Trademark Appeal Case
称呼の類似性と要部抽出
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 判定2006−60040(T2006−60040/J6) |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | other |
理由テキスト
理 由
第1 本件商標
本件登録第4810058号商標(以下「本件商標」という。)は、「もちクラスト」の文字を標準文字で表した構成よりなり、第30類「穀物の加工品」を指定商品として、平成16年2月16日に登録出願、同年10月15日に設定登録されたものである。
第2 イ号標章
被請求人が商品「ピザ生地、ピザクラスト」に使用する標章として請求人が示すイ号標章は、「パリッともちもちクラスト」の文字からなり、平成16年11月18日に登録出願されたが、同17年11月22日に、識別力を有しない商標として拒絶査定され確定したものである。
第3 請求人の主張の要旨
請求人は、結論同旨の判定を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証(甲7号証ないし甲第15号証は答弁に対する弁駁の際に提出)を提出した。
1 理由の要約
本件商標は、「もちクラスト」の文字よりなるものであるから、「モチクラスト」の称呼、「ピザクラスト型の餅」、「餅でできたピザクラスト」の観念を生ずるのに対し、イ号標章は、その文字部分より、「モチクラスト」の称呼、「ピザクラスト」の観念を生ずるものであり、両標章は、「モチクラスト」の称呼、「ピザの生地」の観念を共通にする類似の標章である。
また、本件商標に係る指定商品中、第30類「穀物の加工品」と、イ号標章の使用に係る商品「ピザの生地」は、類似の商品である。
2 判定請求の必要性
請求人は、本件請求に係る本件商標の商標権者であるが、被請求人がイ号標章に標章「もちクラスト」の使用をしていることについて平成18年4月18日、被請求人に対し、本件商標を侵害するものである旨の書面を発信した(甲第1号証)。
これに対し、被請求人は、「明らかに類似していないと確信しているので、話し合いは拒否する。」との回答が到着した(甲第2号証)。
したがって、請求人は、本判定を求める次第である。
3 イ号標章の説明
被請求人は、平成16年4月頃よりイ号標章を付した商品「ピザ生地」をインターネット上で業務用として製造販売を開始し(甲第3号証)、現在も販売している(甲第4号証)。
4 イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明
本件商標は、「もちクラスト」の文字よりなるから、これより「モチクラスト」の称呼及び「ピザクラスト型のもち」、「もちでできたピザクラスト」の観念を生ずるものであり、他方、イ号標章は、その文字部分の中で唯一識別能力のある部分は「もちクラスト」である。それによってイ号標章が何の商品であるかはっきりと認識させるものである。本件商標とイ号標章とは、「モチクラスト」の称呼、「ピザクラスト」の観念を共通にし、商品の出所について誤認混同させるおそれがあるから類似の標章というべきである。
そして、本件商標にかかる指定商品中第30類「穀物の加工品」とイ号標章の使用商品「ピザ生地」とは、同一の用途であるから、類似の商品である。
以上のとおり、イ号標章は本件商標と類似する標章であり、その使用に係る商品と指定商品も類似する商品であるから、被請求人が商品「ピザ生地」に使用するイ号標章は本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。よって、請求の趣旨のとおりの判定を求める。
5 答弁に対する弁駁
(1)本請求に至るまでの事実に基づいた経緯
請求人は、被請求人に対して、平成16年2月頃に、もちを生地としたピザクラストの開発に関する特許出願書類を送った(甲第7号証)。
また、同15年10月頃に、岩手県紫波町の役場と「もち製造」について検討を行っていたが、生地を作れるという連絡があった(甲第8号証)。
そして、その旨を被請求人に伝え、「もちの生地を利用して、何か商品を作ったらどうか」と提案したが、「作る意向も扱う意向もありません」と返答された。
さらに、同16年4月項、インターネットでの検索により、被請求人の「もちもちクラスト」の掲載を知ったので、本件商標に類似している旨、お客さま相談室に「もちクラストの商標出願中」の旨を伝えた。
同年9月に、本件商標が商標登録された旨を被請求人に伝えた(甲第9号証)。
同18年3月項、被請求人がイ号標章を出願し、その後、拒絶という事を知った。
同年4月18日付消印の書留(甲第10号証)に、すぐに回答書が来なかったこと、及び、納得の行く回答を求めて、6月19日付で「第三者誰もが納得の行く回答をお願いします」との警告書(甲第11号証)を送ったが、返答がなされていない。
請求人が「もちでできたクラスト」を被請求人に伝えた後に、被請求人のホームページには「もちもちクラスト」が発表されたと推測される(甲第12号証)。
(2)被請求人が「イ号標章の濫用である」という事実に関しての反論および説明
本件商標とイ号標章は、その外観がいくら長いものであっても、一部分であっても、識別能力のある部分より観念は生じるから、外観ならびに観念も類似する。
イ号標章は、「パリッともちもち」に「クラスト」をつけたことによって商品名として第三者から見ても商品内容の説明だけでなく「もちもちクラスト」としての商品名として成り立っている。
被請求人は「もちもち」という事で色々な例をあげている(甲第15号証)が、請求人は「もちもちミモザ」とか「もちもちパン」とか「もちもちドーナッツ」などという問題を論じているのではなく、「もちもちクラスト」と本件商標が単純にいっても類似でないと言えるかどうかを論じているのである。さらに請求人の商品と用途が同じピザに使用するクラスト(生地)でも類似である。
さらに被請求人は誤認混同させる恐れがないと主張しているが、実際にインターネット上において請求人が載せていないにもかかわらず、「もちクラスト」がブログ等出ている(甲第13号証)。
(3)グーグルおよびインターネット上における検索についての説明
グーグルで「もちクラスト」を検索すると、検査結果一覧には「パリッともちもちクラスト」が出現し、さらにその中の「もちクラスト」の部分だけが太字として表示される(甲第13号証)。これは、明らかに本件商標そのものにふれている。
この件について、被請求人は、「これは機械の検索上だから」とか「我々が表示しているのではなく、グーグルがその様に載せているにすぎない」と回答してきた。
しかし、請求人がグーグルに問い合わせた結果(甲第14号証)「ウェブサイトのマスターが構成して載せているのでウェブマスターに直接求めれば、グーグルの検索結果に自動的に反映される」との回答を得た。つまり被請求人が構成し、発表しているということであって、グーグルが勝手にサービスで表示しているのではないと言う事になる。
「もちクラスト」をインデックスの指定からはずすか、「パリッともちもちのクラスト」のようにすれば、「もちクラスト」として表示されないという事を理解しながらやり続けている事は故意に確信を持って載せているということになる。
(4)請求人が当該商標に係わる業務を行なう意志がない、という事に関しての説明および反論
請求人が考えた「薄型加工餅」は、もう何年にも渡って追求してきたものであり、今までピザの生地(クラスト)として成り立たなかったものを可能にした薄くて型くずれがしにくいもので、ピザの他に「もちクラストバーガー」やまた老人・子供が食するのに安全な食品として活用でき、また農村においてももち米・米というものを安定して作っていただくと同時にその用途はピザのみならず色々な分野にまで広がる。「もちクラスト」はそういう研究の中から生まれた名前である。
現在は試食・試験販売をしたりしている。注文などもたまにくる。大量に作れる様になれば、おのずと世の中に新しい食品としてでるとかんがえている。
(5)結び
以上のように、イ号標章は本件商標の商標権の効力の範囲に属するとの判定を求める。
第4 被請求人の答弁の要旨
被請求人は、本件判定請求は成り立たない、との判定を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第19号証を提出した。
1 本請求に至までの経緯
被請求人は、請求人から平成16年2月頃に電話にて最初の連絡があったが、内容については、取り合わなかった。そして、同年9月27日に、『「もちクラスト」について商標の認可を受けたので、名義が必要となれば連絡されたい。』旨のFAX文書(乙第1号証)を受け取った。
また、被請求人は、請求人らの商標「もちクラスト」との間に問題が生じないように、「ピザの生地」に使用しているイ号標章を、第30類「ピザ、ピザの生地」を指定商品として、商標登録出願を平成16年11月18日に行ったが、『その標章中の「パリッと」、「もちもち」の文字が、食感を表現する語として広く使用されているため、その指定商品に使用しても、これに接する需要者・取引者は、単に「パリッともともちしたピザ生地」程度の意味合いを認識するに止まり、結局、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない。』として、拒絶査定がなされたため、本件商標とイ号標章とは類似関係がなく、また、イ号標章は、品質用語であると認識した(乙第3号証ないし乙第5号証)。
その後、請求人より、平成18年4月18日及び同年5月1日付けで「本件商標の使用がおのぞみであればご連絡されたい。本件商標を提供する意志がある。」旨のレターの送付があり、その対応として「イ号標章が『何人かの業務に係る商品であることを認識することができない』標章(特許庁判断)であることから、本件商標とイ号標章は類似しない」旨の回答を同年5月10日に行った(甲第1号証)。
さらに、同年5月14日及び31日付けで「本件商標の商標権を一度譲り渡せば、後はだれの手に渡るかもわかりません。もし、たちの悪い人達に渡ってしまえば、貴社も困るものと思います。返事次第では、こちらなりの方法で対応させていただきます。」とのレターの送付があった(乙第8号証及び乙第9号証)。
また、同年6月19日付けで「弁護士や特許庁に相談した所、誤認混同の可能性があり、特許庁に判定請求を提出した。」旨の「警告書」の送付があった(乙第10号証)。
2 「イ号標章の説明」についての認否および反論並びに求釈明
被請求人が平成16年4月頃より新商品としてイ号標章を付した商品「ピザ生地」を販売した事実については認める。ただし、イ号標章は商品名と題して、「9インチ 半生超薄クラスト」、「舟形ナン 50g」の商品内容を表す表示と並記されるとともに、その商品特徴として「ナポリ風手作りピザのように表面がパリっとして、中がモチッとヒキのある食感が楽しめます」とされ、単に商品内容を示す商品名として使用であり、商標としての使用ではない(甲第3号証及び甲第4号証)。
また、イ号標章は、インターネット上で本件商標とつながった商品であるとの指摘の意は不明であるが、インターネット上で本件商標をキーワードにして検索を行うとイ号標章の文字を含むサイトが検索されるとの意であれば、完全一致と指定して検索を行えば、わずかに7件のサイトが確認される(甲第5号証及び乙第12号証)。
3 「イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明」についての認否および反論並びに求釈明
本件商標の態様及び、「モチクラスト」の称呼が生ずることは認める。
ただし、イ号標章中で唯一識別能力ある部分は「もちクラスト」である点及び、「モチクラスト」の称呼が生ずる点については争うが、「ピザクラスト」の観念を生ずる事は否認しない。
4 イ号標章の使用が本件商標の効力の範囲に属しないことの実質的な理由
(1)商標権の効力が及ばない範囲での使用(商標法第26条第1項第2号)
イ号標章は、「パリッともちもちクラスト」の文字を普通に用いられる方法で表示したものであり、「パリッと」並びに「もちもち」の語は、乙第4号証に示されるように、商品「ピザ生地」に対して使用するときには、「食感を表現する語」として広く使用される「品質表示」に該当し、さらに「クラスト」の語は、外周を固く焼き上げて形成するピザ生地の一種を示す普通名称として使用される語であり、請求入らの主張のとおり、イ号標章全体として、こうした食感を有する商品(ピザ生地)示す品質表示であることは明らかである。しかも、イ号標章の表示方法においては、その商品特徴として『ナポリ風手作りピザのように表面がパリっとして、中がモチッとヒキのある食感が楽しめます。』(甲第3号証及び甲第4号証)の説明が加えられるところであり、需要者において、こうした品質表示としての認識が生ずることは疑いのないところである。
したがって、イ号標章は商標法第26条第1項第2号に規定する「指定商品の品質等を普通に用いられる方法で表示する商標」に該当する。
(2)イ号標章と本件商標との非類似性
乙第1号証ないし乙第3号証及び乙第6号証ないし乙第9号証に係るレターからも理解されるように、請求人らにおいては本件商標に係る「もちクラスト」の文字列を含む標章は、全て本件商標と類似する旨主張するが、全体一体を旨とする商標の基本原則からすれば、被請求人は認容し得ない。
そして、例えば、本件商標中の文字列を含む下記の登録商標は、本件商標と非類似の商標として、本件商標に係る商標登録と並存する態様(類似群;32F03)で登録を認められている。
・「もちもち亭」第30類(登録第4466946号、乙第13号証)
・「もちもち」第30類(登録第4593953号、乙第14号証)
・「もちもち上手」第30類(登録第4703411号、乙第15号証)
・「もちもち野菜」第30類(登録第4740757号の1、乙第16号証)
・「もちもちアミノ」第30類(登録第4740758号、乙第17号証)
・「もちもち」第30類(登録第4772478号、乙第18号証)
・「もちもちたうん\もちもちタウン」第30類(登録第4822932号、乙第19号証) また、請求人らは、『他企業においては「もちもちの」や「もちもちした」や「もちもちしっとり」という表記をしている。』と主張するが、乙第14号証、乙第18号証として示した商標は、イ号標章と同様に「もちもち」の語を含んでなるものである。
然るに、イ号標章は「パリットモチモチクラスト」と一連一気によどみなく称呼し得るところであり、これを「パリットモチ」と「モチクラスト」に分離するが如き解釈は、社会の常識から大きく垂離するものといわざるをえない。
したがって、イ号標章と本件商標とは外観、称呼においていずれも相紛れる態様のものではく、非類似であると解釈するのが自然である。
5 よって、答弁の趣旨のとおりの判定を求める。
第5 当審の判断
1 本件商標とイ号標章の類否について
本件商標は、前記第1のとおり、「もちクラスト」の文字よりなり、現に有効に存続しているものである。
そして、その構成中の各文字は、同じ大きさ、等間隔で外観上まとまりよく一体に表されており、これより生ずるものと認められる「モチクラスト」の称呼も、冗長でなく、よどみなく一気一連に称呼し得るものである。
そうとすると、たとえ、その構成中の「もち」の平仮名部分より「餅」の意を、また、「クラスト」の片仮名部分より「ピザの生地」等の意を生じる場合があるとしても、かかる構成よりなる本件商標は、構成全体をもって一体不可分の一種の造語を表したものと理解し認識されるとみるのが自然である。
そうとすれば、本件商標はその構成文字に相応して「モチクラスト」の称呼のみを生ずるものというべきである。
他方、イ号標章は、前記第2のとおり、「パリッともちもちクラスト」の文字よりなり、その構成文字に相応して、「パリットモチモチクラスト」の一連の称呼が生じ、「食感がパリッとして、中がもちもちしたピザ生地」等の観念が生ずるといえるものである。
してみれば、本件商標とイ号標章とは、前記第1及び2の構成よりして、外観上明らかに区別し得るものであり、さらに、称呼にあっては、その音構成、構成音数において明らかな差異を有するものであるから、称呼上充分聴別し得るものである、また、本件商標は特定の観念を生じない造語であること上記のとおりであるから、イ号標章の観念とは比較することができないものである。
したがって、本件商標とイ号標章とは、称呼、外観及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない別異の商標であるといわなければならない。
なお、本件商標の指定商品とイ号標章の商品「ピザの生地」とは、原材料、用途、需要者等を共通にするものであるから、互いに類似する商品の関係にある。
ところで、請求人は、イ号標章に関して、「本件商標と同一な部分があるから類似である。」旨述べているが、本件商標が商品に使用され、一般に流通した結果、その指定商品の属する分野において周知著名となっている等の特別な理由が存在しない限り、単に一部の文字が一致するとの理由のみでは、類似するということはできないし、また、インターネットの検索において、検索キーの指定を完全一致としない場合は、検索キーと一部が一致する検索結果を得ることができ、また、検索キーと一致した文字部分が強調(太字)表示される等の事は、当審においても知られているものであるが、このことをもってしても、本件商標とイ号標章との類似をいうことはできない。
3 まとめ
したがって、商品「ピザ生地、ピザクラスト」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
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