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Trademark Appeal Case

不使用取消と社会通念上の同一性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2006−30467(T2006−30467/J2)
審判種別取消
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第3310058号商標(以下「本件商標」という。)は、「一生懸命」の文字を横書きしてなり、平成6年8月18日に登録出願、第30類「穀物の加工品」を指定商品として、同9年5月23日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点

請求人は、「商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べた。

本件商標は、その指定商品第30類「穀物の加工品」について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれもが使用していないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

第3 被請求人の答弁の要点

被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第10号証(枝番を含む。)を提出した。

1 本件商標「一生懸命」の使用

(1)使用商標(社会通念上の同一について)

被請求人は、商標「一所懸命」を本件審判請求の予告登録の日(平成18年5月8日)前3年以内に商品「手延うどんの麺」について使用している。

そこで、当該使用商標「一所懸命」が本件商標と社会通念上同一の商標であることについて以下に述べる。

広辞苑第5版(岩波書店発行)によれば、「一生懸命」は、「一所懸命」から転じた語であり、「一生懸命」と「一所懸命」は同義である旨が記載されており(乙第2号証の1)、他の各種辞典にも「一生懸命」と「一所懸命」が同義である旨が記載されている(乙第2号証の2ないし6)。

そして、「一所懸命」及び「一生懸命」は、「一所懸命がんばりました」とか「一生懸命に取り組む」というように、本件商標に係る指定商品「穀物の加工品」に係る業界の需要者及び取引者を含めた我が国の一般人において日常的に広く使用される慣用語である。

すなわち、被請求人が商品「手延うどんの麺」について使用する商標「一所懸命」は、本件商標「一生懸命」と同一の観念及び称呼が生じるものであり、そもそも、その由来を同じくする同義の四字熟語として広く知られているものであることから、両者の構成中の「所」と「生」の相違は商標の識別性に影響を与えない構成部分の変更に止まるものである。

したがって、商標「一所懸命」の使用は、本件商標が登録された際の形態における商標の識別性に影響を与えることなく本件商標の構成部分に変更を加えた商標の使用に該当し、本件商標と社会通念上同一の商標の使用に外ならないものである。

(2)使用商品

現在、被請求人は、「麺匠庵2006年度製品カタログ」(乙第3号証)に掲載の商品を製造販売している。当該カタログに掲載のセット商品「自然紀行」に小分けされた半生うどんの麺のセット商品があり、当該小分け半生うどんの麺の包装袋には商標「一所懸命」が大きく表示されたラベルが貼付されている。当該小分け半生うどんは、単品商品としても販売されている。単品商品の詳細は、当該各商品を撮影した写真(乙第4号証の1ないし3)により確認することができる。

被請求人が取り扱う商品は、インターネットの商品販売サイト「楽天市場」内で被請求人の関連会社エス・エイチ株式会社(乙第1号証、以下「エス・エイチ」という。)が運営するサイト「麺匠倶楽部」によっても確認することができる。一覧表の「手延うどん」の欄には商品「手延半生中細麺『一所懸命』」と、「共同購入」の欄には商品「手延半生中細麺『一所懸命』」と記載されている(乙第5号証)。

以上のとおり、被請求人は、本件商標と社会通念上同一の商標「一所懸命」を、第30類の商品「穀物の加工品」に包含される商品「半生うどんの麺」について使用している。

(3)使用の時期

被請求人は、お中元又はお歳暮等の贈答用商品のパンフレットを作成し、全国の百貨店等を通じて一般消費者に頒布している。頒布に係るパンフレットは、「明和(株)殿 販売用商品リーフレットの納品実績」(乙第6号証)に添付の商品パンフレット1ないし3により確認できる。

パンフレット1ないし3には商標「一所懸命」が使用される商品「手延うどんの麺」の明瞭な写真が掲載されており、当該各パンフレットは、被請求人が商標「一所懸命」を広告に付して使用していることを証するものであり、パンフレット1は平成18年4月3日に、パンフレット2は同17年9月6日に、パンフレット3は同14年9月19日にそれぞれ印刷業者から被請求人に納品されたものである。そして、パンフレット1及び同2は、被請求人が本件審判請求の予告登録の日前3年以内に商標「一所懸命」を使用していたことを証するものである。

エス・エイチが運営するインターネットの商品販売サイトにおける商標「一所懸命」が付された商品「手延うどんの麺」の販売実績は、「<麺匠倶楽部楽天市場店>お買いあげ明細書」(乙第7号証の1及び2、乙第8号証の1及び同第9号証の1)から明らかである。

すなわち、平成18年1月11日及び同21日、同17年7月24日及び同9月25日に、商品「手延半生中細麺『一生懸命』」又は「手延半生中細麺『一生懸命』が詰め合わされたセット商品」を受注したことを示すものである。

その他、商標「一所懸命」が使用される商品「手延半生中細麺」及び同商品が詰め合わされたセット商品を現実に販売していたことを示す資料として、被請求人の作成に係る「手延半生麺『一生懸命』販売実績」(乙第10号証)を提出する。

2 結語

以上に詳述したとおり、被請求人は、本件商標「一生懸命」と社会通念上同一の商標「一所懸命」を第30類の商品「穀物の加工品」に包含される商品「手延うどんの麺」について、本件審判請求の予告登録の日前3年以内に使用するものである。

したがって、商標法第50条第2項の規定により、本件商標はその登録を取り消されるべきものではない。

第4 当審の判断

1 本件商標は、「一生懸命」の文字よりなるところ、乙各号証によれば、以下の事実が認められる。

(1)被請求人の明和株式会社は、昭和51年8月に「麺匠庵」商標を使用して手延麺の製造販売に着手した(乙第1号証)。

(2)被請求人は、平成16年2月に関連会社エス・エイチを発足させた(乙第1号証)。

(3)「麺匠庵2006年度製品カタログ」に、半生手延麺「一所懸命」のセット商品「自然紀行」、及び単品販売の半生手延麺「一所懸命」が掲載されている(乙第3号証)。

(4)被請求人の関連会社であるエス・エイチは、インターネットの「楽天市場」で運営しているサイト「麺匠倶楽部」において、手延半生中細麺「一所懸命」を含む手延麺のセット商品「麺匠倶楽部オリジナル」を平成17年7月24日に、手延半生うどん「一所懸命」のセット商品『自然紀行』」を平成17年同9月25日に、また、手延半生中細麺「一所懸命」を平成18年1月11日及び同21日に販売した(乙第7号証の1及び2、乙第8号証の1及び第9号証の1)。

(5)立岩印刷株式会社から平成17年9月6日及び同18年4月3日に被請求人に納品された「販売用商品リーフレット」(それぞれ5000部)に、半生手延うどん「一所懸命」のセット商品「自然紀行」、及び、半生手延うどん「一所懸命」を含むセット商品「自然紀行」が掲載されている(乙第6号証)。

(6)被請求人における半生手延麺などの「自然紀行」及び「一所懸命」の売上は、平成15年度が数量で「2299(個)」、16年度は「1304(個)」、17年度では「1054(個)」であった(乙第10号証)。

2 上記各事実によれば、被請求人は、平成17年9月及び同18年4月に納品された「一所懸命」商標を使用したうどん麺が掲載された「販売用商品リーフレット」を頒布したものと推認でき、また、被請求人の関連会社エス・エイチは、平成17年7月から同18年1月にかけて、「一所懸命」商標を使用したうどん麺を販売しており、被請求人の「一所懸命」商標を使用したうどん麺の売上は、平成15年から17年にかけて一定の数量を確保していたことが認められる。

以上によれば、被請求人は、本件商標の予告登録前3年以内に、「一所懸命」の文字からなる商標をうどん麺について使用していたものということができる。

3 本件商標は、前記のとおり「一生懸命」の文字からなるものであり、被請求人が使用したと認められる「一所懸命」の文字からなる商標と第2文字において「生」と「所」の文字の相違を有している。

しかしながら、広辞苑第5版(岩波書店発行)に「一生懸命」は「一所懸命」から転じた語であると記載され、大辞林(三省堂発行)、日本語大辞典第二版(講談社発行)、国語辞典言泉(小学館発行)、新明解国語辞典第四版(三省堂発行)及び成語林故事ことわざ慣用句(旺文社発行)にも「一生懸命」と「一所懸命」は同義である旨が記載されていることが認められる。

そうすると、「一所」と「一生」の文字部分から生ずる称呼が「イッショ」と「イッショウ」と異なるものの、「一所懸命」と「一生懸命」を四字熟語としてみた場合、「一生懸命」が「一所懸命」から転じて使用されてきたという経緯があり、同一の観念を有するものとして一般に知られているということができるから、商取引の実際においては、登録商標と物理的に同一のものを使用するというよりは、商品(役務)の具体的な性状に応じ適宜変更を加えて使用する実情にあることを考慮し、併せて商標法第50条第1項の規定の文理に照らせば、商標の文字を「一生懸命」から「一所懸命」と変更して使用することは、同一の自他商品(役務)の識別機能を有する標識として許容される範囲内のもの、すなわち、被請求人の使用する「一所懸命」の文字からなる商標は、「一生懸命」の文字からなる本件商標と社会通念上同一のものとみるのが相当である。

4 請求人は、上記第3の答弁に対し、何ら弁駁していない。

5 してみれば、被請求人である商標権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、被請求人である商標権者により、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を請求に係る指定商品について使用していたといわなければならない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定に基づき、取り消すべき限りでない。

よって、結論のとおり審決する。

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