Trademark Appeal Case
著名商標と結合商標の混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2005−15699(T2005−15699/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「麒麟獅子」の文字を標準文字により表してなり、第33類「日本酒」を指定商品として、平成16年8月16日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定において、本願商標は、以下(1)及び(2)に該当する旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。
(1)本願商標は、「麒麟獅子」の文字を書してなるところ、その構成中の「麒麟」(以下「引用商標」という。)の文字は、東京都中央区新川2丁目所在の麒麟麦酒株式会社が商品「ビール」等に使用して著名な商標と認められる「KIRIN」「麒麟」「キリン」と同一又は類似するものであるから、これを出願人が「ビール」等と販売場所、取引系統等を共通にすることの多い本願指定商品に使用するときは、これが恰も前記会社の製造販売に係り、あるいはこれと何等かの関係がある者の業務に係る商品であるかの如く商品の出所について混同を生じさせるおそれがあると認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)本願商標は、「キリン」の文字を横書きした登録第635677号商標、「麒麟」の文字を横書きした登録第635678号商標及び「KIRIN」の文字を横書きした登録第2030862号商標と商標が同一又は類似であって、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 当審の判断
(1)「麒麟」の文字の著名性について
原審において引用された「麒麟麦酒株式会社」(東京都中央区新川2丁目所在)は、我が国の三大ビール会社の一であり、平成16年12月2日付け提出の「刊行物提出書」、新聞記事等の情報、「麒麟麦酒株式会社」のホームページ及びその宣伝広告活動等から、同社は、本願商標の登録出願前から、商品「ビール」等に、「麒麟」の図形商標、「KIRIN」、「キリン」及び「麒麟」の文字商標を永年の間使用してきたことが認められる。そして、会社設立以来、約1世紀に亘り、その商号の変更がなされず、空想動物の麒麟の図形を商標として使用してきたものである。さらに、「麒麟」の文字は、「麒麟麦酒株式会社」の社名の要部を表すものとして永年に亘り使用され、かつ、同社が販売する「ビール」等を表示する標章として、我が国の取引者、需要者の間において広く知られ認識されてきたものであると認められる。
そうすると、「麒麟麦酒株式会社」、「麒麟」の図形商標、「KIRIN」及び「キリン」の文字商標の周知・著名性からすれば、「麒麟」の文字は、これに接する需要者等が、容易に同社の事業を表彰する標章として想起し、理解するものであるというのが相当である。
(2)商品の出所の混同のおそれについて
本願商標は、前記1に示すとおり、「麒麟獅子」の文字を書してなり、鳥取県指定の「無形民族文化財」に認定されている獅子舞踊り、又は、その舞いに使用する被り物として、鳥取県東部地方及びその周辺における一部の地域で認識されていることは認められるが、本願の指定商品の取引者、需要者はもとより、我が国において、該文字全体として前記意味合いを有するものとして、一般に広く認識されているとまでいい得る特段の実情は認め得ないところである。
そうとすれば、構成中に「麒麟麦酒株式会社」の著名な商標「麒麟」と同一の文字を有する「麒麟獅子」の文字に接する取引者、需要者は、その語頭に位置する「麒麟」の文字部分より同社の事業を表彰する、前記商標を容易に連想、想起するものであり、その構成中の「麒麟」の文字に着目する場合が少なくないとみるのが相当である。
そして、本願の指定商品「日本酒」と、同社の主な業務に係る商品「ビール」とは、必ずしも生産者、製造者を同一にするものではないが、いずれも酒類として流通、販売されるものであって、極めて密接な関連性を有しており、両商品の販売場所、販売店あるいは取引者、需要者等の相当部分が共通しているあるいは近似性を有する商品といえる。そして、殊にその需要者は、特別な専門的知識経験を有しない一般消費者であって、これらを購入するに際して払われる注意はさほど緻密なものではないと考えられ、商品に対する印象、記憶、連想等が購入時に少なからず作用するということができる。
してみれば、「麒麟」の文字は「麒麟麦酒株式会社」の事業を表彰するものと容易に認識される周知・著名な商標であること、同社が多角経営を進めてきていること、及び、今後、さらなる、多角経営並びに海外進出が見込まれること等をも併せ考慮すれば、本願商標に接する取引者、需要者は、その構成中に「麒麟」の文字を有する「麒麟獅子」の文字から、直ちに引用商標を連想、想起し、該商品が前記会社若しくは同社と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の取り扱いに係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
なお、請求人(出願人)は、因幡地方における独特の獅子舞い等の意味を有し、全体として纏まった特別の観念を有する成語である本願商標「麒麟獅子」と、中国の架空の幻獣で一本角を有する引用商標「麒麟」は、互いに全く類似性のない観念を有する語であるから、「KIRIN」「麒麟」「キリン」が如何に麒麟麦酒株式会社が商品「ビール」等に使用して、著名な商標であるとしても、該「麒麟」の文字が本願商標に含まれるというだけでは、決して互いに紛れることはなく、需要者が本願商標を付した商品「日本酒」に市場で接しても、これを「日本酒」とは非類似の「ビール」を主要製品として営業する麒麟麦酒株式会社と何らかの関係のある商品と誤認、混同することはあり得ない。また、構成中に「麒麟」の文字を含み、指定商品を「日本酒」とする登録例が多数有り、これらの清酒が「麒麟麦酒株式会社」とは何ら関係のない会社の製品であるものとして、酒類の取引者、需要者に認められている旨、主張する。
しかしながら、本願商標を構成する「麒麟獅子」の文字が、地方芸能を表す語として使用されているとしても、我が国及び本願指定商品の取引者、需要者間において広く一般に親しまれたものとして認識されているとはいい難いところである。
そして、その構成は、「麒麟」の文字と「獅子」の文字とを結合したものと理解されるものであり、その全体より特定の意味合いを有する成語として、一般に、認識されているとも認められず、他に、これを、常に不可分一体のものとしてのみ把握すべき特段の理由があるものとは認め難いものである。また、「麒麟獅子」の文字からなる本願商標に接する取引者、需要者は、その構成中の「麒麟麦酒株式会社」の周知、著名な商標として我が国において広く認識されていると認められる「麒麟」の文字部分に着目し取引に当たる場合のある商標であること、上記のとおりであるから、前記、請求人(出願人)の主張は、採用することができない。
(3)まとめ
したがって、他の条項について判断するまでもなく、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は妥当であり、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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