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Trademark Appeal Case

周知商標と類似商標の混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2005−89121(T2005−89121/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4717621号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成15年5月20日に登録出願され、第28類「おもちゃ,人形」を指定商品として、同15年10月10日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用商標

請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第3268815号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成4年7月1日に登録出願、同9年3月12日に設定登録されたものであり、同じく、登録第3147631号商標(以下「引用商標2」という。)は、「LONGCHAMP」の欧文字を横書きしてなり、第16類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成4年11月24日に登録出願、同8年4月30日に設定登録されたものであり、同じく、登録第4255977号商標(以下「引用商標3」という。)は、「LONGCHAMP」の欧文字を横書きしてなり、第20類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成8年7月10日に登録出願、同11年3月26日に設定登録されたものである(以下、上記の3件をまとめて「引用各商標」という。)。さらに、請求人が引用する登録第874134号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、昭和43年7月26日に登録出願、同45年9月29日に設定登録されたものであり、同じく、登録第1549074号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲(4)のとおりの構成よりなり、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、昭和53年6月7日に登録出願、同57年11月26日に設定登録されたものである。

また、請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する請求人使用商標1は、別掲(5)のとおりの構成よりなるものであり、同じく、請求人使用商標2は、「LONGCHAMP」の欧文字を横書きしてなるものであり、同じく、請求人使用商標3は、「ロンシャン」の片仮名文字を横書きしてなるものである。そして、いずれも「かばん類、袋物、財布、カードケース、携帯用化粧道具入れ、ベルト、帽子」等を使用に係る商品とするものである(以下、上記の3件をまとめて「請求人各使用商標」という。)。

第3 請求人の主張

請求人は、「本件商標を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第100号証を提出した。

1 請求の理由

(1)無効事由

本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に該当するものであるから、商標法第46条第1項の規定により無効とされるべきものである。

(2)無効原因

(2−1)請求人各使用商標の周知・著名性について

請求人である「エス.アー.ジャン カセグレイン」は、フランス国の法律の下に登記された法人であって、「バッグ、財布、ベルト、喫煙用具、ネクタイ、香水」等の各種ファッション製品の製造・販売を生業とするものであり、請求人がこれらの商品に使用する請求人各使用商標は、需要者の間に周知・著名に至っているものである。

請求人の商品は、まずパイプから始まり、この皮革製の喫煙用品(ロンシャン・パイプ)の人気を土台として各種の皮革製品に進出し、その高い品質により評価されてきた。この内ワニ革のデスクマットは広く知られており、故ドゴール大統領が当時の全閣僚のために発注したことや、故ケネディ大統領がホワイトハウス入り(1960年1月20日)したときに、ジャクリーヌ夫人がオリーブのワニ革のデスクマットを贈ったことは世界中に報道され、請求人が「バッグ、財布、ベルト、喫煙用具、ネクタイ、香水」等について世界的な著名ブランドとしての地位を確立する一助となった(甲第18号証及び甲第25号証)。

日本においても、請求人のバッグ等は、昭和39年の大阪国際見本市に出品され、その後、「LONGCHAMP/ロンシャン」ブランドの製品として需要者・取引者に広く認識されるようになった。例えば、1992年度の日本貿易振興会による調査報告で、請求人の製品は、「LONGCHAMP/ロンシャン」製品と称されて「売れ筋ブランド」に挙げられ(甲第28号証)、2000年5月の神奈川新聞では「今、世界で注目されているバッグブランド」として紹介されている(甲第59号証)。

以上のように、請求人各使用商標は、永年にわたり使用された結果(甲第8号証ないし同第14号証、甲第17号証及び甲第58号証)、国内外の多くの新聞・雑誌において紹介され(甲第17号証ないし同第44号証)、需要者の間において周知・著名に至ったものである。

そして、請求人の「LONGCHAMP/ロンシャン」ブランドが周知・著名に至った結果、その名声・信用・評判にフリーライドするような模造品の出現は後を絶たず、新聞紙上でも多く報道されている(甲第60号証ないし同第64号証)。なお、請求人は、これらの商標に化体した業務上の信用を保護するために、「LONGCHAMP(ロンシャン)の文字商標及び「LONGCHAMP」(ロンシャン)の文字と図形からなる商標を、引用各商標以外にも幅広い商品又は役務について、商標登録している(甲第88号証ないし同第96号証)。

このように、請求人各使用商標は、遅くとも、本願出願時である平成15年(2003年)5月20日までには、請求人の「バッグ、財布、ベルト、喫煙用具、ネクタイ、香水」等に使用する商標として、需要者・取引者に広く認識され、周知・著名に至っていたものである。

上記の請求人各使用商標の周知・著名性は、請求人の積極的な営業・宣伝活動によって、現在においても維持されている。

すなわち、請求人は、現在、パリやニューヨークなど世界中の都市及び東京や大阪など国内の31都市に店舗を有し、これまで、世界的及び全国的な販売活動に努めてきた。また、請求人の国内販売は、ブランド毎に各種ファッション製品を扱うデパート内にも設けられており(甲第51号証)、ファッションブランドとして、請求人各使用商標は、現在においても広く一般の需要者に認識されているといえる。ちなみに、請求人の平成14年から16年の間の日本国内における各年の売上高は約33億円から約40億円に達する(甲第71号証)。

宣伝・広告活動においても、請求人は、請求人各使用商標を、本件商標登録出願時以降も継続して使用している(甲第9号証、甲第10号証ないし同第14号証、甲第51号証、甲第52号証及び甲第58号証)。

このような営業・宣伝活動の結果、請求人の「LONGCHAMP」「ロンシャン」ブランドは、現在においても、ファッション雑誌において「人気の3大ブランド」(甲第52号証)、「ブランドの代表格」(甲第14号証)等と紹介されており、このことからも、請求人各使用商標は、本件商標出願時以降も継続して周知・著名といえるものである。

(2−2)請求人各使用商標の周知・著名性が認められた判決・審決・異議決定例

過去の判決・審決・異議決定例からも、請求人各使用商標の著名性は、特許庁においては顕著な事実である(甲第65号証ないし同第70号証)。すなわち、登録第2722556号商標登録無効審判事件・平成10年審判第35354号審決(甲第68号証)においては、請求人使用商標1の著名性を認めており、同審決に対する審決取消請求事件(甲第70号証)の判決においても、その著名性について同様の判断をしている。

また、商願平8−126682号拒絶査定不服審判事件・平成10年審判第12163号審決(甲第69号証)は、請求人使用商標2及び3の著名性を認めている。

(2−3)小括

以上より、請求人各使用商標は、遅くとも、本願出願時までには、請求人の取扱いに係る「バッグ、財布、ベルト、喫煙用具、ネクタイ、香水」等に使用する商標として周知・著名に至っていたものであり、その状態は、本件商標の登録査定時においても継続していたものである。

(3)商標法第4条第1項第11号について

(3−1)引用各商標と本件商標との類似性について

商標の類否の判断は、商標の有する外観、称呼及び観念のそれぞれの判断要素を総合的に考察しなければならないところ、本件商標と引用各商標とを比較すると、両者は、以下に詳述するようにその外観及び称呼において、相紛れるおそれのある同一又は類似の商標というべきである。

まず、称呼の類似性を検討すると、本件商標からは、仏語読みである「ロンシャン」との称呼が生じ得る。一方、引用各商標からは「ロンシャン」との称呼が生じる。よって、本件商標は、引用各商標と同一の称呼を生じ得るものである。

一方、本件商標からは、「ロンチャン」との称呼も生じる。引用各商標と本件商標とから生ずる称呼は、第二音節において、「シャ」と「チャ」の差異を有する。

しかしながら、引用各商標と本件商標は、共に4音からなる短い音構成であることから、常に一連不可分に称呼されるものであり、語調の点では、識別上重要な要素を占める語頭音が弾音の「ロン」と称呼されるために、相対的に第二音節が聴取されにくい商標という点で共通している。

また、この「チャ」と「シャ」の両音は、共に母音が「ア」で同じであるため、音感において非常に近似する音である。よって、各称呼を一連に称呼するときには、語調、語感は相似たものとして聞き取られるというべきである。

以上より、本件商標は、引用各商標に称呼上類似するものである。

次に、外観上の類似性を比較すると、本件商標は、カタカナ5文字の「ロンチャン」とアルファベット8文字の「L’ong−chan」を横二段に併記してなり、「ロンチャン」の文字部分及び「L’ong−chan」の文字部分が、それぞれ自他商品識別力を発揮し得るといえる。

そこで、本件商標の欧文字「L’ong−chan」部分と引用各商標の「LONGCMAMP」部分とを比較すると、語尾の「MP」と「n」において相違するにすぎない。

このように、本件商標と引用各商標は、看者が注意を払い難く、見過ごし易い比較的長い綴り字の後半部分でわずか二文字で相違するにすぎず、その構成全体における外観的印象は、非常に紛らわしいものといえる。

以上より、本件商標は、引用各商標に外観上類似するものである。

(3−2)具体的取引実情の考慮

商標の類否の判断は、商標が使用される商品又は役務の主たる需要者層その他商品又は役務の取引の実情を考慮し、通常有する注意力を基準として判断されなければならないところ、本件商標に係る指定商品は、「おもちゃ、人形」であるが、その需要者は、子供や若い女性(子供の母親を含む。)等の比較的、若い年代といえる。

かかる取引実情を考慮すると、引用各商標の類似性の範囲は、より広く解釈されるべきである。

すなわち、「おもちゃ、人形」は、手ごろな値段で販売される娯楽商品であるから、かかる需要者の商標へ払われる注意力は、他の商品を購入する場合に比べて相対的に低いというべきである。

特に、「おもちゃ、人形」の需要者は、商標を直感的ないしは外観的な印象に頼って認識しやすいといえるから、商品名を聞き間違えたり、商標の外観上のわずかな相違を見過ごした結果、他人の業務にかかる商品と誤認して商品を購入するおそれが通常の商品に比して高いというべきである。

したがって、かかる需要者層を対象とする商品に使用される本件商標と引用各商標の類似性は、より高くなるというべきである。

(3−3)商品・役務の同一・類似

本件商標及び引用各商標は、共に上述した商品をその指定商品とするところ(甲第1号証ないし同第7号証)、本件商標の指定商品第28類「おもちゃ、人形」は、引用商標1の指定商品「おもちゃ,人形」、引用商標2の指定商品「遊戯用カード」、引用商標3の指定商品「揺りかご」と抵触する。

(3−4)小括

以上のことから、本件商標は、本件商標の出願日前の商標登録出願にかかる請求人の先行登録商標である引用各商標と類似する商標というべきであり、また、引用各商標に係る指定商品と同一又は類似の指定商品について使用するものである。さらに、上述したように、取引の実情をも考慮すると、両者は、出所混同のおそれが高い商標というべきである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(4)商標法第4条第1項第15号について

(4−1)混同を生ずるおそれについて

商標法第4条第1項第15号の『混同を生ずるおそれ』の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきものとされている(H12.07.11 最高裁第三小法廷・判決平成10(行ヒ)85審決取消請求事件)。

以下、本件商標が請求人各使用商標との間で「混同を生ずるおそれ」があるか否かを、上記の基準に照らして検討する。

(4−2)本件商標と請求人各使用商標の類似性の程度

請求人各使用商標と本件商標とは、称呼・外観において互いに類似する商標というべきである。

すなわち、上記で述べたとおり、請求人各使用商標の「LONGCHAMP」及び「ロンシャン」の文字の著名性を考慮すると、請求人各使用商標からは、「ロンシャン」の称呼が生じる。

したがって、本件商標と請求人各使用商標とは、称呼において同一又は類似するというべきである。

さらに、外観において比較すると、本件商標の欧文字「L’ong−chan」は、請求人使用商標1及び2の欧文字「LONGCHAMP」と、語尾の「n」と「MP」の点で相違するにすぎない。

このように、本件商標と請求人使用商標1及び2は、看者が注意を払い難く見過ごし易い比較的長い綴り字の後半部分でわずか二文字で相違するにすぎない。

また、本件商標のカタカナ文字「ロンチャン」は、請求人使用商標3のカタカナ文字「ロンシャン」と、語中の「チャ」と「シャ」の一文字で相違するにすぎない。したがって、本件商標と請求人使用商標3は、その構成全体における外観的印象が非常に紛らわしいものといえる。

したがって、本件商標と請求人各使用商標とは、外観においても類似するというべきである。

(4−3)請求人各使用商標の表示の周知著名性及び独創性の程度

請求人各使用商標は、上記で述べたとおり、請求人の業務に係る「バッグ、財布、ベルト、喫煙用具、ネクタイ、香水」等について、本件商標の出願時には、すでに周知・著名であった商標である。

さらに、請求人各使用商標の「LONGCHAMP」「ロンシャン」の文字は、フランスのLONGCHAMP競馬場をその由来として考案されたものであり(甲第18号証)、請求人による全くの造語ではないものの、LONGCHAMPという地名は、我が国の需要者にとって、なじみが低いものであるといえる。

したがって、請求人各使用商標は、我が国需要者にとっては造語に近い顕著性を有するというべきである。

(4−4)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性について

請求人の業務に係る商品は、「バッグ、財布、ベルト、喫煙用具、ネクタイ、香水」等を中心にさまざまなファッション関連製品に及ぶ(甲第9号証)。そして、本件商標の指定商品である「おもちゃ、人形」とこれらのファッション関連製品の関連性の程度については、以下に述べるとおり、非常に高いというべきである。

すなわち、現在、請求人を含む、ファッション関連のブランドメーカーの多くが経営の多角化をすすめ、ファッション関連製品以外にも、多種態様な製品を販売しているという取引実情がある(甲第82号証)。

なかでも、請求人と同じくバッグの一流ブランドとして我が国で著名なブランドが販売する「おもちゃ、人形」は、ファッション関連雑誌の中で「ハンドバッグ」等と共に掲載されている(甲第72号証ないし同第84号証)。

また、現在においても、かかるハンドバッグの一流メーカーによる「おもちゃ、人形」の販売は継続している(甲第83号証及び甲第84号証)。

以上の事実より、本件商標の指定商品である「おもちゃ、人形」は、本件商標出願時以前から我が国の一般の取引者需要者の間では、ファッション関連製品の一種類として定着しているというべきである。

したがって、本件指定商品である「おもちゃ、人形」と請求人の業務に係る商品である「バッグ、財布、ベルト、喫煙用具、ネクタイ、香水、スカーフ、傘、喫煙用具などさまざまなファッション関連製品」は、共にファッション関連製品であるという点で、関連性の程度が高く、また、商品等の取引者及び需要者も共通するものであるといえる。

(4−5)小括

以上のとおり、請求人各使用商標が一流ブランドとして著名であり、独創性を有する商標であること、本件商標が請求人各使用商標と外観及び称呼上類似していること、及び、本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品間の関連性が高く、また、需要者・取引者が共通していることを併せて考えると、本件商標に接した取引者・需要者は、著名な請求人各使用商標を連想・想起し、あたかも請求人又は請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務であるかのごとく誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(5)商標法第4条第1項第19号について

本件商標は、請求人の業務にかかる商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている請求人各使用商標と類似の商標である。

また、上記で述べたとおり、請求人各使用商標の「LONGCHAMP」「ロンシャン」の文字は、請求人による全くの造語ではないが、LONGCHAMPという地名が我が国の需要者にとってなじみが低いものであるといえるから、請求人各使用商標は、我が国需要者にとっては、造語に近い顕著性を有するというべきである。よって、このような商標と類似する商標が第三者により偶然に採択されることは、まれであるといえる。

つまり、本件商標は、周知・著名な請求人各使用商標の有する名声・信用・評判にフリーライドすることをねらい、不正の目的で出願、使用され、その結果、周知・著名な請求人各使用商標の出所表示機能を希釈化し、その名声を毀損させる商標というべきである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

2 弁駁の理由

被請求人による答弁書に対して、請求人は、次のとおり弁駁する。

(1)本件商標から「ロンシャン」の仏語読みの称呼が生じるとした請求人の称呼認定について

請求人は、無効審判請求書において、本件商標の欧文字「L’ong−chan」から仏語風の「ロンシャン」の称呼が自然に生じると主張した。

これに対し、被請求人は、本件商標が中国語の「龍」と日本語の「ちやん」とを合成した造語であって、龍の頭部を擬人化した頭を有する人形の愛称として命名した「龍ちゃん」にほかならないと説明し、上段の片仮名文字「ロンチャン」が欧文字の「L’ong−chan」の称呼を特定していると主張する。

しかしながら、商標がいかなる称呼を生じるかは、その商標を構成する文字や取引実情を考慮の上、客観的に判断されるべきであって、被請求人の上記の主張は、称呼認定においては何ら関係がない。

つまり、被請求人は、本件商標が中国語名称の「龍ちゃん」という人形の愛称から命名されたものであると説明するが、我が国において中国語は一般的に親しまれた言語とはいえないから、本件商標に接する取引者・需要者が、本件商標の「L’ong」及び「ロン」の語を中国語「龍」の表音文字であると直ちに理解すると考えるのは、不自然である。

むしろ、被請求人も答弁書において認めているように、我が国での請求人各使用商標の著名性にかんがみると、本件商標の欧文字に接する我が国の取引者・需要者は、請求人各使用商標を直ちに想起し、「ロンシャン」と仏語風に称呼するというべきである。

また、被請求人は、「L’ong−chan」が仏語として存在しないことを根拠に、請求人の称呼認定が不当なものであると主張する。

しかしながら、欧文字「L’ong−chan」が成語として存在しないからといって本件商標から仏語風の読みが生じないと直ちに判断することは妥当ではない。

つまり、請求人がすでに述べたとおり、仏語の定冠詞「le」が「L’ami」、「L’universite」等のように、母音で始まる語の前では「l’」と縮小されて表記されることが仏語の特徴であることは、我が国でも一般的に知られており、かかる事情にかんがみると、あくまでも、本件商標に接する取引者・需要者は、欧文字「L’ong」について、アポストロフィ「’」によって定冠詞「Le」と欧文字の「ong」が縮小された仏語風の造語であろう認識するというべきである。

更には、本件商標の指定商品が「おもちゃ、人形」であって、その需要者・取引者である若者層は、我が国の平均的又はそれ以上の語学力を有している場合も多いといえることをも考慮すると、本件商標のかかる需要者・取引者は、本件商標の欧文字「L’ong−chan」を仏語風に称呼する場合も少なくないというべきである。

そうすれば、本件商標の欧文字「L’ong−chan」は、仏語風の造語と認識され、「ロンシャン」との読みをもって称呼される場合も決して少なくないというべきである。

また、被請求人は、本件商標の欧文字「L’ong−chan」の記号「’」について、本件商標の「’」はアポストロフィではなく、中国の二声を表す記号であると説明する。

しかしながら、我が国の一般的な取引者・需要者が有する語学力に基づけば、欧文字において「’」が表されている場合には、それは短縮記号のアポストロフィであろうと容易に認識するというべきである。

また、中国語「龍」と併記されている場合であればともかく、本件商標のように欧文字と日本語(片仮名文字)「ロンチャン」について使用されている場合の「’」の記号は、アポストロフィと認識されると考えるのが通常であるから、被請求人の上記主張は、本件商標の称呼の認定に何ら影響するものではない。

以上のとおりであるから、本件商標から「ロンシャン」の仏語読みの称呼をも生じるとした請求人の主張は、妥当である。

(2)本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について

被請求人は、本件商標と引用商標との外観上の差異点を種々述べているが、そのいずれの点も、本件商標の類否の判断に影響を与えるほどの大きな差異点とはいえず、本件商標と引用商標が外観上類似しないという被請求人の主張は、妥当でない。

さらに、称呼の類似性についても、被請求人は、本件商標から「ロンチャン」の称呼のみが生じると主張しているが、上記(1)において述べたとおり、本件商標の欧文字「Long−chan」は、仏語風の造語と認識され、「ロンシャン」と称呼されるというべきであるから、かかる被請求人の主張は、妥当でない。

また、本件商標の片仮名文字「ロンチャン」に相応して生ずる「ロンチャン」の称呼と引用商標の欧文字「LONGCHAMP」に相応して生ずる「ロンシャン」の称呼の対比において、被請求人は、両商標の「チャ」と「シャ」の拗音の差異は、明瞭に聴取できるものであると主張する。

しかしながら、無効審判請求書において請求人が主張したとおり、請求人各使用商標と本件商標とは、共に4音からなる短い音構成であることから、常に一連不可分に称呼されるものであり、語調の点では、識別上重要な要素を占める語頭音が弾音の「ロン」と称呼されるために、相対的に第二音節が聴取されにくい商標という点で共通している。また、この「チャ」と「シャ」の両音は、共に母音が「ア」で同じであるため、音感において非常に近似する音である。よって、各称呼を一連に称呼するときには、語調、語感は相似たものとして聞き取られるというべきである。

また、被請求人は、本件商標が「龍ちやん人形」の愛称として実際に使用される場合、「ロン」と「チャン」の間に一瞬の間が置かれることがあり、「ロンシャン」が一気に発音されることがある引用商標とは両称呼の差異は、より明確になると主張する。

しかしながら、本件商標が「龍ちゃん人形」の愛称として実際に使用される場合、「ロンチャン」の称呼において「チャン」は、接尾語の「ちゃん」に該当し、言わば付記的な部分として需要者に認識される場合が少なくない。このことを考慮すると、本件商標の「チャン」は、あまり注意力が払われない部分として認識されるというべきである。

更には、本件指定商品の主たる取引者・需要者には、子供とその母親も多く含まれることから、日本語の接尾語「ちゃん」は、「シャン」「タン」等さまざまな幼児向けの発音で称呼する場合も決して少なくない。

以上の点をも考慮すると、本件商標が「龍ちゃん人形」の愛称として使用される場合はなおさら、両称呼の差異「シャ」「チャ」の拗音は、明瞭に聴別されず、両商標は称呼上類似するというべきである。

(3)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について

被請求人は、答弁書において、請求人各使用商標の著名性は認めているものの、その他の諸事情については種々反論し、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当しないと主張する。

しかしながら、以下に述べるとおり、その反論のいずれも妥当性を欠き、妥当ではない。

まず、被請求人は、本件商標が請求人各使用商標と類似しないと反論している。

しかしながら、上記(2)において述べたとおり、本件商標は、称呼及び外観のいずれにおいても請求人各使用商標と類似するというべきであるから、被請求人の上記主張は、妥当でない。

また、被請求人は、請求人各使用商標の「LONGCHAMP」と「ロンシャン」の文字がロンシャン競馬場の固有名詞「LONGCHAMP」と「ロンシャン」に由来していることから、特に若い女性を含む若年層の競馬ファンが増加している現況を挙げ、請求人の製品に係る需要者が請求人各使用商標から「ロンシャン」競馬を想起すると主張する。

しかしながら、請求人がすでに主張したように、LONGCHAMPという地名は、我が国の需要者にとってなじみが低く、むしろ、被請求人も認めるように、請求人各使用商標は、すでに我が国で著名性を獲得しているものであるから、請求人各使用商標に接する取引者・需要者は、あくまでも、請求人の名称を直ちに想起するというべきである。

したがって、請求人各使用商標からは、ロンシャン競馬場が想起されるという被請求人の主張は、妥当でない。

また、被請求人は、「おもちゃ、人形」と請求人の「バッグ、財布、ベルト、ネクタイ」等の各種ファッション関連商品との間の商品の関連性及び取引者・需要者の共通性について種々反論している。

特に、被請求人は、ファッション関連製品と「おもちゃ、人形」の間で共通の需要者があることは認めながらも、その程度について「全体からみればまれである」と主張する。

しかしながら、請求人がすでに述べたとおり、ファッション関連のブランドメーカーは一様に「おもちゃ、人形」を生産・販売しており、好評を博しているものであるから、被請求人の上記の主張は、このような取引実情を無視したものといわざるを得ない。

例えば、甲第99号証及び甲第100号証で提出する雑誌は、広範な我が国の需要者層が利用するコンビニエンス・ストアにおいて一般に販売されているものである。

かかる事実は、ファッション関連のブランドメーカーによって「おもちゃ、人形」が生産・販売されているという取引実情が我が国の広い需要者層の間ですでに定着していることの何よりの証左である。

更には、「おもちゃ、人形」と「バッグ、財布、ベルト、ネクタイ」等の各種ファッション関連商品が商品の関連性及び取引者・需要者の共通性を有する点については、特許庁においてすでに認められているところであるから(甲第85号証ないし同第87号証、第67号証)、被請求人の上記主張は、妥当でない。

以上のとおりであるから、請求人各使用商標が一流ブランドとして著名であり、独創性を有する商標であること、本件商標が請求人各使用商標と請求人の業務に係る商品間の関連性が高く、また、需要者・取引者が共通していること、を併せて考えると、本件商標に接した取引者・需要者は、著名な請求人各使用商標を連想・想起し、あたかも請求人又は請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務であるかのごとく誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(4)本件商標の商標法第4条第1項第19号について

上記のとおり、本件商標は、高い顕著性を有し著名な請求人各使用商標と類似する商標というべきであるから、本件商標には不正の目的が推認され得ると判断するのが妥当である。

(5)結び

以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に該当するものであり、請求の趣旨のとおりの審決を求める。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第11号証を提出した。

(答弁の理由)

(1)請求人は、下記(イ)、(ロ)及び(ハ)の理由により、本件商標は、登録を無効とされるべきものであると主張する。

(イ)本件商標は、その商標登録出願日前の商標登録出願にかかわる請求人の先行登録商標である引用各商標と類似する商標であり、また、本件商標は引用各商標の指定商品と同一又は類似の指定商品に使用するから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当する。

(ロ)本件商標は、請求人が「バッグ、財布、ベルト、喫煙用具、ネクタイ、香水」等に使用する商標として周知・著名な請求人各使用商標と類似するというべきであり、本件商標からは請求人のこれらの周知・著名な商標を容易に想起し得る。

よって、本件商標がその指定商品に使用された場合、これに接する取引者・需要者は、あたかも請求人又は請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務であるかのごとく誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号の規定に該当する。

(ハ)本件商標は、周知・著名な請求人各使用商標と類似する商標であって、周知・著名な請求人各使用商標に化体した高い名声・信用・評判にフリーライドする目的で使用する商標というべきであり、周知・著名な請求人各使用商標の出所表示機能を希釈化し、その名声を毀損させる商標というべきで商標法第4条第1項第19号の規定に該当する。

しかしながら、請求人のかかる主張は、不当なものであり、被請求人として到底認められるべきものではないので、以下、その理由を述べる。

(2)本件商標について

(2−1)本件商標は、指定商品を第28類「おもちゃ、人形」として、上段片仮名文字「ロンチャン」を、下段にイタリック体で筆記体にて「Long−chan」の欧文字を二段に横書きしてなる構成の商標である。

ここで注意をしてもらいたいのは、本件商標においては「Long」であって、「L’ong」ではないことである。この「o」における[o]の上のアポストロフィは、中国語の二声を意味するマークである。また、上段の片仮名文字「ロンチャン」は、欧文字の「Long−chan」の読みを特定したものである。本件商標は中国語の「龍」と日本語の「ちゃん」とを合成した造語であって、「龍ちゃん」を意味する。つまり、被請求人の考案した龍の頭を頭部に擬人化した人形の愛称として命名した「龍ちゃん」にほかならない。

(2−2)本件商標は、前記人形を拡販するために命名したものであって、本件商標登録出願日は平成15年5月20日、一方意匠登録出願も平成15年5月20日に同日で出願していて、本件商標は、該人形の愛称として「龍ちゃん」を意味する「ロンチャン/Long−chan」と命名したのである。すなわち、中国語「龍」の発音は、英語表記で「Long」(乙第4号証)であり、「chan」は日本語の人名又は人を表す名詞に付けて親しみを込めて呼ぶときなどに用いる接尾語「ちゃん」(乙第5号証)を英文字化したもので、これらの単語をハイフンで結合し、かつ、イタリック体の筆記体で「Long−chan」という造語にしたものである。一方、「Long」の発音は日本語で「ロン」であり、これと日本語「ちゃん」を結合して「ロンチャン」と片仮名表記にしたものである。

また、被請求人の会社名も「ロンチャン」に由来して「龍の子」企画としていることを申し添える。

したがって、本件商標は、上述したように、外観、称呼、観念において全くオリジナリティを有する商標である。

(3)請求人による本件商標の欧文字部分の称呼認定について

請求人は、本件商標の欧文字部分「Long−chan」を恣意的に誤認して「L’ong−chan」とし、「L’ong」が仏語の「Leong」の省略形として認識されるから「L’ong−chan」は、仏語表記であって「ロンシャン」の仏語読みの称呼が生ずると主張している。

しかしながら、「Leong」は仏語では非政府組織NGOを示す語(乙第8号証)であり、ハイフンでつながる「chan」は仏語辞書には載らない単語(乙第9号証)であるから「L’ong−chan」は、仏語としては存在しないというべきである。

したがって、本件商標の欧文字部分「Long−chan」を恣意的に「L’ong−chan」の仏語表記として、「ロンシャン」の仏語読みの称呼が生ずるとした請求人の称呼認定は、不当である。

(4)商標法第4条第1項第11号について

本件商標と引用各商標との類似性について

まず、外観上の類似性であるが、被請求人が判断するに、本件商標は、欧文字部分「Long−chan」がイタリック体の筆記体であり、かつ、途中にハイフンで2語を結合している態様、また、「o」文字の上に中国語の二声を表すアポストロフィを大きめに配した等多くの特徴を有するのに対し、引用各商標の欧文字部分「LONGCHAMP」は、ローマン体の大文字活字体であって、その他付加すべき特徴がない。よって、本件商標は、引用各商標に比し、構成文字2文字の差に加えて、看者が直感的に認めることができる外観上の著しい差異を有するものである。かつ、本件商標は、片仮名文字の「ロンチャン」を上段に配するのに対し、同一指定商品である引用商標1は、競走馬とジョッキーのシルエットをデザイン化した図形を配していることから、両商標は、外観的印象を著しく異にしている。

以上より、本件商標は、引用各商標と外観上類似しない。

次に、称呼の類似性であるが、本件商標「ロンチャン」「Long−chan」の文字に相応し「ロンチャン」の称呼が生ずる。他方、引用各商標の欧文字部分「LONGCHAMP」からは、請求人各使用商標の周知・著名性を考慮すると、その構成文字から「ロンシャン」との称呼が生じ得ると思われる。

そこで、本件商標より生ずる「ロンチャン」の称呼と引用各商標より生ずる「ロンシャン」の称呼とを比較すると、両称呼は、第3音において「チャ」と「シャ」の拗音の差異を有し、他の音は共通にするものである。そして、「チャ」は「チ」の子音である破擦音「t∫」に母音「a」のついた「t∫a」であり、他方「シャ」は「シ」の子音である摩擦音「∫」に母音「a」のついた「∫a」であり、両拗音は、母音「a」を共通するといえ、子音が破擦音と摩擦音で調音位置に明確な差異があり、音声上は異なるものである。

そして、両称呼は、拗音を含む比較的短い4音構成よりなり、しかも拗音「チャ」と「シャ」の前後に位置する語がいずれも撥音「ン」であって、極めて弱く発音される鼻音「ン」であるので、両称呼を一連に称呼するとしても、該拗音「チャ」と「シャ」の差異は、明瞭に聴取でき、互いに聞き誤るおそれがないから、本件商標は、請求人各使用商標に称呼上類似しないものというべきである。

また、請求人は、本件商標の欧文字部分「Long−chan」からは、仏語読みである「ロンシャン」の称呼が生ずるとしているが、先に被請求人が(2)と(3)で詳述したように、本件商標の欧文字部分「Long−chan」は、仏語ではなく、英語表記であり、片仮名文字部分「ロンチャン」がその欧文字部分の称呼を特定しているといえる。

よって、請求人が、本件商標の欧文字部分「Long−chan」の称呼を「ロンシャン」として、本件商標が、引用各商標と同一の称呼「ロンシャン」が生ずるとした主張は、不当である。

したがって、本件商標と引用各商標とは、その外観及び称呼のいずれの点においても類似しないものであり、取引の実情を考慮しても、両商標は出所混同のおそれのないものであるから、請求人が、本件商標と引用各商標とが類似であるとする主張は、不当である。

(5)商標法第4条第1項第15号について

(5−1)本件商標と請求人各使用商標の類似性の程度

前記(4)で述べたとおり、本件商標より生ずる「ロンチャン」の称呼と請求人各使用商標より生ずる「ロンシャン」の称呼とを比較すると、本件商標は、請求人各使用商標に称呼上類似しないものであり、外観的印象を著しく異にしている。

(5−2)請求人各使用商標の表示の周知著名性及び独創性の程度

請求人各使用商標は、請求人の業務にかかわる「バッグ、財布、ベルト、ネクタイ」等について、本件商標の出願時には周知・著名であったと思われる。

しかし、独創性について見るに、請求人各使用商標の「LONGCHAMP」と「ロンシャン」の文字は、請求人の引用商標4及び5を「かばん類、袋物」に使用した結果、周知・著名になったもので、「LONGCHAMP」の仏語読み「ロンシャン」と、馬と婦人の図柄とからフランスの競馬場であって、世界的有名レース「パリ大賞典」や「凱旋門賞」が行われるロンシャン競馬場の固有名詞「LONGCHAMP」又は「ロンシャン」に由来していることは明らかである(乙第10,11号証)。また、請求人の過去からの主たる業務が皮革製品の製造・販売であることからも、請求人の製品にかかわる需要者は、特に若い女性を含む若年層の競馬ファンが増加している現況をも加味すれば、「ロンシャン」の競馬を想起し、あるいは、フランスの競馬にかかわる固有名詞と認識するというべきである。

よって、請求人の請求人各使用商標は、我が国需要者にとっては造語に近い顕著性を有するというべき主張は、不当である。

(5−3)当該商標の指定商品等と他人の業務にかかわる商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性について

「おもちゃ、人形」の需要者は、従来の子供、若い女性のみならず、近年では寿命の高齢化に伴い孫に買い与える中高年(男性、女性を問わず)、更に若い男性の中性化も加わって、年齢、性別を問わず多岐にわたる需要者層ということができる。「おもちゃ、人形」の商品も低廉なものから高価のもの、あるいは、幼稚な構造から複雑かつ高度な構造を持つ等、多岐多様にわたるものである。

そこで、被請求人は、請求人各使用商標が「走る馬」をデザイン化した図形及び「LONGCHAMP」と「ロンシャン」の文字を有し、商品「バッグ、財布、ベルト、ネクタイ」等の各種ファッション関連商品に使用されて、周知・著名であるとは認めるが、これらの商品と本件商標の指定商品「おもちゃ、人形」とは、その生産部門、原材料及び品質、用途等を著しく異にするものであり、オリジナリティがある本件商標を指定商品「おもちゃ、人形」に使用した場合、請求人各使用商標を連想、想起させるものといえないから、本件商標は、請求人又は請求人と経済的、組織的の関係を有する者の業務にかかわる商品であるかのごとく、その出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。

また、請求人が主張する「おもちゃ、人形」の商品とファッション関連商品との間で共通の需要者があることは否定できないが、大勢でなく、全体からみればまれであるというべきである。

したがって、請求人が、本件商標がその指定商品に使用された場合、これに接する取引者・需要者は、あたかも請求人又は請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務であるかのごとく誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあると主張されるのは、不当である。

(5−4)小括

以上のことから、請求人各使用商標が周知・著名であるとしても、請求人各使用商標は、独創性を有しない商標というべきであり、本件商標は、請求人各使用商標と外観及び称呼において類似しないものであり、また、本件商標の指定商品と請求人の業務にかかわる商品間の関連性は低く、さらに、需要者・取引者が共通しているとは言い難い、等を総合的に考えると、本件商標がその指定商品に使用された場合、これに接する取引者・需要者は、あたかも請求人又は請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務であるかのごとく誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるとはいえない。

したがって、請求人が、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するとした主張は、不当である。

(6)商標法第4条第1項第19号について

請求人は、本件商標が周知・著名な請求人各使用商標の有する名声・信用・評判にフリーライドすることをねらい不正の目的で出願、使用され、その結果、周知・著名な請求人各使用商標の出所表示機能を希釈し、その名声を毀損させる商標というべきであると主張する。

しかしながら、被請求人は、本商品が日本のみならず米国、中国において意匠登録されたオリジナリティを有する「龍ちゃん」人形について、その愛称「Long−chan」、「ロンチャン」を本件商標として登録したのである。ちなみに、「Long−chan」は、米国で商標登録され、また、中国でも商標公告中である。このように、被請求人の本件商標は、オリジナリティを有する登録商標であるから、請求人の不正使用の主張は、不当である。また、本件商標は前述したように、請求人各使用商標とは類似しないものである。また、請求人各使用商標の「馬の走る」図形と「LONGCHAMP」、「ロンシャン」の文字は、我が国の需要者にとって、フランスの著名な競馬場又はフランスの競馬にかかわる商標と認識させるものというべきである。他方、本件商標は、前述したように、中国語と日本語を結合した一種の造語というべきである。

したがって、本件商標が、商標法第4条第1項第19号に該当するとした請求人の主張は、不当である。

(7)結び

以上のことから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、第15号及び第19号に該当しないものであり、商標法第46条第1項の規定により、無効とされるべきでない。

したがって、本件審判請求は、成り立たないという審決を求める。

第5 当審の判断

(1)商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、前記したとおり「ロンチャン」の文字と「Long−chan」の文字とを上下二段に書してなるところ、上段に書された「ロンチャン」の片仮名文字は、下段の欧文字の読みを特定したものと無理なく看取し得るものであるから、この文字に相応して「ロンチャン」の称呼のみを生ずる造語よりなるものと判断するのが相当である。

これに対し、引用各商標は、前記のとおりであるから、書された「LONGCHAMP」の欧文字に相応し、「ロンシャン」の称呼を生ずるものと認められる。

そこで、本件商標より生ずる「ロンチャン」の称呼と引用各商標より生ずる「ロンシャン」の称呼とを比較すると、両称呼は、共に比較的短い4音構成よりなり、第3音において「チャ」と「シャ」の音の差異を有し、他の音を共通にするものであるが、その相違する「チャ」と「シャ」の音の前後に位置する「ン」は、極めて弱く発音される音であることも相まって、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、該差異音が全体の称呼に及ぼす影響は大きく、それぞれは明瞭に発音・聴別され、互いに聞き誤るおそれはないものというのが相当である。

また、本件商標と引用各商標は、それぞれ前記の構成であるから、外観上、十分に区別し得る差異を有するものであり、さらに、観念においても類似するものとは認められない。

そうすると、本件商標と引用各商標とは、その称呼、外観及び観念のい ずれの点からしても、非類似の商標といわなければならない。

(2)商標法第4条第1項第15号について

請求人より提出された甲第17号証ないし同第58号証によれば、請求人使用商標1の構成よりなる商標、請求人使用商標2の「LONGCHAMP」及び請求人使用商標3の「ロンシャン」の文字よりなる商標は、我が国において、本件商標の登録出願前から、長年にわたり請求人の業務に係る商品「バッグ製品、ベルト、ハンカチ、ネクタイ」等の各種ファッション関連商品に使用され、周知・著名性を獲得するに至ったことが認められる。

しかしながら、本件商標の指定商品は、「おもちゃ,人形」のみであって、請求人の業務に係る上記商品とは、その生産・販売部門、原材料及び品質、用途等を著しく異にするものであり、加えて、本件商標は、「ロンチャン」と「Long−chan」の文字とを併記してなるものであって、前記(1)で認定・判断したとおり、引用各商標及び請求人各使用商標を構成する「LONGCHAMP」、「ロンシャン」とは、十分に区別し得る非類似の商標といえるものであるから、本件商標をその指定商品に使用しても、請求人の各使用商標等を連想、想起させることはなく、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものとは認められない。

(3)商標法第4条第1項第19号について

前記(1)及び(2)のとおり、本件商標は、引用各商標及び請求人各使用商標とは、類似しない商標であり、かつ、請求人の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれのないものであるから、商標権者(被請求人)が本件商標を採択使用する行為に、不正の目的があったものとすることはできない。

(4)結び

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号のいずれにも違反して登録されたものでないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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