Trademark Appeal Case
周知商標と不正目的出願
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2005−90359(T2005−90359/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4856454号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に表示したとおりの構成よりなり、第31類「生花」を指定商品として、平成16年9月17日に登録出願、同17年4月15日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立人の主張
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標が商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第19号及び同第7号に該当すると主張し、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第162号証を提出している。
(1)商標法第4条第1項第10号
本件商標は、欧文字「Matilda」を左横書きし、指定商品を「生花」とするところ、本件商標の登録出願日前において、「大阪市西区南堀江1丁目27番地9号」所在の「株式会社ヘブン・デュオ」が、商品「生花」等について使用する商標「Matilda」(以下「申立人商標」という。)と同一であり、指定商品も同一である。
そして、申立人商標は、本件商標の登録出願日前に需要者、取引者においても以下に示すとおり、既に広く知られていたものである。
申立人は、大阪市西区南堀江を本店として平成12年10月20日に設立した。申立人の事業内容は、「生花(花束)小売業、ブライダルブーケ、ブライダル装飾」等であり、同年12月5日に「南堀江店」を、同13年3月4日に「神戸店」、同年4月14日に「代官山店」、同14年9月6日に「京都店」を開店した。
主たる取引先は、エルメス(銀座店)、カルティエ(銀座本店、三越本店等々)、ティファニー、フジテレビジョン株式会社、株式会社ホリプロ、株式会社ソニーミュージックコミュニケーションズ、株式会社東芝EMI、株式会社集英社、株式会社講談社等である。
申立人がどのような取引先と取引しているかを勘案することは、申立人商標の周知・著名の重要な観点になるものである。
また、会社設立から今日に至るまでの売上げ概算を甲第6号証として提出する。すなわち、平成12年10月から始まる第一期は二千二百万円、第二期は一億三千万円、第三期は一億五千万円、第四期は一億六千万円である。
手作りの如き当該商品の性質を考慮するなら、上記売上げは決して小さなものとはいえず、むしろ、申立人の提供する「花束」のデザイン的なセンスの良さ、技量の高さは、著名な芸能人等に知れ渡っており、このことから、申立人商標は、本件商標の登録出願日前に既に周知または著名となっていたものといわざるを得ない。
さらに、本件商標の登録出願日前に東京「代官山店」において、既に使用されていたことを証するものとして、注文伝票の写しを甲第7号証ないし甲第131号証として提出する。
以上のとおり、本件商標は、登録出願日前から「株式会社ヘブン・デュオ」を表示するものとして、需要者に広く認識されている申立人商標「Matilda」と同一であり、この商品「生花」と同一商品である「生花」に使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号
商標権者が周知若しくは著名となった申立人商標と同一の本件商標を商品「生花」に使用したならば、需要者・取引者は、申立人の業務である「生花」、「会場装飾、植栽プロデュース、アレンジメント教室の開催、ブライダルブーケ、ブライダル装飾」であると誤認し、商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号
本件商標の権利者(出願人)は、以下に述べるとおり不正の目的をもって本件商標を登録出願したであろうと思われる。
そもそも、「角浩之」氏が代表取締役を勤める出願人(商標権者)の営業権は、甲第2号証に示すとおり、平成12年10月20日に申立人に譲渡されている。
この営業権の内容は、出願人の社員及び商標を含む営業権である。
そして、平成13年以降は、申立人の名のもとに申立人の商標が使用されたことは、甲第7号証ないし甲第131号証に示すとおりである。
その後、譲渡人である出願人(商標権者)は、申立人との間において業務委託契約を締結して、申立人の傘下に納まった形で「東京代官山店」の業務を遂行していたが、この業務委託契約において対外的な取引の主体が「株式会社ヘブン・デュオ」であることは、平成13年の注文伝票からも明らかである(甲第7号証ないし甲第131号証)。
そして、平成16年に入ってから、申立人と権利者との連絡が途絶えがちとなり、業務委託契約書の第7条に取り決めの入金も滞るようになったのである。
この時期に、申立人が商標登録していないことを奇貨として、出願人により本件商標の登録出願がなされたことは容易に推察でき、このことは、申立人と出願人との間で取り交わされた業務委託契約を反古にして自ら業務を行わんとする、正に不正の目的及び営業妨害の目的をもった行為であることは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第7号
本件商標は、申立人との間で業務委託契約を締結していた受託者である出願人(商標権者)が、当該契約を遵守することなく、加えて、委託者との関係を反古にして自らが本件商標の出願人であるとして、申立人商標と同一の商標について商標登録を受けることは、申立人の業務を妨害し不正の利益を得んとする蓋然性は極めて高く、このような商取引及び商慣習を明らか逸脱する行為は、明らかに信義則に違反する。
また、本件商標と申立人商標とは、色彩を除いて全く同一であり、本件商標を使用されることは、当該業務における需要者・取引者をみだりに混乱させることから、公の秩序、善良の風俗を害することは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(5)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第19号及び同第7号に違反して登録されたものであるから、その登録は取り消されるべきである。
4 当審の判断
申立人は、本件商標が商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第19号及び同第7号に該当する旨主張しているので、以下、これらの点について判断する。
(1)商標法第4条第1項第10号について
当審において、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する旨の取消理由通知を平成18年4月28日付けで発したところ、商標権者は、同年6月26日付けで意見書を提出するとともに、証拠方法として乙第1号証ないし乙第73号証を提出し、さらに、同19年3月29日付けで乙第74号証ないし乙第95号証を提出している。
そして、上記商標権者の主張及び乙各号証を総合すれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)事実関係
商標権者である「有限会社フラワーヘブン」は、平成6年12月26日に設立され(乙第1号証)、同12年7月には東京都渋谷区神宮前に「Matilda原宿店」を出店し(乙第2号証)、商品「生花」について、本件商標を使用してきたこと(乙第3号証ないし乙第50号証)。
これに対し、申立人は、平成12年10月20日に設立され、設立直後、旧南船場店の営業権を商標権者より譲り受け、関西圏を中心に店舗を展開し今日に至っていること。
したがって、商標権者は、申立人が設立される前に本件商標を採択し、使用してきたのであって、申立人が設立された後も、本件商標を継続して使用してきた事実が窺われること。
(イ)申立人商標の周知・著名性について
申立人は、申立人が提供する「花束」のデザイン的なセンスの良さ、技量の高さは、芸能人等にも知れ渡っているから、申立人商標は、本件商標の登録出願日前において周知若しくは著名であったと主張する。
しかしながら、申立人提出の注文伝票写し(甲第7号証ないし甲第131号証)は、一般の個人や法人に係るものが大部分であり、これをもって申立人商標が周知・著名であるとまではいうことができない。
他方、乙第51号証ないし乙第73号証として提出された「証明書」によれば、商標権者は、生花及び生花のアレンジ商品に本件商標を付して、平成12年頃より現在に至るまで永続的に使用し、需要者間に知られていたことを窺い知ることができるものである。
さらに、現実の取引においては、申立人が同人の主たる取引先として挙げた「カルティエ(リシュモンジャパン株式会社)」、「株式会社ソニー・ミュージックコミュニケーションズ」等は、本件商標を付した商品が、申立人ではなく商標権者の商品であることを認めている(乙第51号証及び乙第52号証、乙第60号証及び乙第61号証)。
してみれば、申立人商標が申立人の業務に係る「生花」等を表示するものとして需要者、取引者の間に広く知られているということはできない。
なお、申立人は、甲第133号証ないし甲第139号証として、広告物を提出しているが、これらは店舗の紹介記事にすぎず、また、記事に掲載された商標と申立人商標とは、態様が異なるものである。
(ウ)以上のことから、申立人商標は、本件商標の登録査定時はもとより登録出願時においても、取引者・需要者間に広く認識されていた商標とはいえないから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
上記(1)のとおり、申立人商標は、需要者間に広く認識されている商標とはいえないから、本件商標をその指定商品に使用しても、取引者、需要者が商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきであり、よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にも該当しない。
(3)商標法第4条第1項第19号について
前記のとおり、申立人商標は、需要者間に広く認識されている商標とはいえないし、また、本件商標は、本件商標権者がその設立(平成6年12月26日)以降、今日に至るまで使用してきたと認め得るものであるから、本件商標の登録が不正の目的や申立人の引用商標をフリーライドしたものということはできない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号にも該当しない。
(4)商標法第4条第1項第7号について
商標の構成において、公序良俗を害するおそれがない場合であっても、登録出願の経緯において著しく社会的妥当性を欠くものがあり、これを登録することが商標法の予定する秩序に反すると認められるときには、商標法第4条第1項第7号に該当する場合があると解される。
しかるところ、申立人提出の全証拠によっても、本件商標について、登録出願の経緯において著しく社会的妥当性を欠くとすべき事情も見出せないから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するということもできない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第19号及び同第7号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する
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