結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2006−89037(T2006−89037/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4800548号商標(以下「本件商標」という。)は、平成16年2月13日に登録出願、別掲(1)のとおりの構成よりなり、商品の区分第28類「運動用具」を指定商品として同16年9月3日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第4294405号商標(以下「引用商標」という。)は、平成8年10月8日に登録出願、別掲(2)のとおりの構成よりなり、商品の区分第28類「遊戯用器具,ビリヤード用具,さいころ,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,マージャン用具,おもちゃ,スポーツ用ボール,バット,その他のスポーツ用打棒,グローブ,その他のスポーツ用手袋,スポーツ用パッド,ローラースケート,スケート靴,インラインスケート,その他の運動用具,釣り具」を指定商品として、同11年7月16日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
請求の理由
(1)本件商標と引用商標は、別掲(1)及び(2)のとおりの構成よりなるものである。
そこで、本件商標と引用商標を対比するに、その相違するところは、引用商標は右方向に長く跳ね上げているのに対し、本件商標にあっては左方向に長く跳ね上げている点と、本件商標の右下外側に付されている小さな黒丸の有無に過ぎない。
また、引用商標は請求人がはじめて使用した極めて特徴的なマークであって、特にその躍動的なイメージは観者に強く訴えるところである。
これに対し、本件商標の太い下部から左方向に長く跳ね上げている形状は、引用商標が観者に訴える躍動的なイメージをそのまま踏襲するものであって、時と所を異にして観察した場合、本件商標を引用商標であるかの如く、彼此混同する恐れは大であり、両商標は外観上類似する。
次に、引用商標は「スウッシュマーク」と称され、躍動的なイメージが観念されるのに対して、本件商標は太い下部から左右の方向に長く跳ね上げている点において躍動的な図形のイメージが観念されるから、両商標は、躍動的な図形のイメージにおいて観念上類似する。
さらに、本件商標は、固有の称呼を見出し得ないが、引用商標の躍動的なイメージをそのまま踏襲していると考えられるので、観者は引用商標のイメージに引きずられて「スウッシュマーク」又は「丸のついたスウッシュマーク」と称呼すると考えられるから、両商標は称呼上類似する。 加えて、本件商標と引用商標の指定商品は同一又は類似する。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)引用商標は、請求人の商品である「運動用具、運動用被服、及びこれらに関連する商品」に永年に亘り使用されており、本件商標の出願の時点においては、「スウッシュマーク」と称されて日本の需要者間にも広く周知されるに至っていた。
請求人は1964年に設立され、当初は「ブルーリボンスポーツ」の名称を使用して日本のオニツカタイガー社(現アシックス)製の靴の販売を行っていたが、1971年に「NIKE」の商標を採用し、1974年にはワッフルソールのランニングシューズを製造販売したところベストセラーとなった。
1978年に社名を現在の名称に変更した。1984年にはバスケットプレーヤーのマイケル・ジョーダンと専属契約を締結し、スニーカー「エアージョーダン」を発売したところ爆発的にヒットし、以後スポーツシューズ及びこれに関連する商品について急成長した。
請求人は1981年に日本に子会社「株式会社ナイキジャパン」を設立し、それ以降は、日本における営業活動は株式会社ナイキジャパンにより行われた。
引用商標は左から右上方に跳ね上げる形状であるが、これを各種のシューズに使用するときは、それらシューズの左右両足の外側に表示する関係上、右足には、逆方向、即ち右から左上方に跳ね上げる形状となっている。観者はこの右から左上方に跳ね上げる形状が引用商標であることを疑わない。
本件商標は、引用商標と逆方向、即ち右から左上方に跳ね上げる形状となっているが、上記した事実を考慮した場合、観者は本件商標を引用商標の変形ないし何らかの関連を持つマークであると誤認する可能性は、極めて高いと言うことが出来る。
したがって、本件商標がその指定商品に使用されるときは、それら商品があたかも請求人の商品であるか、又は請求人と何らかの関係を有する者の商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせる恐れがある。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)本件商標が、その指定商品に使用されるときは、引用商標の識別性を希釈化し、その信用を汚損するおそれがある。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。
(1)引用商標は、請求人の商品である「運動用具及びこれに関連する商品」に広く使用されていて、需要者間にスウッシュマークとして広く認識されている商標であり、その需要者に強く訴える特徴は、中央円形部を太く、左右両端を先端が細く跳ね上がるように描いてなり、その構成から「躍動的なイメージ」を観念させているところにある。
本件商標は、引用商標の需要者に強く訴える特徴の全てを兼ね備えており、離隔的観察に於いて、彼此混同を生じさせる恐れは大である。
被請求人は、「左先端と右先端の長さの相違、本件商標には中程の太い部分のやや右よりの下に円形図形を曲線図形に接するようにしてある点に於いて、請求人の引用商標と異なる。」と主張する。しかしながら、本件商標の曲線図形に接して配してある円形図形は比較的小さく、全体としての観察においては、重要な構成要素ではなく、曲線図形に吸収され一体として看取される付加的図形にすぎない。
したがって、円形図形の存在自体は、引用商標と本件商標を時と所を異にして、全体的に観察し、対比するとき、相違点として殆ど認識されることはない。
また、引用商標と本件商標の左右先端の長さの相違は、現実の使用態様においては、両者間の混同を判断する上において、さして重要な意味を持たない。
なんとなれば、引用商標は使用される商品の表示場所によっては、例えば靴の左右両側に表示する場合、デザイン上、右を短く左を長く表示することがあり、消費者は右が長いか左が長いかと言うことに関わりなく、これもスウッシュマークとして認識しているのであって、引用商標と本件商標の左右先端の長さの相違においても何ら異なるところはないと言うことが出来る。
以上、本件商標は引用商標と外観上類似する。
(2)被請求人は、請求人が請求書において、引用商標は「スウッシュマーク」と称されており「躍動的なイメージ」が観念されると述べたことに関し、「躍動的なイメージ」からでは、それに接した者が常に特定の具体的なマークに想到することはあり得ないと反論する。しかしながら、被請求人のこの反論の趣旨は定かではない。
「躍動」とは、「踊り動くこと、生き生きとして勢いのあること」(岩波書店発行、広辞苑)を意味し、したがって、引用商標から「躍動的なイメージ」が観念されるとは、引用商標は「生き生きとして勢いがある何か」を感得させると言うことである。これを引用商標の持つ「観念」として捉えているのである。
請求書において述べたとおり、引用商標はスウッシュマークと称され、その「躍動的なイメージ」を持つ商標として需要者間に周知されている。したがって需要者は、「躍動的なイメージ」を持つ商標と聞けば、容易に引用商標に想到すると言うことが出来る。
ところで、請求人が主張しているのは、引用商標からは「躍動的なイメー
ジ」が観念されるということであって、このことを被請求人は否定していない。換言すれば、被請求人は、引用商標からは「躍動的なイメージ」がイメージされるということ自体は、認めていると考えられる。
引用商標から「躍動的なイメージ」がイメージ(観念)され、引用商標の著名性の故に、「躍動的なイメージ」を持つ商標と言えば、引用商標に想到すると言う相関関係が成り立つとき、引用商標と外観的に混同を生ずるほどに類似する本件商標から、需要者が直接的に受けるイメージは、商標の持つ「躍動的」なイメージであることは容易に首肯できるところである。引用商標の持つ「躍動的」なイメージを共通して持つ本件商標と引用商標は、観念上類似する。
(3)被請求人は、請求人の引用商標がスウッシュマークと称呼されていることは認めつつも「本件商標は引用商標とは非類似であるからスウッシュマークと称呼されることはあり得ない」と主張する。
請求人は、本件商標が単独で、引用商標の存在しない市場に、初めて出市されたとしたら、本件商標がなんと称呼されるのかは知らない。しかしながら、既に市場にスウッシュマークと称呼され、その称呼で市場では需要者間に周知されている商標が存在するとき、需要者が混同するほどに類似する本件商標が市場に投入されたときには、その新規参入の本件商標が本来特有の称呼を有しないのであるから、需要者は本件商標の称呼を模索して、それをスウッシュマーク又はスウッシュマークに似たマークと称呼するであろうことは容易に推測することが出来る。
したがって、本件商標と引用商標は、称呼上類似する。
(4)引用商標は需要者間に周知されているので、例え本件商標が引用商標に類似しないと判断されるようなことがあったとしても、本件商標がその指定商品に使用されるときは、それら商品が請求人の商品であるか、又は、請求人と何らかの関連を有する者の商品であるかのごとき、商品の出所について混同を生じさせることは必定である。
そして、本件商標は引用商標と混同を生じさせるほどに類似しており、引用商標と同−又は類似の商品に使用するのであるから、混同を生じさせる恐れのあることは当然のことである。
(5)請求人が調査できる限りにおいて、本件商標ほどに引用商標に類似している他人の登録商標は見あたらない。また、被請求人は本件商標は自ら創作した独自の商標であると言うが、被請求人が答弁書のパラグラフに述べる本件商標創作のストーリーは、恣意的に創作したものと考えられ、俄には信じ難い。引用商標のごとく独自性が高く、著名な商標が目の前に存在するとき、被請求人は本件商標の創作過程に於いて、引用商標の存在を強く意識して、引用商標の特異な独自性に富んだデザインの特徴的デザインの模倣を試みたであろうことは容易に推認できる。
市場に於いて、このような名声を得ていて識別性の高い引用商標が存在するとき、引用商標とは無関係に、これと混同を生じさせるほどに類似している本件商標がその指定商品に使用されるとすると、引用商標の識別性を希釈化する事態の生ずること必定である。また、本件商標の使用される商品の品質如何によっては、引用商標が市場で享受している名声を汚損することにもなる。
このように、正当な権限なしに、他人の商標の模倣ともとれる商標を採択することにより、当該他人の商標の識別性を希釈させたり、名声を汚損させたりする行為は正常な商取引の条理に反し、信義誠実の原則に反する行為であると考えられる。よって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。
本件曲線図形は、中程の太い部分が下になるように、左の先端部は左斜め上方向に、また、右の先端部は右上方向に向かうように描かれ、左の先端部は右の先端部よりやや長く伸びている。そして、本件曲線図形の中程の太い部分のやや右寄りの下に本件円図形を本件曲線図形に接するように配してある。本件曲線図形と本件円図形は、外観上バランスよく描かれ、一体のものとしてのみ看取されるものであって、本件円図形を省略して本件曲線図形のみに着目されるといった必然性は全くない。
一方、スウッシュマークが、本件円図形に相当する構成を有さず、この点において相違していることは、請求人も認めているところである。
したがって、本件商標とスウッシュマークとは、外観上非類似である。
一方、スウッシュマークに「躍動的」な印象を受ける者が存在することも確かであり、例えば、「swoosh」という英単語を「米国のスポーツメーカー,ナイキ社のロゴマーク;躍動感を表現する」と解説する辞書も存在する(乙第1号証)。しかしながら、「躍動」とは「いきいきと活動すること」を意味するところ(乙第2号証)、「躍動的なイメージ」なる観念は、「いきいきと活動している状態の何か」を暗示させる程度のものでしかないといえる。しかも、「躍動」という言葉が用いられる対象は、「躍動感にあふれる文章」「躍動する若い身体」などといった例からも明かなように極めて広いため、「躍動的なイメージ」からでは、それに接した者が、常に特定の具体的なマーク(本件商標やスウッシュマーク)に想到することはあり得ないというべきである。そもそも、本件商標やスウッシュマークのような抽象的なマークに、特定の観念をあてはめること自体に無理があり、本件商標とスウッシュマークとは観念上非類似である。
なお、抽象的なマークであっても、その基となる具体的な「原形」が存在することもあり、実際、本件商標は、商標権者である株式会社ヤサカの頭文字「y」とピンポン玉の軌跡を原形とし、これらを重ね合わせて造られたという経緯がある。これに対し、スウッシュマークが勝利の女神である「NIKE」の翼を原形とすることは有名であり、本件商標とスウッシュマークはその原形において全く異なっているものである。
本件商標は、上述の通り、引用商標とは非類似のマークであり、「スウッシュマーク」と呼ばれることはあり得ない。
したがって、両商標は、称呼上非類似である。
また、本件商標は、引用商標と非類似であり、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれはなく、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
さらに、本件商標は、引用商標と非類似の、商標権者が自ら創作した独自の商標であり、引用商標の識別性を希釈化するおそれはなく、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
他方、引用商標は、別掲(2)のとおり、左側の太く描かれた部分の先端部を右側上方に鋭角的に跳ね上げ、その左側の太い部分より右側上方に向かって次第に細くなるゆるやかな線を描いた図形よりなるものである。
そうとすれば、本件商標と引用商標の構成は上記した通りであり、その構成全体より看者に与える印象はかなり相違し、それぞれ異なったものとして記憶されるとみるのが相当であるから、両者を時と処を異にして離隔的に観察した場合、取引者・需要者をして、外観上彼此見誤るおそれはないとみるのが相当である。
さらに、本件商標より特定の称呼、観念を生ずるとする特段の理由は見当たらないから、両者は称呼・観念上比較し得ないものである。
そして、本件商標と引用商標は、他に類似するところがない。
してみれば、本件商標と引用商標は、その外観、称呼及び観念のいずれからしても十分に識別し得るものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
してみれば、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、該商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれはない商標といわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
加えて、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念において十分に識別し得る別異の商標であること前記した通りであるから、本件商標が、その指定商品に使用された場合、引用商標の識別性を希釈化し、その信用を汚損するおそれはないといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
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