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Trademark Appeal Case

皇居商標と公序良俗

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2005−1738(T2005−1738/J1)
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

原査定を取り消す。
本願商標は、登録すべきものとする。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、別掲に表示するとおりの構成よりなり、第29類「かまぼこ,その他の加工水産物,肉製品,食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」を指定商品として、平成16年3月26日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定は、「この商標登録出願に係る商標は『皇居』の文字を含んでなるが、『皇居』が天皇陛下の平常のすまいを表す文字であるところ、皇室の尊厳等の観点を踏まえると、このような文字を商標として採択し、皇室又はその関係官庁の承諾を得ているとまでは認められない状態のまま商標登録を受けることは、公序良俗に反するおそれがあるものと認める。また、出願人が皇居外苑についての管理、保存、利用に関する事業を行うための財団法人であったとしても、天皇陛下の平常の住まいを意味する『皇居』の文字を含むこのような商標について、関係省庁の承諾を得ないまま独占・排他的な財産権である商標権の取得を認めることは、公序良俗に反するものといわざるを得ない。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

(1)本願商標は、別掲に表示するとおりの構成よりなるところ、その構成中の「皇居」の文字は、「天皇陛下の平常の住まい」を意味し、「物語」の文字は、「話し語ること。また、その内容。」を意味するものと認められ、これらを一連に書した「皇居物語」の構成文字全体からは「皇居の物語、皇居を話し語ること」程度の意味合いが看取されるものと認められる。

(2)商標法4条1項7号の意義

商標法第4条第1項第7号における「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」とは、(イ)商標の構成自体が、非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(ロ)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(ハ)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(ニ)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(ホ)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合などが含まれると解すべきである。

原査定は、天皇陛下の平常の住まいを意味する「皇居」の文字を含むこのような本願商標について、公序良俗に反するとしてこれを拒絶としているところ、公序良俗に反するかどうかは、当該商標の文字・図形等の構成、指定商品又は役務の内容、当該商標の登録を認めることについての我が国の公益や商慣習等を考慮して判断すべきである。その上で,当該商標が商標法4条1項7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に当たるかどうかは、当該事案に現れた上記(イ)〜(ホ)の具体的な事情を総合的に考慮して決すべきである。

(3)本願商標出願の事実関係

請求人提出の証拠(甲第3号証〜甲第5号証)によれば、以下の事実を認めることができる。

(イ)請求人の沿革

請求人は、皇居外苑保存協会、京都御苑の京都御苑保存協会、新宿御苑の新宿御苑保存協会が昭和57年に三協会の解散と併せて新法人を統合して、同年8月、財団法人国民公園保存協会として発足し、平成16年7月、「財団法人国民公園協会」へと変更された財団法人である。

(ロ)請求人の事業

請求人は、寄附行為に定める目的に沿って、由緒ある貴重な国民公園の資産、環境を保全するとともに、利用を促進するため積極的にサービス事業等を展開し、寄附行為では、その目的及び事業を次のとおり定めている。

第3条(目的)では、「協会は、皇居外苑、京都御苑及び新宿御苑の出緒ある沿革を尊重し、その特性に照らし、風致を保存するとともに、その美化と適正な利用を図ることにより、国民の福社に寄与することを目的とする。」、第4条(事業)では、「協会は、前条の目的を達成するため、次の事業を行う}として、(a)国民公園の保存及び利用に関する事業、(b)国民公園の利用者に対する便宜の供与に関する事業、(c)国民公園の保存及び利用に係る啓発に関する事業、(d)国民公園の維持管理に関する業務の受託が規定されている。

(ハ)本願商標の出願経緯

請求人は、国有財産である皇居外苑内の建物(無料休憩所)及び土地の一部使用の許可を得て、レストラン3店舗(二重橋前楠公レストラン、和田倉噴水公園レストラン及びザフォレスト北の丸レストランの3店舗)と売店3店舗(楠公売店、四阿(あずまや)売店及び北の丸売店)を運営し、公園利用者への食事の提供、土産物の販売を行なっている。これらのレストラン、売店は、皇居外苑における唯一の施設であり、本件請求人以外にその運営を許可されている者はない。そして、請求人は、これらのレストラン、売店において、酒類、菓子類、皇室カレンダー、フィルム、日用雑貨等とともに、本願商標を付した特製蒲鉾「皇居物語」を皇居参観記念品として販売している。

(4)商標法4条1項7号の該当性

そこで,上記認定の事実関係に基づいて、本願商標の登録が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するかどうかについてみるに、本願商標がたとえその構成中に「皇居」の文字を有してなるとしても、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではなく、本願商標の登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くところがあるというものでもない。

また、本願商標をその指定商品について使用することが、商取引の秩序を混乱させ、社会公共の利益に反し、ひいては公の秩序を乱すおそれがあるものということもできず、さらに、社会の一般的道徳観念に反するものとも、他の法律によってその使用が禁止されているものともいえない。

さらに、本願商標が直ちに皇室の尊厳を損なうとまではいうことはできず、また「皇居物語」の構成全体からも、ことさら皇室、あるいは我が国の国民を侮蔑しているということもできない。

そして、請求人は寄付行為に定める目的によれば、「皇居」全体の管理や財産権等の管理・処分に関する権限までを有しているものではないが、国に協力して国民公園の由緒ある沿革を尊重し、その特性に照らし、風致を保存する事業を行ない、かつ、皇居外苑内の建物(無料休憩所)及び土地の一部使用の許可を得て、上記レストラン3店舗)と売店3店舗を運営し、公園利用者への食事の提供、土産物の販売を行なっているものであり、本願商標の出願について所管官庁である環境省の承諾を受けていなくとも、運営(事業)については、許可を受けているものであり、そこで販売されている本願商標と同一の文字よりなる「皇居物語」の標章を付し、皇居の参拝記念品として販売している特製蒲鉾を含む(3)(ハ)の商品についてもある程度の管理、監督下にあることは窺うことができる。

そうとすると、上記請求人の設立経緯、目的及び運営(事業)からすれば、たとえ所管官庁の承諾がないとしても、本願商標を使用することが皇室の尊厳を害するとする相当の理由はないものであり、本願商標は公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標とは認められない。

したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく取消しを免れない。

その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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