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Trademark Appeal Case

商標使用と著作物題号

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年審判第30650号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。
審判費用は,請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第2014772号商標(以下「本件商標」という。)は,後掲に示したとおりの構成よりなり,昭和60年6月1日に登録出願,第24類「おもちゃ,その他本類に属する商品」を指定商品として,同63年1月26日に設定登録,その後,平成10年2月17日に商標権存続期間の更新登録がなされているものである。

2 請求人の主張

請求人は,本件商標の指定商品中,第24類「おもちゃ,人形(マネキン人形,洋服飾り型類を除く。)」についての登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,と申し立て,その理由及び答弁に対する弁駁を以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。

(1)理由

本件商標は,その指定商品中「おもちゃ,人形(マネキン人形,洋服飾り型類を除く。)」について,継続して3年以上日本国内において使用されていないのみならず,本件商標を使用していないことについて正当な理由が存しない。さらに,本件商標について専用使用権の設定又は通常使用権許諾の登録もないから,商標法第50条第1項の規定により,その登録を取り消されるべきものである。

(2)答弁に対する弁駁

被請求人は,「被請求人は,ソニー・エンターテイメント製家庭用テレビゲームおもちゃ『プレイステーション』に使用する専用のプログラムを記憶させたCD−ROMとして,『ナムコミュージアム VOL1』及び『ナムコミュージアム VOL3』を製造・販売しているところ,これらの商品の包装表面に商標『ポールポジション』及び『POLE POSITION』を使用しているものである(乙第1号証)。」と主張している。

しかしながら,被請求人が指定商品に「商標」を使用していることは,認められない。

すなわち,被請求人の「ポールポジション」及び「POLE POSITION」の使用は,著作物の「題号」としての使用であり商標法が規定するところの「商標」の使用には該当しないからである。そもそもコンピューター用ゲームについては,そのプログラム自体やそのアウトプットである映像は,思想又は感情の創作的な表現としての面を有し,いずれも著作物性を承認しているものであるところ,一般に著作物の題号は,専らその創作物としての内容を表示するための名称として,普通に用いられる方法で著作物を含む商品に表示されている場合には,仮に右題号が,その指定商品について登録された商標と同一ないし類似している場合であっても,自他商品識別標識としての機能を果たす態様で用いられている標章でないものと解されるべきだからである。けだし,著作物の題号は,上記の趣旨で用いられる場合においては,商品を識別し,その出所を明らかにするという,商標の機能を有しない上,著作物の制作者や出版者においても,著作権法に反しない限り,その創作物を出版したり,これを引用する際などにおいても,その自由な使用を確保すべき公益的な要請が高いものだからである。そして,このような著作物の題号に対する法的保護は,コンピューター用ゲームを記憶させた著作物であるプログラムについて,創作者がその創作物としての内容を表示する名称として,題号ないし名称を付した場合においても,書籍の題号の場合と異なるところはないものと考えられるのである。この法理は,いわゆる「三国志事件」の千葉地方裁判所平成5年(ヨ)第702号,平成6年3月25日決定においても支持されるものである(甲第3号証)。

そこで,被請求人が提出した乙第1号証の使用態様を検討するに,同号証の1枚目の上下に写されたものは,コンピューター用CD−ROMのパッケージングの包装表面の表側部分の写しと認められ,右上部に「Namco記号(登録商標であることを示すマルアール)」,上部に「ナムコミュージアムTM」,右下部に「PlayStationと図形」が記載されている。そして,これらの記載中「Namco記号(登録商標であることを示すマルアール)」,「ナムコミュージアムTM」,「PlayStationと図形」の部分は,一般的な商標的な使用態様と認められなくはない。しかしながら,「ポールポジション」「ポールポジション 2(ローマ数字)」の部分は,その意味からしてCD−ROMの中に含まれるコンピュータープログラム自体の内容を表示するものであって,CD−ROMという商品に付された商標としては認められない。また,同号証2枚目にコンピューター用CD−ROMのパッケージングの包装表面の裏側部分の写しと認められるものも提出されており,そこには,表側に記載した著作物であるゲームのプログラムの名称とその中の一部の画像を抽出したものが表されている。これらは,上述したとおり,著作物を構成する部分となっており,ここに記載された「POLEと図形」と「POSITIONと図形」から構成されるものは,著作物の題号にほかならず「商標」ではない。被請求人は,乙第3号証及び乙第4号証において「ソニー・コンピュータエンタテイメント宛請求書」なるものを提出しているが,そこに記載されているのは,「PSX.Nミュージアム1」と「PSX.ナムコミュージアムVOL3」に関する請求にすぎず,乙第1号証の商品であることは,特定し得ない。特に,前者の「PSX.Nミュージアム1」中の「N」の意味は,不明である。また,たとえ,これが乙第1号証に記載されたコンピューター用CD−ROMの請求書に係るものであったとしても,そもそも,当該CD−ROMとの関係において「ポールポジション」,「ポールポジション 2(ローマ数字)」,「POLEと図形」と「POSITIONと図形」からなる名称は,商標法上の商標としては機能していないものであるから,被請求人に係る商標の使用とはなり得ない。

3 被請求人の答弁

被請求人は,結論同旨の審決を求める,と申し立て,その理由を以下のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。

(1)第一回答弁

被請求人は,ソニー・コンピュータエンターテイメント製家庭用テレビゲームおもちゃ「プレイステーション」に使用する専用のプログラムを記憶させたCD−ROMとして,「ナムコミュージアム VOL1」及び「ナムコミュージアム VOL3」を製造・販売しているところ,これらの商品の包装表面に商標「ポールポジション」及び「POLE POSITION」を使用しているものである(乙第1号証)。

商品の包装の表面に表示されている商標「ポールポジション」は,ローマ文字「POLEPOSITION」を片仮名文字で表示するものであって,同一の称呼及び観念を生じ,社会通念上,登録商標と同一と見られる範囲のものである。

そして,商品の包装裏面に表示されている商標「POLE POSITION」もまた,やや図案化されてはいるものの本件商標と同一の称呼及び観念の生じる社会通念上同一と認められる商標である。

「ナムコミュージアム VOL1」は,1995年11月22日に,「ナムコミュージアム VOL3」は,1996年6月21日に販売開始され,現在も販売されている(乙第2号証及び乙第3号証)。

したがって,本件審判の請求は,成り立たない。

(2)第二回答弁

請求人の提出した平成12年3月7日弁駁書に対し,以下,反論する。

審判請求人は,被請求人が指定商品に「商標」を使用していると認めることはできないという。その理由として,被請求人が家庭用テレビゲームおもちゃ用プログラムを記憶させたCD−ROM「ナムコミュージアム VOL.1」及び「ナムコミュージアム VOL.3」(以下,まとめて「本商品」という。)の包装表面に記載された「ポールポジション」又は「POLE POSITION」の使用が著作物の題号としての使用であり,商標法が規定するところの「商標」の使用に該当しないからだという理由を挙げている。

しかしながら,被請求人の「ポールポジション」又は「POLE POSITION」の使用は,紛れもなく「商標」としての使用であり,著作物の題号としての使用ではない。すなわち,本商品は,乙第1号証に示す「大ヒットゲーム完全復活」「名作ゲームが・・・完全復活」との商品上の記載から明らかなとおり,出願人が過去に開発・販売した大ヒットゲームや名作ゲームを6点づつ,一つのパッケージとして収録した商品である。それゆえ,本商品に接した需要者・取引者は,本商品の包装上に記載された「ポールポジション(POLE POSITION)」 「パックマン(PAC−MAN)」等の記載を見て,例えば,「ギャラガ」が収録されているから本商品を選択・購入する,「ポールポジション」が収録されているから本商品を選択・購入するといったように,本商品のパッケージに収録されている個々の個別商品に着目して,商品を選択するのである。したがって,本商品の包装表面に記載された「ナムコミュージアム」,「PlayStationと図形」等の部分だけでなく,「ポールポジション」「POLE POSITION」等の記載もまた,本商品に収録された個別商品の識別標識としての機能を果たす態様でもちいられている「商標」としての使用であるというべきである。

仮に,百歩譲って本商品の包装に記載された「ポールポジション」及び「POLE POSITION」の記載が著作物の題号に該当するとしても,我が国の取扱いでは,ソフトの名称(ゲームソフトを含む。)は,商標として取り扱われているのが実情であって,自他商品識別標識としての「商標」に該当しないということはできない。「著作物の題号」が自他商品識別標識として機能する「商標」であることは,両立しうるのであって,互いに相反する概念ではないからである。審判請求人は,「著作物の題号」としての使用が,「商標」としての使用でないことの根拠としていわゆる「三国志事件」の千葉地方裁判所平成5年(ヨ)第702号,平成6年3月25日決定を引用している(甲第3号証)。しかしながら,ここにおいても,全ての著作物の題号について,一律にその「商標」性を否定しているわけではない。すなわち,「専ら」その創作物としての内容を表示するための名称として,用いられており,なおかつ,普通に用いられる方法で商品に表示されている場合に初めて,自他商品識別標識としての商標ではないとされているのである。その上で「三国志事件」では,「三国志」の語句が,陳寿撰が書した中国の後漢末代の史書の題名,あるいは,羅貫中が書した長編小説「三国志演義」(特に後者)を指称ないし略称するものとして,広く周知され,愛好されていること。コンピューターゲームの内容が,その登場人物・筋立て等,概ね前記「三国志演義」に題材をとり,模したものであること。標章が筆書体で書されていること。文学の題号としての「三国志」が,相当周知となっているところ,これを題材とするコンピューター用ゲームが一般に相当に広く知られているものである。といったように,創作物の内容を,普通に表示するものか否か,具体的に判断した上で「商標」性を否定しているのである。

本商品に収録されている「ポールポジション」は,何らかの書籍等を題材としているわけではない。また,「ポールポジション」という言葉自体も,単に「自動車レースの最も内側の第1列の位置」(甲第4号証)という意味を有するにすぎず,「三国志」とは異なり,コンピュータープログラム自体の具体的内容を想起させたり,記述したものといえないことはいうまでもない。また,包装表面の片仮名文字での「ポールポジション」の記載はともか

く,少なくとも本商品のパッケージ裏面に表示された英文字の「 POLE POSITION」又は「POLEPOSITION 2(ローマ数字)」の記載は,ややデザイン化された書体で表示されているものであり,普通の方法で表示されているとはいえないものである。実質的にも「ポールポジション」等の記載は,消費者・需要者に対して商品選択の際の識別標識として機能していることは前記で述べたとおりである。よって,本商品の包装に表示された「ポールポジション」又は「POLEPOSITION」の記載は,自他商品の識別標識としての機能を果たす「商標」として使用されているといえるものである。また,審判請求人は,被請求人が乙第2号証の2枚目として,本商品の包装表面の裏側部分の写しと認められるものを提出しており,そこには,表側に記載した著作物であるゲームプログラムの名称とその中の一部の画像を抽出したものが表されている。そして,これらは著作物を構成する部分となっており,ここに記載された「POLEと図形」「POSITIONと図形」から構成されるものは,著作物の題号にほかならず「商標」ではないという。しかしながら,これは,同種の商品について,通常行われているように(乙第5号証),家庭用テレビゲームおもちゃ用プログラムを記憶させたCD−ROMの商品内容を,消費者・需要者にわかりやすく伝達するために,商品の包装上にゲームの画像の一部を抽出し,個別商品名としての商標と並列して配置しただけである。両者が一体となって著作物を構成しているという理解は,こじつけ以外の何物でもない。かえって,商品の包装上において,このような手段をとらなければ,ゲームの内容を伝達できないということは,本商品における「ポールポジション」等の表示が,著作物の具体的内容を表示する単なる著作物の題号でないことを何よりも裏付けているといえるものである。(なお,請求人は故意に「POLEと図形」「POSITIONと図形」というように両者が分離して理解されるかのようにして論じているが,上下二段に記載されているものの「POLE」と「POSITION」とは,同一の書体・同一の大きさで一体的にまとまりよく記載されており,包装表面の片仮名文字の「ポールポジション」と相まって,一体的に英文字の「POLE POSITION」を表記したものといいうるものである。)

次に,審判請求人は,被請求人が提出した乙第3号証及び乙第4号証に記載されているのは,「PSX.Nミュージアム1」と「PSX.ナムコミュージアム VOL3」に関する請求にすぎず,乙第1号証の商品であることは特定できないという。しかしながら,本商品がソニー・コンピューターエンターテインメント製家庭用テレビゲーム用おもちゃ「PlayStation」(なお,「PlayStation」ソニー・コンピューターエンターテインメントの製品であることは,証明を要するまでもなく顕著な事実である。)の専用CD−ROMであることから,その請求書の宛名が同社であることから考えて,「PSX.Nミュージアム1」と「PSX.ナムコミュージアム VOL.3」との記載が本商品を指すこと,前者の「N」が「ナムコ(NAMCO)」の省略であることは,常識的に理解可能なはずである(商品のコンピューター管理上,商品名を短縮したり,省略して入力するのは,普通に行われているのであって,それが乙第3号証及び乙第4号証の請求書の伝票上,そのまま出力されているにすぎない。)。

そして,本商品における「ポールポジション」「ポールポジション 2(ローマ数字)」「POLE POSITION」が自他商品識別機能を有する「商標」として機能していることは,先に述べたとおりである。

3 当審の判断

商標法第50条第1項の商標登録取消しの審判にあっては,その第2項において,その審判の請求の登録(本件の場合,平成11年6月23日)前3年以内に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り,使用していないことについて正当な理由があることを明らかにした場合を除いて,商標権者は,その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れないとされている。 そこで,被請求人の提出に係る答弁書を徴するに,乙第1号証は,請求外,ソニー・エンターテイメント製家庭用テレビゲームおもちゃ「プレイステーション」に使用する専用のプログラムを記憶させたCD−ROMと認められる「ナムコミュージアム VOL.1」及び「ナムコミュージアム VOL.3」のパッケージ写しであり,そこには,「Namco記号(登録商標であることを示すマルアール)」,「ナムコミュージアムTM」,「PlayStationと図形」のほか「ポールポジション」又は「ポールポジション 2(ローマ数字)」の文字が併せて付されていることが認められる。

そして,乙第3号証は,被請求人(審判請求時の商標権者)の株式会社ソニー・コンピュータエンタテイメントへの1997(平成9)年2月5日付け請求書(控)であり,その請求明細(控)には,「PSX.Nミュージアム1」と「PSX.ナムコミュージアム VOL.3」との記載があり,これが前記「ナムコミュージアム VOL.1」及び「ナムコミュージアム VOL.3」のパッケージ写しと符合するものである。また,乙第4号証は,同様の1997(平成9)年4月4日付け請求書(控)であり,乙第1号証と符合するものである。

してみれば,本件商標は,請求に係る指定商品中の「家庭用テレビゲームおもちゃ用プログラム」について,商品又は商品の包装に標章(本件商標と社会通念上同一の標章)を付したものを譲渡し,引き渡す行為,すなわち,本件商標の使用が請求の登録前3年以内にあったことを推認し得るものである。

ところで,請求人は,被請求人が使用しているとするものは,著作物の「題号」としての使用であり,商標の使用に該当しない旨述べているが,本件商標「PolePosition」は,本来「自動車レースの最も内側の第1列の位置」(甲第4号証)を意味する語であり,これが家庭用テレビゲームおもちゃ用プログラムの名称(ゲームソフトの名称)として使用されたものであるとしても,そのことによって,自他商品の識別機能が直ちに喪失するということはできず,本件商標の当該使用が商標の使用でないということはできない。

さらに,商標法第50条に規定する商標登録の取消しの審判は,登録商標の一定期間の不使用状態によって,商標権者以外の商標使用希望者の商標選択の余地を狭められる場合の制裁規定であるから,商標権者に商標の使用(同法第2条第3項所定の使用)が認められる場合には,広く認めて差し支えないものというべきである。

したがって,本件商標は,請求に係る指定商品中の「家庭用テレビゲームおもちゃ用プログラム」について,請求の登録前3年以内に,我が国において商標権者によって使用されたものであることが認められ,商標法第50条第1項の規定により,その登録を取り消すべきものでない。

よって,結論のとおり審決する。

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