Trademark Appeal Case
著名商標と異種商品の混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2005−90413(T2005−90413/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第4863726号商標(以下「本件商標」という。)は、「ギャップ」及び「GAP」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成16年10月4日に登録出願され、第5類「薬剤」及び第32類「清涼飲料,果実飲料」を指定商品として平成17年5月13日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する商標は、「ギャップ」の文字を横書きしてなり、昭和55年11月6日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として昭和58年11月25日に設定登録され、その後、平成6年4月27日及び平成15年7月29日の2回に亘り商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成17年7月20日に指定商品を第25類「被服」とする書換登録がされている登録第1634640号商標をはじめ、登録第2237980号、登録第2584331号、登録第3035792号、登録第3035793号、登録第3040951号、登録第3040952号、登録第4382292号、登録第4554351号、登録第4568782号、登録第4568783号、登録第4585788号、登録第4672474号及び登録第4672475号の各商標である(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)。
第3 登録異議の申立ての理由
1 商標法第4条第1項第15号について
本件商標と引用商標とは、称呼及び外観において類似する商標である。 引用商標は、申立人が「被服,下着,ベルト,かばん類,香料類」などのファッション関連の商品に使用している著名な商標であり、ファッション関連の商品と本件商標の指定商品中「清涼飲料,果実飲料」とは、いずれも一般の消費者を需要者とするものである。
そして、近年における企業の多角経営化を考慮すれば、本件商標をその指定商品中の第32類「清涼飲料,果実飲料」について使用した場合、これに接する需要者は、該商品が申立人又は申立人と営業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
2 商標法第4条第1項第19号について
上記1で述べたように、本件商標は、申立人がファッション関連の商品に使用している著名な引用商標と類似する商標である。
したがって、「ファッション関連の商品」と密接な関連を有する「清涼飲料,果実飲料」を指定商品として出願する行為は、引用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力にフリーライドする意図又は引用商標に化体した信用を希釈化する意図のもとに「不正の目的」をもって出願したものというべきである。
3 むすび
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に違反してされたものであるから、本件商標の指定商品中の第32類「清涼飲料,果実飲料」についての商標登録は、取り消されるべきである。
第4 本件商標に対する取消理由
商標権者が、本件商標をその指定商品中の第32類「清涼飲料,果実飲料」について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、周知著名となっている「GAP」の商標を連想、想起し、該商品が申立人等又はこれらと経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標は、その指定商品中の第32類「清涼飲料,果実飲料」については、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録を取り消すべきものである。
第5 商標権者の意見
商標権者は、上記第4の取消理由通知に対し、「商標権者が本件商標を使用した場合、取引者、需要者は、商標権者を直ちに感得するものであり、商標権者以外の者を想起する余地はないものであるから、商品の出所について混同を生じさせるおそれはない。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。」として、次のように意見を述べた。
1 「衣料品」と「清涼飲料,果実飲料」とは、多角経営の対象として密接に関連している分野とはいえない。
2 本件商標を構成している「GAP」の文字(語)は、「隔たり」や「相違」などを意味する英語として我が国において日常汎用されている単語であって独創性のある造語ではない。
3 商標権者は、「医薬品」などの製造、販売業者として著名な会社であるから、「ドリンク剤」など「医薬品」と密接な関係にある「清涼飲料,果実飲料」に本件商標を使用した場合、取引者、需要者は商標権者を直ちに感得するものである。
第6 当審の判断
1 引用商標の著名性について
申立人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)申立人の関連会社たる米国カリフォルニア州在のギャップ・インコーポレイテッドは、1969年にジーンズショップとして始まり、1983年には米国内に550店舗を持つほどになり、さらにカナダ、フランス、ドイツ、イギリス及び日本にも出店し、1997年には全世界で約1900店舗を展開するほどに成長し、当初より使用していた「GAP」の商標も世界的なブランドに発展した(甲第15号証)。
(2)上記ギャップ・インコーポレイテッドは、平成7年(1995)9月には、銀座数寄屋橋阪急百貨店に我が国における直営第1号店を開店し、その後10年余の間に日本全国で167店舗に発展した(甲第16号証及び甲第17号証)。この日本出店以前より、同社の経営方針や企業展開等について度々新聞報道されると共に、衣料品ブランド「GAP」に関する記事・広告が新聞、雑誌等に掲載され、これらの記事・広告においては、アメリカのカジュアル衣料品についての人気ブランドとして紹介されており、「GAP」の商標のみならず、「ギャップ」の文字も使用されていた(甲第18号証ないし甲第44号証)。
(3)上記直営第1号店出店後も今日に至るまで、「GAP」の商標を使用したカジュアル衣料品等(以下「GAPブランド」という。)について、各種雑誌、新聞等に積極的に広告されている(甲第45号証ないし甲第85号証)ほか、ファッション雑誌のみならず一般雑誌、専門誌等においてもGAPブランドや会社の事業展開・経営理念等が紹介されている(甲第88号証ないし甲第94号証)。さらに、平成15年には、電車の一車両又は一編成全部を自社の広告で埋め尽くす、いわゆる「アド・トレイン」広告が東京、大阪及び札幌の地下鉄で行われた(甲第86号証)。
(4)GAPブランドの日本における売上は増大し、上記ギャップ・インコーポレイテッドの日本法人であるギャップジャパン株式会社(以下、申立人及び上記ギャップ・インコーポレイテッドと合わせて「申立人等」という。)の所得申請額は、2004年度に108億円に達し、調査対象企業のうち、2年連続第3位になっている(甲第95号証)。
(5)以上の認定事実によれば、本件商標の登録出願時には既に、「GAP」の商標は、申立人等の業務に係る衣料品を表示する商標又は申立人等の営業標識として、我が国の取引者、需要者間に広く認識されていたものというべきであり、その状態は現在においても継続しているものというのが相当で
ある。
2 本件商標と引用商標の類似について
引用商標は、その構成が「ギャップ」又は「GAP」のいずれかの文字のみからなるもの、両文字を併記したものに大別され、被服を中心に、かばん類、袋物、ベルト、履物、せっけん類、化粧品、広告、経営の診断及び指導等の商品及び役務を指定商品又は指定役務とするものであり、いずれも上記周知著名となっている「GAP」の商標と同一又は類似の商標といい得るものである。
他方、本件商標は、上記第1のとおり、「ギャップ」及び「GAP」の文字からなるものであるから、周知著名となっている「GAP」の商標はもとより、引用商標とも類似するものである。
3 商標権者の意見について
商標権者は、「衣料品」と「清涼飲料,果実飲料」とは、多角経営の対象として密接に関連している分野とはいえない旨意見を述べている。
しかしながら、近年は、各企業が多角経営化により、一分野に止まらず様々な分野に進出する場合が少なくなく、著名商標を所有する企業が自己の著名商標を他の分野の商品や役務について使用することもしばしば見受けられるところ、現に、いわゆるファッション関連の著名商標が飲食産業関連や生活雑貨等の役務や商品についても使用されている(甲第97号証ないし甲第105号証)。
してみると、たとえ本件の指定商品が申立人の業務に係る商品とその商品分野を異にするものであるとしても、かかる企業の多角経営化の実情と上記1及び2で認定した事項とを併せて考慮するに、商標権者が本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、申立人又は申立人と事業上何らかの関係を有する者の業務であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
さらに、商標権者は、本件商標が独創性のある造語ではないこと及び商標権者が「医薬品」などの製造、販売業者として著名な会社であることを理由として、出所の混同のおそれがない旨意見を述べている。
しかしながら、これらの事情のみによって、商品の出所について混同を生ずるおそれがないということがいえないことは明らかである。
したがって、商標権者の意見は、いずれも採用することができない。
4 むすび
以上を総合勘案すると、本件商標をその指定商品中の第32類「清涼飲料,果実飲料」について使用するときは、これに接する取引者、需要者は、周知著名となっている「GAP」の商標を連想、想起し、該商品が申立人等又はこれらと経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標は、その指定商品中の第32類「清涼飲料,果実飲料」については、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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