するものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、その外観において近似するものである。
(ウ)引用商標の著名性の考慮
商標の類否は、対比される両商標がその商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるかどうかによって決定されるべきものであり、かかる判断に際しては、当該商品の取引の実情が考慮されるべきである。そして、引用商標が著名性を獲得しているという事実は、商品の出所混同のおそれを増幅させる可能性のある事情といえるから、かかる事実についても、商標の類否判断において参酌されるべき取引の実情にあたるというべきである(甲第60号証及び同第61号証の判決参照)。
そして、後述のとおり、引用商標「PRETZ」は「菓子」の分野において請求人の商標として極めて著名なものであるため、引用商標とその称呼において類似し、かつ、その外観においても近似する本件商標がその指定商品中の「菓子及びパン」について使用されると、これに接する取引者・需要者をして、商品「菓子」の分野において極めて馴染みのある引用商標の称呼と聞き誤り、また、外観を見誤るおそれがあるというべきである。
(エ)まとめ
以上より、本件商標と引用商標とは、その商標において類似するものであって、その指定商品中の「菓子及びパン」において同一のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(2)引用商標の著名性
(ア)引用商標の使用経緯
昭和37年に、請求人は、商品「棒状の菓子」について「PRETZ」商標の使用を開始し、その後、売上は順調に伸び、昭和41年には全国販売が開始され、ヒット商品となっている。それ以来、請求人は、約40年間にわたり継続して商品「棒状の菓子」について「PRETZ」商標を使用している。
(イ)宣伝広告
請求人は、この「PRETZ」をシリーズ化して、多様な商品展開を図ることにより幅広い需要を喚起している。
昭和41年には、棒状の菓子「PRETZ」の新聞の全段広告を実施しており、また、常にその時代において注目度の高いタレントを起用したテレビコマーシャルを継続的に行っている。
(ウ)売上高
棒状の菓子の「PRETZ」は、約40年の永年にわたってわが国の市場に浸透しているヒット商品であり、その売上高は、平成12年に約85億円、16年で約91億円であり、莫大な額に達している。
(エ)マーケットシェア
請求人の調査によれば、「ビスケット・クラッカーの販売金額に基づくマーケットシェア(単品)」でも、「PRETZ」は、平成8年から同14年まで第1位を独占し続けている。
(オ)新聞・雑誌記事
商品「棒状の菓子」についての「PRETZ」商標(ブランド)は、菓子等の分野において、圧倒的なシェアを有する有名ブランドとして評価されている。そのような評価を示す事例として、甲第39号証ないし同第59号証に示す新聞・雑誌等に、ビスケット業界のランキングにおいて上位に位置している、新商品が発売された、季節商品・地域商品が発売された、人気タレントの松浦亜弥を起用したCMを放送している、各地のお土産品売場で売上の上位に顔を出している、などの紹介記事が存在する。
(カ)商品陳列コンテスト
請求人は、商品の陳列写真コンテストを主催しており、同活動を通じた販売促進活動にも注力している。そして、同コンテストには「プリッツ賞」なる賞も設けられている。
(キ)まとめ
以上のような広告宣伝を行ってきた結果、「PRETZ」商標は、少なくとも、本件商標の登録出願時において、菓子業界及びその取引者・需要著間における著名性を獲得したものであり、これが本件商標の査定時においても継続していることは明白である。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 請求人の商標の著名性及び本件商標との類似性
前述したとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び査定時において、請求人の商品「棒状の菓子」の商標として極めて著名なものとなっている。また、引用商標は、本件商標と類似性を有するものであり、取引者・需要者は両者から共通した印象ないしはイメージを感受するものである。加えて、引用商標を構成する「PRETZ」は、特定の観念を生じさせない造語よりなる独創性の高い商標であり、既成語から構成される商標よりも、出所の混同が生ずる幅は広いというべきである。
イ 請求人の商標を使用する商品と本件商標の指定商品との関連性
本件商標の指定商品商品中、ラップサンドイッチやその他のサンドイッチ、ハンバーガーといった商品は、コーヒーショップやファーストフード店においてはクッキー、チョコレート等の菓子と共に需要者に供されており、「菓子」とは、いずれもが小麦を原材料としている点で共通するばかりではなく、その生産部門、販売部門、原材料、用途及び需要者層などにおいて一致する関連性の高い商品である。
しかも、例えば「ロッテ」や「井村屋」などの製菓会社がファーストフード店を経営している事実は一般的にも良く知られているところであり、かかる事実は、商品「菓子」と商品「サンドイッチ等」とが関連性の高い商品であることを裏付けるものであり、食品の分野における需要者層が、子供から老人に至るまでの幅広い一般消費者であり、その注意力が必ずしも高くない者を含んでいることから、商品の出所につき混同する可能性が高いものである。
ウ 請求人商標を使用する商品のシリーズ化
請求人は、引用商標について、地域限定商品、期間限定商品などのように多様なシリーズ商品を展開しているため、本件商標がその指定商品に使用された場合には、それがあたかも請求人の「PRETZ」商標に係るシリーズ商品であるか、又は、これと何らかの関連性を有する商品であるかの如く誤認され、あるいは、その商品の出所について、組織的又は経済的に何らかの関係がある者の商品であるかの如く混同されるおそれもある。
エ 請求人商標の信用力の希釈化
被請求人が本件商標をその指定商品について使用する行為は、請求人が永年にわたる莫大な宣伝広告費用と営業努力によって培ってきた著名商標「PRETZ」の信用力(ブランド価値)にただ乗りするものであり、かかる信用力(ブランド価値)を希釈化させるものであるから、競業秩序の維持の観点からも容認されるべきでない。
オ まとめ
以上より、本件商標がその指定商品について使用されると、これに接する取引者・需要者をして、請求人の業務に係る商品であると誤認されるおそれがあり、商品の出所につき混同が生ずるおそれがある。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(4)答弁に対する弁駁
ア 被請求人のファーストフード店と名称について
請求人は、被請求人がファーストフード店を英国、米国及び香港で展開し、我が国でも10店舗展開したなどの事実自体を争うものではないが、被請求人が「プレタマンジェ」「PRET A MANGER」が我が国において認知されていたとの主張については、否認する。
まして、本件商標が被請求人の名称の一部であることなど我が国において認知されていないものである。
仮に、被請求人が主張するが如く「プレタマンジェ」の名称が我が国で認知されていたとしても、当該名称と本件商標とは外観的にも全く別異のものである。
イ 引用商標から生ずる称呼「プレッツ」について
被請求人は、引用商標からは請求人が主張するが如く「プレッツ」という称呼が生じるとするのは不自然である旨主張する。
しかしながら、そもそも請求人が引用商標「PRETZ」が使用されている商品の開発の際に参考としたのが、ビールの本場ドイツのビスケットのプレッツェル「pret−Zel」であったことから、その開発した商品のネーミングも「PRETZ」を採用したものである。
そして、請求人は、このドイツのビスケット名が「プレッツェル」であることから、「PRETZ」から生じる自然的称呼が「プレッツ」であると考え、その場合には「プレッツェル」と「プレッツ」とでは紛らわしいことから、「PRETZ」の称呼付けを「プリッツ」とし、積極的に「プリッツ」の訴求を行うために、わざわざ商品パッケージに欧文字「PRETZ」と共に片仮名文字「プリッツ」を表示してきたものである。
したがって、引用商標から称呼「プレッツ」も当然生じ得るものである。
ウ 外観類似について
被請求人は、本件商標と引用商標とは語尾部分において「Z」の文字の有無という顕著な差異を有することから外観上区別できる旨主張しているが、そもそも語尾語たる「Z」は、称呼に与える影響も一般に小さいこともあり、著名性を獲得している称呼「プリッツ」から英文字表記を想起するとき、一般需要者からすれば、語尾語たる「Z」をも含んだ欧文字「P」「R」「E」「T」「Z」を正確に想起することは難しい。
エ 被請求人の挙げる登録異議の申立て事件について
被請求人は、登録異議の申立て事件(異議2003一90316、以下「引用異議事件」という。)での異議決定書に基づき引用商標と本件商標とは非類似である旨主張する。
しかしながら、引用異議事件では、引用商標が欧文字と片仮名文字との結合であった点で、英文字同士の類否や混同の有無が争点である本件とは異なっている。
しかも、引用異議事件における異議対象の登録商標(以下「当該登録商標」という。)は、星形図形とデザイン化された欧文字「PRET」との結合商標である点で本件商標とは異なっている。
このように、本件無効審判と引用異議事件とは事例を異にし、本件の判断にあたっては考慮に値いしない。
オ 英国及び米国における登録商標の併存について
被請求人は、英語圏である英国及び米国における本件商標と引用商標との並存登録の事実を挙げ、英語圏においても両商標は、称呼上類似しないとされている旨主張している。
しかしながら、かかる被請求人の主張は、両商標が併存状態に至った状況を説明しないものであり妥当ではない。
請求人は、引用商標と同一の構成から成る登録商標「PRETZ」を英国を含む多数のヨーロッパ諸国において所有していたところ、被請求人が本件商標と同一の構成からなる商標を英国及びコミュニティ・トレードマークとして出願をした。そこで、請求人は、異議申立てを行った上で、被請求人と協議を行い、その結果、使用商標を星印との結合商標のみに制限し、常に会社名、住所を表示して使用するとの和解証書を取り交わし、請求人の上述した異議申立てを取り下げると共に被請求人の英国登録に対しても承諾文書を提出することとしたものである。
かかる経緯につき、被請求人は十分に承知しているにもかかわらず、そのことを述べることなく併存の事実のみを主張することは、被請求人の主張の信憑性が疑わしいことを示すものである。
カ 証拠方法の提出について
被請求人は、請求人の証拠方法は本件商標の登録出願以前の甲号証は16件にすぎず、しかもそのうちの10件は引用異議事件で提出されたものであり、本件商標の登録出願日より以前に引用商標が著名であったことを客観的に示す書証はほとんど提出されていない旨主張する。
しかしながら、かかる被請求人の主張は、引用異議事件の異議決定の判断に反するものであって妥当ではない。
そこで、請求人は、先に提出した甲号証のほかに、本件商標の登録出願時における各証拠方法を甲第63号証及び同第84号証として提出する。
これら甲号証並びに先に提出した各甲号証より、引用商標は、昭和38年の販売開始以来、現在に至るまでの請求人によるテレビCM等を通じた需要者への訴求活動を通じて請求人の業務に係る商品を表示するものとしての著名性を本件商標の登録出願時並びに登録時に獲得していることは明白である。
被請求人は、被請求人の業務に係る商品が請求人の「プリッツシリーズ商品」であると間違われたこともない旨主張しているが、かかる主張を裏付ける証拠を何も示していない。
また、被請求人は、首都圏を中心にファーストフード店を10数店舗展開していたが、その当時、請求人の商品を購入するために被請求人店舗を訪れる顧客がいたとの記録はなく、被請求人店舗において提供される商品やサービスが請求人の業務に係る棒状菓子商品「PRETZ(プリッツ)」と紛らわしいとの苦情・警告等を受けたこともない旨主張しているが、そもそも被請求人の店舗で使用されていた商標は、本件商標とは異なるものであり、さらにかかる被請求人の主張を裏付ける証拠方法が提出されていない以上単なる主張にすぎず、考慮するに値しない。
キ まとめ
以上より、被請求人が答弁書で述べたことはいずれも妥当ではなく、請求人の主張を覆すものではない。
(5)結論
以上述べたところから、本件商標は、商標法第4条1項第11号又は同第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録は無効とすべきである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第14号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)被請求人について
被請求人は、英国、米国及び香港において、高級サンドイッチを主とする飲食物を提供するファーストフード店をチェーン展開する英国法人である。
本件商標は、被請求人の名称の一部であり、被請求人が英国、米国及び香港において自己の業務に係るファーストフード店の看板等に広く使用しているものである。
その店舗数は、英国において141店舗、米国においては10店舗、香港においては7店舗である。
被請求人若しくは被請求人が展開する店舗は、我が国においても知られており、複数のインターネットホームページにおいて紹介されている。
また、被請求人は、我が国においても首都圏で10数店舗の店舗展開を行っていた(平成14年9月〜同16年3月)。現在でも、インターネットの検索で「プレタマンジェ」と入力すれば、被請求人の店舗等を紹介する多数のインターネットウェブサイトが検索される。
被請求人は、「プレタマンジェ」の名称で我が国において認知されている。
(2)本件商標について
ア 請求人の主張内容
本件商標の指定商品及び指定役務は、前記のとおりであるところ、請求人の主張は、本件商標の指定商品・指定役務中第30類に係る商品についていてのみ無効理由が内在するかの如く内容であり、その余の商品及び役務については全く主張がないので、被請求人は、本件商標の第30類の指定商品について無効事由がないことを以下に主張する。
イ 本件商標から生じる称呼
我が国において日本語同然に使用され非常になじみ深い外来語である「プレッシャー」、「プレゼント」、「プレミアム」、「プレジデント」、「プレス」、「プレシャス」の「pre」から始まる英単語は、すべて「プレ○○○」と発音されている。
これらの外来語の存在より、本件商標より生ずる最も自然な称呼は「プレット」であり、これ以外の称呼は生じないことは容易に理解し得るところである。
ウ 本件商標の使用態様
各国の被請求人店舗で使用されるサンドイッチやサラダの包材及びコーヒーカップ等の一切は全世界共通デザインのものが使用されており、すべてに本件商標と同一の文字構成をなす商標「PRET」が非常に目立つ態様で表示されている。
そして、我が国で展開していた各店舗においても同一デザインのものが使用されていた。
これらの店舗においては、「PRET」等の商標を被請求人の業務を表示するものとして店舗看板等に表示している。
また、英国等において被請求人が展開するファーストフード店又はカフェがインターネットウェブサイト等により我が国にも広く紹介され、被請求人店舗の我が国への出店が大きな話題となり、それに関するインターネットウェブサイトも多数存在していることから、一般の需要者、取引者及び一般消費者も本件商標が「プレタマンジェの『PRET』」であることに容易に想到し得る。
(3)引用商標について
引用商標は、請求人の業務に係る商品について使用されるものであり、「プリッツ」の称呼で一般に知られるものであるので、これからは「プリッツ」の称呼のみが生じる。
請求人自身が引用商標を使用した商品の称呼を特定するものとして片仮名「プリッツ」を積極的に使用していること、及び引用商標の著名性に関する請求人の主張に照らせば、引用商標から「プレッツ」という称呼が生じるのはむしろ不自然であるといわざるを得ない。
(4)商標法第4条第1項第11号について
ア 商標同士の対比から導き出される非類似の判断
本件商標から生ずる「プレット」の称呼と引用商標から生ずる「プリッツ」の称呼を比較検討するに、両者は、語頭音「プ」を共通にするとしても、続く音は「レット」と「リッツ」であって、その音構成には顕著な差異があり、これらの顕著な差異が称呼全体の印象に与える影響は極めて大きいので、前記差異によりその語調語感が全く異なるものとなる。
したがって、本件商標と引用商標の称呼は、非類似の称呼であると判断して然るべきである。
外観については、本件商標は4文字、引用商標は5文字という共に短い文字構成からなり、その語尾部分において「Z」の文字の有無という顕著な差異を有するものである。
引用商標の外観構成において、「Z」は決して無視できない程度の視覚的な影響を有するものであり、該「Z」を切除して「PRET」部分こそが視覚的な要部であると判断すべき具体的な理由や根拠は見いだせない。
したがって、本件商標と引用商標の外観が類似するという請求人の主張は、失当であるといわざるを得ない。
なお、観念については、造語である引用商標から観念は生じないので、両者が観念非類似であることは明らかである。
イ 引用商標の著名性の影響
本件商標と引用商標は、称呼、外観及び観念において顕著な差異を有する明らかに非類似の商標であるから、仮に、引用商標の著名性が認められる場合があるとしても、その著名性が商標の非類似性を打ち消し、引用商標が有する一般的な類似の範囲を超えて、本件商標にまでその類似の範囲が及ぶものではない。
また、引用商標は、常に「PRETZ」の態様で使用され、請求人もこれの称呼としての片仮名「プリッツ」という標記を積極的に表示し、かつ、当該片仮名を商標としても使用してきたものであるから、その類似範囲が拡張される場合があるとしても、拡張した類似範囲に含まれる商標は、「PRETZ」の前後に他の文字や語を結合した商標などに限られるべきであり、明らかに非類似である本件商標にまで及ぶと判断すべきではない。
ウ 引用異議事件の判断
請求人より登録異議の申立てがなされた引用異議事件において、当該登録商標の商標法第4条第1項第11号該当性につき、請求人の申立て理由を退け、登録維持の決定がされた。
引用異議事件において、請求人は、当該異議の引用商標の著名性も併せて主張しているが、それらの事情を踏まえても、両者は非類似であると判断されている。
そして、当該登録商標の文字部分は、本件商標と同一の文字構成をなすものであり、対して当該異議の引用商標は、いずれもその構成中にローマ文字「PRETZ」を含むものである。
したがって、引用異議事件おける非類似についての判断は、本件無効審判においてもそのまま当てはまるものである。
エ 英国及び米国の事例
被請求人は、英国において文字のみからなる商標「PRET」を登録している。一方、請求人も、同一の商品を含む商品について商標「PRETZ」を商標登録している。
また、被請求人は、米国においても文字商標「PRET」を登録しているところ、請求人の出願に係る商標「PRETZ」が、類似する商品を指定商品として出願公告されている。
英国及び米国の特許庁は、商標登録につき実体審査を行うので、商標「PRET」と商標「PRETZ」は英国及び米国において非類似の商標と認められていることは明らかである。
オ まとめ
以上に詳述したとおり、商標のみを比較対比した場合及び引用商標に係る特別な事情を参酌しても、本件商標と引用商標は、非類似であることは明らかであり、英国及び米国においても商標「PRET」と「PRETZ」は非類似と判断されている。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
(5)商標法第4条第1項第15号
ア 現実に混同されなかったこと及び混同のおそれがないこと
まず、著名性については、本件審判において請求人が提出した書証のうち、本件商標の登録出願日以前の日付に係る書証と認め得るのはわずか16件であり、しかもそのうち10件は引用異議事件において既に提出されたものである。結局、本件商標の登録出願日より以前に引用商標が著名であったことを客観的に示す書証はほとんど提出されておらず、請求人の主張に係る引用商標の著名性の主張は、その判断時点を誤るものといわざるを得ない。
商品の関連性については、請求人が引用商標を棒状菓子という特定の形状の菓子にのみ使用しており、それ以外の菓子について使用している例は認められず、また、請求人は引用商標をハウスマークとしては使用しておらず、さらに、請求人がファーストフード店又はカフェその他の飲食店等事業を「PRETZ」等の名称を用いて現実に行っていることを確認することもできない。この点につき請求人は、一部の菓子メーカーが飲食店を経営する旨を主張し、商品「菓子」と被請求人が取り扱う商品が関連性のある旨を主張するが、我が国に数多く存在する菓子メーカーの一部が飲食店事業を行っていることをもって、事業の関連性又は商品の関連性を認めることはできず、また、菓子メーカーである「ロッテ」や「井村屋」がレストラン又はファーストフード店等を経営する事実が一般消費者間にまで広く知られているとは到底考えられない。なお、請求人は、商品の関連性につき、「小麦」という原材料の共通性をもって商品が関連する旨を主張するが、「小麦」は、多種多様な商品について極めて広く使用されている原材料であり、「小麦」という共通点をもって商品の関連性が認められるとは到底考えられない。
シリーズ商品と混同されるとの主張については、被請求人の業務に係る商品が請求人の「PRETZ」又は「プリッツ」のシリーズ商品であると間違われたこともなく、本件商標が当該シリーズ商品と同視されるおそれが認められるような特別な事情をその名称から見いだすことはできない。
信用力の希釈化については、そもそも被請求人は、我が国において、平成14年から平成16年にかけてファーストフード店を10数店舗展開し、現実に本件商標を使用していたわけであるが、その当時、請求人の商品を購入するために被請求人店舗を訪れる顧客がいたとの記録はなく、被請求人店舗において提供される商品やサービスが請求人の業務に係る棒状菓子商品「PRETZ(プリッツ)」と紛らわしいとの苦情・警告等を受けたこともないことより、その信用力の希釈化は現実に生じ得ないといわざるを得ない。
以上のとおり、本件審判においては、本件商標の使用による現実の混同及び混同のおそれについての具体的な立証が一切行われておらず、商品の出所についての混同を生ずるおそれがある旨の請求人の主張は、失当であるといわざるを得ない。
イ 引用異議事件の判断
引用異議事件において、当該登録商標の商標法第4条第1項第15号該当性につき、請求人の申立て理由を退け、登録維持の決定がされた。
引用異議事件おける混同のおそれについて判断は、本件無効審判においてもそのまま当てはまるものである。
ウ まとめ
以上に詳述したとおり、被請求人が本件商標をその指定商品及び指定役務について使用しても、これに接する取引者・需要者をして引用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品又は役務の出所について混同を生じさせるおそれもない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
(6)結論
以上に述べた理由より、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものではない。
したがって、その登録を無効にされるべきではない。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、前記のとおり、「PRET」の欧文字を書してなるところ、我が国においては、駅名や道路名、あるいは法人の名称や氏名などを欧文字で表す場合にローマ字の綴り方により表記するのが通常であり、また、英語が外国語の中で最も普及していることに照らせば、特定の意味や読み方を有するものとして一般に知られていない欧文字よりなる商標に接した場合、取引者・需要者は、まず、ローマ字の読み方あるいは英語の読み方により称呼してみて無理なく自然に称呼し得る場合には、これらの読み方により称呼するのが取引の実情に合致しているということができる。
これを本件商標を構成する「PRET」の文字についてみると、構成中の「RE」の文字部分は、ローマ字では「レ」の文字に相当し、また、「pre」の綴りで始まる極めて親しまれている英単語の「present」(プレゼント)、「pressure」(プレッシャー)の発音に照らせば、英語風に発音した場合にも「レ」と発音するのが無理のない自然なものということができるから、本件商標より生ずる自然の称呼は、「プレット」というのが相当である。
請求人は、「プリ」と発音される「pre」の綴りで始まる英単語、及び「プリ」と発音される英語の接頭語の「pre−」を挙げて、本件商標は、「プリット」の称呼をも生ずると主張する。
確かに、「pre」の綴りで始まり「プリ○○○」と発音される英単語も少なくないものと認められる。しかしながら、「pre」の文字をローマ字読みした場合「プレ」と自然に称呼できること、本件商標の文字構成からみて他の語に「pre−」の接頭語を冠したものと認識されるものではないこと、また、第2文字以下の「RET」の文字部分に着目した場合、「bet」(ベット)、「get」(ゲット)、「jet」(ジェット)、「let」(レット)、「met」(メット)、「net」(ネット)、「set」(セット)のように、子音字に「et」の文字が続く綴りの一般に知られた英単語で、「e」の文字部分を「エ」に相当する発音記号で発音されるものが数多く存在することに照らせば、「PRET」の文字からなる本件商標に接した取引者・需要者がこれを「プリット」とも称呼するものと認識するとは認め難いものである。
他方、引用商標は、「PRETZ」の文字よりなるものであるところ、請求人の提出に係る証拠によれば、請求人は、引用商標を使用した棒状菓子に「プリッツ」の文字を表示して、請求人の棒状菓子が「プリッツ」である旨を取引者・需要者に喚起し、テレビのCM等においても「プリッツ」である旨を謳って盛大に宣伝し、該CMが好感度の高いものとして視聴されており、引用商標を付した請求人の棒状菓子「PRET」は、「プリッツ」と称呼するものとして取引者・需要者間に広く認識されていると認められる。
このような取引の実情を勘案すれば、引用商標は、「プリッツ」の称呼のみを生ずるものといわなければならない。
そこで、本件商標より生ずる「プレット」の称呼と引用商標より生ずる「プリッツ」の称呼を比較するに、この両称呼は、語頭における「プ」の音を共通にするとしても、その余の「レット」と「リッツ」の音の差異を有するものである。
してみれば、これらの差異は、促音を含めても4音という短い音構成からなる両称呼に与える影響は決して小さいものとはいえず、両称呼は、これをそれぞれ一連に称呼するも、十分区別し得るものといわなければならない。
また、本件商標と引用商標とは、4文字あるいは5文字という短い文字構成からなる語尾部分において「Z」の文字の有無の差異を有し、引用商標において「PRET」の文字部分が強く印象に残るという格別の事由も認め難いものであるから、通常の注意力をもってすれば、かかる文字構成の差異により容易に識別し得るものというべきである。
その他、本件商標と引用商標とを類似のものとすべき事由は見いだせない。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標である。
(2)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、本件商標の登録出願時において、申立人の業務に係る商品「棒状の菓子」を表示する商標として取引者・需要者の間に広く認識されていたこと上述のとおりであるが、本件商標と引用商標とは、十分に区別し得る別異の商標というべきであるから、商標権者が、本件商標をその指定商品または指定役務に使用しても、これに接する取引者・需要者をして引用商標を連想・想起させるものとは認められず、その商品または役務が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品または役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
(3)結論
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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