Trademark Appeal Case
略称「MIT」の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2006−90194(T2006−90194/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4925315号商標(以下「本件商標」という。)は、「MIT」の文字を大きく横書きし、その下段に「MOUSSE SOAP」の文字を小さく併記した構成からなり、平成17年2月3日に登録出願され、第3類「せっけん」を指定商品として、平成18年2月3日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由の要点
(1)「MIT」の語は、本件商標の登録出願前から登録異議申立人(以下「申立人」という。)の略称及び商標(以下、合わせて「引用商標」という。)として我が国及び外国において著名となっていた。申立人は、産学連携モデルになっていること、企業との共同研究や特許等のライセンスを行い、その研究結果が商品化されていること、化粧品・せっけん製造会社を含む我が国企業とも深く関わっていること、申立人の研究分野のうちのナノテクノロジーの分野は、化粧品やせっけん分野にも応用されていること等も周知である。
(2)本件商標は、「MIT」の文字を顕著に表してなるから、申立人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく混同を生ずる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(3)本件商標は、引用商標の著名性にただ乗りし不正の利益を得、また、その出所表示機能を希釈化させる等の不正の目的で出願されたものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
(4)本件商標は、引用商標の著名性にただ乗りし不正の利益を得、また、その出所表示機能を希釈化させる等の不正の目的で引用商標を剽窃的にその構成要素に取り込んだものである。
したがって、本件商標は、国際信義に反するものであり、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
(5)「MIT」の語は、申立人の略称として我が国において著名となっていたところ、本件商標は、申立人の承諾なく出願し登録されたものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものである。
(6)「MIT」の文字は、保存料として商品に添加されている「メチルイソチアゾリノン」(methylisothiazolinone)の略語として、指定商品を取り扱う業界において普通に使用されており、また、「MOUSSE SOAP」の文字も「ムース状のせっけん」を意味する語であって識別力を有しないものである。
したがって、本件商標は、「メチルイソチアゾリノンを使用したムース状のせっけん」について識別力を有せず、それ以外の商品について品質の誤認を生ずるから、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。
3 当審の判断
(1)申立人は、引用商標が本件商標の登録出願前から我が国及び外国において著名となっていた旨主張し、証拠を提出しているので、この点について検討する。
申立人の提出に係る証拠によれば、インターネットのウェブページや文献等の記述において申立人を「MIT」と略称していることが認められる。
しかしながら、これらのウェブページや文献は、日本政府関係者等の日本国からの視察者が申立人の施設を視察・訪問した際の調査報告(甲第6号証、甲第9号証、甲第12号証及び甲第16号証)、日本政府関係者と申立人関係者との意見交換の報告(甲第14号証)及び申立人の研究について説明・報告等(甲第1号証及び甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証、甲第7号証、甲第8号証、甲第10号証、甲第13号証、甲第15号証、甲第17号証ないし甲第24号証)がほとんどであり、これらは、極限られた一部の者を対象とするものである。しかも、これらは、「マサチューセッツ工科大学」とうたった上で、記述中に「MIT」と略称している場合が多く、「MIT」の文字のみで申立人を直ちに指称しているものは少ない。
また、「MIT」又は「M.I.T.」の文字からなる商標が各国で登録されていることが認められるが(甲第11号証)、複数の外国おける商標登録の事実があることのみをもって、当該商標が、我が国の需要者の間に広く認識されているということはできない。
さらに、申立人は、「MIT」の文字が商標としても著名である旨主張しているが、いずれの商品又は役務について使用する商標として著名なのか具体的に述べるところがない。
その他、申立人は、ナノテクノロジー技術に関連したウェブページの写し(甲第25号証ないし甲第34号証)を提出しているが、これらは、引用商標の著名性を直接立証するものではない。
そうすると、これらの証拠によっては、申立人が様々な研究を行っていることが認められるとしても、「MIT」の文字が申立人の略称又は商標として、一般の需要者の間に広く認識されているものということはできない。
(2)以上を前提に、本件商標が商標法第4条第1項第15号、同第19号、同第7号及び同第8号に該当するものであるか否かについて検討する。
(ア)本件商標は、上記1のとおり、構成中の「MIT」の文字が大きく顕著に表されていること、その下に小さく表された「MOUSSE SOAP」の文字が本件の指定商品の品質を表示したものと認識し、理解されることから、「MIT」の文字自体が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであり、また、「MIT」の文字部分は、引用商標と社会通念上同一のものといえる。
(イ)しかしながら、引用商標が需要者の間に広く認識されているものとはいえない以上、本件商標をその指定商品に使用した場合に、これに接する需要者が「MIT」の文字部分に着目して、直ちに引用商標ないし申立人を連想し、想起するようなことはないというべきであり、該商品が申立人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく、その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
(ウ)そして、本件商標は、引用商標の存在を知った上で採択されたとすべき具体的な証左はなく、むしろ、「MIT」の文字部分が偶然に引用商標と一致したものと見るのが自然であり、引用商標の著名性にただ乗り(フリーライド)し、不正の利益を得るものとは認められないし、また、引用商標の出所表示機能を希釈化させる等の不正の目的で出願し、登録を受けたものともいい難い。
申立人は、本件商標は、不正の目的で引用商標を剽窃的にその構成要素に取り込んだものである旨主張するが、その具体的な証左はなく、これが直ちに国際信義に反するものともいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号及び同第7号に該当するものではない。
(エ)また、「MIT」の文字が申立人の略称として著名になっているものとは認められない以上、本件商標は、他人の名称の著名な略称を含むものとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものではない。
(3)次に、申立人は、本件商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものである旨主張し、証拠を提出しているので、この点について検討する。
申立人の提出に係る甲第35号証及び甲第36号証によれば、メチルイソチアゾリノン(methylisothiazolinone)なる物質が商品に保存料として添加されることがあり、これが「MIT」と略称されることがあることが認められる。
また、甲第37号証ないし甲第39号証によれば、ムース状のせっけんが「ムースソープ」と称されていることが認められる。
しかしながら、上記証拠によっては、上記物質自体が一般的なものとはいい難いし、この物質についての知識が、本件商標に係る指定商品を取り扱う需要者の間にどの程度浸透しているのかも明らかでない。そして、上記物質が商品の添加物として表示されている具体的事実を示す証左もないことからすると、「MIT」の文字が本件商標に係る指定商品の品質、原材料表示として普通に使用されているものとは認められない。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品に使用した場合に、これに接する需要者がその構成中の「MIT」の文字部分をとらえ、その商品の品質、原材料等を表示したものと認識し、理解するものとは到底いえないし、また、いずれの指定商品について使用しても、商品の品質の誤認を生ずるおそれもないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものではない。
(4)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同第19号、同第7号及び同第8号並びに同法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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