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Trademark Appeal Case

商標の構成要素欠落と同一性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第30787号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第934892号商標(以下、「本件商標」という。)は、別紙に示すとおりの構成よりなり、第11類(平成3年政令第299号による改正前の商品区分。以下「旧第○○類」という。)「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品として、昭和44年1月20日に登録出願、同46年10月30日に設定登録、その後、2回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされ、指定商品については、その中の「電気材料」について一部取消審決が平成3年9月27日に確定し、その取消しの登録が同3年11月27日に、また、指定商品中の「電線、ケーブル(光ファイバー・光ファイバーケーブルを含む。)」について一部取消審決が平成6年8月10日に確定し、その取消しの登録が平成6年10月25日にそれぞれなされているもので、現に有効に存続しているものである。

2 本件審判請求の趣旨等

2−1 請求人は、商標法第50条の規定により、本件商標の登録に係る指定商品中「民生用電気機械器具、電気通信機械器具、電子管、半導体素子、電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。)」について取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めている。

2−2 請求人の主張

被請求人は、本件商標を継続して3年以上、その指定商品中、前記商品に使用していない、また、商標登録原簿上には、本件商標に専用使用権又は通常使用権が設定、許諾されている事実も見当たらない旨主張し、証拠方法として甲第1号証及び同第2号証を提出している。

2−3 答弁に対する弁駁

(1) 通常使用権者である「富士電機株式会社」(以下「通常使用権者」という。)によって使用されているとされる商標(以下「本件使用商標」という。)は、本件商標と「類似する商標」には該当するかもしれないが「登録商標」でないこと明らかである。

商標法第50条中の「登録商標」が「願書に記載した商標」(商標法第27条第1項)又は「願書に添付した書面に記載された商標」(平成8年法律第68号による改正前の商標法(以下「旧商標法」という。)第27条第1項)と物理的に同一である必要はないにしても、文字及び図形を構成要素とする商標からその一方を除いてしまうことが、商標の同一性に影響しないというが如き主張には承服することができない。商標法第50条の審判の趣旨が不使用商標を整理し第三者へ商標採択の機会を与えるという点にある以上、同じ称呼が生じるとの一事を以て同一性の要件を緩和することはできない。

また、商標法第50条第1項は新たに登録商標の同一性につき自ら一定の基準を示している。ここに列挙された▲1▼書体変更、▲2▼文字種変更、及び▲3▼図形外観変更の各変更原因はいずれも「社会通念上同一と認められる商標」の例示であり、且つ、前記▲2▼については従来よりも同一性の要件をより拡大していると目されるところ、少なくとも、文字、図形、記号及び立体的形状(第2条第1項)のいずれかが原商標の態様から「欠落」してしまう場合が商標法上規定されていないことは明らかである。

よって先ず、被請求人が本件商標の使用を証明していないことは明らかであるから、答弁は理由がない。

(2) 次に、被請求人が本件商標を使用しているとする「オープン統合化制御システム」(以下、「本件使用商品」という。)につき検討する。

被請求人は「オープン統合化制御システム」、すなわち本件使用商品が電気通信機械器具に属する旨主張する。

乙第3号証及び同第4号証を見るに、本件使用商品は、その名の通り「使用目的・使用対象を限定されない開放型の統合制御コンピュ−タ群」とでも目すべきものであるから、電気通信機械器具ではなく「電子応用機械器具」に属する商品として把握すべきである。

被請求人は、カタログ(乙第3号証及び同第4号証)の「業務アプリケーション例」の欄を摘示し、本件使用商品は「鉄鋼・化学・石油・食品・ゴミ処理・ガス・セメント・ボイラなどの制御システム」、「遠隔監視システム」、「回転機械保安システム」、「自動音声表示出力システム」であるとするも、かかるカタログ上の記載は本件使用商品が遠隔操作「し得る」ということを示しているにすぎないのであるから、本件商標が「遠隔測定制御機械器具」自体の識別をするための標識として既に使用されていることを証明するものではない。その意味で本件使用商品は、使用する者の意図によって遠隔測定制御機械器具になったりならなかったりする玉虫色の制御装置と解するのが相当であるが、本件使用商品の中核を成す具体的な商品がコンピュータであって、且つ、本件商標によって表彰されている具体的商品もこれを個々に見ればコンピュ−タであると目される以上、本件使用商品をもって電気通信機械器具であるとすることはできない。

次に、「FOCUS」の商標の下で紹介されている商品群を検討する。前記カタログ第3頁には本件使用商品の仕様が構成概念図とともに示されているが、カタログの全内容を仔細に見ても、コントロ−ルステーション又はプログラマブルコントローラよりも下層に位置する機器、例えば分散型PIO IPUと名付けられた単なるインターフェースとおぼしき器具又は音声出力モジュール等を本件使用商品の必須要素と考えることはできない。よって、該システムは、▲1▼オペレーターステーションと称される汎用パーソナルコンピュ−タ、▲2▼コントロ−ルステーションICS−2000、▲3▼プログラマブルコントローラMICREX−Fの三つの商品要素から成る「コンピュータシステム」と目するべきなのであって、「電気通信機械器具」ではない。本件使用商品は、これを用いてプラント監視等を行った場合に「機能上、電気通信機械器具のように見える」というにすぎず、その実質は電子応用機械器具なのである。

(3) 他方、前記カタログ上に現れている個別の商品群が「通信機器」としての要素を有しているが故、仮に「遠隔測定制御機械器具」と認め得るにしても、本件商標により表彰されている対象物が当該商品群なのであるか否かは未だ判然としないというべきである。けだし、その個々の商品と本件商標との関係が明確に認識できる箇所はないため本件商標はシステムの総称としてのみ理解され得るところ、これが商品の標識なのか、又はシステムを構築するという役務をも表彰しているのか、更には、当該システム内で使用されるソフトウェアを表彰しているのかという点については極めて曖昧というほかないからである。

よって、被請求人の提出した乙第3号証及び同第4号証では、いずれにしても商標法所定の挙証義務が履行されていないと解するのが相当である。

3 被請求人の答弁

3−1 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を下記の通り述べ、証拠方法として乙第1号証乃至同第9号証を提出している。

3−2 答弁の理由1

本件審判請求の登録前3年以内に、日本国内において通常使用権者が取消請求に係る指定商品について本件商標を使用しているので、取消事由には該当せず、本件審判請求は成り立たない。

(1) 通常使用権者の予告登録前3年の使用

本件審判は、平成10年8月7日に請求された不使用取消審判であり、予告登録(平成10年9月9日)の3年前の平成7年9月9日以降、通常使用権者が本件商標を使用している事実が存在するのでその取消しを免れることができる。

本件商標権者である扶桑電機工業株式会社は、神奈川県川崎市川崎区田辺新田1番1号所在の富士電機株式会社との間で、平成8年7月1日に、前記本件商標に関し、通常使用権を許諾する商標使用許諾契約書を交わした(乙第1号証)。

本件商標は、やや図案化したアルファベット大文字「FOCUS」とそれを囲うような「円」との組み合わせからなる(乙第6号証)。

通常使用権者は、1996年(平成8年)7月20日に、「オープン統合化制御システム」に関するカタログ(乙第3号証)を印刷し、顧客に配布した。また、1997年(平成9年)1月20日にも、製品の一部改良に伴い内容の一部を変更したカタログ(乙第4号証)を印刷し、顧客に配布した。さらに、1998年(平成10年)6月5日にも、製品の一部改良に伴い内容の一部を変更したカタログ(乙第5号証)を印刷し、顧客に配布した。

これらのカタログには、本件使用商品「オープン統合化制御システム」を表す商標として、アルファベット大文字を横一連に配置した「FOCUS」が複数箇所に用いられている。

本件商標に見られるような「円」はないが、一般的に、文字と図形の結合商標については、文字が要部となりやすいこと、本件商標の「円」は、極めて簡単で、ありふれた形状であること、本件商標の場合アルファベット大文字「FOCUS」だけの使用であっても、商標としての本質的機能を損なうことはないことなど、本件商標と前記カタログ記載の「FOCUS」とは、取引社会の通念上同一性を有し、登録商標の使用と認められる範囲内であることは明白である。

(2) 指定商品

本件使用商品は、パソコン、システムLAN装置、コントローラ、データ通信装置などからなり、使用例としては、カタログの第10頁「業務アプリケーション例」に記載の通り、鉄鋼・化学・石油・食品・ゴミ処理・ガス・セメント・ボイラなどの制御システム、遠隔監視システム、回転機械保安システム、自動音声表示出力システムであり、これらは、第11類「電気通信機械器具」の「遠隔測定制御機械器具」に相当することは明らかである。

3−3 答弁の理由2

(1) 登録商標の使用について

▲1▼ 本件商標と本件使用商標を比較すると、アルファベット大文字の「FOCUS」を共通にすると共に「フォーカス」という同一の称呼が生じ、図形「円」の有無に差異が認められるに過ぎない。文字と図形を結合した商標では文字部分から強い自他商品識別標識としての機能が生じること、差異部分の図形「円」が極めて簡単かつありふれた形状であって自他商品識別標識としての機能に影響を与えるものではないことを考慮すると、本件使用商標が本件商標と社会通念上同一性のある商標であることは明らかである。

▲2▼ 旧商標法の審査基準によれば、登録商標の使用と認められる商標の事例の一つとして、アルファベット大文字「NISSAN」とそれの背景をなすような図形「円」とを組み合わせた登録商標と、この登録商標から図形「円」を除いた白抜きのアルファベット大文字「NISSAN」の使用商標とが示されている(乙第7号証)。

▲3▼ さらに、商標法では新たに不使用取消審判制度を改善し、その第50条第1項において、書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標等その他の当該商標と社会通念上同一と認められる商標の使用も登録商標の使用と認めることを明文化し、登録商標の使用と認める範囲を拡大した。

▲4▼ したがって、本件使用商標が本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当し、本件使用商標の使用が本件商標の使用に相当することは明らかである。

(2)指定商品について

▲1▼ 請求人は、本件商標の本件使用商品は、電気通信機械器具ではなく「電子応用機械器具」に属する商品である旨、本件使用商品は、これを用いてプラント監視等を行った場合に、「機能上、電気通信機械器具のように見える」というにすぎず、その実質は電子応用機械器具である旨主張している。

しかしながら、本件使用商品が旧第11類の「電気通信機械器具」に含まれることは明らかである。

▲2▼ 電子の作用を応用して情報やデータを通信する機能を本質的な役割としている機械器具は旧第11類の「電気通信機械器具」の概念に含まれる。「電気通信機械器具」の概念の下には「遠隔測定制御機械器具」が例示されている。

▲3▼ 本件使用商品は、オープンな統合化制御システムであり、これは、カタログ1、2、3の3、4頁に「システムコンフィグレーション(システム構成)」として明示されているように、オペレーターステーション、EI統合コントロ−ルステーションの基本機器に加え、プログラマブルコントローラ、各種ローカル機器、遠方監視機器など種々な機器を統合したシステムである。

「統合化制御システム」は、カタログ1では、オペレーターステーションがLANによってワークステーション、パソコン及び複数のEI統合コントロールステーションに結合されると共に、リンクによってデータ通信装置及びプログラマブルコントローラに結合され、各EI統合コントロ−ルステーションとプログラマブルコントローラはリンクによって各種ローカル機器に結合され、データ通信装置は公衆回線によって遠方監視のためのデータ通信装置、プログラマブルコントローラに結合されている。

前述のLANは限られた地域内で情報又はデータを通信するために各機器間を結合する高速ネットワークを表し、前述のリンクは通信回線による各機器間の結合を表すので、「統合化制御システム」は「通信的」要素が必要であり、コンピュータを利用した電気通信機械システムに該当し、旧第11類の「電気通信機械器具」に含まれることは明らかである。

▲4▼ さらに、カタログ1、2、3の10頁には「業務アプリケーション例」が記載され、この「業務アプリケーション例」には、共通の機能として「各種プラントの制御及び安定操業に必要な監視帳票、トレンド記録、警報管理、オペガイダンスおよび上位伝送」が記載され、具体的には鉄鋼・化学・石油・食品・ゴミ処理・ガス・セメント・ボイラなどの制御システム、遠隔監視システム、回転機械保安管理システム、自動音声表示出力システム等が記載されている。これらのシステムはコンピュ−タを利用した遠隔監視制御システム又はこれに類似した電気通信制御システムに該当し、旧第11類「電気通信機械器具」の下位概念の「遠隔測定制御機械器具」又はこれに類似した電気通信機械器具に含まれることは明らかである。

4 当審の判断

被請求人が提出した乙第1号証「商標使用許諾契約書」並びに同第3号証、同第4号証及び同第5号証に係る「オープン統合化制御システム」に係るカタログによれば、被請求人により本件商標について使用許諾を受けた通常使用権者が、本件使用商標「FOCUS」を、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、本件使用商品「オープン統合化制御システム」について使用していた事実を認め得るところである。

しかして、本件使用商標「FOCUS」は、別紙に示すとおりの構成よりなる本件商標と社会通念上同一の商標と認め得るものである。

この点に関し、請求人は本件商標の使用とは認められない旨主張する。しかしながら、確かに本件使用商標には円輪郭はないが、本件商標及び本件使用商標の自他商品識別機能を果たす部分は共に「FOCUS」の文字にあり、両者は、称呼、観念を同じくして自他商品識別標識として同一の機能を果たすと認められるものである。

したがって、請求人の主張は採用することができない。

また、本件使用商品「オープン統合化制御システム」は、その使用例としては、鉄鋼・化学・石油・食品・ゴミ処理・ガス・セメント・ボイラなどの制御システム、遠隔監視システム、回転機械保安管理システム、自動音声表示出力システム等であると認められ、中でも、「通信回線利用による遠隔監視システム」は、その機能からみて本件商標の指定商品中の「電気通信機械器具」の範疇に属する「遠隔測定制御機械器具」に該当する商品とみるのが相当である。

したがって、本件商標の指定商品中請求に係る商品についての登録は、商標法第50条の規定により取り消すべき限りでない。

よって、結論のとおり審決する。

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