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Trademark Appeal Case

称呼の類似性と著名性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2005−89151(T2005−89151/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4879623号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4879623号商標(以下「本件商標」という。)は、「CONVERGE」の欧文字を横書きしてなり、平成17年2月8日に登録出願、第25類「被服」を指定商品として、同年6月7日に登録査定がなされ、同年7月15日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用商標

請求人が本件商標の登録の無効の理由として引用する登録第1364718号商標(以下「引用商標」という。)は、「CONVERSE」の欧文字を横書きしてなり、昭和49年9月10日に登録出願、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、同53年12月22日に設定登録されたものである。

なお、本件審決においては、上記引用商標及び甲第10号証の2ないし14に掲げられている商標をはじめ、「コンバース」の文字からなる商標等、請求人ら(請求人である伊藤忠商事株式会社及び米国コンバース社)の使用に係る商標を総称して「コンバース商標」ともいう。

第3 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第12号証(枝番を含む)及び参考判決A及び参考判決Bを提出した。

1 商標法第4条第1項第11号違反について

本件商標と引用商標との類否についてみると、両者は外観において一瞥した限りでは殆どその違いを看過してしまう程酷似したものであって彼此紛らわしいものである。

次に、本件商標から生ずる「コンバージ」の称呼と引用商標から生ずる「コンバース」の称呼とを対比するに、両者は共に5音構成よりなり、かつ冒頭から4音目までの音の配列を同じくし、異なるところは僅かに末尾の音「ジ」と「ス」の違いでしかなく、この差異音にしても、音質、調音部位及び調音方法において比較的近接した関係にあり、かつ、それらが末尾に位置するため、それぞれを一連に称呼した場合には全体の語感・音調において彼此紛らわしく互いに聞き誤るおそれがある。

さらに、観念の点についてみると、その英語の原義における意味上の違いをもって識別し得るとする事情はなく、むしろ、需要者はそれらを一種の造語の如く認識するとみるのが相当である。

そうすると、外観・称呼及び観念の各点を総合して考察するに、本件商標は、引用商標とその出所について誤認混同を生ずるおそれのある類似の商標であり、かつ、両者はその指定商品においても抵触するものである。

なお、請求人は、コンバース商標について、被服類その他の商品分野において、商標登録を多数保有しているが(甲第10号証の1ないし14)、事案として全く重複するため、それらと本件商標との類否の検討については割愛する。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものといわざるを得ない。

2 商標法第4条第1項第15号違反について

(1)コンバース商標の著名性について

コンバース商標は、本件商標の登録査定時は元よりその登録出願時においても、我が国のスニーカーないしは運動靴の需要者間において広く認識されるに至ったいわゆる著名商標である。

我が国においては、米国コンバース社の業務上の信用あるいはコンバース商標の歴史、伝統、名声をそのまま受け継ぐかたちで、請求人会社等が実質的にコンバース商標の事業展開を図ってきたという点が特徴的である。

また、国内では、請求人会社がシューズのほか運動用品、被服類、貴金属類、かばん類、その他化粧品、文房具類等各種日用・雑貨品に至る殆どの商品アイテムにおいて、我が国における商標権を取得しており、かつ、そのライセンス活動等により、いまやコンバース商標は、我が国の各階各層の取引者・需要者間において広く認識されるに至ったいわゆる著名商標である。

そして、我が国においては、コンバース商標は、各種スポーツ用衣服ないしはファッション関連商品の分野においても、本件商標の登録出願前よりすでに需要者間に広く認識せられていたものである。

その結果、コンバース商標は、スニーカー靴等の運動靴だけでなく、いわゆるファッション関連商品の分野における需要者間においても、本件商標の登録査定時は無論のこと、その登録出願時において既に広く認識せられたいわゆる周知・著名商標といえる情勢にあった。

(2)出所の混同について

上記したとおり、コンバース商標は、本件商標の登録査定時は元よりその登録出願前より、請求人又は請求人関連会社に係るスポーツシューズ並びに衣料品ほかファッション関連の商品分野において、需要者間に広く認識されるに至ったいわゆる著名商標といえる情勢にあった。

そして、本件商標は、コンバース商標と商標自体において紛れ得る可能性を内包しているものである。

そうすると、本件商標をその指定商品である第25類「被服」について使用した場合、これに接する需要者は、上記各事情よりして、容易にコンバース商標を想起し、コンバース商標に係る事業者と何らかの関連を有する者の業務に係るものの如く、その出所について誤認混同を来すおそれがあった。

また、コンバース商標は、我が国衣料品分野において既に著名性を獲得していたこと、コンバース商標が本件商標の指定商品と高い関連性を有していること、当節のトータル・ファッションへの志向傾向その他の点よりして、本件商標に接する需要者は、容易にコンバース商標を連想・想起する情勢にあった。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものである。

3 商標法第4条第1項第7号違反について

コンバース商標は、元々米国コンバース社に係る著名ブランドであって、その歴史と伝統に裏付けされたコンバース商標の名声は、我が国においては、請求人会社によるブランド活動により各階各層の需要者に広く認識せられた著名商標である。

こうした情勢下、引用商標と酷似する本件商標を使用することは、コンバース商標の名声に便乗した不正の目的が疑われ、かつ、需要者を欺瞞させ、あるいは商取引の秩序を阻害し、取引者・需要者に無用の混乱を来すおそれがあり、ひいては社会公共の利益に反し、あるいは社会の一般的道徳観念に反し穏当を欠くものである。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものである。

4 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同第7号及び同第11号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、その登録は、商標法第46条第1項により無効とされるべきである。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。

1 商標法第4条第1項第11号について

(1)本件商標と引用商標の外観について

本件商標と引用商標とを比較するに、両者は、いずれも英語辞書に所載されている英単語であるところ、英単語はそれぞれのスペルを比較して認識するものではなく、全体のスペルを認識して理解するものであり、両者は「G」と「S」が明確に相違する。英語が極めて広く普及している今日において、両者に接する取引者・需要者がアルファベット「G」と「S」とを混同して、「CONVERGE」と「CONVERSE」とを見誤るとは到底考えられないことである。また、引用商標が請求人の主張するように著名であれば、取引者・需要者は、「CONVERSE」自体を他と区別して十分に認識理解しているものであるから、これを「CONVERGE」と見誤るとは到底認めることはできないものである。さらに、このような英単語からなる商標に接する場合は、その意味合いをイメージするのが一般であることを考えれば、「CONVERSE」は「談話」等の意味を有する英単語であるから、これを「集中する」等を意味する「CONVERGE」と見誤るとは到底考えられない。

したがって、本件商標は、引用商標と視覚上紛れることはなく、外観において混同されるおそれはないものである。

(2)本件商標と引用商標の観念について

請求人は、英単語「CONVERGE」及び「CONVERSE」は使用頻度がさほど高くなく、カタカナ語辞典に「コンバース」の採録があり、「コンバージ」の採録がないから、需要者はこれらを一種の造語の如く認識するとみるのが自然であると主張するが、これは当を得ないものである。

英語に接する機会が極めて高い今日において、その意味が理解できない場合には、英語辞典等によってその英単語を確認することは日常一般に行われている事実である。そして、「CONVERGE」は「集まる、集中する」等を意味する英単語であり、「CONVERSE」は「談話する」等を意味する英単語であることが、ほとんどの英語辞典あるいはインターネット英語辞書に所載されている。したがって、これらの英単語に接する取引者・需要者は、これらの英単語の意味を容易に理解することができるものであるから、両者は観念において明確に区別できるものというべきである。

また、本件商標は、被請求人である株式会社コンバージュが設立された際に、自己が取り扱う商品の名称として、商号の要部「コンバージュ」を英語に当て付けて採択されたものであり、本件商標が使用された商品からは、その製造販売主体である被請求人が想起されるものである。一方、「CONVERSE」が請求人の主張するように著名であるとすれば、これからは米国のスポーツシューズメーカーの商品を想起させるものである。したがって、両者はそれらからイメージされる観念が相違し、両者は明確に区別できるものというべきである。

(3)本件商標と引用商標の称呼について

請求人は、本件商標からは「コンバージ」、引用商標からは「コンバース」の称呼がそれぞれ生じるとして、両者は末尾音の1音の差異でしかないから称呼においても判然と区別できないと主張するが、この主張も容認できない。

本件商標は、被請求人の商号の要部「コンバージュ」を英語に当て付けて自己の取り扱い商品の名称として採択されたものであり、本件商標は「コンバージュ」の称呼で実際に取引されているものであるが、「CONVERGE」の英語読みから本件商標が「コンバージ」の称呼で取引されることがあり得るとしても、「コンバージ」は「コンバース」とは相紛らわしいものではなく明確に聴き分けることができるものである。

「コンバージ」の称呼と「コンバース」の称呼とを比較するに、両称呼は共に4音という短い音数の構成であり、4音中の1音「ジ」と「ス」の顕著な差異を有する。そして、「ジ」音は「i」を母音とする濁音であって有声の破擦音であり、明確に発音され比較的強く響く音である。「ス」音は「u」を母音とする清音であって無声の摩擦音であり、聞き取り難く弱く響く音である。このように、両称呼における差異音「ジ」と「ス」は、母音が相違し、濁音と清音、有声と無声、調音の仕方のいずれも相違するものであり、両音はその音質が全く相違するものである。このような明らかな差異により、両音は明確に聴き分けられるものである。

また、両称呼を全体として一連に称呼する場合、「コンバージ」は「バー」にアクセントを置いて「コン・バージ」と2音節に区切って重くよどみをもって発音され、「ジ」音は明確に発音される。これに対して、「コンバース」は、「コ」にアクセントを置いて「コンバース」と一気に軽い調子で発音され(乙第1号証参照)、「ス」音はそれ自体弱い音であるのに加えて称呼の末尾に位置するために更に弱く発音され聞き取り難い音となる。

このような両称呼の構成音中で相違する「ジ」音と「ス」音の音質、調音の仕方の明らかな差異が、4音という短い両称呼全体に与える影響は極めて大きく、両者を一連に称呼する場合もその語韻・語調が格段に相違するものであるから、両者は明確に聴き分けられるものであって、互いに相紛れるおそれのない非類似のものである。

(d)以上のとおり、本件商標は、引用商標とは外観、観念及び称呼のいずれにおいても類似しないものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。

2 商標法第4条第1項第15号について

(1)コンバース商標の著名性について

コンバース商標がシューズ(履物)の業界において著名であるとしても、スポーツシャツ等の被服については、平成15年から同17年にかけて請求人関連会社により広告企画・販売活動が開始されたという主張をもって、コンバース商標が被服の業界においても本件商標の登録出願日、登録査定時において著名性を確保していたと認めることはできない。

(2)出所の混同について

前記で述べたように、本件商標は、コンバース商標とは混同のおそれがなく、また、コンバース商標が本件商標の登録出願日、登録査定時に衣類の業界においても著名性を確保していたとは認められない。

したがって、本件商標が商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものでないことは明らかである。

なお、本件事案と同種の事例として、東京高等裁判所平成15年(行ケ)第564号判決(乙第2号証)及び東京高等裁判所平成16年(行ケ)第18号判決(乙第3号証)を挙げて、被請求人の主張が相当であることを裏付ける。

3 商標法第4条第1項第7号について

先に述べたとおり、被請求人は、自己の商号の要部「コンバ−ジュ」を英語に当て付けて本件商標を採択したものであり、本件商標は、「コンバージュ」の称呼で実際に取引されているものである。すなわち、本件商標は、被請求人の商号商標として「被服」について使用されるものであって、何ら他の目的をもって使用されるものではない。また、本件商標は、コンバース商標とは少なくとも被服については混同のおそれがあるものではない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものでないことは明らかである。

4 以上のとおり、請求人の主張はいずれも理由がないものである。

第5 当審の判断

請求人は、本件商標は商標法第4条第1項第15号にも該当する旨主張しているので、この点について判断する。

1 コンバース商標の著名性について

(1)甲第2号証ないし甲第10号証の14によれば、以下の事実を認めることができる。

(a)祥伝社発行の「祥伝社ムック/永久定番コンバース」(平成11年5月20日発行)には、「スニーカーの20世紀遺産にして21世紀のスタンダード/永久定番コンバース」の見出しのもとに、各種の記事とともに、「1917年に生産されて以来、80年以上も長きにわたって履かれ続けているキャンバスオールスターは、数ある『永久定番』の中でもまさに王者の称号にふさわしいスニーカーである。シンプルにして全く無駄のない、完成されたデザインと機能はスニーカーの『20世紀遺産』にして『21世紀のスタンダード』だ。」と記載されていること(甲第2号証)。

(b)株式会社研究社発行の「英和商品名辞典」(1990年発行)の「Converse/コンバース,コンヴァース」の項には、「米国Massachusetts州のスポーツシューズ(バスケット用・ランニング用・ラケット用など)のメーカー(Converse,Inc.)。そのブランド。同社はMarquisM.Converseが1908年にConverseRubberCo.の名で創業。スポーツシューズの生産量は世界でもトップクラス。・・・1936年以来、米国のオリンピック出場のバスケットボールチームにもはかれた。同製品はバスケットボールプレイヤー以外にもスポーツシューズ、カジュアルシューズとして幅広い層に売れている。同社は1984年以降、同ブランドでスポーツウェアも手がけている。・・・」旨記載されていること(甲第3号証の1)。

(c)株式会社三省堂発行の「グランドコンサイス英和辞典」(2001年4月8日発行)の「Converse」の項には、「(商標)コンバース《米国のスポーツシューズメーカー(の製品)》」旨記載されていること(甲第3号証の2)。

(d)株式会社ポスティコーポレーション発行の「シューズブック2004年版」によれば、我が国において、コンバース商標に係る製品の販売足数は、2002年は430万足(国内第4位)、2003年は500万足(国内第3位)であって、ニューバランス、プーマ、ミズノ、アシックス等を抑えナイキ、アディダスに次ぐ順位であり、また、同「シューズブック2005年版」によれば、2004年も525万足(国内第4位)と高水準にあること(甲第4号証の1及び2)。

(e)有限会社スポーツ商工プレス発行の「THE SPORTS FRONTIER」(2003年8月4日ないし2004年3月22日発行)によれば、同紙が全国27店舗を対象に実施した2003年9月から11月の間のフットウエア販売動向アンケートによると、コンバース・オールスターはウイメンズでは他のメーカーを抑えて年間を通してもトップであったこと、メンズでも3位にランクされていたことが記載されており、また、「月星化成コンバース本部の『コンバース』が快進撃を続けている・・・」等々の記述をもって、コンバース商標がしばしば取り上げられ報道されていたこと(甲第5号証の1ないし7)。

(f)株式会社KKベストセラーズ発行の「スニーカーJack」(平成15年5月10日発行)には、「CONVERSE/オールスター/プロレザー/進化する永遠の定番モデル」の見出しをもってコンバース商標に係る製品が紹介されており、平成17年5月30日発行の「スニーカーJack」にも、コンバース商標に係る製品が紹介されていること(甲第6号証の1及び2)。

(g)コンバースジャパン株式会社(請求人関連会社)の制作に係る広告企画一覧「PROMOTION REPORT(2004.4〜2005.3)」によれば、各種スポーツ雑誌、ファッション雑誌、一般雑誌、女性誌、業界誌をはじめ業界新聞、経済新聞(例えば、月刊バスケットボール、DUNK SHOOT、ファッションニュース、mini、non−no、POPEYE、VOGUE別冊、日本経済新聞、繊研新聞等々)ほか、都内JR原宿駅サインボードに至るまで、幾多のマスメディアを使って広告記事を継続掲載し、あるいは上記各紙上でしばしばキャンペーンを張ってアピールをし、さらに、バスケットボール・チームとのスポンサー契約を結び、有名タレントによる広告出演(上戸彩)など、コンバース商標に係るシューズ類をはじめ、Tシャツ、ジャケット等の各種商品について活発に広告宣伝活動を展開していたこと、そして、上記各紙誌には、星の図形と「converse」の商標ばかりでなく、「converse」、「CONVERSE」あるいは「コンバース」の文字のみからなる商標も使用されていたこと(甲第7号証の1及び2)。

(h)G−Searchによるコンバース関連記事の検索(2001年11月から2004年3月)によれば、コンバース・シューズ(スニーカー)に関し、あるいは、コンバース商標の国内における事業展開の状況等についてしばしば取り上げられ報道されていたこと(甲第8号証の1ないし9)。

(i)「CONVERSE・スポーツウェア、衣料品」等についてのウエブページによれば、「SOCKS」、「SWEATER」、「JACKET」、「T−SHIRT」等々の商品が星の図形と「converse」の商標のもとに掲載されており、「T−SHIRT」等の胸の部分には大きく「CONVERSE」の文字が表示されていること(甲第9号証の1ないし3)

(j)「CONVERSE/コンバース」関連登録書誌情報によれば、前記した引用商標以外にも、星の図形と「converse」の欧文字からなる登録第2709034号商標等14件の登録商標が請求人である伊藤忠商事株式会社を我が国における現在の商標権者として登録されていること(甲第10号証の1ないし14)。

(2)上記(1)で認定した事実を総合すると、「CONVERSE」の商標は、米国コンバース社の業務に係るスポーツシューズを表す商標であり、その中でも特に、キャンバスオールスターは、1917年に生産されて以来80年以上も長きにわたって履かれ続けているスニーカーであり、同社によるスポーツシューズの生産量は世界でもトップクラスであって、1984年以降は、同ブランドでスポーツウェアも手がけていることを認めることができる。

そして、我が国においては、請求人が引用商標等に係る権利一切を掌握する地位にあり、コンバース商標に係るシューズの販売足数は、2002年から2004年にかけて、430万足ないし525万足、国内第3位ないし第4位の地位を占めている。

また、コンバース商標に係る製品は、国内のファッション雑誌を始め一般雑誌、業界雑誌、一般新聞等においても頻繁に紹介され、宣伝広告も継続して掲載されていた事実を認めることができる。

そうとすれば、引用商標をはじめとするコンバース商標は、本件商標の登録出願時には、請求人らの業務に係るスポーツシューズ等を表す商標として、取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認められ、その著名性は、本件商標の登録査定時に至るまで継続していたものということができる。 加えて、請求人は、本件商標が登録出願される以前から、シューズ類のほかスポーツシャツ・パンツ、ポロシャツ、Tシャツ、ジャケット、ダウンジャケット、帽子、ソックス、手袋等、運動用特殊衣服を含む各種被服類ほか、ウエストポーチ、デイバッグ、ボストンバッグその他のバッグ類、ベルト等のいわゆるファッション関連商品の分野においてもコンバース商標を用いて活発に広告活動・販売活動を展開してきた事実を認めることができる。

2 出所の混同について

(1)本件商標と引用商標との類似性について

(a)外観について

本件商標と引用商標とは、前記したとおりの構成からなるところ、両者は、共に全8文字からなり、かつ、前から6文字と末尾の1文字を全く同じくし、異なるところは僅かに末尾から2文字目の「G」と「S」の違いでしかないから、それら構成は一瞥した限りでは、その違いを殆ど看過してしまう程に酷似したものというべきである。

してみれば、本件商標と引用商標とは、その全体の外観において極めて似かよった印象を与えるものであるから、本件商標は、引用商標と外観において彼此相紛れるおそれのあるものというべきである。

(b)称呼について

本件商標は、「CONVERGE」の欧文字を横書きしてなるものであるところ、「CONVERGE」の語は、「一点に集まる(集める)」等の意味を有する英語の成語であり、「コンバージ」と読まれるものである。もっとも、該語は比較的馴染みの薄い語であることから、その読み自体も馴染まれていないとしても、前半部分は、「転向させる」等の意味合いを表し「コンバート」と発音される英語として知られている「convert」の綴りに通じるものであり、また、後半の「RGE」の文字部分については、例えば、よく知られている英語の「charge」、「large」の語がそれぞれ、「チャージ」、「ラージ」と発音されている例に倣えば、全体として、容易に「コンバージ」と発音されるものとみるのが相当である。したがって、本件商標からは「コンバージ」の称呼を生ずるものである。

他方、引用商標は、「CONVERSE」の欧文字を横書きしてなるものであるところ、「CONVERSE」の語は、「談話する、交渉する」等の意味を有する英語の成語であり、「コンバース」と読まれるものであるが、該語自体も英語としては、さほど馴染まれている語でないとしても、請求人らの業務に係るシューズ類等の商標として広く知られていることから、容易に「コンバース」と発音されるものとみるのが相当である。したがって、引用商標からは「コンバース」の称呼を生ずるものである。

そこで、本件商標から生ずる「コンバージ」の称呼と引用商標から生ずる「コンバース」の称呼とを比較すると、両者は共に5音構成からなり、冒頭から4音目までの音の配列を同じくし、異なるところは僅かに末尾の音「ジ」と「ス」の違いでしかない。

そして、該差異音にしても、それ自体音声学的にみれば共に舌尖又は舌端を前硬ロ蓋に寄せて発する有声又は無声の摩擦音であって(甲第12号証の1及び2 岩波書店発行「広辞苑」参照)、その音質及び調音部位において近接した関係にあり、かつ、それらの音は、称呼の識別において明瞭に聴取され難い末尾に位置するものである。

してみれば、両称呼をそれぞれ全体として称呼するときは、全体の語感・音調において彼此紛らわしいものといわざるを得ない。

また、被請求人が主張しているように、本件商標から「コンバージュ」の称呼を生ずるとしても、「ジュ」の音も「ジ」の音と同じく、有声の摩擦音であって、しかも、引用商標の末尾音である「ス」の音とは、母音(u)をも共通にするものであるから、引用商標と紛らわしいことに変わりはない。

(c)以上のとおり、本件商標と引用商標とは、その称呼及び外観において、相紛れるおそれがある類似性の高い商標といわなければならない。

(2)本件商標の指定商品と請求人らの業務に係る商品との関係について

本件商標は、「被服」を指定商品とするものであるところ、「被服」と請求人らがコンバース商標を使用している「シューズ類」とは、広義におけるファッション関連商品であって、互いに密接な関係にあるばかりでなく、前記したとおり、請求人らは、「被服」についてもコンバース商標を使用しているものである。

(3)以上を総合してみれば、本件商標は、引用商標とその外観及び称呼において彼此相紛らわしい商標であり、その指定商品も請求人らの業務に係る商品とは互いに密接な関係にあり、引用商標をはじめとするコンバース商標は、本件商標の登録出願時には、請求人らの業務に係るスポーツシューズ等を表す商標として取引者・需要者の間に広く認識されていたものである。

そして、本件商標が「コンバージュ」の称呼をもって被服について使用されていたとしても、コンバース商標と出所の混同を生ずることのない程に独自の著名性を獲得していたとする主張も証拠の提出もない。

してみれば、上記した事情のもとに、本件商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者・需要者は、著名な引用商標をはじめとするコンバース商標を連想・想起して、その商品が請求人らの業務に係る商品であるかの如く、あるいは、請求人らと経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。

3 被請求人の主な反論について

(1)被請求人は、本件商標「CONVERGE」は「集まる、集中する」等を意味する英単語であり、引用商標「CONVERSE」は「談話する」等を意味する英単語であることが殆どの英語辞書に所載されており、取引者・需要者は、英語辞書等に照らせば、これらの英単語の意味を容易に理解することができるものであるから、両商標は、観念において明確に区別できるものというべきである旨主張している。

しかしながら、確かに、本件商標は「集まる、集中する」等を意味する英単語であり、引用商標は「談話する」等を意味する英単語ではあるが、例えば、株式会社小学館2001年発行「(ポケット)プログレッシブ英和辞典」(甲第11号証の1)によれば、両語の使用頻度はさほど高くないものである。そうとすれば、少なくとも、本件商標の指定商品である「被服」についての一般的な取引者・需要者にとっては、両語とも、その英単語としての語義については馴染みが薄いものということができる。そして、そのような場合、当該商標に接する需要者が日常的にその意味合い等を辞書類により確認しながら取引しているような事情も認められないから、この点についての被請求人の主張は採用できない。

そうとすれば、その語義上の違いが外観及び称呼における両商標の近似性に及ぼす影響は極めて弱いものというべきであり、これを殊更強調し得る程の合理的な理由とはいい難く、むしろ、需要者は、これらを一種の造語の如く認識する場合も決して少なくないものとみるのが相当である。

また、被請求人は、称呼及び外観についても反論しているが、称呼及び外観についての近似性、共通性については、前記したとおりである。なお、被請求人は、称呼の点について、「コンバージ」と「コンバース」とではアクセントの位置が異なる旨主張しているが、「(ポケット)プログレッシブ英和辞典」(甲第11号証の1)によれば、英語の発音としては、いずれの語も同じ位置にストレス符号が付けられているばかりでなく、英語の発音記号を離れて、商標としてどのような発音が自然な発音であるのかを考察してみても、必ずしも、被請求人が主張しているような明瞭なアクセントの差異をもって認識されているものとはいい難く、そのことを裏付ける証拠も提出されていない。

(2)被請求人は、引用商標がシューズの業界において著名であるとしても、スポーツシャツ等の被服の業界においては、本件商標の登録出願日・登録査定時において、著名性を確保していたと認めることはできない旨主張している。

しかしながら、前記したとおり、引用商標は、「被服」等の商品についても盛んに広告・宣伝された結果、本件商標の登録出願日・登録査定時において既に、取引者・需要者間に相当程度知られていたものということができる。そして、被請求人が主張しているように、著名性までは獲得していなかったとしても、引用商標をはじめとするコンバース商標がシューズ類の商標として取引者・需要者間において著名であったことは、先に認定したとおりであり、この点については、被請求人も否定していない。

そうとすれば、「被服」と「シューズ類」とは、広義におけるファッション関連商品であるから、被請求人が本件商標をその指定商品である「被服」ついて使用するときは、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。

(3)被請求人は、東京高等裁判所の2件の判決を挙げているが、該判決は、本件とは事案を異にするものであるから、前記判断に影響を与えるものとはいえない。

(4)したがって、上記に関する被請求人の主張はいずれも採用することができない。

4 まとめ

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

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