Trademark Appeal Case
ナノテクノロジーの識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2004−18407(T2004−18407/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、「NANO TECHNOLOGY」の文字を標準文字により書してなり、第28類「運動用具」を指定商品として、平成15年7月14日に登録出願されたものである。
第2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、『半導体などの微細加工の技術』の意味を有し、近年ではその応用技術がさまざまな分野・商品に利用されている『NANO TECHNOLOGY』と普通に書してなるものであるところ、指定商品との関係においては、例えばナノテクノロジーを利用したテニスラケットが開発され、一般に販売されている実情にあることからすれば、これをその指定商品に使用しても、取引者・需要者に『ナノテクノロジーを応用した運動用具であること』を理解させるに止まり、単に商品の品質を表示してなるにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨の認定、判断をして、本願を拒絶したものである。
第3 当審の判断
1 本願商標は、前記構成のとおり「NANO」と「TECHNOLOGY」の文字を結合し「NANO TECHNOLOGY」と表したものであるところ、前者の「NANO」の文字は、「10億分の1を表す単位の接頭語。極小、こびと」、後者の「TECHNOLOGY」の文字は、「技術学。工学。科学技術上の過程。」等の意味を有する英語として、それぞれ「株式会社小学館 コンパクト版新英和中辞典」等の辞書に掲載されているばかりでなく、その片仮名表記である「ナノ」及び「テクノロジー」も「株式会社岩波書店発行 広辞苑 第五版)」において、それぞれ前記の意味合いで掲載されている語である。
さらに、これらを結合した「NANO TECHNOLOGY」は、工学的な測定技術である電子顕微鏡技術の開発などにより、分子・原子レベルでの構造制御が可能になり、今日では結晶制御材料、複合材料のほか、デバイスの開発など様々な分野で、「ナノテクノロジー」あるいは「ナノテク」とも称され、「10億分の1の単位で表されるナノレベルの超微粒子を混合したり、薄膜を積み重ねることで新しい性質や機能をもつ材料が開発できる技術」を意味する語として、研究者、技術者のみならず、業界関係者においても容易に理解されているものである。
また、本願指定商品との関係では、審決時においてはナノテクノロジーにより開発されたフラーレンと呼ばれる新素材がボーリングボールやゴルフクラブ等の運動用具に実用化されている。
そうとすれば、本願商標をその指定商品中「運動用具」に使用するときは、これに接する取引者・需要者は、全体として「NANO TECHNOLOGY(ナノテクノロジー)を応用した商品」又は「NANO TECHNOLOGY(ナノテクノロジー)を応用した素材を原材料とした商品」であることを表示したものとして理解、認識するに止まり、自他商品を識別するための標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。
2 そして、前示の認定、判断は、例えば、下記(1)ないし(7)の新聞記事情報や(8)及び(9)のインターネット情報等からみても妥当なものとして是認できる。
(1)「ナノテクノロジーの時代へ 次世代産業技術国際シンポ」(1988.03.29 化学工業日報 4頁)のタイトルのもと、「次世代産業基盤技術開発制度の新材料関係七テーマの研究成果を一挙に公開する「次世代産業技術国際シンポジウム」が先週、神戸で開催された。・・・・シンポジウムは、高結晶性高分子材料、導電性高分子材料、高機能性分離膜材料、ファインセラミックス、高性能結晶制御合金、複合材料、光反応材料の次世代プロジェクトに属する七テーマのほかに、ニューマテリアル、超電導材料といったトピカルな研究成果も発表された。シンポジウムでとりわけ目についたのは、分子・原子レベルで構造を制御していこうとする′′ナノストラクチャーの思想′′である。そのひとつがナノ構造制御によるセラミックの高靭化。・・・・こうした分子・原子レベルでの構造制御を可能にしたのが、新しい工学的な測定技術である電子顕微鏡技術である。ノーベル物理学賞を受賞したIBMチューリッヒ研究所のH・ローラー博士は記念講演で「分子や原子の構造が画像化できるようになり、現象を理論付けていくブレークスルーになった」と語った。ナノレベルでの制御が材料技術の大きなポイントになっていることがあらためて強く印象付けられた今回のシンポジウムだが、内田盛也帝人理事も「現実にナノレベルで起こっている状態を観察して実験を進めていく′′インシチュ・エクスペリメント(insistueexperiment)′′の手法が新材料にアプローチするためのカギになる」と締めくくった。」との記載。
(2)「テクノトレンド’92(8)ナノテクノロジー/新機能材料開発に威力」(1992.01.21 日刊工業新聞 5頁)のタイトルのもと、「分子・原子レベルの工学、ナノテクノロジー(一ナノは十億分の一)が注目されている。ナノレベルの超微粒子を混合したり、薄膜を積み重ねることで新しい性質や機能をもつ材料が開発できると期待されているからだ。大学、国や民間の研究機関で徐々に成果をあげており、開発した材料が実用化されるのもそう遠くはなさそうだ。「ナノ」という言葉自体は一九八〇年ごろから使われ始め現在に至っている。当時は難しかった微細な制御が可能になり、ナノテクノロジーとして今日では結晶制御材料、複合材料のほか、デバイスの開発など様々な分野で利用されている。その背景には、STM(走査型トンネル顕微鏡)やAFM(原子間力顕微鏡)など微細構造を観察する手法の開発のほか、薄膜作製技術の進歩が大きな引き金となっている。・・・ナノサイズを観察する機器や薄膜作製技術の進歩によりナノテクノロジーが身近なものとなり、材料開発の基盤技術として実用レベルに達してきた。研究成果を見れば、すぐにでも実用化できそうな気配だが課題もある。新原教授は「ナノサイズの超微粒子などを使うことで新しい性質や機能を示すわけだが、なぜそうなるのかを調べることも今後の課題としている。」との記載。
(3)「【科学】知の先端 カーボンナノチューブを発見 遠藤守信さん」(2004.04.19 東京朝刊 8頁 科学)のタイトルのもと、「・・・携帯電話やノートパソコンが急速に普及したのは、長寿命のリチウムイオン電池が登場したからだ。このリチウムイオン電池に、「遠藤ファイバー」と呼ばれる多層構造のカーボンナノチューブ(CNT)が使われている。炭素原子が円筒状に並んだCNTは、直径が髪の毛の数万分の1という超極微の素材だが、ナノテクノロジーの主役として21世紀の産業、医療、環境を左右する大きな可能性を秘めている。その発見者で、実用化の先駆者でもある遠藤守信・信州大学工学部教授に、ナノの世界に案内してもらった。・・・《ナノはセンチ(百分の一)やミリ(千分の一)と同じように使われる数の接頭詞で、十億分の一を表す。遠藤さんは、信州大学助手だった昭和四十年代に、航空機やゴルフクラブなどに使われる炭素繊維の研究に取り組み、ナノの世界の扉を開けた》」との記載。
(4)「ナノテク特集 可能性拓く新たな動き 素材開発・供給体制・応用展開」(2004.03.16 化学工業日報)のタイトルのもと、「ナノテクノロジーは素材の開発・量産から用途開発にいたるまで、あらゆる段階で動きが活発になっている。IT、エネルギー、バイオなど広範な分野で大きな可能性を秘めたナノテクだが、それらを実現するためにも、まず低コストの素材供給が求められる。ここにきて大手商社を中心にフラーレン、カーボンナノチューブ(CNT)といった新しい炭素材料の量産が始まり、性能や歩留まり向上を目指した製造プロセス改良の取り組みも進んでいる。こうした新規素材の供給体制が整備されることによって、応用開発にも一段と弾みがつくことが期待される。・・・・フラーレンは分子直径が約一ナノメートルと微細であり、有機溶媒に可溶、電子受容体に向く、化学修飾が容易−などさまざまな特徴を有する。用途開発ではボーリングの玉などスポーツ分野を皮切りに、産業分野でも電気二重層キャパシタの電極材料を開発するなどの成果が出てきている。」との記載。
(5)「ナノテク特集 新産業生む宝の山 異分野融合で拓く(座談会)」(2004.03.16 化学工業日報)とのタイトルのもと、“ナノテクノロジー”という超微細技術が世界を揺り動かしている。「世のなかを大きく変える可能性がある」「モノ作りにおける本質的な高度化技術」などとらえ方はさまざま。・・・・そこでナノテクノロジー分野の基礎研究、応用開発および実用化に取り組む方々にお集まりいただき、ナノテクノロジーが有する可能性、研究開発の実情、実用化における課題などさまざまな視点から意見を聞いた。・・・・− フラーレンは注目されてから年月が経ちますが、実用化の現状はいかがですか。
村山 いくつかのフェーズがあり、エネルギー、バイオ、IT、環境、一般産業といろんな分野に使えるとしてさまざまな論文や特許が出されている。実用化が始まっているのはまずスポーツ分野。これは比較的評価ステップが少なく、かつ評価ステージが短いことがあると思う。少々高くても使ってもらえるため、ボーリングボールやゴルフクラブ、エンジンオイル、スキー・スノーボードのワックスに採用されている。さらにリチウムイオン電池の界面制御や、有機太陽電池、燃料電池にフラーレンをきちんとデザインして使うとブレークスルーになるというデータがかなり蓄積してきて、これも早ければ数年以内には実用化になると思う。」との記載。
(6)「強度2倍のバドミントンラケット5モデル発売/アメア スポーツ ジャパン」(2006.05.07 東京朝刊 8頁)のタイトルのもと、「◆5つのモデル アメア スポーツ ジャパンは、「ウイルソン」ブランドから、バドミントンラケット「nCode(エヌ・コード)シリーズ」を発売した。ナノテクノロジーを活用した新素材「nCode」を採用。従来の自社製品に比べ強度は2倍という。全5モデル。1万8900〜2万5200円。」との記載。
(7)「特集WORLD:ゴルフクラブ「08年問題」 飛び過ぎで規制へ」(2005.05.12 東京夕刊 2頁 総合)とのタイトルのもと、「◇適合モデルか、腕を磨くか−− 「もっと遠くへ飛ばしたい」−−。ゴルファーならば誰しも描く永遠の夢。市販のクラブも主流はいわゆる高反発クラブだが、このクラブが「飛び過ぎる」として08年から公式試合で使用できなくなる。アマチュアにはどんな影響があるのだろうか。ゴルフクラブ「08年問題」の周辺を探った。・・・◆開発激化 こうした流れに、日本のメーカーでも新ルール適合クラブの開発が激しくなっている。これまで日本では反発係数が0・85〜0・86のクラブが多く、0・88をうたうものも。係数がわずか0・03アップすれば飛距離は約4・5〜6ヤード(約4〜5・4メートル)違ってくるという(ヘッドスピードが秒速40メートルの人の場合)。関係者によると、クラブ開発には2年はかかると言い、03年にJGAが規制を始めたことを考えると、今後適合モデルが続々と出てきそうだ。ヨネックスは4月末、最先端のナノテクノロジー素材を使った新ルール適合のクラブを発売した。・・・では、高反発ヘッドを採用せずに初速をどうアップさせたのか。「ナノカーボン素材とトヨタが開発したチタン合金を使い、長くしなりのいいシャフトを実現しました。強度がありながらも軽く、振りやすい。その結果、ヘッドスピードをアップさせ、初速を上げた」とヨネックスの広報担当者は説明する。定価は8万9250円。実証データでも従来の高反発クラブに比べ、飛距離も上回っているという。」との記載。
(8)株式会社マルマンのホームページ「maruman MARUMAN INTEREST GATEWAY」において、「マルマンテクノロジー」のタイトルのもと、 ゴルフ業界ではチタンヘッドの登場以降これを越える新素材を模索し続けていましたが、マルマンの基礎研究チームにおいては「ポストチタン」として「ナノテクノロジーの応用」に早くから取り組んでまいりました。
その研究成果を世に問うた第一号作品が2001年3月に発表した「マジェスティ30th記念モデル」です。素材にはナノテクノロジーを応用した「フラーレンチタン」を採用。・・・その後マルマンの開発チームはフラーレンチタンの量産化に取り組み、早くも2003年7月には「マジェスティプレステジオSCV/ロイヤルIII」を発表。これを契機に世の中でもナノテクノロジーが脚光を浴び始め、ナノテクノロジーをいち早く製品化した「飛距離が大きく伸びるゴルフクラブ」として各紙面やTV番組で紹介されるようになりました。・・・。 ナノテクノロジ−とは、10億分の1mという非常に微細な世界の技術であり、あらゆる産業において世界を変えることのできるテクノロジーです。
フラーレンの発見によって、世界中の政府、研究機関、企業が研究開発投資をスタートしています。 マルマンでは、ナノテクから生まれた『フラーレンチタン』をドライバーのボディに採用。従来のチタン合金に対して、強度で12%、耐久性で25%アップすることができました。それによって、クラウン部を薄くできインパクト時のたわみを有効に発生させ飛距離アップに成功しました。」との記載。(http://www.maruman.co.jp/golf/index.php?page=technology)
(9)「アメア スポーツ ジャパン株式会社 」のホームページにおいて、アトミック、レジャースキーヤーのための高性能スキー「IZOR(アイザー)」新発売 〜“ナノ・テク”を導入しソフトで軽く、しっかり滑れるスキー板を実現〜【2005年10月04日】
「アトミック事業部は、初級・中級レベルのレジャースキーヤーをターゲットに“ナノ(10億分の1)テクノロジー”を素材に導入したスキーの新製品“IZOR(アイザー)”を開発、来る10月25日から全国のアトミックスキー取り扱い店舗にて発売を開始します。 ・・・。」との記載。
(http://www.amerjapan.com/cgi-bin/press/com_prs.cgi?data_id=127&task=print&brand=3)
3 以上のとおり、本願商標は、その指定商品「運動用具」に使用するときは、「NANO TECHNOLOGY(ナノテクノロジー)を応用した商品」又は「NANO TECHNOLOGY(ナノテクノロジー)を応用した素材を原材料とした商品」であること、すなわち商品の品質を表示するにすぎないものといわざるを得ない。
なお、請求人は、「NANO TECHNOLOGY」は、「超微細技術」を意味する語であり、主に半導体や遺伝子治療に使われるDNAの分野で使用されている技術であり、本願指定商品との関係では「超微細技術を利用したテニスラケット」といった観念を直感できないから、自他商品の識別機能を有する旨主張するが、「NANO TECHNOLOGY(ナノテクノロジー)」が、本願商標の出願時以前からスポーツの分野を含む様々な分野での応用が期待され、現に「NANO TECHNOLOGY(ナノテクノロジー)」を応用した素材からなる運動用具が製品化されていることは前記のとおりであるから、請求人の主張は採用できない。
したがって、本願商標を商標法第3条第1項第3号に該当するとして、その出願を拒絶した原査定は、妥当であって取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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