結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2005−89165(T2005−89165/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4861830号商標(以下「本件商標」という。)は,後掲のとおりの構成よりなり,平成16年6月23日に登録出願,第12類,第25類,第39類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品(役務)を指定商品(指定役務)として,同17年5月13日に設定登録されたものである。
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし同第31号証を提出した。
本件商標は,商標法第4条第1項第10号又は同第19号に該当するものであるから,商標法第46条第1項第1号により,無効とされるべきものである。
(1)本件商標は,「KANAKA」の文字と「IKAIKA」の文字の間に図形を現した商標であり,その要部は,「KANAKA IKAIKA」の文字標章である。
(2)「KANAKA IKAIKA」の標章は,1999年から日本で全国規模のアウトリガーカヌー競技会を開催する際,ハワイの事務局の承認を得て,ポスター,衣服,景品等に「KANAKA IKAIKA」と表示し,毎年使用して現在に至っているものである(甲第1号証ないし甲第3号証)。
ちなみに,「KANAKA IKAIKA」とは,ハワイ語で強い勇士を意味する言葉であり,ハワイで開催されている世界で有名な世界大会のオーシャンスポーツ大会である(甲第1号証ないし甲第3号証)。
(3)この結果,アウトリガーカヌー競技に対する「KANAKA IKAIKA」の商標は,本件登録出願(平成16年6月23日)時には,国内外のカヌー競技者に対して全国的に著名な標章として知られるようになっていた。
(4)アウトリガーカヌージャパン(代表者 荒木汰久治)は,1999年にハワイで行われたアウトリガーカヌー競技会に日本を代表して参加して以来,毎年競技会に参加し2000年の大会では,105チーム中37位という素晴らしい成績で完漕した。
(a)「KANAKA IKAIKA」 JAPANの開催実績(甲第4号証ないし甲第10号証)。
2000年 第1戦8月19日 2戦9月30日 3戦10月21日
2001年 第1戦5月12日 2戦6月16日 3戦9月8日
2002年 第1戦4月6日 2戦4月20日 3戦5月4日 4戦5月 18日 5戦6月1日 6戦6月15日
2003年 第1戦4月6日 2戦4月29日 3戦10月25・26日 4戦11月15・16日
2004年 第1戦4月25日 2戦6月20日 3戦9月5日
4戦11月21日
2005年 第1戦9月11日 2戦10月30日 3戦12月11日
(b)「KANAKA IKAIKA」JAPANにおける「KANAKA IKAIKA」の標章の使用実績(甲第11号証)。
(5)被請求人「市川雄一」は,2002年の大会からアウトリガーカヌージャパンのスポンサーとして,また,個人競技にも参加しており,「KANAKA IKAIKA」の歴史,主旨についても十分理解しているにもかかわらず,平成16年6月23日「KANAKA IKAIKA」本部のハワイ事務局及び請求人荒木汰久治に無断で本件商標を出願し登録を得たものである(甲第12号証・甲第13号証)。これは,我が国において,本件商標が登録されていないことを奇貨として,株式会社アルバローザ(以下「アルバローザ社」という。)の名義で先取り的に出願し,平成17年9月2日移転登録したものであり,他人に高額で買い取らせたりする等の不正目的で使用しようとするものである。
被請求人市川雄一は,当初アルバローザ社の取締役社長として就任していたが,今年の8月頃会社を退社して,17年9月2日付け移転登録により権利者の名義を「市川雄一」個人に変更したものである。
(6)カナカ イカイカジャパンの代表者である荒木汰久治は,平成16年12月9日に「KANAKA IKAIKA」の文字の商標出願を行ったが,本件商標を類似役務として拒絶されており,平成17年11月25日拒絶査定不服審判を請求している。
(7)カナカ イカイカジャパンの代表者である荒木汰久治が正当な権利を有することについては,ハワイの「KANAKA IKAIKA」の本部から送られて来た手紙に示されているとおりであり,この手紙には,荒木汰久治に「KANAKA IKAIKA」の所有を認め,日本における特命大使として「KANAKA IKAIKA」を普及しているし,また,普及して欲しいと述べている(甲第14号証)。
(8)甲第15号証及び甲第16号証は,ハワイにおける「KANAKA IKAIKA」大会のスケジュール表である。
以上のとおり,本件商標は,他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標に類似する商標が誤って登録されたものであり,又は,不正の目的を持って使用するものであるから,商標法第4条第1項第10号又は同第19号に該当し,無効とすべきである。
被請求人の反論及び求釈明に対して,次のように釈明及び弁明する。
(1)答弁書理由(1ー1)の「『KANAKA』の文字と『IKAIKA』の文字の間に表された図形部分が,アルバローザ社の独自のデザインに係る図形である」という被請求人の主張は,争わない。
ただし,審判請求でも述べたように「KANAKAIKAIKA」とは,ハワイ語で強い勇士を意味するものであり,被請求人の登録商標に表される図形は,強者を表す顔の上にオールを振り上げたもので,観念的に強い勇士をイメージしており,また,「KANAKAIKAIKA」の表記は,「カナカ イカイカ」の呼称を生じることから,本件商標を全体として見た場合「KANAKAIKAIKA」の表記が要部であることは,間違いない。
(2)答弁書理由(1ー2)については,1999年は,アウトリガーカヌークラブジャパンとして荒木汰久治の精力的な呼びかけによって,ハワイのJAKE氏がアウトリガーカヌークラブジャパンと命名し,日本人として始めて世界に挑戦するクラブが誕生した(甲第17号証)。この年は,国内大会を開催していないが,アウトリガーカヌークラブジャパンが発足して始めて「KANAKA IKAIKA」大会が始まったものであり,2000年以降葉山の大浜海岸を中心に開催されたものである。2000年以降の開催回数,開催地,参加者数については,次のとおりである。
2000年は,参加者数については,資料を紛失し不明であるが,開催回数,開催地については,甲第5号証ならびに甲第6号証のとおりである。
2001年は,参加者については,資料を紛失し不明であるが,開催回数,開催地については,甲第7号証,甲第18号証,甲第19号証のとおりである。
2002年は,甲第13号証のとおり63名,甲第20号証のとおり44名である。また,甲第21号証は,2002年7月号の雑誌「ソトコト」NO37に「カナカ イカイカ」大会の様子が掲載されている。開催回数,開催地については,甲第8号証のとおりである。
2003年は,4月6日,甲第22号証のとおり54名の参加である。
その他3回開催し約150名である(3戦は台風の為中止)。開催地については,甲第9号証のとおりである。
2004年は,甲第23号証のとおり46名,甲第24号証のとおり33名,甲第25号証のとおり27名の参加者である。開催回数,開催地については,甲第10号証のとおりである(2戦は台風の為中止)。
2005年は,8月14日「アウトリガーカヌージャパンクラッシック」の大会を開催し約250名の参加者で盛大に開催した。甲第27号証のとおり134名,9月11日,甲第28号証のとおり150名,12月11日,甲第29号証のとおり130名である。
(3)答弁書理由(1−2)の「ハワイの事務局の組織」については,甲第31号証の登記簿のとおりである。
なお,「甲第1号証から甲第3号証迄の立証趣旨」については,次のとおりである。
甲第1号証・・・シャツ,タオル等に「KANAKA IKAIKA」の文字をプリントし商標として使用しているものである。
甲第2号証・・・シャツ,タオル等に「KANAKA IKAIKA」の文字をプリントし商標としているものである。
甲第3号証・・・大会に参加した選手に参加賞,商品として渡されたシャツに「KANAKA IKAIKA」の文字がプリントされ,商標として使用しているものである。写真にあるように,ポスター,衣服,景品のタオル等に「KANAKA IKAIKA」の文字が印刷されていて,商標として使用している。
ハワイの「KANAKA IKAIKA」は世界で有名なオーシャンスポーツ大会である証明は,甲第30号証及び甲第31号証のとおりである。
(4)答弁書理由(1ー3)のアウトリガーカヌー競技に対して「KANAKA IKAIKA」の標章が,カヌー競技者にとって著名な標章として知られていること」については,次のとおりである。「KANAKA IKAIKA」の商標を使用し,大会を次のとおり企画立案してきたもので甲第5号証ないし甲第11号証のとおりである。
ここで,甲第5号証は,2000年の大会内容の案内文である。甲第6号証は,2000年の大会用チラシである。甲第7号証は,2001年の大会用パンフレットである。甲第8号証は,2002年の大会用パンフレットである。甲第9号証は,2003年の大会用パンフレットである。甲第10号証は,2004年大会用チラシである。甲第11号証は,2005年大会用チラシであり,
2000年の大会 第1戦8月19日 2戦9月30日 3戦10月2 1日。
2001年の大会 第1戦5月12日 2戦6月16日 3戦9月8日。
2002年の大会 第1戦4月6日 2戦4月20日 3戦5月4日
4戦5月18日 5戦6月1日 6戦6月15日。
2003年の大会 第1戦4月6日 2戦4月29日 3戦10月2 5日・26日(中止) 4戦11月15日・16日。
2004年の大会 第1戦4月25日 2戦6月20日(中止)3戦9月 5日 4戦11月21日。
2005年の大会 (8月14日アウトリガーカヌー大会) 第1戦9月 11日 2戦10月30日 3戦12月11日
にそれぞれ開催された。
(5)答弁書理由(1ー4)の「『アウトリガーカヌージャパン』については,十数名程度参加する一種の同好会であり,NPO法人などの組織化された団体ではない」ことについては,「アウトリガーカヌークラブジャパン」の大会は,甲第5号証ないし甲第10号証のパンフレットのとおり,毎年大会を開催しており十数名ではなく,少ない年は,約30名,多い年は,100名以上の参加者があり開催場所も葉山,静岡,愛知,そして沖縄と毎年広がっている。また,99年設立当初,同好会と呼ばれるような組織であったとしても,2006年現在では,神奈川,福島,沖縄と各地域に支部が生まれており,その活動は,確実に広がっている。
なお,平成18年5月22日にNPO法人として申請した。8月項許可が下りる見通しである。
(6)答弁書理由(1ー4)(a)の「KANAKA IKAIKA」JAPANの開催実績は,甲第6号証ないし甲第10号証のとおりである。
なお,甲第6号証ないし甲第10号証に係るパンフレットの配布数量は,約500枚であり,掲載期間については,2ヶ月間である。また,「ハワイの事務局」の組織,後援,承認については,甲第30号証,甲第31号証のとおりである。
(7)答弁書理由(1ー4)(b)の「『KANAKA IKAIKA』の標章の使用実績の甲第11号証のパンフレットの配布枚数,掲載先,配布期間等」については,配布数量は,1000枚,掲載先は,神奈川,愛知,静岡,福島,沖縄である。掲載期間は,2ヶ月間である。
(8)答弁書理由(1ー5)の事実について
「被請求人市川雄一」氏が代表取締役を務めていたアルバローザ社から,2002年よりアウトリガーカヌークラブジャパンの法人会員として会費,カヌー1艇(200万円相当),2003年からは,大会スポンサー料,その他の協賛品を提供してもらっていた点は認める。しかしながら,カヌーの横にアルバローザのステッカーを通年で貼り,2002年からの大会開催する中では,ポスターやパンフレット,その他グッズ等にロゴマークが露出していた。
さらに,「請求人荒木汰久治」が「被請求人市川雄一」氏に企画提案した販売促進の計画書とおり,雑誌,広告等にアウトリガーカヌーを起用する等,アルバローザ社の宣伝効果は,相当あったものと思われる。
また,このことは,協賛する側とされる側が上下の封建的な関係であったものではなく,対等に業務提携のパートナーシップ関係でいたことを証明するものである。
被請求人が請求人に対して商標登録出願を行うように勧めていた点については認める。ただし回数で言えば,2回程度のミーティングの中での話題であり「再々にわたり」というのは,誇張表現である。その際,請求人は,ハワイから大会名称の使用許可をもらっていること,そして,国内にて商標登録する意思があることを被請求人に伝えた。また,請求人は,大会会場の表彰式の挨拶の場で,参加者,関係者全員に対し,ハワイと日本の組織の成立ちの経緯や「KANAKA IKAIKA」(海を渡る強い勇士)というハワイ語の語源意味を毎回説明しており,参加者は,皆その歴史的背景を理解し,勝敗主義スポーツと比べ,その倫理が異なることに共感している。
その結果,手作りで始まった大会が近年では全国各地に普及していったともいえる。また,被請求人も数年間にわたり選手として大会に出場し,また,協賛企業の一員としてその場にいた。また,被請求人が請求人に対し,商標登録を勧めていた事実は,被請求人が,本人にとって出願の権利がなく,請求人こそが真の権利者であることを認めていたことを証明する最大の証拠であり,その時に,請求人が直ちに商標登録出願を行わなかったことが被請求人が自分で勝手に出願し,登録することの正当性を裏付けるものには,なり得ない。
ちなみに,請求人は,被請求人からの勧めを受けて,代理人を立てないで自ら出願する方法を検討し,平成16年12月9日に出願したところ,平成17年5月27日拒絶理由通知書により,被請求人による商標登録の存在を知り驚いた次第である。このような被請求人の行為は,「我々において登録されていないことを奇貨して先取りし登録したもの」以外のなにものでもない。
(9)答弁書理由(1ー6)の「カナカ イカイカ」なる団体の性格,法人格の有無については,甲第30号証,甲第31号証のとおりである。
(10)答弁書理由(1ー7)のハワイの「KANAKA IKAIKA」本部なる組織については,甲第31号証のとおりである。
(11)答弁書理由(1ー8)の甲第15号証,同16号証の提出理由は,1999年のハワイにおける「KANAKA IKAIKA」大会のスケジュール表である。
(12)答弁書理由(2)の「請求人の本件審判請求の実態」については,平成17年10月に「被請求人は請求人の父親と中村氏の面会に応じ〜」としているが,この時の面会には,請求人の父親は,同席していない。
また,「KANAKA IKAIKA」についての商標権を収得する機会があったにもかかわらずとあるが,合理的な譲渡対価として200万と高価であったため,交渉を中止したものである。
以上のとおり,被請求人の反論は,全く意味がなく,審判請求の趣旨のとおりの審決を求めるものである。
被請求人は,本件審判の請求は,成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求める,と答弁し,その理由を次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
(1)審判請求書中の請求の理由第3項「本件商標を無効であるとすべき理由」についての認否および反論並びに求釈明
(1−1)「本件商標は『KANAKA』の文字と『IKAIKA』の文字の間に図形を表した商標である」との点については認める。
ただ,「本件商標の要部は『「ANAKA IKAIKA』の文字標章である」との主張については,「KANAKA」の文字と「IKAIKA」の文字の間に表された図形部分が,本件商標の前登録名義人であるアルバローザ社の独自のデザインに係る図形であり,当該図形部分を除外する理由が存在しないことから,認められない。加えて,「KANAKA」の文字,及び,「IKAIKA」の文字デザイン,その配置についてもアルバローザ社のデザイナーが創作した独自の図形デザインであることについても念のため付言する。
(1−2)「1999年から日本で全国規模のアウトリガーカヌー競技会を開催する」とあるが,その旨の証拠が示されていない。また,請求人のいう「全国規模」とは,いかなる規模をいうのか,開催回数,開催地,参加者数などを示されたい。加えて,このアウトリガーカヌー競技会の開催者がいかなる者により開催されたか不明であり,請求人との関係を示されたい。
また,「ハワイの事務局の承認を得て」とあるが,ハワイの事務局とはどのような組織であるのか,どのような承認の内容であるのか全くもって不明である。そもそも「KANAKA IKAIKA」の標章を「ポスター,衣服,景品,等に表示」することに対して,「ハワイの事務局の承認を得る」必要性を明らかにされたい。ちなみに,甲第1号証ないし甲第3号証においては,「カナカイカイカ大会」との説明があり,「KANAKA IKAIKA」(カナカイカイカ)の標章を大会名に使用して全国規模のアウトリガーカヌー競技会を開催することについても,その承諾の内容および必要性を明らかにされたい。
なお,甲第1号証においては,どのようなものを作成しているか,「KANAKA IKAIKA」の標章との関係で不明であり,何を立証されるのか具体的に示されたい。
甲第2号証においては,「KANAKA IKAIKA」の文字が表示されたバスタオルを確認できるが,これが「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示する」もの,すなわち商標としての使用事実を示すものか否か,無効理由との関係で明らかにされたい。
甲第3号証の写真資料については,無効理由との関係で証拠としての提出の理由が不明であり,何を立証されたいのか明らかにされたい。ちなみに,甲第1号証ないし甲第3号証に係る写真資料は,いつどこで撮影されたものであるか不明であり,こうした点を客観的に理解できる証拠を開示されたい。
「KANAKA IKAIKA」とは,「ハワイで開催されている世界で有名な世界大会のオーシャンスポーツ大会である」点については不知である。その世界的周知度,オーシャンスポーツの内容を示されたい。また,この点が無効理由とどのような関係があるのかを明らかにされたい。
(1−3)「アウトリガーカヌー競技に対する『KANAKA IKAIKA』の商標は,本件登録出願(平成16年6月23日)時には,国内外のカヌー競技者に対して全国的に著名な標章として知られるようになっている」については,内容があいまいであり,争点を明らかにされたい。
すなわち,(1−1)ないし(1−3)を通じて,少なくとも商標「KANAKA IKAIKA」は,「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標」(商標法第4条第1項第10号,同第19号)である点を主張されたい。
ちなみに,「カヌー競技者」との点に関し,日本におけるカヌー競技とは,湖沼・川・渓流などで行うカヌーのレースであり,カヤックとカナディアンーカヌーを指すものとして理解されるところ(広辞苑第5版),こうした競技の競技者についてまでアウトリガーカヌー競技に対する「KANAKA IKAIKA」の商標なるものが全国的に著名な標章として知られるようになっている事実については,何らの証左もない。アウトリガーカヌーとは,カヌー(軽量の船本体)に対して,海上における波のうねりに対する安定性を確保するため,アウトリガーと呼ばれる浮子(ウキ)を外設したものに係り,極めて限られた範囲の愛好家の間で楽しまれているものである。
もし,請求人において「KANAKA IKAIKA」の商標が「ポスター,衣服,景品,等」の商品分野および「アウトリガーカヌー競技の運営,開催」の役務分野において,他人の業務に係る商品,役務を表示するものとして「全国的に」知られている旨主張されるのであれば,そうした事実を具体的に明らかにされたい。
(1−4)「アウトリガーカヌージャパン」については,かつて,被請求人と関わりのあったことから,被請求人はその存在を認識している。すなわち,アウトリガーカヌー競技に興味を有する愛好家が十数名程度参加する一種の同好会であり,NPO法人などの組織化された団体ではない。
「ハワイで行われたアウトリガーカヌー競技会に日本を代表して参加」との点について,被請求人の知る限りでは,ハワイで行われるアウトリガーカヌー競技会は,すべて自由参加であり,「日本を代表して参加」する競技会の存在については知らないところである。ちなみに,請求人自身のインターネット上のサイトでは,アウトリガーカヌーの大会に出場するのは,「賞金を稼いだり,賞金の有無にかかわらず,大会で成績を出してスポンサーからボーナスを頂く」ことを目的の一つとされている。
なお,本項で述べられた点が無効理由との関係でどのような意義を有するのか明らかにされたい。
(a)「KANAKA IKAIKA」JAPANの開催実績
被請求人は,かつて代表取締役を務めていたアルバローザ社が大会運営のためのスポンサー活動を行っていたことから,2000年から2004年の各大会が行われた事実について否定するものではない。
ただ,こうした大会においては,被請求人の知る限りでは,いずれも小規模で,参加者が多くとも5,60名程度の規模で行われた大会であり,例えば,甲第6号証ないし甲第10号証に係るパンフレットの配布数量あるいは掲載先,配布あるいは掲載の期間など周知性に関する事実を具体的に明らかにされたい。
ところで,こうした大会の開催において,「ハワイの事務局」なる組織の後援等がみられないところであるが,大会開催の承認などの協力があるのであれば,具体的な証拠をもって示されたい。
(b)「KANAKA IKAIKA」JAPANにおける「KANAKA IKAIKA」の標章の使用実績
甲第11号証に係るパンフレットについても,配布数量・掲載先,配布あるいは掲載の期間など周知性に関する事実を具体的に明らかにされたい。
(1−5)「被請求人『市川雄一』は,2002年の大会からアウトリガーカヌージャパンのスポンサーとして,また,個人競技にも参加して」いたとする点は,およそ認める。上記のとおり,被請求人が代表取締役を務めていたアルバローザ社は請求人に対するスポンサー活動を行っており,具体的には,法人会員としてスポンサー料,カヌー1艇(200万円相当),その他の協賛品を提供していたところである。実際,アルバローザ社の協力なくして,請求人が海外遠征を行えなかった大会も存在したところである。当時,被請求人は請求人と海の素晴らしさについて共感し,海を舞台にした活動を通じて友好な関係にあり,被請求人は,請求人の同好会活動に対して,多くのアルバローザ社の社員を動員したり,様々な協力活動を行ったところである。
したがって,請求人のいう「平成16年6月23日『KANAKA IKAIKA』本部のハワイ事務局及び荒木汰久治に無断で商標出願し,登録したものである。これは,我が国において登録されていない事を奇貨として,アルバローザ社の名義で先取り的に出願し,平成17年9月2日移転登録したものであり,他人に高額で買い取らせたりする等の不正目的で使用するものである。」との主張に対して,被請求人は,きょうがくし,憤慨に堪えないところである。
しかも「無断で」とのことであるが,実際はむしろ,被請求人は,請求人に対して再三にわたり商標登録出願を行うように勧めていたところである。
すなわち,被請求人は請求人に対して,単なる利益目的の第三者の介入を排除するため,上記出願目前の平成15年から平成16年春頃にかけ,何度も商標登録出願を行うように勧めたが,請求人が商標登録出願を行わないため,やむなくアルバローザ社が費用をかけて本件商標を採択し,商標登録出願を行い商標登録を行ったというのが実態である。
どうして請求人はこのような虚偽の主張を行うのか,被請求人は,理解に苦しむところであるが,かつて請求人の同好会活動に協力を惜しまなかった被請求人に対して,余りにも非礼である旨申し述べたい。
なお,請求人は,本件商標の登録人名義がアルバローザ社から同社を退職した被請求人個人に移転された事実をもとに,何とかして被請求人ひいてはアルバローザ社の不正目的を作出したいようである。
本件商標権を被請求人個人が相当の対価をもってアルバローザ社から譲り受けた真の理由は,被請求人がアルバローザ社を退職するに際し,本件商標権に関してはアルバローザ社というよりも被請求人個人が請求人らを金銭的にサポートしてきた経緯もあったことから,アルバローザ社に迷惑を掛けず,私的問題として処理したかったことにほかならない。
(1−6)被請求人は「カナカ イカイカ」なる団体が存在するかについて不知である。請求人は「カナカ イカイカ」なる団体の性格,法人格の有無等を含め,その内容を明らかにされたい。
ちなみに,本項で述べられた商標登録出願は商願2004一119240(乙第4号証)のことかと思われるが,その出願人の欄にあるように,当該出願の出願人は,請求人個人(自然人)である。
(1−7)「荒木汰久治が,正当な権利を有する」との点に関し,「正当な権利」とは何かを明らかにされたい。また,ハワイの「KANAKA IKAIKA」本部なる組織について明らかにされたい。
なお「正当な権利」について,甲第14号証に係る手紙およびその訳文から明らかでない。
また,甲第14号証に係る手紙に関して,日付がなく「Takuji Araki」の前にMr.の表示がないなど不自然なところが多いため,被請求人は当該手紙が果たして本当にハワイの「カナカイカイカ」の本部なる組織から送られたものであるのか自体について疑問を覚えるところである。また,訳文についても「特命大使」など誤解を含めた誤訳が多数存在するため,請求人が甲第14号証に基づいて何らかの立証を行いたいのであれば,再度訳文を提出されたい。加えて,本手紙は「Re:Kanaka IkaikaJapan Representation」とされており,請求人の「Kanaka IkaikaJapan Representation」を件名とする手紙に対する返信であると推察されることから,この「Kanaka Ikaika Japan Representation」とその訳文を含めて提出されたい。
(1−8)甲第15号証,甲第16号証に関し,無効理由との関係で何を立証されたいのか不明であるので,この点を具体的に示されたい。
以上のとおり,請求人のいずれの主張も,無効理由との関係で根拠に欠けるものである。
(2)請求人の本件審判請求の実態について
前記の(1)で述べたように,請求人は虚偽の主張を含め本件審判請求の実態を何ら明らかにしないところであるが,さらに,請求人と被請求人との間においては,本件審判の請求に至るまで次のやりとりがあつた(省略)。
このように請求人においては,被請求人から本件商標権を合理的な譲渡対価で譲渡を受ける機会,更に言えば,被請求人の勧めに応じて商標「KANAKA IKAIKA」についての商標権を取得する機会があったにもかかわらず,ことごとく請求人自らによってその機会を逸してきた。その一方で,請求人は,被請求人から事前の許諾を受ける旨伝えられた後も,商標「KANAKA IKAIKA」をアウトリガーカヌー大会の開催ないしTシャツ等に一切連絡を入れることなく無断で使用してきた。
こうした独善的な請求人においては,被請求人が協力活動していた当時においても,様々なスポンサーの尽力に対して何ら感謝を表さなくなり,その後,被請求人との交流も自ら絶ってきたところである。ちなみに,現在,被請求人は,他のアウトリガーカヌークラブに参加し,その中には,かつて請求人とともに行動し,活動していた者が存在するが,私欲を追求する者は誰一人なく,真にアウトリガーカヌーを愛する団体として会員数を増加させ,被請求人は,該団体に対し,物心両面で協力している。
被請求人は,海を舞台にした活動を広く普及させるため,請求人の活動を妨げないように,すべて黙認してきたところであり,少なくとも,商標「KANAKA IKAIKA」については,被請求人に事前の使用許諾を得れば,請求人は,大会の開催などについて使用することができたところである。
請求人は,自己には「ハワイの『KANAKA IKAIKA』本部から認められた正当な権利」があり,被請求人には「他人に高額で買い取らせたりする等の不正目的」があるとし,甲第14号証の手紙から何とかして被請求人(アルバローザ社)の不正目的を演出したいようであるが,実際にどちらが「正当」でどちらが「不正」であるのかは,真逆である。
しかるに,請求人が本件審判請求により被請求人の商標登録を無効とし,自己の名義で商標登録出願を行った商願2004−119240の商標登録を求めるのは,自己の利益目的のためであることにほかならないのであって,本件審判請求は,単に請求人が自己の利益のために商標「KANAKA IKAIKA」を使用した事業を独占して行いたいというのが真の実態である。
したがって,こうした本件審判請求の真の実態を考慮して,適正なる判断を求めるものである。
(3)結び
以上のとおり,被請求人は,本件審判請求に理由がないものと思料するところであり,答弁の趣旨どおりの審決を求めるものである。
ただ,被請求人の本件商標採択の経緯からして,請求人が商標「KANAKA IKAIKA」に係る商標権の取得を切に希望し,誠意ある態度でこれに臨むのであれば,被請求人は本件審判請求の取下げに同意し,本件商標権の譲渡に応ずるのもやぶさかではない。
(ア)アウトリガーカヌー競技について使用する「KANAKA IKAIKA」の標章(以下「引用商標」という。)は,ハワイ語で「強い勇士」を意味すること,(イ)アウトリガーカヌーとは,カヌー(軽量の船本体)に,海上における波のうねりに対する安定性を確保するため,アウトリガーと呼ばれる浮子(ウキ)を外設したものであること,(ウ)引用商標は,カナカ・イカイカ・ジャパン(Kanaka Ikaika Japan)が主催した2000年ないし2005年に日本で開催されたアウトリガーカヌー競技会の名称として使用されたこと(甲第6号証ないし甲第11号証),(エ)請求人(荒木汰久治氏)は,カナカ・イカイカ・ジャパン事務局の代表者と認められること(甲第4号証,甲第5号証,甲第14号証及び乙第2号証),(オ)被請求人(市川雄一氏)は,2002年の大会からアウトリガージャパンのスポンサー(当時,株式会社アルバローザの取締役社長として就任していたと認められる。)として,また,個人競技にも参加していたこと(甲第12号証,甲第13号証),(カ)被請求人は,平成17年(2005年)4月頃,請求人と請求人の関係者である中村氏から,本件商標権を譲って欲しい旨の要望を受けたが「本件商標権に係る商標登録は無効であるが,買ってもよい」とされたため,断ったこと,その後,同年9月,被請求人は,請求人の面会に応じ,本件商標権の譲渡対価として200万円を提示した。一方,請求人から100万円の提案があり,このときの面会では,合意に至らなかったこと,(キ)被請求人は,請求人に本件商標の権利取得後(2005年9月10日付け)に使用許諾に関する覚書を送付していること(乙第2号証)が認められる。
そして,本件商標は,後掲のとおり,その構成中の中央に図形を配してはいるが,引用商標と全く同一の綴り字からなるものであり,かつ,その指定商品及び指定役務中には,請求人が引用商標を付して使用することの多い「船舶並びにその部品及び附属品」,「被服,運動用特殊被服」及び「スポーツの興行の企画・運営又は開催」等の商品及び役務を含むものである。
加えて,前記したとおり被請求人は,請求人らが開催する2002年の大会からアウトリガージャパンのスポンサーとして,また,個人競技にも参加していた経歴を有する者である。
そうすると,本件商標は,引用商標と偶然に一致したものではなく,被請求人は,本件商標が他人の業務に係る役務「スポーツ(特に,アウトリガーカヌー)の興行の企画・運営又は開催」を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であることを承知の上,当該商標が未だ登録されていないことを奇貨として,請求人らの国内参入を阻止し,商標権の譲渡対価を得る目的,又は,引用商標の顧客吸引力を希釈化若しくは便乗し,不当な利益を得る等の目的の下に出願し,権利を取得したものと推認せざるを得ないところであるから,本件商標は,不正の目的をもって使用する商標に該当するものといわなければならない。
なお,被請求人(商標権者)は,答弁書において「被請求人は,請求人に対して再三にわたり商標登録出願を行うように勧めていたところである。」等,本件審判の請求に至るまでの経緯を種々述べているが,引用商標が本件商標登録出願前に需要者の間に広く認識されていたものであることは,前述のとおりであり,被請求人が本件商標を取得しなければならない理由は,何ら存しないものであって,本件商標の出願が正当な行為であると認め得ないものであるから,独特な英文字綴り「KANAKA IKAIKA」,そして,「カナカイカイカ」という特異な称呼(響き)よりなる引用商標と全く同一の文字構成を採択して本件商標を出願し,登録を受け使用することは,不正の目的をもってなしたものといわざるを得ない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから,同法第46条第1項の規定により,その登録を無効とすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
Next Action
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