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Trademark Appeal Case

誇称と普通名称の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2005−90493(T2005−90493/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4874728号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4874728号商標(以下「本件商標」という。)は、平成16年12月24日に登録出願され、「スーパーパイルド・ラフト」の文字を標準文字で書してなり、第37類「基礎杭の施工一式工事,杭工事,杭打及び杭抜工事,杭埋設工事,建造物の基礎工事,建築物基礎造成工事,地盤改良工事,地盤強化工事」を指定役務として、同17年6月24日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立ての理由の概要

登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証を提出した。

本件商標は、商品・役務の品質又は質等の誇称表示として認識されている「スーパー」の文字と直接基礎と杭基礎を併用した建築構造の名称であり、従前より土木:建築の分野で広く使用される「パイルド・ラフト」の文字を組み合わせて普通に用いられる方法で「スーパーパイルド・ラフト」と書してなるから、本件指定役務に使用しても役務の質を表示するに過ぎず、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものである。

したがって、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。

3 本件商標の取消理由

商標権者に対し期間を指定して意見を述べる機会を与えて通知した本件商標の取消理由は、要旨次のとおりである。

<取消理由>

申立人提出の甲第4号証「建築基礎構造設計指針(日本建築学会・2001改定)」には、「パイルド・ラフト基礎とは併用基礎のうち、直接基礎と杭基礎が複合してその両者で上部構造を支持するものをいう。」との記載がみられる。

同じく、甲第5号証「土と基礎(土質工学会誌・1989年4月号及び7月号の抜粋記事)」には、「荷重伝達と沈下の項目の一つとしてパイルド・ラフト基礎」との記載がみられる。

同じく、甲第6号証「平成16年度土木学会全国大会」には、「杭剛性を変えたパイルド・ラフト基礎のモデル実験と解析」等の講演項目の記述がある。

同じく、甲第10号証の1ないし5の特許公開公報には、出願人の項目に、商標権者である「株式会社竹中工務店」、「新日本製鐵株式会社」、「清水建設株式会社」、「株式会社熊谷組」、「大成建設株式会社」が表示され、発明の名称の項目には、「既設基礎を利用したパイルド・ラフト基礎の施工法」(公開日・平成7年1月20日)、「構造物の基礎構造」、その要約中に「パイルド・ラフト基礎構造において」等(公開日・平成16年3月4日)、「杭基礎および構造物」、その要約中に「そこで、最近では、パイルド・ラフト基礎と称されて」等(公開日・平成12年10月17日)、「鋼管による地盤支持力強化方法」、その要約中に「パイルド・ラフト基礎設計」(公開日・平成9年1月14日)との記載がみられる。

そして、上記した各記述のとおり、「パイルド・ラフト」の語は、建築物の基礎である支持地盤を造成する方法の1つとして、本件商標の登録出願時(平成17年「2005年」5月25日)には、当業界の間に広く認識されていた事実を認め得るものである。

さらに、本件商標中の語頭に付された「スーパー」の語は、「の上に、超...」等を意味する英語「SUPER」の字音に通ずる語であって、商品及び役務の品質又は質等の誇称表示としてしばしば使用されている語である。 そうとすれば、「スーパーパイルド・ラフト」よりなる本願商標は、全体として「建築物の基礎である支持地盤を造成する方法による建築物の基礎工事であって、上質なもの」であることを表したにすぎないから、これをその指定役務について使用するときは、当該役務が前記役務の質等を普通に用いられる方法で表したものと認められる。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものといわざるを得ない。

4 商標権者の意見の要旨

商標権者は、前記3の取消理由及び申立て理由について、次のとおり意見を述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第42号証を提出した。

(1)本件商標は、「スーパーパイルド」と「ラフト」の間に中黒点を配し、同書同大に一体に書されてなるから、全体としてひとつの造語と認識されるか、「スーパーパイルド」と「ラフト」に分離して認識されるから、たとえ「スーパー」の語が「の上に、超...」等を意味する語であるとしても、その態様においては役務の質を誇称するとは認識されない。

(2)本件商標は、「スーパーパイルド・ラフト」全体で、若しくは「スーパーパイルド」でひとつの識別力のある造語商標と認識される。岩波国語辞典によれば中黒点(・)は「区切り符号の一種」である。したがって、「スーパーパイルド」と「ラフト」の間に区切りがあることは日本語の規則上明らかな事実である。

(3)「SUPER」について、直ちに商品の品質の誇称表示とは認められないと判断している例も枚挙に遑がない。すなわち、「スーパー」が、誇称表示にあたるか否かは、あらゆる事情を総合勘案して決定しなければならないから、申立人の提示した審決のみをもって本件も同様に扱うことは合理性に欠ける。

(4)「スーパーパイルド・ラフト」、若しくは「スーパーパイルド」でひとつの識別力のある造語商標と認識されることは、「スーパー」が、他の語と結合してひとつの言葉を形成しやすい性質を持つことからも明らかである。ランダムハウス英和大辞典では、「superman」、「Super Bowl」、「supercomputer」、「supermarket」、「superstar」など多くの合成語が掲載されている。

(5)「スーパーパイルド・ラフト」、若しくは「スーパーパイルド」は、格別冗長とも言えず、一連一体に表されているから、全体として識別力のある造語商標と認識される。仮に、「スーパー」と「パイルド・ラフト」が分離して認識され何れの言葉も識別力が希薄であるとした場合には、全体として識別力を発揮するひとつの商標と認識されるべきである。

(6)本件技術は、商標権者に属する加倉井正昭、山下清を中心として開発された技術である。本件技術は、直接基礎と杭基礎の二者選択だった基礎に対し、もう一つ基礎の選択肢を提供しようとするものであった。

本技術は、1982年頃、実験用の構造物での基礎設計がきっかけとなり開発され、「パイルド・ラフト基礎」と名付けられ商標権者によって使用された。その成果として1987年国際土質基礎工学会アジア地域会議において本件技術が公表され、その後、数多くの論文、雑誌に掲載され、直接基礎と杭基礎と並ぶ第3の基礎形式となった。1996年に地盤工学会において、加倉井正昭、山下清が技術開発賞を受賞し、2005年には加倉井、山下、そして井ノ上一博、角彰(共に商標権者に属する)がそれぞれ日本建築学会賞を受賞した(乙第40号証)。

上述のとおり、「パイルド・ラフト基礎」とは、商標権者が研究・開発した技術の名称として商標権者が名付け、2000年前後から商標権者以外の大手建設会社が「パイルド・ラフト基礎」という言葉を広く使用し始め、現在では直接基礎と杭基礎と並ぶ第3の基礎形式の名称として広く使用されているようであるが、命名から2000年前後までの10年間は商標権者自らの技術の名称として、ほぼ商標権者のみ使用しつづけてきたものである。

「パイルド・ラフト基礎」という言葉が何を意味するのかをその長年の使用により広く業界に認識させたのは、正に商標権者に他ならない。

甲第4号証「建築基礎構造設計指針(日本建築学会・2001改定)」の、「パイルド・ラフト基礎」についての記載及び図は、正に商標権者、加倉井正昭及び山下清の論文又は図を使用したものである。

さらに、甲第5号証は、加倉井正昭が、執筆したものである。

(7)甲第6号証ないし甲第13号証は、2000年以降に商標権者以外の者が「パイルド・ラフト基礎」という語を使用していることを示す証拠である。

(8)以上のとおり、甲各号証は、「パイルド・ラフト」が、業界において従前より広く使用されて来たことを示すというよりは、商標権者により長期間使用され、近年になり業界で普及してきたことを示す証拠である。このような「パイルド・ラフト」の語を含むことを理由に、新たな造語商標「スーパーパイルド・ラフト」の識別力を否定するのは妥当ではない。

(9)したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものということはできず、十分に自他役務の識別機能を有するものである。

5 当審の判断

(1)商標権者は、前記4のとおり意見を述べているので、この点について判断する。

商標権者の主張及び乙第24号証ないし乙第42号証によれば、商標権者の技術研究所に属する加倉井正昭、山下清等は、1982年頃「直接基礎と杭を併用することにより沈下を制御する基礎形式」(乙第41号証)を開発し、この基礎形式は「パイルド・ラフト基礎」と命名され、商標権者によって、建築物の基礎工事に使用されていたが、その後、数多くの論文、雑誌に掲載され、直接基礎と杭基礎と並ぶ第3の基礎形式として、2000年前後より大手建築会社によっても採用されるに至り、本件商標の出願時、査定時及び現在においては、「直接基礎と杭を併用することにより沈下を制御する基礎形式」を指称する建築物の基礎技術として、本願指定役務を取り扱う業界において普通に使用されていたものと認められる。

そうとすれば、本件商標は、全体として造語を表したものというよりは、前記取消理由3のとおり、「パイルド・ラフト基礎」を指称する「パイルド・ラフト」の語頭に誇称表示として一般に理解される「スーパー」が付記されたものとみるのが取引上自然であるから、これをその指定役務について使用するときは、当該役務が役務の質等を普通に用いられる方法で表したものといわなければならない。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものといわざるを得ない。

(2)結語

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第43条の3第2項の規定により、これを取り消すべきものとする。

よって、結論のとおり決定する。

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