結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2006−89059(T2006−89059/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4473956号商標(以下「本件商標」という。)は、「蛇紋岩米」の文字を標準文字で表してなり、平成12年4月10日に登録出願、第30類「米」を指定商品として、同13年5月11日に設定登録されたものである。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第34号証及び甲第1号証を補強するDVDビデオを提出した。
本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第16号、同法第3条第1項第1号、同第2号及び同第6号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について
(a)登録出願前にテレビ放映された蛇紋岩米
本件商標の「蛇紋岩米」(じゃもんがんまい)は、甲第1号証に示すとおり、登録出願前に、テレビ東京及び同系列局のテレビ大阪の「クイズところ変われば !?」という番組で放映されている。
この番組中では、「兵庫県養父郡(やぶぐん)の土壌は蛇紋岩質でマグネシウムやカリウムを多く含んでいる」旨の解説及び映像表示がなされ、蛇紋岩米を使っている神戸三ノ宮の飲食店「一夜一夜」、及び請求人によってこの飲食店へ納入された商標「蛇紋岩米」が付された米袋が映っている。
また、神戸三ノ宮の飲食店「一夜一夜」の放映当時の品書きが映っており、「蛇紋岩米(じゃもんがんまい)兵庫県養父郡八鹿町、鉢伏山......霊岩 蛇紋岩、その岩清水は......多量のミネラルを含み、この米......銀シャリ(蛇紋岩米)......本日の味噌汁......明石海苔......季節のあしらい......」と記載されている。インターネット上で平成18年5月9日に同店のサイトから取得した現在の同店の品書きと同じ内容であることがわかる(甲第2号証参照)。
したがって、蛇紋岩米は、蛇紋岩の土壌で作られた米(蛇紋岩が風化してできた土壌に、稲を植え、出来上がった米)であり、単に品質・原材料・生産の方法(以下、品質等という。)を表示した標章であることが、本件商標の登録出願前の時点で、広く知られていたことがわかる。
また、テレビ放映された神戸三ノ宮の飲食店「一夜一夜」(甲第3号証及び甲第4号証参照)は、1997年11月13日に開店し、開店当初より、蛇紋岩米を売り物として営業を展開してきた。
よって、蛇紋岩米については、登録出願前から現在に至るまで継続して(登録査定時を含む。)、蛇紋岩の土壌で作られた米であることが需要者に示されてきた。現在では、「一夜一夜」の店舗数は増加し、東京丸の内の丸ビル(甲第24号証参照)にも店舗ができている他、埼玉県の川ロ店、銀座5丁目ニューメルサ店、直営3号店「一夜一夜ラシック(名古屋三越)店」、大阪の肥後橋店等があり、いずれの店舗も、請求人が納入する蛇紋岩米を売り物としていることから、蛇紋岩米が蛇紋岩の土壌で作られた米であることの周知度は、より高まっている。
なお、テレビ放映された映像には、神戸三ノ宮の飲食店「一夜一夜」の放映当時の店長の重松茂の年齢が「29歳」と映っていることと、請求人によって同店に納入された米袋の拡大映像に、「産年 9年産」、「精米年月日(平成10年)4月17日」と映っていることから、放映日が本件商標の登録出願前であることは明らかである。「産年」とは、秋に米の収穫があれば、その年のことであり、「精米年月日」とは、早ければ収穫した年の年内(例えば11月精米等)、あるいは収穫の翌年の年月日のいずれかとなるので、産年と精米年月日が1年以上離れることはない。また、飲食店で古米を使用するはずはなく、古米の精米年月日が記載された米袋をテレビ放映することもあり得ない。
また、この拡大映像に「産地 兵庫県養父郡八鹿町朝倉」と映っているが、「養父郡八鹿(ようか)町朝倉」は、蛇紋岩質の土壌地帯であり、請求人の住所地である八鹿町八鹿の近くである。「養父郡」は、現在では、養父市になっている。
(b)以前から行われている地元での土壌調査
兵庫県但馬県民局地域振興部八鹿農業改良普及センターの資料に、「供試玄米(コシヒカリ)の食味関連成分について」(甲第5号証)と、「南但馬地区 農地開発事業開発基本計画樹立調査報告書NO.4 蛇紋土壌調査編」(甲第6号証)と、「蛇紋岩米とは」(甲第7号証)とがある。なお、農業改良普及センターとは、昭和23年に施行された農業改良助長法に基づき農業普及事業を行う公的機関である。
甲第5号証に示すとおり、平成5年5月10日に、(社)日本油科検定協会の綜合分析センターにより、八鹿町の1994年産米(コシヒカリ、玄米)について、食味関連成分の特徴が調べられている(甲第5号証の第1頁)。甲第5号証の第2頁には、「試料1〜4の検体は蛇紋岩質土壌で生育した水稲に由来し、No.5及びNo.6試料は対照として選んだ蛇紋岩質土壌以外の土壌で収穫されたものである。したがって、試料1〜4の検体にニッケルが多量に含まれているのは、蛇紋岩質土壌のうえに水稲が生育したためであると考える。」と記載され、甲第5号証の第3頁には、「また、蛇紋岩質土壌には平均66500mg/kg(対照群の平均は9800mg/k)と約7倍のマグネシウムが含まれていることが、上述の早魃影響を増幅したものとも考えられる。」と記載され、甲第5号証のその他の記載からも、蛇紋岩質土壌が稲(米)に影響を与えていること、及びそのことが以前から着目されていることがわかる。これらのことは、テレビ放映された事実(甲第1号証)の裏付けとなるものである。
さらに、甲第6号証に示すとおり、昭和50年度に、人体への影響も含め、蛇紋岩質土壌の調査が近畿農政局で正式に行われているのは、それ以前から、蛇紋岩質土壌が作物に影響を与えることが知られていたためであり、このことは、昭和50年当時から、蛇紋岩質土壌が米の品質に影響を与えることが知られていたことの裏付けとなるものである。
甲第7号証の「蛇紋岩米とは」の文献記載は、以上の事実をわかり易く解説しているものである。
なお、八鹿農業改良普及センターからの提供資料ではないが、蛇紋岩土壌の研究というテーマでは、甲第13号証に示すとおり、インターネット上に「蛇紋岩米研究室(うまいもん研究室)」による記載があり、この記載には「当地の『蛇紋岩米』であるが、伝えられていることを整理し科学的に分析が可能であろうか。...」とあり、科学的な分析の結果ではないが、蛇紋岩米について伝えられていることがあることがわかる。
(c)兵庫県養父市以外の地方における蛇紋岩質土壌で作られた米
甲第8号証及び甲第9号証に示すとおり、千葉県には、「長狭米」(ながさまい)という蛇紋岩質土壌で作られた米がある。この「長狭米」の歴史は古く、明治4の天皇家の儀式「大嘗祭」(おおなめさい)に献上された米であり、「日本の米作り百選」にも選ばれているので(甲第9号証参照)、蛇紋岩質土壌が米の品質に影響を与えることは、本件商標の登録出願前から知られていることである。
甲第8号証は、有限会社北村商店のホームページの記載であり、甲第9号証は、竹ノ内米店のホームページの記載である。
なお、甲第10号証の3頁には、高知県の、いの町神谷地区成山について、「この成山は、昔から米がうまいと評判のところですが、この秘密はなんと思われますか? 実は蛇紋岩のようです。成山は蛇紋岩地帯で湧き水豊富なところです。田んぼ自体も蛇紋岩の上にあります。湧き水は蛇紋岩を通って湧出し、マグネシウム・カルシウム等を多く含んでいます。このマグネシウム等がうまい米を演出しているようですね。」という記載がある。いつから、うまい米が蛇紋岩土壌によって作られるということが認識されたのかは、この記載からでは不明であるが、少なくとも昔から蛇紋岩土壌が米の品質に影響を及ぼしていたことがわかる。
(d)蛇紋岩米で作られた酒
甲第11号証の2頁下部に示すとおり、1998年11月4日の毎日新聞の記事には、「純米吟醸酒『仙櫻』を発売 大屋町産の蛇紋岩米と氷ノ山のわき水を原料に山陽盃酒造(山崎町)が醸造」と記載されている。
また、甲第12号証の株式会社山陽盃酒販のホームページには、「仙櫻」(せんざくら)誕生の由来として、「『仙櫻』は、旧養父市大屋町が〜関の宮町間の地質『蛇紋岩地帯』で育った野菜は美味しいと昔から定評があり、その地域で育ったお米は『蛇紋岩米』という名前で愛されてきました。旧大屋町が町おこしの為に行っていた有機無農薬栽培を利用し、こだわりを追及した同町にちなんだ酒米からお酒を醸そうと提案し、実現。」と記載され、さらに、「仙櫻」について、「酒米は、兵庫県養父市で栽培された有機無農薬栽培の蛇紋岩米を使用し、...」と記載されている。
したがって、1998年11月4日当時、蛇紋岩米が、蛇紋岩土壌で作られた米であることが認識されており、だからこそ、その酒米からお酒を醸そうとしたことがわかる。
なお、甲第11号証は、日経とgooのビジネス情報サイトである「日経goo」を用いて、キーワード「蛇紋岩米」でヒットさせ、取得した新聞記事である。
(e)以上より、本件商標の登録査定時(登録出願時も同様)において、「蛇紋岩米」が、蛇紋岩土壌で作られた米であり、単なる品質等を表示する標章であったことが証明された。
よって、本件商標は、登録査定時(登録出願時も同様)に、商標法第3条第1項第3号に該当しているにもかかわらず、登録を受けたものである。
また、蛇紋岩土壌以外の土壌で作られた米に対し、「蛇紋岩米」を使用すれば、品質誤認を生ずるおそれがあるため、登録査定時(登録出願時も同様)において、商標法第4条第1項第16号にも該当していたものである。
(2)登録後における商標法第4条第1項第16号について
(a)飲食店「一夜一夜」による継続的な広告宣伝
前記(1)(a)で述べたように、蛇紋岩米が蛇紋岩の土壌で作られた米であることについて、登録出願前から現在に至るまで、飲食店「一夜一夜」によって、店内やサイト上の品書きや説明文での継続的な広告宣伝が行われるとともに(甲第2号証参照)、現在、飲食店「一夜一夜」のことは、グルメサイトにも掲載され、紹介されている(甲第4号証参照)。
(b)インターネット上の多数のサイトでの掲載内容
甲第14号証ないし甲第24号証に示すとおり、インターネット上には、蛇紋岩米が蛇紋岩の土壌で作られた米であることを記載した多数のサイトがある。
(c)よって、現時点で、蛇紋岩土壌以外の土壌で作られた米に対し、「蛇紋岩米」を使用すれば、品質誤認を生ずるおそれがあるため、本件商標は、登録後において商標法第4条第1項第16号に該当するものとなっている。
(3)商標法第3条第1項第1号及び同第2号について
甲第11号証に示すとおり、本件商標の登録出願前の1998年11月4日の毎日新聞の記事を初めとし、「蛇紋岩米」が普通名称や慣用商標のように使用されている新聞記事が「日経goo」で7件ヒットした。
また、甲第25号証に示すとおり、兵庫県養父市(旧養父郡)を紹介するウェブページでは、「蛇紋岩米」を地域の特産として記載している。このウェブページの記載自体は、いつ作成されたのか不明であるが、この他に、養父市(旧養父郡)の道路脇には、以前から(登録出願前から)「蛇紋岩米」と書かれた大きな看板があり、養父市(旧養父郡)が、地域の特産として「蛇紋岩米」という名称を使っていたことがわかる。
なお、参考情報であるが、現在、インターネット上において、MSNサーチで「蛇紋岩米」を検索すると、1401件ヒットし(甲第26号証)、ヤフーで「蛇紋岩米」を検索すると、667件ヒットし(甲第27号証)、グーグルで「蛇紋岩米」を検索すると、741件ヒットする(甲第28号証)。いずれも「蛇紋岩米」が、普通名称や慣用商標のように使用されている。
(4)商標法第3条第1項第6号について
本件商標「蛇紋岩米」は、「蛇紋岩」と「米」とに分けて考えれば、品質等を示す形容詞として用いられる「蛇紋岩」と、普通名称である「米」との結合商標であるから、商標法第3条第1項第6号に該当する。
(1)乙第1号証の新聞記事及び広報誌について
乙第1号証の1の1997年(平成9年)9月22日の新聞記事において、被請求人の引用箇所の直前に、「蛇紋(じやもん)岩という石で、養父郡内にこの地層が広がっている。マグネシウムやカリウムが豊富に含まれており、そこの水田で育ったコシヒカリは新潟・魚沼産よりうまいと評判です」という記載がある。
また、乙第1号証の2の平成9年4月3日の新聞記事において、記事全体に、蛇紋岩質土壌で栽培された米がおいしいこと、及びその原因としてマグネシウムとカリウムの比率が高いことが示されている。
さらに、乙第1号証の3の広報誌において、被請求人の引用箇所には「蛇紋岩地帯の米」と記載され、この引用箇所の直後には、「蛇紋岩と聞けば、磨くと黒光りする美しい石で、養父郡の中央部の山脈に多く含まれ、4町にまたがってかなりの面積で存在します。蛇紋岩質の土壌には、マグネシウムやカリウムなど、植物の育成に欠かせない多くの要素が含まれている反面、妨げになるニッケルも含まれています。ところが米だけは昔からおいしいものができます。稲がニッケルを吸収せず、その他の成分だけを取り入れるからです。」と記載されている。
したがって、乙第1号証の1ないし3には、蛇紋岩米が、蛇紋岩質土壌で作られた米であることが示されているので、「蛇紋岩米」は、品質・原材料・生産の方法を表示した標章(以下、単に品質表示という。)であることがわかる。
よって、本件商標は、登録査定時(登録出願時も同様)に、商標法第3条第1項第3号又は同第6号に該当するにもかかわらず、登録を受けたものであり、また、蛇紋岩土壌以外の土壌で作られた米に対し、「蛇紋岩米」を使用すれば、品質誤認を生ずるおそれがあるため、登録査定時(登録出願時も同様)において、商標法第4条第1項第16号にも該当していたものである。
なお、「蛇紋岩米」が、被請求人の独自ブランドであるという点については否認する。請求人は、甲第1号証に示したように、登録出願前から「蛇紋岩米」の文字を米袋の中央に付して使用している。また、乙第1号証の1及び2に示された被請求人の米袋の中央には、「蛇紋岩米」ではなく、「コシヒカリ」の文字が付されているので、蛇紋岩質土壌で作られた米を「コシヒカリ」の名で販売しているにすぎず、「蛇紋岩米」は普通名称または品質表示の位置付けである。
したがって、「蛇紋岩米」は、被請求人独自のものではなく、被請求人のブランドともいえない。
(2)イトーヨーカ堂で行った試食販売について
被請求人は、乙第2号証を挙げ、イトーヨーカ堂で行った試食販売において、商品「蛇紋岩米」の認知度は5%にも満たない結果となっている旨、主張するが、仮にこのアンケート調査が適正に行われたものとすれば、地域によって、一般消費者の間での認知度が大きく異なることがわかる。
イトーヨーカ堂東大阪店では、味を知っている人が50%であり、名前を知っている人が10%である。名前は知っているが食べたことがないので味は知らないという人が存在するならわかるが、その逆の人が多い結果となっているため、多少、データの収集方法に疑問が残るものの、これを小さい方の10%という数値をとったとしても、知っている人は、250人中、約25人となる。その一方で、知っている人が0%という店舗も存在する。
したがって、データのサンプル数が十分な場合において、10%の店舗が存在する一方で、0%の店舗もあるというのは、統計学的に見れば、正常な分布にはあり得ないことなので、知っているか否かは、地域によるということがわかる。つまり、被請求人が行ったアンケート調査結果が適正なものであると仮定した場合には、地域を選べば、一般消費者の間での認知度が大きくなることがわかる。
よって、少なくとも、地域によっては、スーパーマーケットの米販売のコーナーを通りがかる一般消費者のレベルであっても、「蛇紋岩米」を蛇紋岩質土壌で作られた米であると認識するとともに、蛇紋岩土壌以外の土壌で作られた米に対し、「蛇紋岩米」を使用したときに、品質誤認を生じるおそれがあるといえる。
また、スーパーマーケットの米販売のコーナーを通りがかる一般消費者の全てを対象とするのではなく、米の味にこだわる一般消費者、米の栽培に興味を持つ一般消費者、米の生産・流通業者等を対象とした場合には、蛇紋岩土壌以外の土壌で作られた米に対し、「蛇紋岩米」を使用すれば、品質誤認を生じるおそれは、より一層高くなる(甲第29号証)。
以上のことは、請求人が挙げた甲第14号証ないし甲第24号証によっても、裏付けられている。また、無印良品で有名な株式会社良品計画のホームページのカフェ・ミール事業のページにも「蛇紋岩米」及び「蛇紋岩」のことが掲載されている(甲第31号証)。
よって、本件商標は、登録後において、商標法第4条第1項第16号に該当するものとなっている。また、登録査定時(登録出願時も同様)において、商標法第3条第1項第3号又は同第6号、並びに商標法第4条第1項第16号に該当していたことを推認させる結果ともなっている。
(3)長狭米について
被請求人は、請求人が挙げた甲第8号証及び甲第9号証に示す千葉県の「長狭米」(ながさまい)について、「蛇紋岩質土壌でつくられた米が千葉県では『蛇紋岩米』ではなく『長狭米』と呼ばれており、この事実からも『蛇紋岩米』が品質表示でないことが立証できる。」旨、主張するが、千葉県では、蛇紋岩質土壌で作られた米に対し、「長狭米」という商標を選択して付しているにすぎない。蛇紋岩質土壌で作られた米に対し、どのような商標を付すかを選択するのは、千葉県の生産・流通業者の自由である。したがって、千葉県の生産・流通業者が、蛇紋岩質土壌で作られた米に対し、「長狭米」という商標を選択して付している事実をもって、「蛇紋岩米」が品質表示でないことの証明にはならない。
請求人は、甲第8号証及び甲第9号証を挙げることにより、「長狭米」の歴史が古く、「日本の米作り百選」にも選ばれており、蛇紋岩質土壌が米の品質に影響を与えるという事実が登録出願前から知られているということを証明しているのであり、これにより、「蛇紋岩米」と聞けば、蛇紋岩土壌で作られた米であると認識し、また、蛇紋岩土壌以外の土壌で作られた米に対し、「蛇紋岩米」を使用すれば、品質誤認を生ずるおそれがあることを証明しているものである。
(4)一般需要者が「蛇紋岩米」から「蛇紋岩の土壌で作られた米」を想起することはないという被請求人の主張について
被請求人は、一般需要者は「蛇紋岩」自体をほとんど知らないため、「蛇紋岩米」という一風変わった商標として捉えるのみであると主張しているが、次の(a)ないし(d)に示すように、一般需要者は、「蛇紋岩米」から「蛇紋岩の土壌で作られた米」を想起することができる。
(a)登録出願前のテレビ放映
甲第1号証の蛇紋岩米に関するテレビ映像のカットは、登録出願前にテレビ東京及び同系列局のテレビ大阪の「クイズところ変われば !?」という番組で放映され、一般消費者が視聴している。
甲第1号証を補強する証拠として、このテレビ番組をアナログ方式で録画したVHSテープからコピーして作成したDVDビデオを、物件提出書に添付して提出する。
ビデオ開始から19分23秒〜22分22秒に、蛇紋岩米に関する映像が映っている。
ビデオ開始から19分54秒後に、神戸三ノ宮の飲食店「一夜一夜」の店長の「去年の11月にオープンしたばかりの店です。」という説明がある。審判請求書で述べたように「一夜一夜」は1997年11月13日に開店しているので、テレビ放映は、1998年であることがわかる。
また、ビデオ開始から18分02秒後に、トヨタガイア誕生のコマーシャルがあるが、トヨタガイアが誕生したのは、1998年である(甲第32号証)。
さらに、ビデオ開始から29分10秒後に、FIFAワールドカップのフランス大会で日本を応援するための「熱血サッカー宣言」のコマーシャルが、「開催地フランス」という音声とともに映っている。FIFAワールドカップのフランス大会は、1998年に開催されている。
また、ビデオ開始から29分40秒後に、コジマの「’98売上高日本一大感謝祭」のコマーシャルが映っている。
さらに、ビデオ開始から48分40秒後に、麒麟淡麗<生>新発売のコマーシャルがあるが、麒麟淡麗<生>が新発売されたのは、1998年である(甲第33号証の7/11頁)。そして、このコマーシャルの最後(ビデオ開始から48分54秒後)に、「がんばれ ! サッカー日本代表キャンペーン オリジナルバックプレゼント」の文字とともに、「1998年6月30日」という日付が映っている。
また、ビデオ開始から49分15秒後に、ロックグループのペニシリンのコンサート・チケット販売のコマーシャルがあり、コンサートの日が6/14(日)となっているが、6月14日が日曜日となるのは、近年では、1998年だけである。なぜなら、2000年及び2004年が閏年なので、1998年が日曜日、1999年が月曜日、2000年が水曜日、2001年が木曜日、2002年が金曜日、2003年が土曜日、2004年が月曜日、2005年が火曜日、2006年が水曜日となるからである。
そもそも、「クイズところ変われば!?」の放映期間(テレビ東京)は、1987年7月10日〜2000年12月22 日であるから(甲第34号証)、登録査定時には、この番組の放送は終了しており、甲第1号証のテレビ放映が、登録査定時よりも前に行われたことは明らかである。
(b)登録出願前発行の市販本の存在
1998年7月5日に「おいしいお米の栽培指針にこれからのお米はマグネシウム型)」というタイトルの市販本(堀野俊郎著)が発行されているので(甲第29号証)、登録願時に、一般消費者は、これを購入し、読むことができる状態にあった。
この本の33頁には、「この食味極良田の高マグネシウムはその土壌のもとになった母岩にマグネシウムがとくに多いためである。母岩の種類でいえば、塩基性岩と呼ばれるかんらん岩、蛇紋岩、玄武岩にはマグネシウムが多い。あわせてその他の微量要素も多い。」という記載がある。
したがって、一般消費者であっても、この記載を読めば、「蛇紋岩米」から「蛇紋岩の土壌で作られた米」を想起することができる。また、米の味にこだわる一般消費者、米の栽培に興味を持つ一般消費者、米の生産・流通業者であれば、当然に想起できることである。
(c)登録出願前の新聞記事及び広報誌の存在
乙第1号証の1及び2の神戸新聞は、少なくともこの新聞が頒布されている地域に住む一般消費者であれば、登録出願前に、購入してその記事を読むことができる状態にあった。
また、被請求人が挙げている乙第1号証の3のJA広報誌は、米の生産・流通業者のみならず、米の味にこだわる人や、米の栽培に興味を持つ人を含め、広く一般消費者も目にする機会があった。なぜなら、このJA広報誌は、農業を営んでいるか否かにかかわらず、旧養父郡4町の全戸に配布されているからである。
したがって、一般消費者であっても、これらの記載を読めば、「蛇紋岩米」から「蛇紋岩の土壌で作られた米」を想起することができる。また、米の味にこだわる一般消費者、米の栽培に興味を持つ一般消費者、米の生産・流通業者であれば、当然に想起できることである。
(d)神戸の弁理士により作成された商標調査報告書
地元神戸の弁理士は、請求人からの調査依頼に基づき、登録出願前である平成11年9月3日付の商標調査報告書を作成し、この報告書において、「蛇紋岩米」が「蛇紋岩土壌で栽培された米」の如く、米の品質を表示するものとして認識されており、特許庁審査官においてもその事実を確認した場合は、これを商標出願しても品質表示にすぎず、自他を識別する機能を有しないという理由で登録を拒絶するものと思われる旨を記載している(甲第30号証)。
したがって、少なくとも地元神戸の弁理士の調査によれば、登録出願前の時点で、「蛇紋岩米」が「蛇紋岩土壌で栽培された米」の如く、米の品質を表示するものとして認識されていたという事実がある。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第2号証(枝番を含む。)を提出した。
しかしながら、今回、たじま農業協同組合が、商標「蛇紋岩米」を産地で管理することとなり、株式会社そごうより平成18年4月19日に譲受けている。
上述のように、「蛇紋岩米」は平成8年度より、株式会社そごうとの取引が始まっており、当時の新聞記事にも、「兵庫県内のJAで、地元産のコメに独自の名称をつけ」と記され(乙第1号証の1)、そごうオリジナル「蛇紋岩米」もしくはJAブランド米としての記載がある。(乙第1号証の1ないし3)
また、平成18年6月28日に関西地区5店舗でのイトーヨーカ堂で行った試食販売において、商品「蛇紋岩米」の認知度は5%にも満たない結果となっている。(乙第2号証)。
この事実からも、登録査定時(登録出願時も同様)において、「蛇紋岩米」が普通名称化されていたとはいえないものである。
さらに、一般需要者が「蛇紋岩米」から、「蛇紋岩の土壌でつくられた米」と想起するとは思えない。なぜなら、一般需要者は「蛇紋岩」自体をほとんど知らないため、「蛇紋岩米」という一風変わった商標として捉えるのみである。
請求人が審判請求書の無効事由にも書いているように、蛇紋岩質土壌でつくられた米が千葉県では「蛇紋岩米」ではなく「長狭米」と呼ばれており、この事実からも「蛇紋岩米」が品質表示でないことが立証できる。
甲第1号証及び補足説明のDVDビデオによれば、「蛇紋岩米」(じゃもんがんまい)について、本件商標の登録出願前にテレビ放映され、その映像中に、「蛇紋岩米/.../こしひかり」が付された米袋の映像表示と、その中央部を拡大した映像に「じゃもんがんまい/蛇紋岩米」、「産地 兵庫県養父郡八鹿町朝...」、「産年 9年産」の表示、「一夜一夜」の語が表示されているのれん、「店長/重松 茂さん(29歳)」の表示のある映像写真、「じゃもんがんまい/蛇紋岩米」の説明書き、「兵庫県養父郡(やぶぐん)の土壌は蛇紋岩質でマグネシウムやカリウムを多く含んでいる」の記述及びお釜にはいっているご飯の映像写真の下に「蛇紋岩米 980円」の表示が認められる。
また、2006年(平成18年)5月9日付けのウェブページの打ち出しではあるが、上記「一夜一夜」ののれんの飲食店の料理の品書きとして、同店のサイトに「蛇紋岩米/兵庫県養父郡八鹿町、鉢伏山......霊岩 蛇紋岩、その岩清水は......多量のミネラルを含み、この米を育てています...」と掲載され、さらに、飲食店「一夜一夜」を紹介するサイトに「...看板にする米には兵庫県養父郡の蛇紋岩米を選んだ。」との記述があることも認められる(甲第2号証及び甲第4号証)。
そして、本件商標の登録出願前である「平成5年5月10日/(社)日本油科検定協会/綜合分析センター」の「供試玄米(コシヒカリ)の食味関連成分について」(甲第5号証)及び「昭和50年度/南但馬地区/農地開発事業開発基本計画樹立調査報告書/No.4/蛇紋土壌調査編/近畿農政局」(甲第6号証)においては、「蛇紋岩質土壌」、「栽培土壌」及び「蛇紋土壌」の語は認められるが、「蛇紋岩」と「米」を一体とした「蛇紋岩米」(じゃもんがんまい)そのものは見いだし得ない。
さらに、本件商標の登録出願後である「2005/05/26毎日新聞 地方版」(「日経goo」を用いた新聞記事)の記事には、「...養父市大屋町特産の純米吟醸酒...仙櫻は、同市と山陽盃酒造...が97年から共同で製造。味の良さで知られる有機栽培の蛇紋岩米(じゃもんがんまい)...」との記述のあることが認められる(甲第11号証)。
さらにまた、本件商標の登録出願前である1999年9月3日付けのある特許事務所の「商標調査報告書」中に、「...調査のデータ範囲は平成11年4月出願分までであり、これ以降に『蛇紋岩米』が出願されたとしても検索結果にあがっておりません。『蛇紋岩米』が『蛇紋岩土壌で栽培された米』の如く米の品質を表示するものとして認識されており、特許庁審査官においてもその事実を確認した場合は、これを商標出願しても品質表示にすぎず、自他を識別する機能を有しないという理由で登録を拒絶されるものと思われます。...」との記述が認められるが、この報告書の後段部分には、「しかし、特許庁審査官が上記のような事実を認識せず、これを登録する可能性も残されているやもしれません。...」(甲第30号証)という記述もなされており、この後段部分の「上記のような事実」とはいかなる事実なのか商標調査の検索範囲を考慮したとしても明らかでない。
そして、上記以外の他の甲各号証は、その殆どが作成日不明、あるいは本件商標の登録査定後である2006年(平成18年)5月9日付け又は2006年(平成18年)9月11日付けのウェブページの打ち出しであり、また、本件商標の登録査定前の日付の甲各号証においても、わずかに土壌との関係で「蛇紋岩質土壌」(甲第5号証)、「蛇紋土壌」(甲第6号証)及び「蛇紋岩地帯」(甲第10号証)の用語は用いられているとしても、「蛇紋岩」と「米」が一連一体となった「蛇紋岩米」の語は用いられていない。
一方、乙第1号証の1、乙1号証の2及び 乙第1号証の3よりすると、「蛇紋岩米」は、本件商標の登録査定(平成13年3月28日)前である平成9年9月22日に、被請求人がブランド米として、「株式会社そごう」と専属契約し、販売していたことを推認し得るものであり、この点については、本件商標の商標登録原簿を徴するに、被請求人である「たじま農業協同組合」は、株式会社そごうより、平成18年6月21日に本件商標の商標権を譲り受けていることが認められることからも裏付けられるところである。
以上の甲各号証又は乙各号証を勘案すると、「蛇紋岩」の語は、「岩」あるいはその岩からできた「土壌」として農業関係機関誌等で関係者に知られていたとしても、これら甲各号証によっては、該「蛇紋岩」と「米」が一体となった「蛇紋岩米」の語が、「蛇紋岩質土壌で作られた米」を指称する名称として、本件商標の登録査定前より、本件商標の指定商品の取引者、需要者に知られていたとは認めるに足りないものといわざるを得ず、むしろ「蛇紋岩米」の文字全体をもって被請求人の創造にかかる造語よりなる商標というのが相当であるから、本件商標「蛇紋岩米」は、登録査定時点において、商品「米」の品質又は普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標ではなく、また、商品「米」について慣用されている商標でもなく、さらに、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標ともいえないものである。また、本件商標「蛇紋岩米」が、登録査定時点において、商品「米」の品質、すなわち「蛇紋岩質土壌で作られた米」であるということを将来的に取引者、需要者に認識される可能性があり、特定人に独占使用をも認めることが公益上適当でないともいえなかったというのが相当である。
さらに、本件商標は、の登録査定時点において、上記のとおり、「蛇紋岩米」の文字全体をもって被請求人の創造にかかる造語よりなる商標というのが相当であるから、商品の質の誤認を生ずるおそれのある商標とはいえないものである。
よって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同第1号、同第2号及び同第6号並びに商標法第4条第1項第16号のいずれにも該当しなかったというべきである。
前記1を総合すると、本件商標「蛇紋岩米」については、その商標登録がなされた後においても、その指定商品である商品「米」の取引者、需要者のほとんどが「蛇紋岩米」の文字全体をもって、被請求人の販売に係る商品か、若しくは被請求人と何らかの関係を有する者に係わる「米」を表示する商標として知られているというのが相当であるから、本件商標に接した取引者、需要者が「蛇紋岩質土壌で作られた米」であると誤解して、その品質を誤認するとはいえないものであり、本件商標がその商標登録がなされた後において商標法第4条第1項第16号に該当しているとする請求人の主張は、理由がないというべきである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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