結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2006−89004(T2006−89004/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4446039号商標(以下、「本件商標」という。)は、「話力」の文字を書してなり、平成11年6月15日に登録出願、第41類「日本語能力に関する検定」を指定役務として、同13年1月19日に設定登録されたものである。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由、上申の理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第第68号証を提出した。
(1)請求の理由の要約
引用商標は、請求人の業務に係る役務「話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催」を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものである(甲第18号証ないし甲第40号証)。
また、本件商標はその構成より「ワリョク」の称呼、「話す力」の観念を生ずるものである。一方、引用商標はその構成より「ワリョク」の称呼、「話す力」の観念を生ずるものである。したがって、本件商標と引用商標とは、共に「ワリョク」の称呼、「話す力」の観念を共通にする類似の商標である。
さらに、本件商標に係る指定役務「日本語能力に関する検定」と引用商標に係る役務中の「話し方・聴き方に関する知識の教授」とは、類似の役務である。
したがって、本件商標登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすべきである。
(2)無効とすべき理由
ア.引用商標
(ア)沿革
請求人の代表取締役である永崎一則は、昭和20年、話の研究に入り、単なる話の技術を超えた、人間の総合力としての話力理論を開発し、昭和47年12月に請求人の前身である「話力研究所」を設立した(甲第2号証)。
その後、「話力研究所」は、翌48年に「株式会社話力研究所」として法人組織化され、さらに、平成4年には現商号である「株式会社話力総合研究所」に変更されている(甲第3号証)。
(イ)請求人の業務に係る役務
請求人は、甲第3号証の法人登記の目的欄に記載のとおり、「話し方聴き方の指導講習」等、すなわち、「話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催」等の役務を提供している。講演等の具体的な内容は以下のとおりである。
(a)講演
「話力と人間関係」「人を動かす話力」「明るい職場づくり」「人に好かれる話し方」「信頼される上司になるには」「話し合いの進め方」「魅力的なスピーチ」「心をとらえる話し方・聴き方」「人を育てるほめ方・叱り方」「好感をもたれる応対のしかた」等を内容とする講演である。SE・IT技術・IT営業部門、病院・看護施設、シニア、学校・教育機関、社会教育など、依頼者の要望に応じたカリキュラム・テーマで講演を行っている(甲第2号証「講演のご案内」)。
一部の事例であるが、宮城県農業協同組合中央会から依頼を受け、平成元年5月24日に、「魅力ある生活指導員に求められるもの〜人をひきつける話し方」というテーマで講演を行った(甲第4号証)。また、文部省教育助成局長から依頼を受け、平成2年11月17日に、「人を育てるほめ方・叱り方」というテーマで講演を行った(甲第5号証)。
(b)教育・研修
「新入社員会社導入訓練」「社員マナー研修」「接客・応対訓練」「表現力向上研修」「インストラクター教育」「プレゼンテーション技法」「交渉力・折衝力強化訓練」「文章講座」等を内容とする教育・研修である。営業・販売・サービスマン研修、SE・IT技術者・ITインストラクター研修、管理者研修、官公庁・各種団体研修、新入社員・女子社員研修など、依頼者の要望に応じたカリキュラム・テーマで教育・研修を行っている(甲第2号証)。
一部の事例であるが、墨田区教育委員会から依頼を受け、平成元年5月30日、6月1日・2日・6日の4日間、社会教育ボランティア講座を行った(甲第6号証)。また、東京営林局長から依頼を受け、平成2年5月9日に、「研修技法」というテーマで研修を行った(甲第7号証)。さらに、東京消防庁から依頼を受け、平成2年10月17日に、「話力開発」というテーマで研修を行った(甲第8号証)。
(c)常設話力講座
小人数制で、話力第一講座(基礎編)から話力第二講座(実務編)、話力第三講座(スピーチ編)、話力第四講座(対話編)、話力第五講座(応用編)、話力第六講座(科学編)と順次段階を追って受講するようになっている(甲第2号証「常設話力講座のご案内」)。請求人が提供している講座のうち中核となっているものである。
(d)職場指導者のための表現力アップセミナー
話力講座の第一講座から第三講座までの内容を「表現力アップセミナー」(2泊3日)の短期集中講座として毎年企画し、実施している(甲第2号証「講演者溝座・セミナーのご案内」)。
(e)ビジネスマナー・セミナー
感じのよい応対を指導し、上手な電話応対ができるようになる講座である(甲第2号証「講演・講座・セミナーのご案内」)。
(f)スピーチ特訓セミナー
話力第一講座修了者を対象に、人前で自分を豊かに表現し、大ぜいの人をひきつける話ができるよう既に身につけている話力にいっそうの磨きをかけることを目的としたセミナーである(甲第2号証「講演・講座・セミナーのご案内」)。
(g)スピーチクリニック
依頼者のスピーチを診断し、マンツーマンで指導する講座である。
(h)実用文章講座
文章の基本理論に基づいて、実用文章を書くときのポイントをつかみ、話す、聴くということだけでなく、書くことを通して表現力をつけることを目的とした講座である(甲第2号証「講演・講座・セミナーのご案内」)。
(i)話力インストラクターのための指導講座
第6講座修了者を対象とした講座である(甲第2号証「講演・講座・セミナーのご案内」)。
(ウ)使用商標
請求人は、その業務に係る役務である「話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催」について商標「話力」を使用している。
具体的には、甲第9号証は「話力講座のご案内」のパンフレット、甲第10号証及び甲第11号証は「講座・講演ごあんない」のパンフレットであるが、これらの表紙には大きく大文字で「話力」と表示されている。
甲第12号証ないし甲第16号証は、昭和56年度・昭和61年度・昭和63年度・平成元年度・平成3年度の「話力第1講座」のパンフレットであるが、これらの表紙にも大きく大文字で「話力」と表示されている。
甲第17号証は、平成4年度の「常設セミナーのご案内」のパンフレットであるが、この表紙にも白抜きの大文字で「話力」と表示されている。
請求人は平成4年に商号を変更しているが、平成3年度までは、一部を切り欠いた6重の円形図形の切り欠け部に「話力」の文字を縦書きしてなる社標を使用しており、パンフレット類にも、「話力研究所」の文字とともに当該社標を表示していた。なお、甲第9号証ないし甲第17号証は、多数のパンフレット類の中から任意に抜粋したものである。
(エ)実績等
創立10周年、20周年を記念して出版された「話力運動の歩み 話力研究所編」(甲第18号証)、「話力運動二十年の歩み 話力総合研究所編」(甲第19号証)に、「話力研究所この十年」、「話力総合研究所の二十年」として、実績等が詳細に書き綴られている。
(オ)小括
請求人は、国内ではいち早く組織的・体系的に「話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催」の役務の提供を開始し、昭和47年12月の創立以来30年以上にわたり商標「話力」を継続して使用している。
その間、「話力」に関して、数多くの講座・セミナー、多くの官庁や2500社以上の企業等における講演を行ない、その様子はテレビ・新聞を通じて報道された。また、永崎一則や研究所所員の著書等も多数出版等されている。
したがって、引用商標は、本件商標の出願時には、請求人の業務に係る役務「話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催」を表示するものとして、官庁、企業はもとより、話し方・聴き方に関心を寄せる需要者の間に広く認識されていた。
(カ)取引者からの証明書
(a)甲第37号証及び甲第38号証は、請求人の業務に係る役務「話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催」の取引者である林野庁森林技術総合研修所、
順天堂大学医学部附属順天堂医院からの証明書である。
そして、これらの者は長年の取引を通じて請求人の業務内容を十分熟知している者であり、それゆえ、「(1)株式会社話力総合研究所(以下、『弊社』と称します。)は、国内ではいち早く組織的・体系的に『話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催』の役務の提供を開始し、昭和47年12月の創立以来30年以上にわたり商標『話力』を継続して使用して行っており、その間、『話力』に関して、数多くの講座・セミナー、多くの官庁や2500社以上の企業等における講演を行なっていること。...(3)その結果、『話力』の商標は、遅くとも平成4年(1992年)頃までには、弊社の業務に係る役務『話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催』を表示するものとして、官庁、企業はもとより、話し方・聴き方に関心を寄せる需要者の間に広く認識されていたものであること。」との証明内容となっている。
(b)甲第40号証は、海上自衛隊第1術科学校からの証明書である。
同校も長年の取引を通じて請求人の業務内容を十分熟知している者であり、それゆえ、「株式会社話力総合研究所(以下、『弊社』と称します。)は、国内ではいち早く組織的・体系的に『話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催』の役務の提供を開始し、昭和47年12月の創立以来30年以上にわたり商標『話力』を継続して使用して行っており、その間、『話力』に関して、数多くの講座・セミナー、多くの官庁や2500社以上の企業等における講演を行なっている。その結果、『話力』の商標は、遅くとも平成4年(1992年)頃までには、弊社の業務に係る役務『話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催』を表示するものとして、官庁、企業はもとより、話し方・聴き方に関心を寄せる需要者の間に広く認識されていたものであります。」ということを十分了知したうえで、平成3年度以降の実績についての証明がなされている。
(c)なお、甲第37号証ないし甲第40号証の証明書は、出願人と取引関係にある者から一部を抜粋して提出するものである。
イ.本件商標と引用商標との類否
(ア)両商標の類否
本件商標と引用商標とは、共に「ワリョク」の称呼、「話す力」の観念を共通にする類似の商標である。
(イ)指定役務について
本件商標の指定役務「日本語能力に関する検定」と引用商標に係る役務中の「話し方・聴き方に関する知識の教授」とは、需要者の範囲等が一致するものであるから、類似の役務である。
(2)上申
追加の証明書を入手したので、提出する(甲第41号証ないし甲第60号証)。
(ア)取引者からの証明書
甲第41号証ないし甲第51号証は、請求人の業務に係る役務の取引者である(a)学校法人明誠学院共立医療秘書専門学校、(b)学校法人高村育英会国際観光専門学校、(c)株式会社アマノ、(d)日興システック株式会社管理部長、(e)株式会社高崎共同計算センター、(f)NECテレネットワークス株式会社、(g)NECラーニング株式会社、(h)株式会社松下産業、(i)明石市総務部人事課課長、(j)読売販売経営学院、(k)鹿児島県自治研修センターからの証明書である。
いずれも請求人が長年にわたり講演・研修を行っている学校、企業、施設である。すなわち、
(a)学校法人明誠学院共立医療秘書専門学校においては、昭和54年以降、現在まで毎年実施されている講義に、「話力総合研究所所員」として請求人から山縣暁子、その他の所員を講師として派遣している(甲第41号証)。
(b)学校法人高村育英会国際観光専門学校においても、昭和54年以降、現在まで毎年実施されている講義に、「話力総合研究所所員」として請求人から山縣暁子、その他の所員を講師として派遣している(甲第42号証)。
(c)株式会社アマノにおいても、平成7年以降毎年実施されている「話力研修」に、請求人から永崎所長又は所員を講師として派遣している(甲第43号証)。
(d)日興システック株式会社においても、平成7年以降毎年実施されている「話力研修」に、請求人から永崎所長又は所員を講師として派遣している(甲第44号証)。
(e)株式会社高崎共同計算センターにおいても、平成7年以降毎年実施されている「話力研修」に、請求人から永崎所長又は所員を講師として派遣している(甲第45号証)。
(f)NECテレネットワークス株式会社においても、平成7年以降毎年実施されている「話力研修」に、請求人から永崎所長又は所員を講師として派遣している(甲第46号証)。
(g)NECラーニング株式会社においても、平成8年以降毎年実施されている「話力研修」に、請求人から永崎所長又は所員を講師として派遣している(甲第47号証)。
(h)株式会社松下産業においても、平成8年以降毎年実施されている「話力研修」に、請求人から永崎所長又は所員を講師として派遣している(甲第48号証)。
(i)明石市においても、昭和49年以降毎年実施されている「話力講習会」に、請求人から永崎所長その他の所員を講師として派遣している(甲第49号証)。
(j)読売販売経営学院においても、昭和50年以来定期的に実施されている「話力講座研修」に、請求人から永崎所長以下所員を講師として派遣している(甲第50号証)。
(k)鹿児島県自治研修センターにおいても、平成8年以降今日まで毎年実施されている「話力研修」に、請求人から永崎所長又は所員を講師として派遣している(甲第51号証)。
そして、これらの学校、企業、施設は長年の取引を通じて請求人の業務内容を十分熟知しており、それゆえ、「(1)株式会社話力総合研究所(以下、「弊社」と称します。)は、国内ではいち早く組織的・体系的に『話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催』の役務の提供を開始し、昭和47年12月の創立以来30年以上にわたり商標『話力』を継続して使用して行っており、その間、『話力』に関して、数多くの講座・セミナー、多くの官庁や2500社以上の企業等における講演を行なっていること。(2)その結果、『話力』の商標は、遅くとも平成4年(1992年)頃までには、弊社の業務に係る役務『話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催』を表示するものとして、官庁、企業はもとより、話し方・聴き方に関心を寄せる需要者の間に広く認識されていたものであること。」との証明がなされ、あるいは、上記内容を十分了知したうえで、実績についての証明がなされている。
(イ)同業者からの証明書
甲第52号証ないし甲第55号証は、請求人の業務に係る役務の同業者である(a)株式会社話し方研究所、(b)話し方能力開発センター、(c)話し方マナーズ、(d)日本ヒューマン・リレーションズ研究会の証明書である。
上記の法人等は、同業者として互いの業務を尊重し調和を図りつつ業界の発展のために適宜意見や情報を交換しており、請求人の業務内容等に関しても当然に認識している。したがって、「(1)株式会社話力総合研究所(以下、『弊社』と称します。)の所長永崎一則は、昭和32年から言語科学研究所(現社団法人言語科学振興協会)に所属し、話し方聴き方及び話力の研究を続け、昭和45年東海大学で『パーソナル、コミューケーション(話力学)』を講じ、当時より『話力』の用語を使っていたこと。(2)株式会社話力総合研究所は、国内でいち早く組織的・体系的に『話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催』の役務の提供を開始し、昭和47年12月以来30年以上にわたり、商標『話力』を一貫して標榜しており、その間、『話力』に関して数多くの講座・セミナー・講演など多くの官庁や2500社以上の企業等における研修を行なっていること。その結果、『話力』の商標は、遅くとも平成4年ごろまでには、すでに弊社の業務に係る役務『話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催』を表示するものとして、官公庁、企業はもとより、話し方・聴き方に関心を寄せる需要者の間に広く認識されていること。(3)昭和47年12月話力研究所を設立し、社名どおり一貫して商標『話力』を標榜して話力理論を体系化し、今日まで30年以上その普及活動を継続していることを、話の研究と『話し方教室』を主宰している同業者として共通に認識していること。」との証明内容となっている。
(ウ)専門家からの証明書
(a)甲第56号証は、元早稲田大学政経学部長、元麗澤大学国際経済学部長である小松雅雄の証明書である。
同氏は上記以外にも数多くの顕著な経歴・功績を有する知識人である(甲第57号証)。したがって、「(1)株式会社話力総合研究所(以下、『弊社』と称します。)の所長永崎一則は、昭和32年から言語科学研究所(現社団法人言語科学振興協会)に所属し、話し方聴き方及び話力の研究を続け、昭和45年東海大学で『対話論(話力学)』を講じ、当時より『話力』の用語を使っていたこと。(2)弊社は、国内でいち早く組織的・体系的に『話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催』の役務の提供を開始し、昭和47年12月以来30年以上にわたり、商標『話力』を一貫して標榜しており、その間、『話力』に関して100冊以上の著書をもち、数多くの講座・セミナー・講演など多くの官庁や企業等2500社以上における研修を行なっていること。その結果、『話力』の商標は、遅くとも平成4年(1992年)ごろまでには、すでに弊社の業務に係る役務『話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催』を表示するものとして、官公庁、企業はもとより、話し方・聴き方に関心を寄せる需要者の間に広く認識されていること。(3)設立当時(昭和47年)より話力研究所の特別講師として、『話力理論』の強化に周辺科学の立場からアドバイスしてきたこと。そして、『話力』は永崎一則の独自の理論として終始一貫今日まで、『話力』の商標を標榜し、その普及を『話力運動』として30年以上継続使用している事実を認識していること。」との証明内容はきわめて高い信憑性を有するものである。
(b)甲第58号証は、東海大学文学研究科コミュニケーション学専攻博士課程後期研究指導教授である時野谷浩の証明書である。
同氏は東海大学におけるコミュニケーション学の研究者であり、それゆえ、「(1)... 昭和45年4月より昭和47年4月まで東海大学広報学部で、『対話論(話力学)』の教科を担当し、その後特別講義の講師として『話力』について指導出講していること。...(4)コミューケーションを研究する立場で、設立当時(昭和47年)から永崎一則は、独自の話力理論を展開し、広く専門家間でも知られ、『話力』の商標を講座、講演等で終始使用していることを認識していること。」との証明内容となっている。
(c)甲第59号証は、福島学院大学短期大学部情報ビジネス科教授、文部科学省認定秘書技能検定中央試験委員、文部科学省認定ビジネス文書検定試験委員、日本秘書学会理事、日本ビジネス実務学会評議員である三村善美の証明書である。
同氏は長年にわたり話に関する研究、指導を行ってきた者であり、それゆえ、「...(3)話し方、聴き方、コミュニケーション、秘書技能、接遇など、話に関する研究、指導、また、秘書技能検定試験委員を担当している立場から、永崎一則は話力研究所設立以来、独自の『話力理論』をもって『話力』を商標とし、終始一貫して話力の普及活動を30年以上展開していることは、専門家間でも広く認識されていること。」との証明内容となっている。
(d)甲第60号証は、元群馬大学教育学部教授、「声とことばの会」主宰、ILEC言語教育文化研究所常任理事、日本朗読文化研究所顧問である高橋俊三の証明書である。
同氏も長年にわたり話に関する研究、指導を行ってきた者であり、それゆえ、「...(3)『音声言語指導大辞典』(1999年、明治図書)などの話しことばに関する著者を多くもつ音声言語(話し方)教育では日本の第一人者として、話力研究所設立以来関係していること。また、研究所から了解を得て商標『話力』の用語を使い『話力をつける』(昭和49年文教書院)、』『教師のための話力を磨く』(平成18年明治図書)など話力の著書を刊行するなど、『話力』の用語は、永崎一則独自の理論として、この道の専門家間では広く認識されていること。」との証明内容となっている。
イ.甲第20号証として、昭和47年の設立時から昭和52年1月24日までに永崎一則所長が行った講演・講座の出講日時及び出講先をまとめた一覧表を提出したが、さらに昭和52年1月25日から昭和63年6月29日までの一覧表を作成したので、併せて提出する(甲第61号証)。
(3)弁駁
ア.被請求人は、引用商標の使用をことごとく否定している。
しかし、「話力講座のご案内」のパンフレット(甲第9号証)、「講座・講演ごあんない」のパンフレット(甲第10号証及び甲第11号証)の表紙には大きく大文字で「話力」と表示され、昭和56年度・昭和61年度・昭和63年度・平成元年度・平成3年度の「話力第1講座」のパンフレット(甲第12号証ないし甲第16号証)の表紙にも大きく大文字で「話力」と表示され、平成4年度の「常設セミナーのご案内」のパンフレット(甲第17号証)の表紙にも白抜きの大文字で「話力」と表示され、平成3年度までのパンフレット類には「話力研究所」の文字とともに一部を切り欠いた6重の円形図形の切り欠け部に「話力」の文字を縦書きしてなる社標が表示されており、いずれも自他役務識別のために使用されていることは明らかである。 すなわち、請求人の業務に係る役務の属する業界においては、その役務の内容を口頭で説明することは必ずしも容易ではないことから、提供する役務を表示し、かつ、宣伝広告することは、主にパンフレット類によりその表紙に商標を大きく表示して行われるのが通例となっているところ、請求人においても、パンフレット類の表紙に大きく「話力」と表示しており、引用商標は自他役務識別機能・出所表示機能・宣伝広告機能といった商標の諸機能を十分果たす態様で使用されている。
そして、そのような長年にわたる使用の結果、「話力」の表示に接する者は、請求人が提供する役務であることを認識するに至り、引用商標は周知性を獲得したのであって、引用商標には保護されるべき多大な業務上の信用が化体している。
イ.請求人は、引用商標の周知性を示すものとして、取引者等からの証明書(甲第37号証ないし甲第60号証)、永崎一則出講日時及び出講先一覧表(甲第20号証及び甲第61号証)、平成4年度講演リスト(甲第24号証)等を提出した。
(ア)林野庁森林技術総合研修所においては、昭和48年以降毎年実施されている研修に、請求人から永崎所長及び所員を講師として派遣しているが、その出講日時を上記一覧表(甲第20号証及び甲第61号証)及びリスト(甲第24号証)から抜き出してリストを作成したので、甲第63号証として提出する。ただし、上記出講は永崎所長のみのもので所員出講を加えると2倍くらいになる。
なお、同研修所は、平成7年4月に「林業講習所」と「林野庁研究普及課沼田林業機械化センター」とを改組し、設置されたものである(甲第62号証)。したがって、甲第20号証及び甲第61号証の一覧表・甲第24号証のリストにおける出講先・講演先は「林業講習所」となっている。
(イ)順天堂大学医学部附属順天堂医院においても、昭和48年以降毎年4月に実施されている講演に、永崎所長を講師として派遣している(甲第64号証)。
なお、被請求人は、「甲第20号証における出講日時・出講先一覧表には、この順天堂大学附属医院での講演は昭和48年4月6日、昭和49年4月3日、同年10月5日のみである。したがって、証明記載内容と一致しない ... 」と主張するが、証明記載内容のとおり、昭和50年以降も、請求人から永崎所長を講師として派遣している。
(ウ)その他にも設立当時からの取引者は多数存在しているが、そのうち代表的な法人・学校である日本電気・全日本空輸・警察大学校・早稲田速記学校における永崎所長の出講日時リストを提出する(甲第65号証ないし甲第68号証)。
ウ.以上より、請求人は、昭和47年12月の創立以来30年以上にわたり、数多くの講座・セミナー・講演を行い、その際、引用商標は自他役務識別等の諸機能を十分果たす態様で使用された結果、周知性を獲得したものである。
被請求人は、結論と同旨の審決を求め、答弁の理由及び上申の理由を次のように述べた。
(1)答弁
ア.引用標章の概要
請求人が引用する標章(以下、「引用標章」という。)は、各甲号証によると漢字「話力」を角ゴシック体にて「話」を「力」に比しやや高く配置すると共に一部面を繋げてなるもの、講座名と結合して「話力講座」、「話力第1講座内容」等、単に角ゴシック体にて漢字「話力」、あるいは請求人の名称である「話力研究所」、「株式会社話力研究所」等によって表示されている。
一方、例えば甲第9号証によると、「話力とは......」として、以下のように説明されている。すなわち、「話力とは豊かな人間性、密度の高い内容力、その場に応じた対応力の相乗です。効果的な話をするためには、どの要素も欠かすことができません。トツトツとした話が人の心をとらえ、巧みな話し方が反感をもたれたりするのも、技術だけが話の力でないという証拠でもあります。話力を高めることによって明噺な思考力が身につき、円満な人柄の向上になり、そして明るい人間関係を拡げることができます。話力こそは、多くの人とのかかわり合いを持って生きている、現代人の必須の資質といえます。」とある。また、これを図解した概説図中にも「話力」が表示されている。
イ.引用標章の使用について
甲第2号証は、各紙葉における右下部位の表示「2006/1/13」から、平成18年1月13日現在の請求人のWebサイト頁のプリントであると思われる。これには請求人の名称の表示中に強調する態様で表示されている。ただ、本件商標の出願日以前のものではない。
甲第3号証は、「株式会社話力総合研究所」が請求人名称(商号)であることが示されている請求人会社の登記簿謄本である。この登記簿謄本の目的欄に「話力の研究と開発」が記載されていても、これは商標でない。
甲第4号証ないし甲第8号証では、各機関からの講師派遣の要請を明らかにするも、「話力」そのものの表示はない。
甲第9号証ないし甲第17号証では、「話力」「話力講座」「話力第1講座内容」等の講座内容の説明として、更には「話力研究所」の名称中の一部として表示されている。但し、これらの各甲号証の作成日、配布数・配布日等の配布状況は明らかにされていない。また、甲第9号証中に記載の掲載新聞において、商標「話力」が使用されたことは確認できない。
甲第18号証では、書籍の題号「話力運動の歩み」の一部として、編著者名が「話力研究所」であるとして表示されており、「話力」の具体的内容及び実践・普及活動も説明されている。甲第19号証では、同じく書籍の題号「話力運動二十年の歩み」中の一部として、編著者名が「話力総合研究所」であるとして表示されており、「話力」の具体的内容及び実践・普及活動も説明され、出講先一覧も掲載されている。但し、甲第18号証及び甲第19号証共に「話力」が自他役務を識別するために表示使用されているとの事実は確認できない。
甲第20号証では、永崎一則が話力研究所所長として出講した日時、出講先の一覧表であるが、「話力」そのものの表示はない。また、この講演スケジュール内容自体の客観的証明はないから、これは確認できない。
甲第21号証では「話力特訓セミナー」、甲第22号証では「話力強化セミナー」と表示されて、また講座内容が説明され、更には「話力研究所」の名称中の一部として表示されている。但し、これらの甲第21号証及び甲第22号証の作成日・配布数・配布日等の配布状況は明らかにされていない。また、そのセミナーの開催自体、その参加者等の客観的証明はないから、これは確認できない。
甲第23号証では、「話力講座、文章講座の依頼」と題されて表示されているが、これの作成日、依頼日は明らかにされていない。また、この種の依頼書に通常は押印される依頼者の捺印がなく、依頼事実は確認できない。
甲第24号証では、平成4年における講演の一覧リストであるとされるが、「話力」そのものの表示はない。また、リスト中の月日、講演先、会場、対象・人数の客観的証明はないから、これは確認できない。
甲第25号証では、年間別講演総数及び総人数のリストであるとされるが、「話力」そのものの表示はない。また、リスト中の年、講演数、人数の客観的証明はないから、これは確認できない。
甲第26号証ないし甲第35号証では、「話力講座ごあんない」と題されて、段階・ステップ別の講座内容が説明され、また、特に「話力とは......」として心格力・内容力・対応力の相乗であることが説明されている。これらの各甲号証を見るも、「話力」が自他役務を識別するために表示使用されているとの事実は確認できない。しかも、これらの各甲号証の作成日、配布数・配布日等の配布状況は不明。また、その客観的証明はないから、これは確認できない。なお、甲第30号証以下は本件商標の出願日以降のものである。
甲第36号証では、話力総合研究所所長永崎一則出版記録と題された出版記録の一覧リストとされるが、「話力」そのものの表示はなく、リスト中の番号19.25.27.29.40.41.42.45.52.53.63.83.94.108.117.の題号中に含まれるのみである。これら各甲号証を見るも、「話力」が自他役務を識別するために表示使用されている事実は確認できない。しかも、これらの各甲号証の売上数(発行部数ではない)は明らかにされていない。また、その客観的証明はないから、確認できない。なお、番号120.以下は本件商標の出願日以降のものである。
甲第37号証は、森林技術総合研修所長の証明であるが、先の甲第20号証における出講日時・出講先一覧表には、この森林技術総合研修所は記載されていない。したがって、その証明は審判請求書第29頁の記載と共に疑問である。
甲第38号証は、順天堂大学医学部附属順天堂医院人事部次長の証明であるが、先の甲第20号証における出講日時・出講先一覧表には、この順天堂大学附属医院での講演は昭和48年4月6日、昭和49年4月3日、同年10月5日のみである。したがって、証明記載内容と一致しないから、証明は審判請求書第29頁の記載と共に疑問である。
甲第39号証は、海上自衛隊第1術料学校海将補の証明であるが、その証明は訓育巡回指導における講話依頼の実績であり、本件商標出願前の平成9年度から平成11年度で「話力」に関する講話が行われたようである。なお、「話力」自体が周知であることの証明はなく、また、平成12年度以降のものは無意味である。
いずれにしても、甲第3号証ないし甲第36号証等は公的証明ではないから、その内容は確認できない。
ウ.証拠方法の検討
請求人の主張・証拠方法のいずれにあっても、役務「話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催」につき、自他役務の識別のための商標として「話力」を使用していることの明示はない。
すなわち、請求人は「話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催」の役務を行っていることは認められても、これに関して表示される「話力」は、自他役務識別のために使用されているものではなく、「話し方が心格力・内容力・対応力の相乗であること」の教授内容を簡単にして端的に説明するものとして使用されているにすぎない。ちなみに、甲第2号証では提出されていない「話力とは」のサイトページにおいて、また、甲第9号証ないし甲第17号証に記載の「話力」は上記の概念のものとして説明しており、かかる意図で講演内容を説明する簡明表示として使用しており、請求人自身の役務表示として使用されているものではない。
また、甲第18号証ないし甲第25号証及び審判請求書における主張では、請求人自身の講演の実績が説明されるのみで、講演自体が「話力」なる識別標識の使用のもとで実施したことを明示してはいない。
したがって、請求人の標章「話力」は、出所表示機能、自他役務識別機能を果たしていない態様で表示されていると認められ、それ故、引用商標が自他役務識別力ある商標としても周知であるとは到底いえない。
一方、本願商標の指定役務は「日本語能力に関する検定」であり、この役務につき請求人が標章「話力」を使用していたとの主張・証拠もない。
エ.その他
被請求人は、商標「話力」(第41類)として登録第4257215号商標(平成9年9月19日出願、平成11年4月2日登録)、同じく登録第4919442号商標(平成15年4月7日出願、平成18年1月6日登録)等を所有している。
オ.以上、請求人が使用している標章「話力」が指定役務の「話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催」につき周知であると到底認めることはできない。
(2)上申
ア.請求人から上申書が提出され、証拠方法及び主張の補充がなされた。これによると、取引者の証明書、同業者の証明書及び専門家の証明書等によって、請求人の業務に係る役務が認知されていたこと、引用商標が取引者、同業者、専門家間において周知であるとする。
イ.証拠方法の検討
証拠方法夫々を検討するに、甲第41号証ないし甲第49号証、甲第52号証ないし甲第56号証及び甲第58号証ないし甲第60号証において、請求人が、昭和47年12月以来30年以上にわたり、商標「話力」を一貫して標榜しており、その間「話力」に関して、数多くの講座、セミナー、講演など多くの官庁や2500社以上の企業等における研修を行っていること、及び、その結果、「話力」の商標は、遅くとも平成4年ごろまでには、すでに請求人の業務に係る役務「話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営または開催」を表示するものとして、官庁、企業はもとより、話し方・聴き方に関心を寄せる需要者の間に広く認識されているとする。
ところが、これらの証明の前提となる事実につき、証明者等は何ら具体的な証拠を提示しておらず、証明は確実ではない。しかも、証明者において取引者、同業者、専門家であるとしても、彼らが具体的にどのような官庁で、どのような企業で請求人が開催したとされる講座、セミナー、講演を具体的に確認しているのか不明である。まして、多くの官庁や2500社以上の企業における研修等の事実を実際に見て確認しているのか、疑問である。すなわち、現実的にいえば実際上、具体的にはこれらの確認は困難であるから、かかる証明者の証明は極めて疑問である。なお、このような疑問は先の甲第37号証ないし甲第39号証においても同様である。
また、甲第43号証ないし甲第49号証中の講師の派遣の記載は、引用商標の周知性を証明するものではない。更に、甲第50号証及び甲第51号証は、請求人においての講師派遣の事実の証明であり、これも請求人使用の標章の周知性を証明するものではない。
甲第52号証ないし甲第56号証及び甲第58号証ないし甲第60号証中では、永崎一則が昭和32年から言論化学研究所に所属し、話し方聴き方及び話力の研究を続け、昭和45年東海大学で「パーソナル、コミュニケーション(話力学)」を講じ、当時より話力の用語を使っていたことを証明するとするも、証明者においてかかる事実を実際に確認しているのか、また、その具体的証拠を証明者が明らかにしていないから、はなはだ疑問である。なお、甲第57号証は、甲第56号証を作成した証明者の経歴であって、引用商標の周知性を証明するものではない。
また、これらの同業者、専門家等による甲号証において、「話力」は永崎一則の独自の理論として終始一貫して今日まで、「話力」の商標を標榜し、その普及を「話力運動」として継続使用している等と証明し、「話力」を商標として使用しているとする。しかし、審判請求書に添付の証拠方法を検討しても、使用されている「話力」は、自他役務識別のために使用されているものではなく、「話し方が心格力・内容力・対応力の相乗であること」の教授内容を簡単にして端的に説明するものとして使用されているにすぎず、各甲号証では、これを意味するものとして使用されている「話力」の証明にすぎない。
なお、甲第61号証は出講日時、出講先の一覧表であっても、これによって「話力」商標が周知であることは証明されていない。
ウ.請求人の主張に対する反論
(ア)取引者からの証明書の説明として、いずれも請求人が長年にわたり永崎所長又は所員を講師として派遣し講演・研修を行っており、「話力」の商標が使用されたことが派遣先である学校、企業、施設によって証明されているとする。
ただ、これらの派遣先において行われている講演、研修は「話力講座研修」「話力研修」「話力講習会」として実施されており、「話力」そのものが使用されてはいない。すなわち請求人において使用している「話力」は上記のように教授・講座内容を端的に示すものとして使用されているにすぎず、しかも証明者においてもそのように認識しているにすぎない。
(イ)同業者からの証明書の説明として、これらの同業者は互いの業務を尊重し調和を図りつつ業界の発展のために適宜意見や情報を交換し、請求人の業務内容等に関し当然に認識しているとし、請求人が「話力」の用語を使っていたとする。
しかし、これらの同業者の証明は、「話力学」が請求人が実施している組織的・体系的な講座内容そのものを端的に表示していることを認識しているにすぎず、講座・セミナー名中の一部として「話力」用語が含まれていても、「話力」自体そのものが実際上での識別標識として使用されていることを明らかにしていない。
(ウ)専門家からの証明書の説明として、これらの専門家が「話力理論」の強化に周辺科学の立場からのアドバイスをし、請求人会社の設立以来関与している等とし、「話力」には永崎一則の独自の理論があるとしている。
しかし、これらの専門家の証明も上記の同業者のそれと同様に、「対話論(話力学)」が請求人が実施している組織的・体系的な講座内容そのものを端的に表示していることを認識しているにすぎない。また、「話力」は永崎一則の話し方・聴き方についての独自理論を体系化した内容を端的に表示していることを認識しているにすぎない。しかも、専門家においての請求人から了解を得た「話力」用語の使用自体は、その独自理論の内容そのものを表示する一方法としているにすぎない。いずれにしても、請求人が実施している講座・セミナー名中の一部として「話力」用語が含まれていても、「話力」自体そのものが実際上での識別標識として使用されていることを明らかにしていない。また、証明者が専門家であったとしても、請求人会社の設立以来の関与、業務に対するアドバイス等をしているとしたら、その証明は客観性に欠けるといわざるを得ない。
(1)本件商標は、「話力」の文字からなるものであるところ、その構成中前半の「話」の文字は、「はなしをする。はなし。ものがたり」を意味し、「話術」や「話法」等として用いられる語であり、また、後半の「力」の文字は、「ちから。はたらき。能力」を意味し、「読解力」等の用例がある語として、ともに親しまれたものであるから、「話力」が両語を結合した文字であると容易に認識させるものというのが相当である。
しかし、「話力」の文字が、固有の語義を表す既成語であるとすべき資料はない。
(2)請求人の提出した甲号証によれば、以下が認められる。
ア.請求人は、昭和48年11月1日に設立された法人であり、現に「話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催」の役務を提供する者であることが認められる(甲第2号証及び甲第3号証)。そして、平成元年4月5日付で宮城県農業協同組合中央会からの講師依頼を受けたのを始め各所から講師派遣の依頼を受け(甲第4号証ないし甲第8号証)、永崎一則所長ほかの講師を派遣してきたことが認められる。
イ.パンフレットについて
(ア)甲第9号証ないし甲第11号証のパンフレットの表紙には、いずれも「話力」の文字が表示されている(なお、これらパンフレットの作成日は不明ではあるが、これらに現れた請求人の名称が商号変更前の「話力研究所」であること、郵便番号が3桁であることから、遅くとも平成4年1月1日以前のものとみることができる。)。
そして、甲第9号証の表紙には、上記「話力」の文字のほかに、「自分の話力に満足していますか?」「あなたの潜在話力を伸ばすお手伝いをします」との記載があり、また、後続頁において、「話力とは・・・」として「話力とは豊かな人間性、密度の高い内容力、その場に応じた対応力の相乗です。効果的な話をするためには、どの要素も欠かすことができません。・・(中略)・・。話力を高めることによって明晰な思考力が身につき、円満な人柄の向上となり、そして明るい人間関係を拡げることができます。話力こそは、多くの人とのかかわり合いをもって生きている、現代人の必須の資質といえます。」との記述が掲載されている。
また、甲第10号証の続葉には、「話し方とは」「話術とは」「話芸とは」のそれぞれについての説明があり、これらと同じように、「話力とは」として、「対話において、効果に与える影響力を話力(話す力・聞く力)と言う。それは豊かな人間性と密度の高い内容力、相手に対する的確な対応力の相乗である。そうなると話力とは人間の総合力であるともいえる。これを高めることによって、明晰な思考力が身につき、円満な人格の向上になり、そして明るい人間関係の拡大をもたらす。話力こそ現代に生きるだれもが身につけなければならない必須の力であろう。」との記述がなされている。甲第11号証にも、甲第10号証と全く同様の記述がある。
してみると、これら表紙の「話力」は、上記の記述された内容を端的に示したものとして看取されるというのが相当である。
(イ)甲第12号証ないし甲第17号証のパンフレットは、昭和56年度から平成4年度にわたるものと認められるところ、甲第12号証ないし甲第16号証の表紙には、「話力」及び「第一講座」の文字が二段に表示されている。しかし、他の箇所では「話力第一講座内容」「話力第一講座日程」「話力第一講座受講申込書」のように一連に表されており、また、「話力(話す力・聞く力)をもっと磨いて、これらの能力を伸ばし、はつらつと手ごたえのある人生を築こうではありませんか」との記述があることをも併せみれば、表紙の両文字は、紙幅との関係で二段に表されてはいるけども、一連の講座内容・講座名称を表示したものとして把握されるというべきものである。 甲第17号証の表紙には、小さく「すばらしい人間関係をつくる」の文字を冠した黒塗りの半円形内に白抜きにした「話力」の文字とその下段に「常設セミナーのご案内」の文字が表示されている。しかして、その続葉の頁には、「常設セミナーは、ステップを踏みながら、確実に”話力”を身につけていただくよう、科学的に組んであります。」との記述があり、また、講座を1から6の順に進む旨が記載され、その「1講座」として「自分を大きくのばし、明るい社会生活を送るための話力を身につける」との記述があることから、表紙の「話力」は当該セミナーの内容の表記として把握されるいうのが相当である。
(ウ)甲第26号証ないし甲第29号証のパンフレット(なお、甲第30号証ないし甲第35号証は本件商標の出願日後に係るものである。)には、「話力講座のごあんない」「話力第1講座」等「話力」の文字を含む表示があり、また、甲第9号証と同様の「話力とは・・・」としてその説明と図示があり、「話力をつけて人生をゆたかに」との記載があるが、「話力」が独立して識別標識として看取されるといい得るものは、見出せない。
(エ)以上を総合してみれば、当該パンフレットの表紙に表示された「話力」は、講座・講義やセミナーの内容が話力(話す力・聞く力)を身につけるための講座等である旨を端的に指し示す語(文字)として用いられ、看取させるものというべきであるから、自他役務の識別標識としての機能を果たす標章としては認識され得ないとみるのが相当である。
なお、請求人が講師を派遣した講座等に関して、上記パンフレットが具体的にどのように配布されたか否かは定かでない。配布されたと仮に推認したとしても、当該「話力」は、上述のとおり、講義等の内容を端的に表示する文字として看取されるに止まるものとみるべきである。
したがって、本件商標の出願前に、斯かる使用態様で標章が使用されたとしても、これによって当該標章が需要者の間に広く認識されるに至った商標となっていたとすることはできないというべきである。
また、使用された結果、前記パンフレット記載の意味合いを凌駕して、役務の出所を表示するものとして認識されるに至っていたと認めることもできない。
ウ.証明願について
(ア)甲第37号証、甲第38号証、甲第41号証及び甲第42号証は、請求人の証明願であるが、これらには、請求人から「下記の内容に相違ないことをご証明願います。」とし、その下記には「(1)(2)(3)」の各項の記載があり、「上記の通り相違ないことを証明します。」として、日付と証明者の氏名又は名称が記載され押印がされた形式のものである。
これによれば、当該(2)項目における請求人の「当該証明者への講師派遣の事実」については概ね推認し得るとしても、しかし、(1)項目の「昭和47年12月の創立以来30年以上にわたり商標『話力』を継続して使用して」いること、及び(3)項目の「『話力』の商標は、遅くとも平成4年(1992年)頃までには、請求人の業務に係る役務『話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催』を表示するものとして、官庁、企業はもとより、話し方・聴き方に関心を寄せる需要者の間に広く認識されていたものである」との包括的な記載事項について、証明者がいかなる具体的状況の下で「上記の通り相違ないことを証明します。」とし得たのかは定かでなく、俄には得心し難いといわざるを得ないものである。
甲第43号証ないし甲第48号証も、当該証明願に項番号がない等文面上で若干の相違はあるものの、記載内容からみて、上記と同様のものといわざるを得ない。
(イ)甲第52号証ないし甲第55号証は、同業者の証明として提出された請求人の証明願であるが、これらも、上記(ア)と同様の形式のものである。
しかして、これらの証明者はいずれも「話の研究と『話し方教室』を主宰している」同業者とされているが、請求人との関わりの程度等も定かでなく、また、「請求人が一貫して標榜した商標『話力』」が具体的に何を指し示すものであるのか等いかなる具体的状況の下で「上記の通り相違ないことを証明します。」とし得たのか得心し難い点が多く、これをもっては、各証明事項について首肯し難いものである。
(ウ)甲第56号証、甲第58号証ないし甲第60号証は、専門家の証明として提出された請求人の証明願であるが、これらも、上記(ア)と同様の形式のものである。
証明者の経歴や肩書き等から推察して、請求人の永崎一則所長が「対話論(話力学)」を講じ、話力の用語を使っていたことを証明者らが知悉していたとする点については首肯し得るとしても、当該用語の学術的な使用とそれが商標として使用されたこととが必ず直結するものとはいえない。しかして、証明者が話し方や聞き方等に関する研究者・専門家であったとしても、請求人が昭和47年12月以来30年にわたり商標「話力」を一貫して標榜したこと、また、それが平成4年頃までに、官庁、企業はもとより、話し方・聴き方に関心を寄せる需要者の間に広く認識されていたものであることについて、「上記の通り相違ないことを証明」し得るか、具体的に何をもってそう証明し得るのか不明というほかない。
甲第58号証の証明者が、その(4)項で「『話力』の商標を講座、講演等で終始使用していることを認識していること」を証明するとしているが、当該証明者が請求人設立当時より特別講師として、周辺科学の立場からアドバイスしてきた人ではあっても、たとえば如何なる態様での使用があったか等、具体的に何をもってそう証明したのかは不明というほかない。
(エ)なお、甲第39号証及び甲第40号証、甲第49号証ないし甲第51号証は、当該証明者への請求人の講師派遣の実績を示すに止まるというべきである。
エ.また、一部を切り欠いた6重の円形図形の切り欠け部に「話力」の文字を縦書きしてなる標章が、甲第9号証ないし甲第16号証、甲第21号証及び甲第22号証のパンフレットに表示されているが、全証拠を総合してみても、当該標章が需要者の間で広く認識されるに至っていたと認め得る的確な証左は見出せない。
さらに、「話力総合研究所」「話力研究所」等「話力」と他の文字を結合した標章が使用されているが、その構成中の「話力」のみが略称等として広く認識されるに至っていたとすべき証左もない。
オ.上記のほか、「話力運動の歩み」及び「話力運動二十年の歩み」(甲第18号証及び甲第19号証)や講師派遣の日程(甲第20号証ほか)等請求人の活動に関する事項が示されている。しかし、講師派遣の実績、「話力」の文字を含む題号の書籍の発行や話力に係る説明があること等を認め得るとしても、標章「話力」が自他役務の識別標識として使用されたとする的確な証拠は、見出せない。
(3)以上によれば、請求人の使用標章「話力」は、本件商標の出願日の時点において、請求人の業務に係る役務「話し方・聴き方に関する知識の教授、話し方・聴き方に関する講演会・研修会・セミナーの企画・運営又は開催」を表示する商標として、需要者の間で広く認識されるに至っていたものと認めることはできないといわざるを得ない。
してみれば、本件商標は、その出願の時点において、他人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その役務又はこれに類似する役務について使用をするものということはできないから、商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。
(4)したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項により無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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