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Trademark Appeal Case

称呼の音韻類似性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2006−89084(T2006−89084/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4874820号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4874820号商標(以下「本件商標」という。)は、「へるちや」及び「ヘルチヤ」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成16年7月2日に登録出願され、第30類「茶」及び第32類「茶を使用してなる清涼飲料,茶を使用してなる果実飲料」を指定商品として、平成17年6月24日に設定登録されたものである。

2 引用商標

請求人が引用する登録第4483797号商標は、「ヘルシア」の文字を標準文字により表してなり、平成12年6月30日に登録出願され、第29類、第30類及び第32類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、平成13年6月22日に設定登録されたものである。同じく、登録第4605393号商標は、「HEALTHIA」及び「ヘルシア」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成13年10月4日に登録出願され、第29類、第30類、第31類及び第32類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、平成14年9月20日に設定登録されたものである。以下、これらをまとめて「引用商標」という。

3 請求人の主張の要点

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第53号証を提出している。

(1)商標法第4条第1項第11号違反について

ア 本件商標と引用商標の比較

(ア)まず、本件商標と引用商標の称呼を明らかならしむると、本件商標からは、「ヘルチヤ」の称呼を、引用商標からは、いずれからも「ヘルシア」の称呼を生じるのを自然とする。

そして、本件商標と引用商標とは、いずれも4音構成にして、第1音、第2音を共通にし、第3音に「チ」と「シ」、第4音に「ヤ」と「ア」の字面上での差異を有する。

しかしながら、かかる差異は、両称呼を聴別する上で極めて徴差である。 これらの差異が両商標の称呼を区別する上で極めて徴差であることは、以下のとおりである。

(イ)まず、両商標の第3音の相違の説明に先立って、第4音がほぼ同一音であることを説明する。

相違する第4音は、上述のとおり、これを字面上で表すと、本件商標にあっては、「ヤ」であり、引用商標にあっては、「ア」である。これを訓令式ローマ字で表すと「ヤ」は、「ya」であり、「ア」は、「a」である。これを発音記号で表すと前者は、「ja」であり、後者は、「a」である。

そうすると、「ヤ」と「ア」は、ともに50音図の同段に属する音で、子音の有無を有するものの母音「a」を共通にする。

相違する子音「y」は、発音記号では「j」と表記され、音声上半母音として発音される。半母音は、50音図にあっては、称呼は、ヤ行の「j」、ワ行の「w」に相当し、調音法が母音のそれに近く、母音に近い性質を有する。

「j」が半母音であることは、甲第4号証として提出する研究社発行新英和大辞典の「発音と綴字」の項の「英語子音分類表」のとおりである。

そのため成語における実際の発音においては、母音としての性格が強いから、子音の有無にかかわらず、「ヤ」と「ア」を区別することなく称呼されることが多く、本件商標と引用商標の場合のように、特に、その前音の母音が「i」である場合はそうなのである。

たとえば、「diamond」を「ダイアモンド」又は「ダイヤモンド」といい、「Rossiya」を「ロシア」又は「ロシヤ」といい、「acasia」を「アカシア」又は「アカシヤ」といい、「Asia」を「アジア」又は「アジヤ」というように、母音と半母音は、称呼する者においてさえも明確な区別をしていないのである。

したがって、「ヤ」と「ア」は、本件商標と引用商標のそれぞれの全体称呼の中にあっては、ほとんど同一音なのである。

ちなみに、「ヤ」と「ア」の称呼を判断した審決例を甲第5号証ないし甲第9号証(「APAM」対「ヤパム」、「山秀/YAMAHIDE」対「天秀」、「宮伊」対「ミアイ」、「kurasiya」対「la Crasia」、「ビアン」対「クラブ ビヤン/CLUB BIENS」)に示す。これらは、いずれも「ヤ」と「ア」の称呼を近似音と判断している。

(ウ)次に、両商標の相違する第3音「チ」と「シ」の音について説明する。

これを訓令式ローマ字で表記すると「チ」は、「ti」であり、「シ」は、「si」である。「ti」と「si」は、一見して明らかなように子音は相違するが、母音「i」を同一にする。

子音「t」と子音「s」は、先に提出した甲第4号証に見られるように、発声場所を歯茎とする歯茎の音であるから、調音位置を同じくし、その上いずれも無声音であるという共通の特徴を有している。

したがって、「チ」と「シ」は、母音を共通にし、かつ、子音も共通の特徴を有するが故に極めて近似した音であるということができる。このことは、後掲する甲号証、例えば、甲第11号証に「該相違する『シ』と『チ』の音は、その発音において調音の位置を同じくする歯茎音であって、しかも、母音『イ』を共通にする近似の音である」とあることなどからも明らかである。

(エ)ところが、この子音の相違について、先に本件審判請求人が登録異議申立人として提起した登録異議申立事件における異議決定では、「しかして、『チ』の子音は、舌先を硬ロ蓋に接触して破裂させて摩擦させる破擦音であり、『シ』の子音は、舌端を前硬口蓋に寄せて発する摩擦音で、両音は音質を明らかに異にし」と説示している。この説示については、商標権者も同様の主張をするであろうから、これを予定して反論しておく。

この説示は、「チ」の文字を「chi」に置き換えて、「t∫i」と発音し、その子音を「t∫」としたことによるものと思われる。たしかに、子音「t∫」は、先に提出した甲第4号証からも明らかなように、破擦音であることはそのとおりである。そして、引用商標における第3音の子音は摩擦音であることもそのとおりではある。

しかしながら、この異議決定では、「チ」は、破擦音であり、「シ」は、摩擦音であるから、両音は、音質を明らかに異にすると述べるが、破擦音と摩擦音の定義を述べているだけでどのように音質が異なるのかの説明はない。

破擦音といい、摩擦音といい、提出する甲第4号証の該当頁には、「破擦音」とあり、「t∫」は、「∫」の位置に対応する破裂音〔t〕(舌先きと舌端とを歯茎と硬ロ蓋の前の部分にあてるもの)で始まり摩擦音「∫」を伴なって発音される(無声)音であると解説、また、「摩擦音」とあり、「s」は、舌端と上歯茎の間で摩擦を起こす無声の音であると解説されている。

すなわち、同号証の英語子音分類表からも明らかなように、発声方法において、摩擦音を伴ったり、摩擦音であったり、発声場所において歯茎が関係したり、また、いずれも無声音であったりという音質上多くの共通点を有しているのである。

このように多くの共通点を有する子音に同一の母音が帯同すれば、当然ながら両音は、近似した音となる。このことは、後掲する甲号証、例えば、甲第13号証に「該差異である「チ」(t∫i)の音は、母音「i」を共通にする音であって、比較的明瞭に聴取し難い中間に位置することに加え、その音感が近似し、共に歯茎音であることと相まって、その音感が近似」とあることなどの説示からも明らかである。

したがって、「チ」と「シ」の音は、子音も共通性を有し、同一の母音を帯同するが故に極めて近似した音であるということができるのである。

ちなみに、「チ」と「シ」の称呼を判断した審決例を甲第10号証ないし甲第16号証(「バラクチン」対「PARAXIN」、「シルワールド」対「チルワールド」、「ルシア/LUCIA」対「セントルチア」、「ECOTHIL/エコチル」対「ECOSYL」、「パトリチン」対「パトリシン」、「セルチンC」対「セルシン/cellusin」、「バイチリン」対「bicillin/バイシリン」)に示す。これらは、いずれも「チ」と「シ」の称呼を近似音と判断している。

(オ)そこで、上述の理をふまえて、もう一度本件商標と引用商標の音構成を振り返ってみることとする。

本件商標の称呼「ヘルチヤ」と引用商標の称呼「ヘルシア」は、互いにともに印象深く称呼され、かつ、聴取される前半の第1音及び第2音を共通にし、後半の印象の薄い第3音及び第4音にあって、第3音に母音を共通にし、かつ、子音においても発声方法及び場所において共通の特徴を有する近似音同士、第4音に半母音を帯同するか否かの相違だけで母音を共通にするほとんど同じ音同士の差異を有する音構成からなるものである。その上、両商標の称呼は、語韻、語調、抑揚も同じである。

そのため、両商標を時と所を異にして称呼したとき、この称呼の聴者としては、「ヘルチヤ」であるか「ヘルシヤ」であるか、「ヘルチア」であるか「ヘルシア」であるか、いずれがいずれであるかを明瞭に聴別することは至難の業となるのである。

このことを裏付けるように、特許庁商標課編「商標審査基準」によれば、「ともに同数音の称呼からなり、相違する1音が母音を共通するとき」は、類似するものとされており、例外としては、「(イ)語頭音に音質上又は音調上著しい差異があるとき、(ロ)相違する音が語頭音でないがその音質(例えば、相違する音がともに同行音であるが、その母音が近似しないとき)音調(例えば、相違する音の部分に強めのアクセントがあるとき)上、著しい差異があるとき、(ハ)音節に関する判断要素において、(i)称呼が少数音(3音以下)、(ii)語の切れ方、分かれ方(シラブル、息の段落)が明らかに異なるとき」とある。

かかる記載からも本件商標と引用商標とは、上述したように、ともに語韻、語調、抑揚をも同一にするから、上記「商標審査基準」において、例外とされて類似とはならないとされる事例にも該当しない。また、この商標審査基準によれば、幾つかの要素が同一で全体の音感が近似するときも類似と推定している。このような原則を見忘れて、形式的に「破擦音」と「摩擦音」と表示される文字にとらわれて、「音質を明らかに異にし」というような判断が当然のようになされるとしたら審査基準そのものの信頼性がゆるぎかねないことにさえなる。

したがって、本件商標は、類否判断の原則に則って、引用商標にその称呼が類似するとするのが相当なのである。

その上、引用商標は、後述するように請求人によって茶飲料に使用され、需要者の間に広く知られており、需要者は、「ヘルシア」の称呼を深く脳裏に刻み込んでいるから、引用商標と上述したような程度の差異しか有さない本件商標の称呼「ヘルチヤ」が称呼されても、聴者は、「ヘルチヤ」であるか「ヘルシヤ」であるか、「ヘルチア」であるか「ヘルシア」であるか明らかな区別をすることができず、広く知られている商標の強い指標力により、すでに馴染み親しんでいる「ヘルシア」の称呼との間に混同を生ずるのである。

(カ)なお、商標権者は、本件商標が審査に係属しているとき、本件商標が引用商標に類似であるとして、商標法第4条第1項第11号に該当するとの拒絶理由を示されたとき、指定商品との関係で、本件商標からは、「減る茶」といった意味合いを暗示し、引用商標からは、「健康」を意味する「ヘルシー」「ヘルス」をイメージするとの主張をしているので、もしそのような主張がここでもあるといけないので、予め反論を用意する。

本件商標も引用商標も既述のとおりの構成であるから、いずれも特定の語義を有さない造語である。したがって、何らの観念も生じない。多分、本件商標中「ちや/チヤ」の2文字を目して「茶」と主張するのであろうが、この2文字は、「茶」を意味することはない。

仮に、「茶」を意味することがあるのであれば、その平仮名及び片仮名は、拗音としての「ちゃ/チャ」でなければならない。拗音としての「ちゃ/チャ」は、1音で称呼され、決して2音で称呼されることはない。このようなことは、50音図とともに濁音、半濁音、拗音を習得する小学生でも知っている。

したがって、本件商標から「減る茶」といった意味合いを暗示するというのは、いささか詭弁である。

同様に、引用商標も造語であるから、殊更に意味合いを詮索するがごときは、相当でない。

したがって、これら商標の意味合いであるとかイメージであるとかが両商標の称呼を聴別する上で影響を及ぼすことは全くないというべきである。

(キ)上述のとおりであるから、本件商標と引用商標とは、その相違音が互いに近似し、両商標のいずれもが特定の語義を有さない造語であり、かつ、その語韻、語調、抑揚が同じであるところから、それぞれを時と所を異にして称呼すると、聴者は、これを相似たものとして聴取し、かれこれ相紛れることのあること疑う余地はない。また、引用商標が需要者の間に広く知られていることから、その間を一層強くするものである。

してみると、本件商標は、引用商標に称呼において類似する商標といわなければならない。

イ 指定商品の比較

つぎに、本件商標に係る指定商品と引用商標に係る指定商品とを比較すると、両商標に係る指定商品は、第30類にあっても、第32類にあってもいずれも互いに同一又は類似するものであること多言するまでもなく明らかである。

ウ 違反

本件商標は、引用商標に類似し、かつ、引用商標に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するにもかかわらず違反して登録されたものである。

(2)商標法第4条第1項第15号違反について

ア 引用商標は需要者に広く知られていること

(ア)請求人は、厚生労働省のお墨付きの特定保健食品としての茶又は清涼飲料「ヘルシア緑茶」を2003年(平成15年)5月に販売を始めた。この商品は、茶カテキンを豊富に含む茶であり、清涼飲料である。発売当初より大変な話題を集め、わずか数ヶ月で爆発的な売れ行きとなった。この売れ行きは、現在においてもその衰えを見ることはない。

この背景には、請求人の品質維持努力、販売努力はもちろんであるが、マスメディアを利用しての広告やマスメディアによって取り上げられる記事の影響も大きい。

(イ)請求人は、これまでに多額の広告宣伝費用を投入してきた。広告宣伝に投入した費用は、甲第17号証ないし甲第21号証に示すように、2003年5月から2005年4月の24ヶ月間で、何と約51億2千万円であり、本件商標の出願前の2004年1月までの9ヶ月間だけでも13億3千万円となっている。実に驚くべき数字である。

広告宣伝は、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、交通広告と多岐にわたる。その一例を次に示す。

テレビでは、甲第22号証ないし甲第25号証に示すように、静画画像とともに流れ、ヘルシア緑茶を視聴者に「ヘルシア緑茶」、「茶カテキン」を印象付ける。

ビデオデータによる茶系飲料の広告秒数を甲第26号証で見ると、「ヘルシア緑茶」は、本件商標の出願前2003年10月には2790秒、同11月には3090秒、同12月には3540秒、2004年1月には3390秒と先発の茶系飲料メーカー広告秒数と遜色はなく、また、WGPRも甲第27号証で見ると、2003年10月には1163、2003年11月には1360、2003年12月には1500、2004年1月には1597と、やはり他の先発の茶系飲料メーカーのものと優るとも劣ることはない。

雑誌では、甲第28号証ないし甲第30号証に示すように、商品の写真とともに知名人の感想文を掲載したもの、甲第31号証に示すように取材記事等がある。

新聞では、甲第32号証ないし甲第35号証に見られるように、本件商標の出願前から継続的に全面広告を行ってきている。

車輌広告では、甲第36号証ないし甲第42号証に示すように種々の態様がなされている。

このような状態を踏まえて、引用商標は、今日においてはもちろん本件商標の出願前から広く需要者に知られるようになった。

(ウ)これを裏付けるように、雑誌「発明」2003年12月号(甲第43号証)では、「ヘルシア緑茶」をヒット商品として取り上げ、「日経トレンディ」2003年12月号(甲第44号証)では、03年ヒット商品ベスト30の第2位にランクインし、同じく、2004年1月号(甲第45号証)では、「ヘルシア緑茶」が注目商品として掲載されている。

また、日経(甲第46号証)のヒット商品番付では、「ヘルシア緑茶」を東の関脇に位置付けている。

また、インターネットにアクセスすると、甲第47号証ないし甲第50号証に示すように、本件商標の出願前において、いずれも「ヘルシア緑茶」の快進撃をたたえる記事を目にする。例えば、甲第47号証には、「2003年9月までの4ヶ月余りで60億円強を売り上げたヒット商品」、甲第48号証には、「なぜ高くてもあの商品を買ってしまうのか」と題して「ヘルシア緑茶」を例示、等々である。

(エ)このような状況の中で、引用商標が「茶飲料」に使用されて、本件商標の出願前から需要者に広く知られていることを否定することのできる者はまずいないであろう。

当然ながら、広告宣伝は、その後も継続して行われていることは、上述のとおりであるから、現在においても引用商標が世人に広く知られていることは当然のことである。

ここに「ヘルシア緑茶」についての知名率を、甲第51号証ないし甲第53号証によって見ることとする。

この調査表は、株式会社消費生活研究所が行ったもので、本件商標の出願の2003年11月21日〜24日の調査では、助成知名率は、70.8%、2004年2月20日〜23日に行った調査では、助成知名率は、72.3%、2004年11月19日〜22日に行った調査では、88.8%となっている。

このように、厳密な調査によっても、引用商標が需要者に広く知られていることを立証することができる。

(オ)なお、請求人は、先に、本件商標に対して登録異議申立をし、この事件においても、本件商標が「茶飲料」に使用されて引用商標は需要者の間に広く知られていることを主張したが、異議決定では、「申立人は、その取扱いに係る商品(茶飲料)に『ヘルシア』の文字を使用していることは認めることができるが、その商品の広告、宣伝の多くにおいて、同文字と『緑茶』の文字を不可分に結合した『ヘルシア緑茶』の文字を使用しているものであるから、提出に係る証拠によっては、引用商標の周知、著名性を十分に立証し得たものということはできない」と説示された。

そこで、商標権者においても、同様の主張がなされるといけないので、この説示に対しても予め反論を用意する。

説示では、「ヘルシア」の文字と「緑茶」の文字が不可分に結合しているとしているが、いささか不思議な論理である。

商標の実務において「不可分に結合した」といえば、おおよそ全体として商標としての外観が一体としてまとまりのあるものであるか、称呼や観念が複数の語により結合していても、全体として一つの称呼や観念が生じることを指すのである。

もし、請求人が、「ヘルシア」の文字の使用についての甲各号証において、「ヘルシア」の文字を他の文字とともに一体の外観を呈し、他の文字とともに一つの称呼や観念が生じるような使用をしているのであれば、かかる指摘もうなづけないこともない。

しかしながら、「茶飲料」についての商標「ヘルシア」の使用を証するために提出した甲各号証を見れば、一見してそのような使用をしているものでないことは、一目瞭然である。

まず、提出する甲各号証中、茶飲料「ヘルシア」の写真が掲載されている雑誌、新聞等を見ていただきたい。

茶飲料「ヘルシア」は、包装用瓶に内包されて販売されている。この商品は、液体であるから、商品そのものは商標を付すことはできず、商標は包装用瓶に印刷されて表示されている。当然ながら、包装用瓶には色々の文字が表示されている。

多数表示されている文字の中でも「ヘルシア」の文字は、ひときわ目立った手法での表示となっている。

そして、「ヘルシア」の文字のすぐ下に「ヘルシア」の文字よりも小さい文字で「緑茶」の文字の記載がある。この種商品の「ヘルシア」の文字と「緑茶」の文字を見たとき、通常の注意力を有する需要者であれば、「ヘルシア」の文字がこの商品の商標名であり、「緑茶」の文字が瓶によって内装されている中味である「茶飲料」を指しているものであると理解することは必然である。

したがって、需要者は、表示中「ヘルシア」の文字は、独立して自他商品識別標識としての機能を果しているのであり、「ヘルシア」は、「茶飲料」に使用されている商標であると理解するのである。

イ 出所の混同性について

上述のように、引用商標は、請求人によって使用され、需要者の間に広く知られているから、需要者の脳裏に「ヘルシア」の称呼は深く刻み込まれている。

したがって、聴者をして印象の強いはじめの二音を共通にし、比較的印象の薄い二音も互いに近似音である本件商標と引用商標とは、仮に、商標同士が類似しないとしても広く知られている商標の称呼「ヘルシア」の強い指標力により、「ヘルシア」であるか「ヘルチア」であるか「ヘルシヤ」であるか「ヘルチヤ」であるかについて、互いの商標についての混同を生じ、本件商標の付されている商品の出所を請求人あるいはそれらと何らかの関係にあるものと誤認、混同をするおそれがあるのである。

ウ 違反

してみると、本件商標は、その指定商品に使用すると他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

(3)むすび

叙上のとおり、本件商標は、引用商標に称呼上類似する商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当するか又は、仮に、同号に該当しない場合であったとしても、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれのある商標であるから、同項第15号に該当するので、その登録は、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。

4 被請求人の答弁

被請求人は、何ら答弁していない。

5 当審の判断

本件商標と引用商標との類否について検討するに、両商標は、いずれも既成の親しまれた観念を有する成語を表したものとはいえず、それぞれの構成文字に相応して、本件商標は、「ヘルチヤ」の称呼を生じ、また、引用商標は、「ヘルシア」の称呼を生ずること明らかである。

そこで、本件商標から生ずる「ヘルチヤ」の称呼と引用商標から生ずる「ヘルシア」の称呼とを対比すると、両称呼は、いずれも4音からなり、称呼の識別上重要な要素を占める語頭音の「ヘ」と第2音の「ル」の音を共通にするものである。そして、第3音において「チ」と「シ」、第4音において「ヤ」と「ア」と相違しているものの、この差異は、以下の理由から、両称呼を識別する上でわずかなものといえる。

すなわち、「チ」と「シ」の音は、調音の位置を同じくする歯茎音であり、しかも母音(i)を共通にする近似した音である。「ヤ」と「ア」の音に至っては、「ヤ」の音は、半母音(j)と母音(a)との結合した音節であるところ、半母音は、調音法が母音に近く、母音に似た音であるため、「ヤ」の音は母音である「ア」の音に極めて近似した音となり、特に、その前音の母音が「イ」(i)であるときは、例えば、「ダイヤモンド」と「ダイアモンド」、「ロシヤ」と「ロシア」、「アジヤ」と「アジア」、「アカシヤ」と「アカシア」等のように、称呼する者も聴取する者もいずれか区別がつきにくく、本件商標と引用商標における「ヤ」と「ア」の音は、ほとんど同一に近い音になる。

してみると、かかる性質を有する「チ」及び「ヤ」の音と「シ」及び「ア」の音との差異が本件商標と引用商標の称呼全体に及ぼす影響はわずかなものであり、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の音感・音調が極めて近似し、かれこれ相紛らわしいものというべきである。そうすると、本件商標と引用商標とは、称呼上類似するものといわざるを得ない。

なお、請求人の提出に係る証拠によれば、引用商標は、請求人の業務に係る「茶、清涼飲料」について使用する商標として、我が国の取引者、需要者間に広く認識されているものと認められることからすると、本件商標をその指定商品たる「茶、茶を使用してなる清涼飲料、茶を使用してなる果実飲料」に使用するときは、請求人の業務に係る商品と誤認、混同されるおそれがあり、かかる事情をも併せ考慮すれば、本件商標と引用商標との類似性は、より一層高いものといえる。

そして、本件商標に係る指定商品は、引用商標に係る指定商品に包含されるものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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