Trademark Appeal Case
擬音語の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2005−3974(T2005−3974/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「おむつにシュッシュ」の文字を標準文字で表してなり、第5類「汚物用消臭剤・防臭剤(身体用のものを除く。)」を指定商品として、平成15年11月12日に登録出願され、その後、指定商品については、同16年8月6日付け手続補正書により第5類「使用済みおむつ用の汚物用消臭剤・防臭剤」に補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『おむつにシュッシュ』の文字を書してなるところ、その構成中『シュッシュ』の文字は、「蒸気などがすきまから断続的に吹き出る音』を表す語『しゅっしゅ』に通じる語であり、消臭剤、防臭剤をはじめとする各種の薬剤・化粧品等のスプレー式及びポンプ式の商品において、噴霧あるいは噴射するときの音を表す語として普通に使用されているから、本願商標は、全体として『おむつにシュッシュと噴霧(あるいは噴射)すること』を表現しているものと理解させるにとどまるものと認める。そうとすると、これをその補正後の指定商品について使用するときは、単に『汚れたおむつに直接噴射して使用するスプレー式(またはポンプ式)の商品である』という商品の品質を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
本願商標は、上記1のとおり、「おむつにシュッシュ」の文字を標準文字で表してなるところ、構成中の「シュッシュ」の文字は、「蒸気などがすきまから断続的にふき出る音。」(株式会社岩波書店 「広辞苑第五版」)の意味を有する「しゅっしゅっ」の語における末尾の促音「っ」を除いた「しゅっしゅ」の文字を片仮名文字で表したものと認識し得るものであり、「しゅっしゅ(シュッシュ)」の文字からも、もとの「しゅっしゅっ」の意味、内容を理解し得るものである。
ところで、近年の健康・快適志向を背景に、清潔、においに対する関心が高まる中、様々な「消臭剤、防臭剤」が開発されており、その利便性からスプレー式の商品が、各種、販売されている実情にある。そして、スプレー式の商品を噴霧して使用することを端的に表すときに、擬音語「しゅっ」や「しゅっしゅっ」、あるいは、それに近似した擬音語が用いられ表現されていることが、しばしば、見受けられる。
このことは、例えば、以下の資料、新聞の記事及びインターネットの商品情報等を紹介するサイトからも裏付けられるところである。
(1)「しゅっ:気体や液体などが、小さな穴や隙間から擦れるように吹き出す音。スプレーなどの音によく使う。」、「しゅっしゅっ:気体や液体などが、小さな穴から断続的に擦れるように吹き出す音。また、その様子。・・・類義語『しゅっ』・・・」(「暮らしのことば擬音・擬態語辞典」 株式会社講談社 2003年12月25日第3刷発行)の記載。
(2)「マーケットEye 布製品の消臭スプレー 異臭をキレいに」(1999.08.26 中日新聞 朝刊)の見出しのもと「シュッとひと吹きするだけで布製品についた汗やたばこ、ペットや焼き肉のにおいが取れる消臭スプレーが売れている。商品が出そろって1年足らずだが、約70億円市場に急成長、今後ますます伸びそうな勢いだ。・・・」の記載。
(3)「ファブリーズ P&G(キミの名は)」(2003.05.24 朝日新聞 東京朝刊)の見出しのもと「『布にシュシュッと・・・』のCMで知られる布用消臭剤シリーズ・・・」の記載。
(4)商品「エコファ消臭スプレー」の広告において「1平方mあたり10回が目安で、シュッシュして下さい。スプレー1本で約900回シュッシュできます。」の記載。(http://www.rakuten.co.jp/hometaste/743049/743067/)
(5)「株式会社 トータルヘルスデザイン」の商品説明においてスプレー式の商品が使用されている写真の横に「1000倍に薄めたノンジャーム希釈液を植物にシュッシュ!草木が元気になって病害虫の予防にもなります♪」の記載。(http://www.rakuten.ne.jp/gold/thd/nongerm/)
(6)「株式会社Chiyo−pet」のホームページ中、ペット用の消臭剤について「ニオイも菌もシュシュッ!解決」及び「こんな時につかおう! 1.ペットのおしっこ後や、マーキングしちゃった後にシュッ! 2.お部屋、車内の消臭、除菌、抗菌にシュッシュッ!・・・・」の記載。(http://www.chiyo-pet.com/syusyu/index_tama.html)
これらのことから、本願商標「おむつにシュッシュ」の文字に接する取引者、需要者は、「おむつに」の文字が具体的な対象を表したものであり、「シュッシュ」の文字が「噴霧する」ことを擬音語を用いて表したものと理解し、全体として「おむつに噴霧、スプレーする」ことを認識、理解するということができる。
ところで、出願人(請求人)は、「国語辞典に『シュッシュ』の語が記載されていないから、該語は『蒸気などがすきまから断続的にふき出る音』を表す正確な語ではない。仮に、両語が同義であるとしたとき、構成中の『シュッシュ』の語が『蒸気などがすきまから断続的に吹き出る音』に通じるからといって、本願商標が、『汚れたおむつに直接噴射して使用するスプレー式(またはポンプ式)の商品』であるという商品の品質を直接的に示すもの、あるいは、普通に用いられる方法で表示するものであるとはいえない。原査定において記載した使用例は、『シュッシュ』の語に『スプレー』の語が併用されているものであるから、『シュッシュ』だけでは『スプレー』するという意味に一義的には対応しないものであり、商品の使用態様を間接的にイメージさせるものである。」旨、主張している。
しかしながら、本願商標が、商標法第3条第1項第3号に該当するか否かの判断にあっては、高裁判決において「商標法第3条第1項第3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである(東京高裁、平成12年(行ケ)76号判決)。」と判示されているところであり、その構成中の「しゅっしゅ(シュッシュ)」の文字は、その語自体が辞書に正確に記載された語ではないとしても、末尾の促音の有無によって、該文字から「しゅっしゅっ(シュッシュッ)」の語が本来持つ意味と隔たりのある別の意味を理解するということはないと判断して差し支えない表示であると認められる。さらに、上記で述べた実情から、本願商標に接する取引者、需要者は、補正後の指定商品との関係において、「おむつにシュッシュ」の文字全体から「おむつに消臭剤を噴霧する」ことを理解するものであり、結局、「スプレー式の商品」であるという具体的な商品の品質を表示したものとして認識、理解するとみるのが相当である。
したがって、請求人(出願人)の上記主張は、採用することができない。
してみれば、本願商標を、補正後の指定商品「使用済みおむつ用の汚物用消臭剤・防臭剤」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、該商品が「おむつ用のスプレー式の消臭剤・防臭剤」であることを表したものとして理解するにとどまり、商品の品質を表示、記述した標章ということができるものであるから、自他商品の識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものというべきである。
また、請求人は、請求の理由において、「本願商標は、市場において実際的な識別力を有していることは事実であり、十分な自他商品の識別力を有し広く需要者に認識されていることについて証明書を入手する準備がある。」旨述べている。
そこで、当審において、平成18年6月9日付けの審尋書をもって、「本願商標が使用により、識別力を有するに至った商標であることを主張するのであれば、それを証明する証拠を指定した期間内に提出されたい。」旨の回答を求めたところ、その後、相当の期間が経過するも、使用による識別性については、何らの証拠の提出もないものであるから、請求人の上記主張は採用することができない。
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、妥当であって、これを取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
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