結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2006−30733(T2006−30733/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4442301号商標(以下「本件商標」という。)は、「エス・イー・エス」及び「S・E・S」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成11年9月6日に登録出願、第7類「金属加工機械器具,鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具,化学機械器具,繊維機械器具,食料加工用又は飲料加工用の機械器具,製材用・木工用又は合板用の機械器具,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具,印刷用又は製本用の機械器具,包装用機械器具,プラスチック加工機械器具,半導体製造装置,ゴム製品製造機械器具,石材加工機械器具,動力機械器具(陸上の乗物用のもの及び「水車・風車」を除く。),陸上の乗物用の動力機械の部品,水車,風車,風水力機械器具,耕うん機械器具(手持ち工具に当たるものを除く。),栽培機械器具,収穫機械器具,植物粗製繊維加工機械器具,飼料圧搾機,飼料裁断機,飼料配合機,飼料粉砕機,牛乳ろ過器,搾乳機,育雛器,ふ卵器,蚕種製造用又は養蚕用の機械器具,漁業用機械器具,ミシン,ガラス器製造機械,靴製造機械,製革機械,たばこ製造機械,機械式の接着テープディスペンサー,自動スタンプ打ち器,機械式駐車装置,芝刈機,修繕用機械器具,業務用電気洗濯機,業務用食器洗浄機,業務用電気式ワックス磨き機,業務用電気掃除機,電動式カーテン引き装置,陶工用ろくろ,塗装機械器具,乗物用洗浄機,廃棄物圧縮装置,廃棄物破砕装置,軸,軸受け,軸継ぎ手,ベアリング,動力伝導装置,緩衝器,ばね,制動装置,バルブ」を指定商品として、平成12年12月22日に設定登録されたものである。
請求人は、結論と同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1及び第2号証を提出した。
本件商標は、指定商品「繊維機械器具」について、商標権者は勿論のこと、専用使用権者、通常実施権者のいずれもが過去3年にわたって使用してきた事実が、登録原簿に見られないばかりでなく、実際に使用された事実もない。また、かかる不使用について正当な理由が存するとも思えない。
したがって、本件商標のうち「繊維機械器具」についての商標権は、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきである。
商標第50条第2項ただし書にいう「正当な理由」とは、商標権者において登録商標を使用できなかったことが真にやむを得ないと認められる特別の事情がある場合に限られると解すべきところ、被請求人の主張は、企業たる被請求人の内部事情にすぎず、これをもって前記特別の事情と認めることはできない。
さらに、被請求人は、資本提携等をする企業に本件商標を使用させることが予想され、・・・また自ら本件商標を使用することが予定されていると主張するが、乙第1及び第2号証から窺われるのは、繊維事業へ進出したいという漠然とした意志であって、本件商標を使用する蓋然性ではない。また、乙第3及び第4号証から窺われるのは、繊維製品を用いた部材が必要であることであり、繊維部材を製造するための繊維機械器具を販売することではない。
もともと同法50条第2項ただし書にいう「正当な理由」は、旧同法19条第3項「前項ただし書第二号〔登録商標の不使用〕に掲げる場合において、その指定商品について登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があるときは、同号の規定は、適用しない。」(平成8年の商標法等の一部改正(平成8年法律第68号)により削除)でいう「正当な理由」と同じ基準であったはずで、企業の内部事情などは考慮されないものであったと思料する。
したがって、被請求人が本件商標の指定商品である「繊維機械器具」に本件商標を使用することができないことにつき「正当な理由」があったと認めることはできない。
なお、商標不使用取消事件において「正当な理由」について争われたものとして、平成17年(行ケ)第10095号(平成17年12月20日、知的財産高等裁判所)がある(参考資料)。
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第4号証を提出した。
本件審判は、本件商標の指定商品中第7類「繊維機械器具」 について、不使用による商標登録の取消請求がなされたものである。しかし、本件商標権者である「エス・イー・エス株式会社」は、本件審判請求の登録日前から本件商標を指定商品「繊維機械器具」について使用する明確な使用計画があった。すなわち、本件商標を使用していないことについては正当な理由があり、本件商標登録を取り消すべき理由はないものである。
(1)本件商標の構成、指定商品及び設定登録日は、第1に示したとおりであり、本件審判の予告登録日は、平成18年7月5日である。
(2)正当理由について
被請求人は、半導体洗浄装置市場における新商品開発とシェア拡大を図る中期3ヶ年計画の一環として、事業安定のために繊維機器製造企業の買収、資本提携、業務提携を、食品機器製造企業、包装機器製造企業などの買収、資本提携、業務提携とともに検討し、取締役会において審議しており、平成18年6月5日付取締役会議事録(乙第1号証)にはこのことが明記されている。繊維製品企業リスト(乙第2号証)はその折に配布された報告資料の一部である。
買収、資本提携、業務提携する繊維機器製造企業には、本件商標を使用させることが予定され、また当該企業の技術を半導体装置に取り込み活用していくことにより被請求人自らが本件商標を使用することが予定されていることから、繊維機械器具に本件商標を使用する明確な意思が証明されるものと思量する。かかる事情に鑑みれば、本件商標について被請求人が商標を使用しなかったことについて、正当な理由があることは明らかである。
なお、取締役会議事録は、会社の重要な機密事項を含むため、乙第1号証は取締役会議事録の一部分のみ提出し、乙第2号証はその出典が明らかでないが、被請求人は、乙第1及び第2号証が真正なものである事を立証するため、被請求人の代表取締役専務の北島文雄を証人として申請する。
また、被請求人の新開発製品に係るシリコンウエハー円周部の洗浄装置に関し、平成17年12月7日発行の日経産業新聞に「ウエハーの洗浄、ふちのごみ吸引除去、エス・イー・エス 薬液などは使わず」 と題された新聞記事が掲載されている(乙第3号証)。当該記事によると、この装置は「すでに試験運用を終えた国内大手メーカーでは、完成品の不良比率が二−三ポイント低下した。」とあり、また「装置の価格は一億六千万円程度を予定。○七年三月期で五十台の売り上げをめざす。」 とある。
被請求人は、この装置に係る部品に関し、平成17年12月12日付けで特願2005−358312号、発明の名称「ベベル処理方法及びべベル処理装置」 の特許出願(乙第4号証)を行なった。この出願は未だ出願公開の時期に達していないので詳細の叙述は避けるが、当該発明は繊維部材を用いた部品を必要とする装置であり、繊維部材製造のために繊維機械器具を使用することが必須である。
上述のように、被請求人は、繊維部材を構成の一部に使用した発明につき特許出願しているが、乙第4号証に係る特許出願が公開されるのは出願から1年6月を経過する平成19年6月以降である。被請求人はこの発明の公開時期を考慮して、製造、使用、販売など関連の態勢を整えることとして準備を進めていたのであり、当該発明に係る繊維機械器具の製造販売を差し控えていたのである。これによって、本審判請求登録前3年以内に商標の使用をすることができなかった次第である。この3年間という期間については、製品の企画、開発、試験、特許出願等に必要不可欠な期間であったといえるから、かかる事情に鑑みれば、本件商標について被請求人が商標を使用しなかったことについて、正当な理由があったことは明らかである。
以上述べたとおり、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に指定商品「繊維機械器具」について使用しなかったことにつき、商標法第50条第2項ただし書きにいう「正当な理由」 があるので、本件審判の請求は成り立たない。
なお、証拠方法中、乙第1及び第2号証は、被請求人の社外秘の事業計画であり、請求人や同業他社、その他関係者への漏洩は経営に重大な影響を及ぼすものであり、また、乙第4号証は未だ公開の時期に到っておらず、この時期に公開されることは被請求人の改良開発の推進上不利益を生じ重大な影響を与えるおそれがあるから、これら乙号証の厳重な秘密保持を希望する。
しかし、被請求人は、本件商標の使用をしていなかったことについて、正当な理由があると主張しているので、以下、この点について検討する。
(1)被請求人における事業と計画等について
平成18年6月5日付けの取締役会議事録(乙第1号証)によれば、「【社長示達】として、「詳細は別紙のとおりです。」とあり、別紙と推定される頁には、「事業安定のため、食品機器製造企業、包装機器製造企業、繊維機器製造企業の買収、資本提携、業務提携を目指す」との記載が認められる。
そして、その会議の配布資料とされる繊維製品企業リスト(乙第2号証)には、「繊維製品企業」として、複数の上場企業名や各種機器を製造するその子会社名及びその業務内容等が記載されている。
しかして、上記と被請求人の主張とによれば、本件審判請求の登録前3年以内にあたる時期に、半導体洗浄装置メーカーである被請求人が、新商品開発とシェア拡大を図る中期3ヶ年計画の一環として、繊維機器製造企業等の買収、資本提携、業務提携を意図しており、前記取締役会以降において、繊維機器製造企業との業務提携あるいはその買収等が成立すれば、本件商標を使用させ、あるいは、本件商標の使用をする意思があったということを推認させるに止まるものである。
(2)特許出願が未公開であることについて
被請求人は、「当該発明は繊維部材を用いた部品を必要とする装置であり、繊維部材製造のために繊維機械器具を使用することが必須である。」、「この発明の公開時期を考慮して、製造、使用、販売など関連の態勢を整えることとして準備を進めていたのであり、当該発明に係る繊維機械器具の製造販売を差し控えていたのである。これによって本審判請求登録前3年以内に商標の使用をすることができなかった。」という。
しかしながら、特許出願された当該発明(乙第4号証)が、繊維部材を用いた部品を必要とする装置に係るものであったとしても、本件商標の使用が問われている商品「繊維機械器具」に直結した技術思想に係るものであり、当該発明が直ちに本件商標に係るものであるとすべき明確な根拠は見いだせない。
また、特許出願公開の時期は特許法上規定されており、公開に至る期間は予め想定し得ることといえる。しかるところ、本件商標が設定登録されたのは平成12年12月22日であり、当該特許出願は、これより約5年を経過した平成17年12月12日になされた(乙第4号証)ものである。
してみれば、本件商標と前記特許出願に係る発明が直接的に結びつく明確な根拠はないといわざるを得ないから、当該特許出願が未公開であることによって、本件審判請求の登録前3年以内における本件商標の「繊維機械器具」についての使用が制約されたと認めることはできない。
(3)平成17年12月7日付けの日経産業新聞(乙第3号証)には、被請求人に係る装置の開発記事が掲載されているが、当該記事は「シリコンウエハースの製造工程で円周部(ふち)に付くごみを除去する装置」に関するものと認められ、「繊維機械器具」に本件商標が係わるものと認め得る事項は見いだせないものである。
なお、取締役会の議事に関して、被請求人から人証の申請がされているが、上記のとおり判断し得るものであり、乙第1及び第2号証の議事録等が真正なものであるか否かによって、前記判断が左右されるとは考えられないから、当該証拠調べを行う必要性を認めない。
したがって、本件商標は、結論掲記の指定商品について、その登録の取消しを免れないものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
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