Trademark Appeal Case
略称の周知性判断
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成10年異議第90829号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4091187号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成7年5月17日に登録出願され、別紙に示すとおりの構成よりなり、第11類「家庭用電熱用品類」を指定商品として、平成9年12月12日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立人(以下、「申立人」という。」)の異議理由
本件商標は、他人の名称の著名な略称を含む商標であるから、商標法第4条第1項第8号に該当する。
また、本件商標は、昭和59年7月31日に登録出願され、別紙に示すとおりの構成よりなり、第11類「電気機械器具、電気通信機械器具,電子応用機械器具、電気材料」を指定商品として、昭和62年1月28日に設定登録された登録第1929172号商標(以下、「引用商標」という。)と類似するものである。そして、「タイガース」及び「TIGERS」の文字よりなる商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして取引者・需要者の間に広く認識されている商標であるから、商標権者が、本件商標をその指定商品に使用した場合には、申立人の業務に係る商品とその商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当し、その登録は取り消されるべきである。
3 当審の取消理由
当審では、申立人の異議に基づき、「本件商標は、『TIGERS』の欧文字を未だ普通に用いられ方法の域を出ない程度の態様をもって表示してなるものであるところ、該文字は兵庫県西宮在の株式会社阪神タイガースがプロ野球チームの球団名若しくはその略称として永年使用し、取引者、需要者間に広く知られているものと認め得るものである。
してみれば、本件商標をその指定商品について使用するときは、該商品が恰も申立人若しくは申立人と何らかの関係を有する者の製造販売に係る商品であるかの如く、その出所について誤認混同をおこすおそれがあるものとみるのが相当である。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第8号及び同第15号に該当する。」との取消理由を商標権者に提示した。
4 上記3の取消理由に対する商標権者の意見
(1)「TIGERS」は、プロ野球チーム阪神タイガースの球団名ではない。プロ野球チーム阪神タイガースの球団名は、あくまでも「阪神タイガース」であり、頭に「阪神」を冠さない、単なる「TIGERS」はその略称でしかない。
(2)「TIGERS」は、プロ野球チーム阪神タイガースの球団名の略称あるが、この略称は、永年使用されているものではなく、略称としてはごく最近のものである。この球団の略称としては、むしろ「阪神」が多用され、永年使用されているというのが実状である。
現に、申立人の提出した証拠も最近のものばかりである。すなわち、甲第7号証の1には「タイガースが13年ぶりの優勝?」との記載があるが、その発行日付は平成10年4月2日であり、同じく甲第7号証2にも「タイガース売り込め」との記載はあるが、その発行日付は平成10年4月11日である。
(3)したがって、「該文字は兵庫県西宮在の株式会社阪神タイガースがプロ野球チームの球団名若しくはその略称として永年使用し」との認定は、証拠に基づかない誤ったものであり、違法な事実認定である。
(4)それゆえ、右違法な事実認定を前提とした周知性の判断、すなわち、「取引者、需要者間に広く知られているものと認め得るものである。」との判断も、前提が誤りである以上、これもまた誤りである。
(5)のみならず、本件商標の指定商品に関する取引者、需要者間において、単なる「TIGERS」の文字が株式会社阪神タイガースの略称であると広く知られている事実は全くない。このことを証明するために、本件商標権者は乙第1号証を提出する。
(7)乙第1号証は、本件商標権の共有者のひとりであるタイガー魔法瓶株式会社(以下、「甲」とも言う。)と申立人たる株式会社阪神タイガース(以下、「乙」とも言う。)との間で昭和61年12月25日に締結され、平成元年(昭和64年)4月1日に同一条件で更新(第1回)され、以後同覚書13条の規定に従って3年ごとに同一条件で、平成4年4月1日(第2回)、同7年4月1日(第3回)、同10年4月1日(第4回)に更新され、今日なお有効に存続している覚書である。この覚書は、その前文からもわかるように、乙が自ら「乙の有する球団標章・ロゴ」(以下、「標章」という。)を商品(包装紙、パッケージ、付帯物等を含む。以下、同じ。)に使用し、又は乙が第三者にこれを使用許諾するについて、甲の有する商標権との間における抵触、紛争問題を未然に防止し、かつ甲・乙相互の利益を調整することを目的として終結されたものである。そして、この目的を達成するために上記覚書で具体的に取り決められた内容の骨子は、
第1 乙が、この覚書の「別紙2」の2枚目及び3枚目にある▲1▼から▲6▼の標章(すべて「HANSHIN」と「TIGERS」を併記する点が共通。以下、これらを「(イ)標章」と言う。)を、同覚書の「別紙3」の分類(A)及び分類(B)に記載する商品に自ら使用し、または第三者に使用許諾することは、乙の自由ではなく一定の制限があるとするものであり(同号証第4条参照)、しかも上記一定の制限内で認められる乙による使用ないし第三者に対する使用許諾も無償ではなく有償の対価支払い義務を乙が負う(同号証第8条)というのである。そして、本件商標の指定商品「家庭用電熱用品」が上記分類(A)及び分類(B)のいずれかに属することも同覚書の「別紙3」を見れば一目瞭然である。
第2 乙が、この覚書の「別紙2」の1枚目にある▲1▼から▲4▼の標章(すべて「HANSHIN」の併記がない単独の「TIGERS」又は虎頭の図形である点が共通。以下、これらを「(ア)標章」と言う。)を、同覚書の「別紙3」記載の商品(分類による区別なし)に自ら使用し、または第三者に使用許諾することは、一切認められない(同号証第3条参照)というものである。
第3 この覚書を締結する際に、現に流通している第3条、第4条の規定その規定内容の概略は上記第2及び第11に記載した通り。)に違反する商品については、乙は速やかに是正措置をとるように努めなければならない(同号証の附則第1条参照)、というものである。
前掲乙第1号証の覚書第3条及び附則第1条から明らかなように、乙すなわち株式会社阪神タイガースは、本件商標の指定商品を含む同党書「別紙3」に記載の多数の商品群について、「HANSHIN」の併記がない単独の「TIGERS」を使用しないことを本件商標権者のひとりであるタイガー魔法瓶株会社(甲)と法律上正当な代表権限を有する相互の代表取締役が調印した覚書により約束し、しかも同覚書の附則第1条では、使用しないことを上記第3で約束した「HANSHIN」の併記がない単独の「TIGERS」標章を付した商品が覚書締結の際に流通していればこれを是正することまでも確約しているのである。
(8)申立人は、異議申立書第4頁において、甲第4号証の1及び同2の新聞記事を証拠にして、株式会社阪神タイガースが「HANSHIN」の併記がない単独の「TIGERS」標識を附した商品の委託販売を行っていると主張しているが、これらの記事はいずれも上記覚書の締結日(昭和61年12月25日)よりも数年前の昭和55年及び同57年の新聞記事であるから、その新聞記事が掲載された当時において仮にそのような事実があったとしても、乙第1号証の覚書締結時にそのような状況はすべて是正措置が講ぜられ(上記附則第1条)、この覚書締結後(昭和62年1月以降)は、そのような委託販売は行われていないはずである。もっとも、「HANSHIN」と「TIGERS」との併記が存在する標章の場合は、上記第1に示したように一定の制限の範囲内で、且つ有償の対価支払いを条件として、株式会社阪神タイガースも自らこれを使用し、また第三者にこれを使用許諾できますので、その限りにおいては、甲第3号証の定款に定める「球団の...宣伝のために球団の標識を附した運動用品...等を製造、販売、及び前記標識のある各種商品を委託販売する業務」をなし得るが、上記の如く「HANSHIN」の併記がない単独の「TIGERS」標章を本件商標の指定商品又はこれに類似する商品に使用することは、乙第1号証の覚書締結直後の昭和62年(1987年)1月から今日までの11年間以上なかった。
したがって、本件商標の指定商品又はこれに類似する商品の取引者、需要者間においては、「HANSHIN TIGERS」などの「HANSHIN」と「TIGERS」との併記が存在する標章は見聞きすることがあって広く知られていることがあるとしても(甲第5号証、甲第6号証の1及び同号証の2の各商品はいずれもこの例である)、少なくとも、「HANSHIN」の併記がない単独の「TIGERS」標章については、これが阪神タイガースの委託販売に係る商品に附されていることを見聞きする機会はないのであるから、この標章が商品の出所たる阪神タイガースの略称として広く知られる筈は決してない、と言わざるを得ない。
(9)しかも、上述の如く、「TIGERS」はプロ野球チーム阪神タイガースの球団名の略称ではあるが、この略称は、永年使用されているものではなくて、略称としてはごく最近のものであり、この球団の略称としては、むしろ「阪神」が多用され、永年使用されているというのが実状である。
これらの事実を考慮すれば、「HANSHIN」の併記がない単独の「TIGERS」標章からなる本件商標を、その指定商品に使用したとしても、取引者、需要者は、該商品が恰も株式会社阪神タイガース若しくは同社と何らかの関係を有する者の製造販売に係る商品であるかの如く、思ったり考えたりするわけがない。したがって、その出所について誤認混同を起こすおそれがあるという証拠も、皆無である。
(10)以上、本件商標が商標法第4条第1頃第15号に該当するものでないことは、明白である。
(11)さらに、前掲乙第1号証の覚書第1条第2項の後段には、「なお、甲乙双方は互いに商標登録を受けようとする行為を妨げたり、商標権の有効性を争ってはならない。」との条項があり、この条項は、甲すなわち本件商標権者の一人であるタイガー魔法瓶株式会社が本件商標の登録を受けようとする場合にも当然に適用がある。すなわち、乙すなわち株式会社阪神タイガースは、この規定により、本件商標の登録出願をはじめとして甲が行うすべての商標出願に対し事前に包括的な承諾を与えているものである。
したがって、仮に、「TIGERS」がプロ野球チーム阪神タイガースの球団名の著名な略称であると仮定しても(略称ではあっても決して著名なものでないことは上述した通りである。)、本件商標権者は、前掲覚書によりこの略称を含む本件商標の登録出願につき、予めその本人から事前の承諾を得ているものである。
それゆえ、本件商標は商標法第4条第1項第8号の括弧書きの承諾を得ているものとして、同条同項同号本文に該当しないことも明らかである。
(12)以上、本件商標は商標法第4条第1項第8号及び同第15号のいずれにも該当しないものである。
3 当審の判断
本件商標は、別紙に示すとおりの構成よりなるところ、申立人の提出に係る証拠を検討し、かつ、商標権者が提出した当審の取消理由に対する回答書をみるに、申立人と商標権者とは、「TIGERS」、「Tigers」及び「タイガ−ス」の文字及び「虎の頭の図形」等よりなる商標の使用に関し、昭和61年12月25日付けで覚書を交わし、申立人は、商品の区分第11類、第19類、第24類、第32類及び第34類に属する商品に関して、「虎の頭の図形」と共に「阪神タイガ−ス」、「HANSHIN TIGERS」及び「HANSHIN Tigers」の文字を結合した商標若しくは「阪神タイガ−ス」、「HANSHIN TIGERS」及び[HANSHIN Tigers」の文字を使用すること、他方、商標権者は「TIGERS」、「Tigers」及び「タイガ−ス」の文字を使用することで、商品の出所又は役務等の混同防止を図っているところである。
そして、本件商標は、別紙に示すとおりデザイン化した「TIGERS」の文字よりなるものであるが、回答書に添付されている覚書によれば、申立人は、事前に商標権者が「TIGERS」の文字よりなる商標を指定商品に関し使用することを承諾しているものとみるのが相当であるから、商標法第4条第1項第8号に該当するものとは言い得ないところである。
また、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念において何ら相紛れるおそれのない非類似のものであると言えるものである。
さらに、「HANSHIN」の文字を冠しない「タイガース」及び「TIGERS」の文字だけでなる商標が、本件商標の登録出願時に申立人の業務に係る商品を表すものとして、取引者・需要者間に著名であったとは認め難い。
してみれば、本件商標をその指定商品について使用しても、当該商品が申立人又は申立人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第11号及び同第15号に違反して登録されたものではない。
その他、本件商標の登録を取り消すべき理由及び証拠は、発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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