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Trademark Appeal Case

著名人氏名商標の公序良俗

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2005−5730(T2005−5730/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、「野口英世伝説」の文字を横書きしてなり、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、平成16年5月26日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶理由

原査定は、「本願商標は、その構成中の「野口英世」の文字が、日本が生んだ世界的な細菌学者を指称するもので、その肖像が新千円札にも採用されている。そして、故「野口英世」博士の姓名を冠した研究機関が世界各国で活動している事情から、「野口英世」の文字を有する本願商標を出願人一個人が商標として採択、使用することは、穏当でない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

(1) 商標法第4条第1項第7号については、「世界的に著名な者の氏名を、その死後、遺族等と何ら関係を有しない者が、遺族等の承諾を得ることなく、商標として登録することは、世界的に著名な死者の名声に便乗し、指定商品についての商標の使用の独占をもたらすことになり、故人の名声、名誉を傷つけるおそれがあるばかりでなく、公正な取引秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものとして、公の秩序又は善良の風俗を害するものといわざるを得ない。」旨判示されるところである(東京高裁 平成13年(行ケ)第443号判決 平成14年7月31日判決言渡参照)。

(2) これを本件についてみるに、本願商標は、「野口英世伝説」の文字よりなるところ、その構成中に記載された「野口英世」は、梅毒スピロヘータの純粋培養に成功したことや黄熱病研究に尽力したこと等で知られる細菌学者であり、近時においては、その業積等をたたえて我が国の通貨(1000円紙幣)にその肖像が採用され、また、「野口英世博士記念アフリカの医学研究・医療活動分野における卓越した業績に対する賞(略称:野口英世アフリカ賞)」の創設も決定されたところである。

さらに、野口英世博士の業績をたたえ、あるいは、その業績や遺志を引き継ぐ事業や団体等が国内外に実在することも知られているものである。(たとえば、野口英世記念財団(http://www.noguchi-hideyo.com/hideyo/index.html)、野口英世記念館(http://www.noguchihideyo.or.jp/)、野口医学研究所(http://www.noguchi-net.com/))

このように、「野口英世」は、細菌学者として世界的に著名な存在であり、また、その死亡時から査定時及び今日においても、その著名性が継続していると認められる。

そうすると、本願商標は、世界的に著名な者である「野口英世」の氏名をその構成中に含むものであるというのが相当である。

(3) 当審において、前記(1)の判例の趣旨により、「請求人(出願人)が本願商標を自己の商標として採択、使用することについて、「野口英世」の遺族等の承諾があることを証明する書面が提出できるのであれば、それを提出されたい。なお、この審尋は、請求人(出願人)が、審判請求の理由において、「なお、仮に原査定の趣旨が、本願商標の使用、採択に関して何らかの裏付け(証明)が必要であるとの意であるならば、請求人(出願人)は、それを提出する用意がある。」旨述べていることによるものである。また、この審尋に対し所定の期間内に具体的な回答がされない場合には、審理を終結する。」旨の審尋を行ったところ、請求人(出願人)からは何らの応答もない。

(4) そこで、請求人(出願人)と前記野口英世博士との関係についてみるに、両者が何らかの関係を有する者であると認め得る証左はなく、また、当該氏名を含む商標の出願や登録に関して、何らかの承諾等を得た者であるともいえないものであるから、請求人(出願人)は、故野口英世博士とは何ら関係を有することのない者といわざるを得ない。

(5) しかして、本願商標構成中の「伝説」の文字は、「うわさ。風説。」の意味を有する語であり、本願商標全体から「野口英世に関する伝説・風説」の観念が生ずることを否定するものではないとしても、前記したとおりの「野口英世」の著名性をかんがみれば、本願商標は、指定商品の取引者、需要者に故野口英世博士の氏名を含むものと容易に認識されるというべきものであるから、遺族等の承諾を得ることなく本願商標を指定商品について登録することは、世界的に著名な死者の名声に便乗し、指定商品についての商標の使用の独占をもたらすことになり、場合によっては、故人の名声、名誉を傷つけるおそれがあるばかりでなく、公正な取引秩序を乱し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるといわざるを得ないものである。

(6) なお、請求人(出願人)は、過去の登録例を挙げて、本願商標も同様に登録されるべきであると主張する。

しかしながら、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するか否かは、査定時又は審決時において、個別具体的に判断されるべきものであるから、請求人(出願人)の主張は採用できない。

(7) したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。

よって、結論のとおり、審決する。

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