結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2005−89099(T2005−89099/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4406132号の2商標(以下、「本件商標」という。)は、「セシカ」の片仮名文字と「CESICA」の欧文字とを二段に併記してなり、平成10年10月20日に登録出願、同12年8月4日に設定登録された登録第4406132号商標の指定商品中「被服」について、同16年10月13日付けで分割移転登録され、現に有効に存続しているものである。
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2244717号商標(以下、「引用商標」という。)は、別掲のとおり、「C’ESTCHIC’A」の欧文字を横書きしてなり、昭和63年5月11日に登録出願、第17類「被服、布製身回品、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成2年7月30日に設定登録、現に有効に存続しているものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)請求理由
(ア)本件商標は、「セシカ」の片仮名文字と「CESICA」の欧文字とを二段に併記した構成よりなるものであるから、構成文字に相応して「セシカ」の称呼を生ずるものと認められる。また、本件商標は特定の観念を生じ得ない造語商標である。
一方、引用商標は「C’ESTCHIC’A」の欧文字を横書きした構成よりなるものであり、指定商品中に「被服」を有するものである。
そして、被服はファッション業界における代表的な商品であり、また、被服等の取引業界においては、英語のほかフランス語も広く用いられているところから、商品に付される外国文字よりなる標章がフランス語風のものと認識し得る場合、その文字をフランス語読みした称呼をもって商品の取引に当たる場合が少なくない。
引用商標においても、語頭に配された「C’EST」が「それは・・・です」を意味するフランス語の基本的語句の1つであることからすれば、引用商標に接する需要者・取引者は当然にフランス語風の商標と把握し認識して取引に当たると言うべきであるから、フランス語風の称呼を考慮すべきである。
(イ)引用商標の語頭部分「C’EST」は「セ」と発音される(甲第4号証)。また、後半部分「CHIC’A」は辞書類に掲載されていない語であるが、フランス語における「エリジョン」なる発音法則(母音字及び無音のhで始まる語の前で語末の母音字を省略し、省略された母音字の代わりにアポストロフ(’)を置く)を考慮し、記号「’」を無視して綴り字を読めば(つまり子音を次の母音に結び付けて発音すれば)、「CHIC」が「シク」と発音されることからして(甲第4号証)、当該部分「CHIC’A」が「シカ」と称呼されることは明らかである。
したがって、引用商標「C’ESTCHIC’A」からはフランス語風の称呼として「セシカ」の称呼が生ずる。
なお、付言すれば、請求人は商標「C’ESTCHIC’A及び図形」を商願2004−90737号で出願中であるが(甲第5号証)、当該出願に対し、第三者から刊行物等提出書が提出されている(甲第6号証)。その中で提出者は、「C’ESTCHIC’A」が「セシカ」と称呼されると述べている。提出者が被請求人であるか否かは不明であるが、いずれにしても被服業界に属する者と推測されるところ、提出者の主張は、被服業界において「C’ESTCHIC’A」の欧文字に接するとフランス語風に「セシカ」と称呼するのが一般的であると主張している。
また、請求人の出願に係る商願2000−54394号「C’EST−CHIC’A+T図形」及び商願2000−54392号「C’EST−CHIC’A+TRANS」の審査では、「C’ESTCHIC’A」の文字部分からは「フランス語の発音方法に倣い『セシカ』の称呼をも生ずる」として、いずれも本件商標に類似と判断されている。このように、特許庁の実務上、「C’EST−CHIC’A」の欧文字はフランス語風に「セシカ」と称呼されると判断されていることからしても、記号「−」の有無の相違にすぎない引用商標「C’ESTCHIC’A」から「セシカ」の称呼が生ずることは明らかである。
(ウ)このように、本件商標と引用商標は同一の称呼「セシカ」を生ずるものであるから、両者の外観及び観念の類否を検討するまでもなく、両者は称呼上相紛れるおそれがある類似の商標であると言わなければならない。
さらに、本件商標と引用商標が共に商品「被服」を含むことは上記したとおりであるから、両者の指定商品は同一又は類似するものである。
(2)答弁に対する弁駁
(ア)被請求人は、引用商標「C’ESTCHIC’A」は、フランス語からなる商標とは理解し難いことから、英語風の「セストチカ」「セストチッカ」の称呼のみを生じ、「セシカ」の称呼を生じないと主張している。
そこで、まず商標の称呼の決定基準について確認すると、有斐閣発行「商標[第6版]」(網野誠著)に記載されているとおり、「商標の称呼は取引の実際における経験則に照らし、商標から自然に流れ出るところによって判定すべきである、とするのが通説」であり、判例も同旨である(甲第9号証)。そして、請求書で述べたとおり、被服などのファッション分野では、フランス語ないしフランス語風の商標が多数採択されている実情から、フランス語ないしフランス語風の商標と認識し得るものについてはフランス語ないしフランス語風の称呼を考慮するのが特許庁の実務であり、かつ実態に即した手法である。
引用商標は全体として特段の意味合いを生じない造語であるが、「C’EST」及び「CHIC」が親しまれたフランス語であり、また、英語辞書に「C’EST」なる綴りの単語が掲載されていないことも考慮すれば(甲第10号証)、見るからにフランス語風の綴りからなる引用商標に接した需要者・取引者はこれをフランス語風の商標と認識すると見るのが極めて常識的である。そして、引用商標をフランス語風に発音すれば「セシカ」と称呼されることは請求書で述べたとおりである。事実、請求人は引用商標と同じ綴りの商標を使用しているが(甲第11号証)、この商標は現にフランス語風の称呼「セシカ」でもって取引者・需要者の間で通用している(甲第12号証の1ないし3)。
このように、引用商標からフランス語風の称呼「セシカ」が生じることは疑いの余地がないから、かかる称呼が生じないとする被請求人の主張には明らかに無理がある。
なお、引用商標よりも先に出願された商標「Cest Chic ca/セシカ」(但し、平成12年7月30日に存続期間満了により消滅)からも「セシカ」の称呼が生じ得るが、10年を超えて存続している引用商標について、もはや両商標の類似性を問題にする余地はない。
(イ)被請求人は、先願商標「C’est chic ca/セシカ」の存在にもかかわらず何故に引用商標が登録されたのか疑問であると述べたうえで、引用商標には単語と単語の間にスペースがないためフランス語とは理解されず、そのため上記先願商標「C’est chic ca/セシカ」とは別個に登録されたと主張する。
しかしながら、我が国において、フランス語の文法や表示方法に厳密に合致していないからといって、フランス語ないしフランス語風に理解されないというものではない。むしろ、ファッション業界においては造語であってもフランス語風の綴りであればフランス語風に発音されることが通常であろう。前述のとおり、引用商標は一見してフランス語風の綴りであることが認識できるのであるから、フランス語風に発音することが自然である。したがって、引用商標からフランス語風の称呼「セシカ」が生じないとする被請求人の主張は、失当というほかない。
(ウ)被請求人は、引用商標「C’ESTCHIC’A」から「セシカ」の称呼は生じないとの主張を根拠付けるために、本件商標の審査において上記商標との類似性が指摘されなかったことに言及している。
しかしながら、請求人は、本件商標の審査において、「セシカ」の称呼を生ずる引用商標の存在が看過され、本来拒絶されるべきものが誤って商標登録されたことを問題として本審判を請求しているのであるから、被請求人の主張は本末転倒である。
(エ)被請求人は、引用商標からは英語風に「セストチカ」、「セストチッカ」の称呼のみを生じるとの前提に立って、「セシカ」のみの称呼を生ずる本件商標と非類似であると主張しているが、明らかにフランス語風の「C’ESTCHIC’A」を英語風に発音しようとすること自体、無理があるばかりか、「セストチカ」や「セストチッカ」なる発音は英語とは明らかに異質のものであって、極めて不自然である。
(オ)被請求人は、「C’EST」及び「CHIC’A」がそれぞれ「セ」及び「シカ」と称呼することを認めながらも、引用商標から「セシカ」の称呼が生ずるのは「C’EST」及び「CHIC’A」という 2つのフランス語を結合したものと理解できた上でのことであり、引用商標の如き外観構成からすれば上記のように理解するのは困難であると述べ、当該事実を証する書面として、乙第8号証の1ないし4を提出している。
しかし、「C’ESTCHIC’A」は、英語における省略記号「’」の使用方法を考慮すれば、これを英語ないし英語風の商標と見ることは非常識であり、かえって、「C’EST」及び「CHIC」が親しまれたフランス語であることから、フランス語風の商標と理解されると見るのが極めて自然である。
(3)よって、本件商標は商標法第4条第1項第11号の規定により商標登録を受けることができないものであるから、その登録は同法第46条第1項第1号に該当し、無効とされるべきである。
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由を次のとおり述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第8号証(枝番号を含む。)を提出した。
答弁の理由
(1)請求人は、引用商標「C’ESTCHIC’A」より「セシカ」の称呼が生じるとし、その上で本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当すると主張している。
しかしながら、複数のフランス語を結合させてなる商標の場合にあっては、語間に小さなスペースを介在させる等の表示態様を採用するのが通常であり、各欧文字を単に羅列してもそれがフランス語からなる商標であるとは理解できない。
しかるところ、引用商標は、「C’EST」と「CHIC’A」の語間を潰して表示しており、全体として一連の造語を表現したとしか理解し得ず、フランス語「C’EST」と「CHIC’A」とを結合したものと理解することが困難な外観構成をあえて採用しているものと見るのが相当である。また、それが故に「セシカ」との称呼は生じないと認定され、出願当時すでに「とんねるずの石橋貴明」のブランド名として周知・著名であった商標「C’est chi ca!/セシカ」(登録第2244062号)」と非類似と判断され、登録を得たものと見るのが相当である。
したがって、引用商標からは「セシカ」の称呼は生じないと判断するのが相当であり、本件商標と類似するとはいえない。
(2)引用商標は、昭和63年5月11日に出願されたものであるが、昭和63年当時は、「タレントショップ」という語が流行していた時期でもあり、多くのTVタレントが被服・アクセサリーなどの商品をオリジナルのブランドで発表し、好評を博した頃である。
そして、人気タレントとして知られる「とんねるず」も、昭和63年2月28日に「『とんねるずの石橋貴明』のブランド」として「C’est chi ca/セシカ」を発表し、好評を博していた。(乙第2号証の1ないし10)。
当該乙第2号証の1ないし10より、引用商標が出願された昭和63年5月当時、当該ブランド「C’est Chic ca/セシカ」が周知なものとして斯界において知られていたことが認識される。
ちなみに、当該ブランド「C’est Chic ca/セシカ」につい
ては、「とんねるず」の石橋貴明氏が代表を努める「株式会社ティーズストゥディオ」の名義の下に、昭和63年3月28日付けで商標登録出願がなされており、その後、商標登録を受けているものである。
また、「株式会社ティーズストゥディオ」名義の下に登録された「C’est Chic ca/セシカ」の商標は、乙第3号証の1に示すとおりである。
してみれば、当該ブランド「C’est Chic ca/セシカ」は、タレントとしての「とんねるず」の著名性も手伝って斯界において周知・著名性を獲得していたとみるのが相当である。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標とが、外観の上でなんら相紛れるおそれがないことは明らかである。
また、本件商標と引用商標とは、ともに特定の意味合いを直ちに理解し得ないものであり、観念上も識別し得るものである。
さらに、引用商標は単に「C’ESTCHIC’A」の欧文字を羅列したに過ぎず、これがフランス語からなる商標とも理解し難いことから、該文字列を英語風に呼んだ「セストチカ」、「セストチッカ」の称呼のみを生じると判断するのが相当である。
他方、本件商標からは「セシカ」の称呼のみを生じるものであるから、「セストチカ」、「セストチッカ」の称呼を生じる引用商標とは、称呼上も識別し得るものである。
したがって、本件商標と引用商標とは外観、観念、称呼のいずれについても相紛れるおそれのない非類似の商標と認められる。
(4)請求人は、「C’ESTCHIC’A」の文字からは、これをフランス語風に発音した「セシカ」との称呼が生じると主張し、該主張の根拠として甲第4号証ないし甲第8号証の3を提出している。
確かに、通常のフランス語の発音法則に従えば「C’EST」を「セ」と称し、「CHIC’A」を「シカ」と称して、全体を「セシカ」と称呼することは、被請求人にも争いがない。
しかし、これは引用商標が「C’EST」「CHIC’A」という2つのフランス語を結合したものであると理解できた上ではじめて想到し得るものであり、語間を潰して表示し、全体をして一連の造語を表現したとしか理解し得ない外観構成を採用している引用商標が、2つのフランス語を結合したものであると理解するのは困難というべきである(乙第8号証の1ないし4)。
フランス語からなる商標の場合にあっては、語間に小さなスペースを介在させて表示するのが通常であるから、これに従うことなく文字が羅列されているとしても、フランス語からなる商標と判断することはできない。
(5)以上のように、本件商標と引用商標とは非類似の商標であり、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
本件商標は、上記したとおり「セシカ」の片仮名文字と「CESICA」の欧文字よりなるところ、「セシカ」の片仮名文字部分は、「CESICA」の欧文字部分の称呼を特定したものと無理なく看取し得るものであるから、これよりは、その構成文字に相応し「セシカ」の称呼を生じ、特定の意味合いを有しない造語よりなるものと認められる。
一方、引用商標は、別掲のとおり、「C’ESTCHIC’A」の欧文字よりなるところ、かかる欧文字に接する取引者・需要者は、まず、英語風に「セストチカ」のように称呼するのが一般的とみられるが、引用商標「C’ESTCHIC’A」は、これを英語風に称呼するにはやや不自然な綴りであり、また、その指定商品中に含まれる「被服」を取り扱うファッション業界においては、フランス語が比較的多く使用されている実情にあることからすれば、該文字に接する取引者・需要者は、これをフランス語風の綴りとして看取する場合が少なからずあるものとみるのが相当である。
そこで、引用商標「C’ESTCHIC’A」をフランス語よりなるものとしてみれば、前半部の「C’EST」の文字部分は、「セ」と発音され「それは・・・です」の意味合いを有するフランス語の基本的な表現を表した文字と認められ、それに続く「CHIC’A」の文字部分は、それ自体はフランス語の既存のものではないとしても、「しゃれていること、粋」の意味合いを有する成語「CHIC」(「シク」と発音する。)の語尾部に、フランス語の発音法則(エリジョン)に従い「’」(アポストロフ)が置かれ、続けて「A」の文字が付加されたものともみられるその構成からすれば、これを発音する場合、「’」(アポストロフ)を無視し、語尾の「A」を母音(ア)と認識し、該文字部分を「シカ」と称呼することも決して不自然ではないというべきである(甲第4号証参照、「プチ・ロワイヤル仏和辞典」旺文社発行)。そうすると、「C’ESTCHIC’A」の文字よりは「セシカ」の称呼をも生じると判断するのが相当である。
してみれば、引用商標からは、英語風に「セストチカ」の称呼、及びフランス語風に「セシカ」の称呼を生ずるものと認められる。
また、引用商標は、特定の意味合いを有しない一種の造語と判断するのが相当である。
ところで、被請求人は、引用商標を「セシカ」と称呼し得るのは、これが「C’EST」と「CHIC’A」という2つのフランス語を結合したものと理解できた上でのことであるとし、両文字間に間隙がないその構成からみれば、そもそも、引用商標がこれら2つのフランス語を結合したものと理解するのは困難であると主張している。
しかしながら、引用商標を構成する「C’EST」と「CHIC’A」の文字間に間隙がないことのみをもって、引用商標がこれら2つの語よりなるものとの認識を妨げる理由になるとはいえないし、引用商標は、そのフランス語風の構成上の特徴からみて、「C’EST」と「CHIC’A」の2語よりなり、そして、これよりは「セシカ」の称呼をも生ずるものと認められること、上記のとおりであるから、かかる被請求人の主張は採用できない。
してみれば、本件商標と引用商標は、外観においては区別でき、観念においては比較し得ないことを考慮しても、「セシカ」の称呼において類似する商標であるというべきである。
そして、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品中に含まれるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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