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Trademark Appeal Case

称呼の要部抽出と識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2004−90670(T2004−90670/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4796166号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4796166号商標(以下「本件商標」という。)は、「アサヒカップ」の文字(標準文字)を書してなり、平成15年6月6日に登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、平成16年8月20日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由

(1)商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、昭和63年9月20日に登録出願、別掲のとおりの構成よりなり、第28類「酒類(薬用酒)を除く)」を指定商品として、平成3年1月31日に設定登録された登録第2300936号商標、登録第4605002号商標及び登録第4743935号商標と称呼、観念を共通にする類似のものである。また、指定商品も互いに抵触する。

(2)商標法第4条第1項第15号について

「Asahi」の文字よりなる商標(登録第2055143号商標外10件)は、申立人の商標として広く一般に知られているから、これと類似する本件商標がその指定商品に使用された場合、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。また、指定商品も互いに抵触する。

したがって、本件商標の登録は、取り消されるべきである。

3 当審における取消理由

当審において、登録異議申立に基づき、平成17年9月27日付けで商標権者に対して通知した取消理由の要点は、以下のとおりである。

本件商標は、「アサヒカップ」の文字を標準文字で書してなり、上記1のとおりに設定登録されたものである。

これに対し、登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用に係る登録第2300936号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、昭和63年9月20日に登録出願、第28類「酒類(薬用酒を除く)」を指定商品として、同3年1月31日に設定登録され、その後、平成13年9月26日に指定商品を第32類「ビール」及び第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」とする指定商品の書換登録がされたものである。

そして、本件商標は、引用商標と類似の商標であり、その指定商品も同一又は類似の商品である。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。その理由は、次のとおりである。

本件商標は、上記のとおり「アサヒカップ」の文字よりなるところ、申立人は、明治22年に有限責任大阪麦酒会社として設立されたあと、同25年から「アサヒビール」の製造発売を開始し、以来、現在に至るま「朝日」「アサヒ」及び「Asahi」の文字からなる商標をビールや清涼飲料など多岐にわたる商品に使用しており、特に、昭和62年に発売したビール「アサヒ スーパードライ」が大ヒットし、そのラベル中央に表された引用商標中の「Asahi」の文字と同じ文字からなる商標は、申立人のビールを表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されるに至っているものと認められる。

そうすると、本件商標が、その指定商品に使用された場合、これに接した取引者、需要者は、「アサヒ」の文字部分より申立人の周知、著名な「Asahi」の文字からなる商標を連想、想起するということができ、また、「カップ」の文字部分は、カップ入りの商品であることを表すものと認識されることも少なくないといわなければならない。

以上からすると、本件商標を構成する「アサヒ」と「カップ」の両文字間には受ける印象、認識の度合いにおいて軽重の差があるというべきであるから、本件商標は、構成文字の全体に相応した「アサヒカップ」の称呼のほか、「アサヒ」の文字部分に相応して「アサヒ」の称呼をも生ずるものと判断するのが相当である。

一方、引用商標は、「Asahi」の文字に相応して「アサヒ」の称呼を生ずるものである。

してみれば、本件商標は、引用商標と「アサヒ」の称呼を同一にする出所の誤認・混同を生ずるおそれのある類似の商標といわなければならず、その指定商品も同一又は類似のものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

4 商標権者の意見

(1)上申書(平成17年2月14日提出)の要点

本件商標は、「アサヒ」と「カップ」とが同書同大等間隔でまとまりよく一体に表されており、本件商標の称呼はあくまでも「アサヒカップ」であり、「アサヒ」と「カップ」とが分離されることはない。構成中「カップ」の文字が識別力の弱い言葉であった場合には、分離される可能性も考えられるが、「カップ」は過去の特許庁の審査例(登録第615751号商標、登録第554363号商標、登録第969095号商標、登録第2115673号商標及び登録第2584752号の2商標)からも明らかなように、単独で識別力を発揮する商標で、識別性が弱い言葉とはいえない。

すなわち、本件商標は、識別力を有する「アサヒ」と識別力を有する「カップ」とが軽重なく一体不可分に連結した「アサヒカップ」である。

申立人主張に係る商標法第4条第1項第11号は実質的に本件商標が審査時に受けた拒絶理由と同旨であり、審査官が撤回した拒絶理由が再び異議申立において取消理由として復活することは権利の安定性という点で妥当ではない。

申立人アサヒビール株式会社は、ビールにおいてそれなりの知名度を有しているという点は商標権者も認めるが、しかし、商標権者も朝日酒造株式会社という名称であり、「久保田」等数多くの銘酒を製造販売し、それなりの知名度を有している会社である。

したがって、このような実情及び本件商標の構成を考慮した場合、本件商標を著名商標を含む商標として拒絶するのは妥当ではないと考える。

(2)意見書の要点

ア 商標権者は、商品「ビール」について商標「アサヒビール」が著名であることは争わないが、商標「アサヒビール」が商品を超えてまで著名とは思われない。けだし、「アサヒ」は一般的な言葉であり、例えば「ソニー」のような造語ではないからである。

したがって、本件商標「アサヒカップ」と「アサヒビール」(若しくは「アサヒ」)とは現実的に混同しない。特に、本件商標の指定商品は「日本酒」であることも重要である(商標権者は、本件商標の指定商品を権利放棄手続により「日本酒」 に限定する準備がある。)。業界において「ビール」と「日本酒」 は全く別異のものである。

イ 本件商標の構成部分「カップ」を「カップ入りの商品」の「カップ」であるとの判断の積極的根拠はない。なお、甲第16号証は商標構成が「one」と「Cup」の二段書きであるから、本件と事案を異にする。

本件商標は「ASAHI CUP」などではなく、表音文字であるカタカナで書されており、本件商標から「CUP」を連想することはない。したがって、本件商標から「アサヒ」の称呼が生じることはないと考える。

ウ 平成16年2月24 日付け意見書にも記載したように、「CUP\カップ」 が登録されていること、「SPORTSCUP\スポーツカップ」と「スポーツ\SPORTS」とは非類似とされていること、「楽カップ」と「楽」とは非類似とされていること、「ヒカリカップ\ひかりかっぷ」と「光」とは非類似とされている。

エ 更に、他の過去の特許庁の審査例に鑑みても、商標権者の主張は正当であると考える。即ち、商標の構成中に「アサヒ」の称呼が生じる文字を有していても、登録された商標が存在する。

(a)引用商標と「アサヒリョクケン」(登録第4376469号商標、第32類ビール他)とは区別されている。

(b)引用商標と「AsahiKASEI」(登録第4527659号商標、第32類ビール他、第33類日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒)とは区別されている。

オ そもそも、引用商標は「アサヒ」の称呼が生じ得る先行登録商標「ASAHI KIKUSUI」(登録第736733号商標、第28類酒類),「旭 亀鶴」(登録第1589493号商標、第33類清酒),「旭達磨」(登録第1782350号商標、第28類酒類)等と非類似と判断されて登録されたものであり、これらの過去の審査例は尊重されるべきと考える。

(3)以上、審査例及びこれまで商標権者が提出した審査例と整合しない今回の判断は法的安定性を崩すことは必至であり、本件商標「アサヒカップ」と引用商標とは非類似と判断されるべきと考える。

5 当審の判断

(1)本件商標と引用商標の類否について

本件商標は、その構成上記のとおり、「アサヒカップ」の文字を書してなるものであるのに対し、引用商標は、その構成別掲のとおり、上段に「SUPER」の文字を小さく、中段にカンマで囲った「YEAST」の文字をやや大きく、そして、下段に大きく「Asahi」の文字を書してなるものである。

そこで、両商標を比較するに、本件商標の構成中「アサヒ」の文字は、前記3取消理由通知でも説示したとおり、引用商標の構成中の「Asahi」の文字とその文字態様を同じくする、申立人が商品(ビール等)を表示する商標として使用をし取引者、需要者の間に広く認識されるに至っている周知、著名な商標「Asahi」(以下「申立人使用商標」という。)と称呼を同じくするものであり、また、「カップ」の文字は、その指定商品との関係では、小型(約100〜200ミリリットル程度)のカップ状の容器入り商品について、その品質(カップ入り)を表示する語として単独で若しくは他の語に結合して普通に使用されているものであるから、「アサヒ」と「カップ」の両文字間にはその出所識別標識としての機能において自ずと軽重の差が生じ、本件商標よりは、その全体の構成文字より「アサヒカップ」の称呼を生ずるほか、構成中、申立人の周知、著名な商標と称呼を同じくし記憶、印象に強い「アサヒ」の文字より、単に「アサヒ」の称呼をも生ずるものといわざるを得ない。

他方、引用商標よりは、その構成中、下段に顕著に表示してなる「Asahi」の文字より、「アサヒ」の称呼を生ずること明らかである。

そうすると、本件及び引用の両商標は、外観、観念の点を考慮しても、称呼において互いに類似する商標であり、また、本件商標の指定商品は引用商標の指定商品中に含まれるものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反するとの理由により、その登録を取り消すべきものとした先の取消理由(上記3)は、妥当なものと認められる。

そして、これについて述べる商標権者の意見(上記4)は、以下の理由により採用することができない。

(2)商標権者の意見について

ア 商標権者は、「カップ」の文字は識別性の弱い語ではなく、このことは過去の登録例からも明らかであると主張している。

確かに、「CUP/カップ」の文字よりなる商標が商標権者の挙げる登録例として存することは認められるが、本件において、「カップ」の文字の識別性の判断は過去の登録例に拘束されることなく、個別具体的に検討されるべきであり、また、商標権者の挙げる登録例は必ずしも本件商標とその指定商品を同じくするものばかりではないから、これらをもって、本件における「カップ」の文字に関しての識別性の判断の基準とすることはできない。

そして、「カップ」の文字は、その指定商品との関係において、日本酒(清酒)についてはカップ状の容器入りの商品であることを表す商品の品質を表示する語として普通に使用されていることは枚挙にいとまがなく、また、焼酎やワイン等についても同様に使用されている事実のあることは、以下のインターネットのホームページの情報からも裏付けることができる。

(ア)www.rakuten.co.jp/h-echigoya/ 楽天市場 「全国各地のカップ酒(カップ地酒・ワンカップ)リキュール ...」の見出しのもと、カップ入りの商品の写真とともに、下記の記載がある。

(a)「[山梨県] ハラモカップワイン甲州(白/辛口) 180mlカップ エチゴヤNet価格 290円 (税込) 送料別 1本からお気軽にどうぞ♪」との記載がある。

(b)「わいん 花の想いで 120mlワインカップ ≪ブラッシュ(ロゼ)・甘口≫ エチゴヤNet価格 350円 (税込) 送料別 1本からお気軽にどうぞ♪ 」との記載がある。

(c)「チョーヤ さらりとした梅酒<梅の実入り> 100ml瓶カップ エチゴヤNet価格 158円 (税込) 送料別 1本からお気軽にどうぞ♪」との記載がある。

(d)「宝酒造 ゆずそよぐ丘 200mlカップ 高知ゆずと麦焼酎のお酒 エチゴヤNet価格 180円 (税込) 送料別 1本からお気軽にどうぞ」との記載がある。

(e)「宝酒造 ちむどんどん 200mlカップ 沖縄シークァーサーと泡盛のお酒 エチゴヤNet価格 180円 (税込) 送料別 1本からお気軽にどうぞ♪」との記載がある。

(イ)www.h3.dion.ne.jp/~idepon/museam/cup/cup.html

「カップ焼酎コレクション」の見出し下、「龍宮「SUNCUP」, 瀬戸の灘, 常徳屋. 黒糖 20%, 黒糖 20%, 麦 16%. 富田酒造場(奄美), 天海の蔵(奄美), 常徳屋酒造場(大分). 天下無敵, 岡城, 磯むすめ. 米 25%, 麦 20%, 芋・麦 25%. 小野富酒造(大分), 熊谷酒造(大分), 磯崎酒造(八丈島)」の表示とともに、カップ入りの商品の写真が掲載されている。

上記によれば、「カップ」の文字は、その指定商品との関係においては、カップ状の容器入り商品について普通に使用されている語であるから、商品の品質を表示する識別標識としての機能を有しないか、若しくは極めて弱い語といわざるを得ない。

したがって、「カップ」の文字は識別性の弱い語ではないとする、商標権者の上記主張は採用できない。

イ 商標権者は、その名称が朝日酒造株式会社であり、「久保田」等数多くの銘酒を製造販売し、それなりの知名度を有している会社である旨、主張している。

しかしながら、商標権者が、数多くの銘酒を製造販売している者であったとしても、同人が「アサヒ」と略称され、取引者、需要者間に広く知られるに至っているといった事情があるものとは認められず、また、そのような事実を証明する証拠を発見できないから、かかる主張は採用できない。

ウ 商標権者は、「アサヒ」は一般的な言葉であるから、商標「アサヒビール」は商品「ビール」を超えてまで著名とはいえず、したがって、本件商標「アサヒカップ」と「アサヒビール」(若しくは「アサヒ」)とは現実的に混同しない。また、業界において「ビール」と「日本酒」は全く別異のものであって、本件商標の指定商品は「日本酒」であることも重要であるとして、本件商標の指定商品を権利放棄手続により「日本酒」に限定する用意がある旨述べている。

なお、商標登録原簿を徴するに、現在に至るも本件商標の指定商品を「日本酒」に減縮した手続きはなされていないものである。

ところで、本件は、本件商標と引用商標との類否について判断されるべきところ、かかる観点から上記商標権者の主張を検討するに、先ず、申立人使用商標(引用商標の構成中の「Asahi」の文字と同じ文字よりなる。)が、取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていることは先に認定のとおりである。そして、この場合、申立人の提出した甲各号証を総合して判断するに、申立人使用商標の周知、著名性の範囲をビールに限定しなければならない理由は見当たらない。

なお、申立人の提出に係る、甲第35号証ないし甲第41号証(申立人の製品案内、同会社案内)等によれば、申立人は、申立人使用商標をビールのほか、本件指定商品中に含まれる他の商品、例えば、ワイン、焼酎を加味してなるアルコール飲料等にも使用している事実が認められ、また、これら商品には「アサヒビール」あるいは「アサヒ」の商標が使用されていることも確認することができる。

商標権者は、本件指定商品が日本酒であることを前提とし、ビールと日本酒は全く別異の商品である等々述べているが(その主張は、「ビール」と「日本酒」との間では、本件商標と引用商標とにおいて商品の出所の混同は生じないとの趣旨と解される。)、前記1(本件商標の欄)に記載のとおり、本件指定商品中には日本酒以外の商品が多々含まれているのであるから、申立人使用商標の周知、著名性につき上記のとおりに判断し得る以上、それら商品との関係において、本件商標と引用商標との間に商品の出所の混同を生ずるおそれがあるのであり、そうすると、商標権者の主張の適否はともかく、本件において、商標権者の主張するとおり、本件商標の指定商品をあらかじめ日本酒に限定した上で、両商標の類否の判断をすることは妥当とはいえない。

また、上記した申立人使用商標の周知、著名性を勘案すれば、「アサヒ」の文字は一般的な言葉(創造語ではない)であり、したがって、本件商標と商標「アサヒビール」及び同「アサヒ」とは現実的に混同しない(ビールを超えてまで)との商標権者の主張も、本件商標と引用商標との類否の判断に影響しないこと明らかであるから、本件商標と引用商標とは互いに類似する商標といい得る以上、これらについて縷々述べる請求人の主張は採用できない。

エ 商標権者は、「〇〇CUP/〇〇カップ」と「〇〇」とが非類似とされている事例、引用商標と「アサヒ〇〇」「Asahi〇〇」「ASAHI〇〇」等の商標とが区別して登録されている事例を挙げ、本件商標と引用商標とは非類似と判断されるべきである旨主張しているが、これら事例と本件とは比較対象すべき構成文字を異にするものであるから、これをもって、本件商標の判断の基準とすべきでないこと上記アと同様である。

オ さらに、商標権者は、審査官が審査時に撤回した拒絶理由が、異議申立において再び取消理由とされるのは権利の安定性という点で妥当ではない、と主張しているが、登録異議の申立ての制度は、商標登録に対する信頼を高めるという公益的な目的を達成するために、登録異議の申立てがあった場合に特許庁が自ら登録処分の適否を審理し、瑕疵ある場合にはその是正を図るというものであるから(工業所有権法逐条解説)、その制度の趣旨からみて、かかる請求人の主張は妥当なものということはできず、採用の限りではない。

(3)まとめ

以上、本件商標は、上記3の取消理由で示すとおり、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の3第2項

の規定により、その登録を取り消すべきものとする。

よって、結論のとおり決定する。

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