結論テキスト
その余の指定役務についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2006−89020(T2006−89020/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4908994号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成17年2月4日に登録出願され、第35類「広告,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約購読の取次ぎ,速記,筆耕,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与,求人情報の提供,自動販売機の貸与,顧客管理,顧客管理に関するコンサルティング,顧客管理に関する指導及び助言」及び第38類「電気通信(放送を除く。),放送,報道をする者に対するニュースの供給,電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与,電気通信に関する情報の提供」を指定役務として平成17年11月18日に設定登録されたものである。
請求人が引用する登録第4837183号商標(以下「引用商標1」という。)は、「T−Com」の文字を標準文字により表してなり、平成12年9月22日に登録出願され、第35類「トレーディングスタンプの発行,財務書類の作成,新聞の予約購読の取次ぎ,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作」、第38類「移動体電話による通信,テレックスによる通信,電子計算機端末による通信,電報による通信,電話による通信,ファクシミリによる通信,無線呼出し,テレビジョン放送,有線テレビジョン放送,ラジオ放送,報道をする者に対するニュースの供給,電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」ほか、第9類、第16類、第36類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として平成17年2月4日に設定登録されたものである。同じく登録第3281287号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、平成5年6月30日に登録出願され、第35類「広告,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,書類の複製,速記,筆耕,文書又は磁気テープのファイリング,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与」を指定役務として平成9年4月18日に設定登録されたものである。以下、これらをまとめていうときは「引用商標」という。
請求人は、本件商標の登録を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第12号証を提出している。
(1)本件商標の称呼
(ア)図案化されデザイン化された文字商標について
本件商標においては、「O」の文字が青色で塗り潰されて、「c」と「m」の文字が繋げられている。しかるに、図案化されデザイン化された文字商標の取扱及び需要者の反応からすれば、本件商標は、「T−com」の「o」の文字が図案化され、「c」と「m」の文字が繋げられてデザイン化された文字商標「T−com」と捉えられ、「ティーコム」と称呼されるは必定である。
(イ)本件商標の現実の取引における称呼
本件商標は、商標権者のホームページ上で使用されてきた。以前は、本件商標と共に同じホームページ内に「T−comコールセンター事務局」なる文字があった(甲第4号証)、現在では、本件商標は「@」マークが付加されてハイフンを省略して同じ構成文字からなる「@TCOM」としてホームページ上に表示され、同じホームページ中で「商標@TCOM(アットティーコム)」並びに普通に用いられる方法で書された「@TCOMインターネット接続サービス」なる記述がある(甲第5及び第6号証)、また、インターネット接続サービス安全・安心マーク推進協議会の報道関係者向けの資料においても「T−com CATV インターネット 株式会社トーカイ・ブロードバンド・コミュニケーションズ」と表示され(甲第7号証)、本件商標が「T−com」商標として称呼されることを窺わせている。加えて「株式会社トーカイ・ブロードバンド・コミュニケーションズ(以下@TCOM...)」の記述からも、本件商標の「T−com」商標として称呼されることを窺わせている(甲第5号証)。
以上の現実の取引における本件商標の称呼に鑑みても、当該商標が「ティーコム」と称呼されるといえる以上、引用商標との類否判断に際しての本件商標の称呼は「ティーコム」と認定されるべきである。
(ウ)本件商標の指定役務との関係での「com」の称呼
今日、本件商標の指定役務中第38類の通信の分野では「com」が「communication」の略として商標の構成要素として頻繁に採択使用されているため、第38類の指定役務に使用された商標の「com」の部分がたとえかなりデザイン化又は図案化されていても、頭の中にある上記認識で補完することによって当該部分を「コム」と称呼できるといえる以上、本件商標は「ティーコム」と称呼される。
(エ)特許庁における称呼
本件商標について、独立行政法人工業所有権情報・研修館の電子図書館(以下「電子図書館」という。)の登録情報において「【商標(検索用)】T−com」とし、「【称呼】ティコム」としている(甲第1号証)。すなわち、特許庁自身本件商標を「T−com」なる商標として捉え、「ティコム」と称呼するとしている。そして、本件商標のみならず、登録第4119098号商標等のような「COM」の部分がデザイン化又は図案化された商標であっても「○○COM」からなるものであって、当該部分を「コム」と称呼している(甲第9ないし第12号証)。
(オ)本件商標の称呼についてのまとめ
以上の理由から、本件商標は「ティーコム」ないしは「ティコム」と称呼されるものとなる。
(2)本件商標と引用商標との類否
引用商標1は、その構成からして「ティーコム」ないしは「ティコム」と称呼されることは明らかである。また、引用商標2は、「T・COM」の部分が顕著に表示されているので、時として「ティーコム」ないしは「ティコム」と称呼されるものといえる。
したがって、本件商標と引用商標とは、「ティーコム」ないしは「ティコム」の称呼を共通にする称呼上相紛らしい類似商標となる。
引用商標が本件商標の先願先登録であって、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務が同一又は類似であることは明らかである。
(3)結び
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するにもかかわらず登録されたものであり、その登録は同法第46条第1号によって無効とされるべきである。
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第11号証を提出している。
(1)本件商標の称呼
本件商標は、何ら特定の観念を生じさせない図形として把握認識されるものである。すなわち、本件商標は、欧文字「T」に続けて「−」(ハイフン)を配し、その右側に「c」と思しき図形と「m」と思しき図形を連綴して、これらを黒色で表し、前記「c」と「m」との接続部分の背後に表れるように青色の球状の図形を配置してなるものである。
本件商標の構成要素中の「−」(ハイフン)の左側は欧文字の「T」を表したものと看取できるが、ハイフンの右側にあっては、「c」と思しき図形と「m」と思しき図形とが連なって表されており、かつ、その連なった部分の背後に青色の球状図形が見えるように配置されているので、このハイフンの右側は文字と図形とが渾然一体となった極めて特異な構成となっているものである。特に、青色の球状の図形部分については、「c」と「m」との接続部分が球状の表面に沿うように緩やかな曲線状に表されている。そのため、当該球状部分は、球状の図形とその表面に現された黒色の曲線部分とが一体感をもった構成となっている。
そして、本件商標における「c」と「m」の部分は「cm」が連なって表されているので、この連なった「cm」の間に何らかの文字を介在させて称呼することは極めて不自然であり、当該部分から「コム」の称呼が生ずる余地はない。
したがって、本件商標は、特定の称呼によって取引に資されるものではなく、特定の称呼を生じさせないものであり、「ティーコム」又は「ティコム」の称呼を生じさせるものではない。
この点につき請求人は、本件商標から「ティーコム」又は「ティコム」の称呼が生ずると主張しているが、そのいずれについても理由がない。以下、請求人の主張に対して具体的に反論する。
(ア)図案化されデザイン化された文字商標の取扱について
請求人のかかる主張は、文字商標と図形商標とを同一視し、図形商標特有の需要者に与える認識等を無視するものであり、当を得ていない。
確かに、文字としての機能が殆ど捨象されていない程度の図案化が施された商標については、そのやや図案化された文字から生ずる称呼に照応して、他人の商標との類否判断がされることはあろう。
しかしながら、本件商標においては、その構成上、欧文字「T」に続けて「−」(ハイフン)を配し、その右側に「c」と「m」とを連綴して、これらを黒色で表し、前記「c」と「m」との接続部分の背後に表れるように青色の球状の図形を配置してなるものである。特に、青色の球状の図形部分については、「c」と「m」との接続部分が球状の表面に沿うように緩やかな曲線状に表されている。そのため、当該球状部分は、球状の図形とその表面に現された黒色の曲線部分は一体感をもった構成となっている。
ここで、欧文字の「O」の文字としての本質的な特徴は、やや縦長の楕円であり、その楕円の内側及び外側には他の線を配しないものであると思料されるところ、本件商標の構成要素中の「青色球体」の図形部分には前記のとおり、球状図形に左下から右上方向に斜めに表された曲線が一体感を持って付加されていることから、当該図形は、欧文字「O」の本質的特長を備えていないというべきである。
したがって、本件商標の構成要素中の青色球状の図形は、欧文字の「O」とは認識されない。
また、商標が具体的構成を抜きにして存在し得ないものであることはいうまでもないところである。かつては電話による商取引やラジオ放送による広告等が多く用いられ音声(称呼)による識別が重視されていた事実があるにせよ、今日の通信手段の格段の進歩によって、特に商取引の場では音声(称呼)だけによることはむしろ稀であり、商標は、そのままの形で表現され、把握されるのが殆どである。そして、商標の外観が重視されることは、転々流通する商品の商標よりも提供者と需要者の結びつきが密接なサービスにおいて特に顕著である。文字と図形とが渾然一体となった本件商標のような場合には、これを無視して何らかの称呼で表現するよりも、これをそのままの形で一種のロゴマークとして認識し、取引に資されるというのが自然である。
よって、本件商標は特定の称呼の生じない図形とみるべきものであるから、本件商標から「ティーコム」又は「ティコム」の称呼は生じない。
かかる被請求人の主張が独自のものでないことを示す証拠として、商標の構成要素中に本件商標と同程度若しくは低度の図案化が施された欧文字の「O」と思しき図形を含む商標について、その図形が欧文字「O」と認識されるか否かが商標の類否判断の前提となった事案において、当該部分が「O」の欧文字とは認識されず、図形として認識されるとの認定の下に商標が非類似と判断された審決例を提出する(乙第1ないし第5号証)。
(イ)本件商標の現実の取引における称呼について
請求人は、「以前は本件商標と共に同じホームページ内に『T−comコールセンター事務局』なる文字があった(甲第4号証)ので、当該ホームページを閲覧した需要者は本件商標が『T−com』をデザイン化したものと捉えたであろうことは容易に推測される」と主張している。
しかしながら、このホームページは、現在存在していないものであり、2001年9月当時に新種のウィルスに注意を喚起するため被請求人が公表したものである。そして、「T−comコールセンター」という表示は、当時の被請求人の組織における部局名を表したものに他ならず、本件商標とは無関係であるから、「T−comコールセンター」という部局名が存在したことをもって本件商標が「T−com」と捉えられるとするのは妥当でない。
また、請求人は、本件商標から「ティーコム」の称呼が生ずることの根拠として、被請求人のホームページ等において「@TCOM」及び「@TCOM(アットティーコム)」の表示が使用されていることをあげている(甲第5及び第6号証)が、本件商標と「@TCOM」とは、その構成文字を異にする商標であり、また当該商標から生じ得る称呼は、その称呼全体が不可分一体の「アットティーコム」であるから、当該商標の存在により本件商標の称呼が特定されることはない。
さらに、請求人が「インターネット接続サービス安全・安心マーク推進協議会の報道関係者向けの資料」において「T−com CATV インターネット 株式会社トーカイ・ブロードバンド・コミュニケーションズ」の記載がされているとし提出している甲第7号証についても、これは、平成16年11月1日当時の資料であることに加えて、当該ホームページにおいて本件商標は全く表示されていないから、当該ホームページの存在が本件商標の称呼を特定するための根拠とはならない。
そして、請求人は、前記のような事実が存在するから、それら現実の取引における商標の称呼を勘案して本件商標の称呼を認定すべきであると主張しているが、請求人が甲第4ないし第7号証として示す事実は、いずれも前記のとおり本件商標の称呼を特定するための根拠とはなり得ないものであることに加えて、商標の類否判断において現実の取引実情を考慮するということであれば、現実の取引界において本件商標と引用商標との混同が全く生じていないという実情こそ考慮されるべきである。すなわち、被請求人は、主として通信事業を営むものであるところ、その事業において今日に至るまで本件商標と引用商標との間で実際に混同が生じた事実は存在していない。そうとすれば、現実の取引界においても、本件商標と引用商標とはその役務の出所につき誤認混同のおそれはないものというべきである。
(ウ)本件商標の指定役務との関係での「com」の称呼について
請求人が主張するように、実際に通信の分野において「com」が「communication」の略語として広範に使用され、「○○com」なる商標が多数併存して登録されているのであれば、当該分野における「○○com」商標の類似範囲は極めて狭いというべきである。すなわち、「○○com」商標が多数採択使用されている状況下において、当該分野における需要者は、その役務の提供主体を区別するため、極めて僅かな商標の構成要素の相違についても注意深く観察することに慣れていることになる。
そして、請求人が主張するように、本件商標の図形部分を、上記市場における認識によって補完して「com」の文字を把握するような需要者は、同時に、本件商標の外観上の特徴についても頭の中でイメージする。そうとすれば、商標の外観構成上の顕著な差異により、本件商標と引用商標とは十分に区別し得るものである。
(エ)特許庁における称呼について
電子図書館の登録情報において、検索用商標や検索用称呼は、あくまでも参考として付与されているものに過ぎず、直ちにこれらの参考称呼等が商標の類否判断における称呼とならないことは特許庁において顕著な事実である。このことは、特許庁の審査において、本来識別性が欠如する商標(商標法第3条第1項第5号)として登録性が認められない欧文字2文字より構成される商標であっても、これがモノグラム化されることにより図形としての識別性が認められ、登録されている商標ですら、電子図書館の登録情報においては検索用商標及び検索用称呼が付与されていることからも明白である。当該事実の一例を示す資料として、「c」と「m」の欧文字をモノグラム化した商標について電子図書館の商標情報を提出する(乙第6ないし第8号証)。
(オ)まとめ
本件商標は、特異な図形より構成されるものであり、その態様から特定の称呼を生じさせないものである。よって、本件商標からは、「ティーコム」又は「ティコム」の称呼は生じない。
(2)本件商標と引用商標との類否
(ア)前記のとおり、本件商標からは「ティーコム」又は「ティコム」の称呼は生じないから、本件商標と引用商標とは、その称呼において共通するところがない。また、本件商標は、前述のとおり、極めて特異な図形より構成されるものであるから、その外観において、本件商標と引用商標とは、明白な差異を有する。さらに、本件商標からは特定の観念は生じないから、その観念においても、両者は共通するところがない。
したがって、本件商標と引用商標とは、その称呼、外観及び観念のいずれにおいても共通するところのない非類似の商標である。
(イ)さらに念のため、仮に、本件商標から「ティーコム」又は「ティコム」の称呼が生じ得るとした場合についても検討するに、そのような場合であっても、本件商標と引用商標とはその外観において顕著な差異を有するものであるから、両商標は、相紛れることのない非類似のものである。すなわち、商標の類似判断においては、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきものであり、両商標それぞれが有する称呼、観念及び外観を観察し、それらが取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察されるべきであって、前記3要素の特定の1つを対比することのみによってなされるべきではない。つまり、対比される両商標が、その称呼において近似するものであるとしても、その外観等において顕著に相違し、その差異が称呼上の近似性を上回り、全体的には相紛らわしくなく出所の混同が生ずるおそれがないときには、非類似の商標と判断されるべきである。
この観察方法に基づく類否判断は、多くの審決例、裁判例においても、広く採用されているものである(乙第9ないし第11号証)。
ここで、本件商標と引用商標とを総合的に考察するに、本件商標と引用商標とは、その外観において明確な差異を有することは明らかである。
このように、両商標の観念及び外観は著しく相違し、両商標がその取引者、需要者に与える印象、記憶及び連想は著しく相違している。特に、本件商標が使用される通信サービスの分野においては、前記のとおり、「com」の文字を含む商標が多数存在していることから、商標の僅かな違いについても、十分な注意が払われると考えられ、その選択に際して、取引者、需要者が、単に称呼のみによって役務を識別し購入するとは考え難く、両商標の外観構成を連想するなど、役務の出所につき十分注意を払って取引にあたると考えられる。
また、役務の分野においては、役務の提供者と需要者の結びつきが密接であるため、本件商標のように文字と図形とが渾然一体となった商標の場合には、これを無視して何らかの称呼で表現するより、これをそのままの形でロゴマークとして把握、認識されるというのが自然であり、商標の有する外観及びイメージが他の商標と比較する際に極めて重要な要素となる。
したがって、本件商標と引用商標とは、その観念及び外観において顕著な差異を有するものであり、その取引者、需要者に与える印象、記憶、連想は著しく相違するものであるから、これらを総合的に考慮すれば、両商標は、その指定役務に使用しても、取引者、需要者が役務の出所につき混同を生ずるおそれのないものである。
(ウ)以上より、本件商標と引用商標とは、その称呼、観念及び外観のいずれにおいても相紛れることのない非類似のものである。また仮に、本件商標と引用商標とがその称呼において共通するところがあるとした場合であっても、その外観において顕著な差異を有するものであるから、外観、称呼及び観念を総合的に考察すれば、その指定役務に使用しても出所の混同を生ずるおそれのない非類似の商標である。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものではない。よって、本件審判の請求は成り立たない。
(1)本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、別掲(1)のとおりの構成からなるところ、昨今は、商品や役務の取引場裏において使用される商標等の文字の図案化が盛んに行われており、かなり図案化された文字であっても、その文字が配置された状態やその前後の文字との関係において、特定の文字を表したものと認識し理解され、称呼されることが少なくないことを考慮すると、本件商標中の「T−」の文字部分に続く部分は、かなり図案化されているとはいえ、「com」の文字を図案化したものとして認識し理解され、「コム」と称呼されるとみても不自然ではない。そうすると、本件商標は、全体として「ティーコム」又は「ティコム」の称呼を生ずるというべきである。
この点に関し、被請求人は、本件商標中の「T−」の右側部分は文字と図形とが渾然一体となった極めて特異な構成であって、「c」の文字と「m」の文字とが連なって表され、その接続部分の背後に青色の球状図形が配置されており、該青色の球状図形は「o」とは認識されないので、両文字の間に何らかの文字を介在させて称呼することは不自然である旨主張する。
しかしながら、この「c」及び「m」の文字を接続する曲線部分は、青色の球状図形と重なっており、その存在が必ずしも明確ではないし、青色の球状図形は、その前後の「c」及び「m」の文字とほぼ同じ大きさであって、「o」の文字を塗り潰したような球状であることに加え、「com.」が「commercial」、「commission」、「communication」等の省略形として知られていること、役務「通信」の分野では「com」が「communication」の略としてしばしば採択使用されていることなどからすれば、本件商標に接する取引者、需要者は、「c」及び「m」の文字に挟まれた青色の球状図形を「o」の文字を図案化したものとして認識し把握して、上記「com.」ないしは「com」を連想、想起することも少なくないというべきであり、本件商標中の「T−」の右側部分を「コム」と称呼するものというのがむしろ自然であるから、被請求人の主張は採用することができない。
他方、引用商標1は、その構成文字に相応して、「ティーコム」又は「ティコム」の称呼を生ずるものである。また、引用商標2は、別掲(2)のとおりの構成からなるところ、上段部分は、大きく目立つように表されており、下段の文字部分とは分離独立してそれ自体が自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものである。そして、上段部分の「T」及び「COM」の文字に挟まれた図形部分は、全体との対比からすれば、ハイフン又は黒点のように看取されるに止まり、それ自体を抽出して称呼、観念されるものともいえないから、引用商標2は、大きく顕著に表され、読み易い「T」及び「COM」の文字を捉え、「ティーコム」又は「ティコム」の称呼を生ずるものといえる。
してみれば、本件商標と引用商標とは、「ティーコム」又は「ティコム」の称呼を共通にする類似の商標といわなければならない。
なお、被請求人は、仮に本件商標から「ティーコム」又は「ティコム」の称呼が生じ得るとしても、本件商標と引用商標とは、観念及び外観が著しく相違し、その差異が称呼上の近似性を上回り、全体的には相紛らわしくなく非類似の商標である旨主張するが、本件商標は、上記のとおり、図案化されているとしても、「T−com」を表したものと認識し把握されるものであるから、引用商標とは綴り字を同じくするものというべきであって、看者に与える文字としての印象、記憶、連想等は同じといえる。そうすると、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念を全体的に見ても彼此相紛らわしいものであり、殊更、外観及び観念の相違が称呼上の類似性を凌駕するものではない。よって、被請求人の主張は採用することができない。
(2)本件商標の指定役務について
本件商標は、上記1のとおり、第35類及び第38類に属する役務を指定役務とするものであるところ、そのうちの第35類「職業のあっせん,求人情報の提供,自動販売機の貸与」以外の役務は、引用商標の指定役務と同一又は類似といえるものである。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定役務中第35類「広告,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約購読の取次ぎ,速記,筆耕,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与,顧客管理,顧客管理に関するコンサルティング,顧客管理に関する指導及び助言」及び第38類「電気通信(放送を除く。),放送,報道をする者に対するニュースの供給,電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与,電気通信に関する情報の提供」については、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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