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Trademark Appeal Case

図形の類似性と周知性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成9年審判第16475号
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第2470834号商標の登録を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

1.本件登録商標

本件登録第2470834号商標(以下「本件商標」という。)は、別紙に表示したとおりの構成よりなり、平成1年4月21日登録出願、第24類「録音済みテープ、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成4年10月30日に設定登録されたものである。

2.請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。)を提出している。

(1)請求の理由

本件商標は、商標法第4条第1項第6号、同第7号及び同第15号の規定に該当し、同法第46条の規定により無効にされるべきものである。

▲1▼本件商標は、財団法人日本体育協会を表象するシンボルマーク(以下「引用標章」という。態様は別紙に表示。)と酷似するものである。

▲2▼請求人は、日本アマチュアスポーツ界の統一組織として国内国外の体育スポーツ事業を行い、スポーツを通じて国民の体育文化の向上を図ることを目的とする財団法人であり、明治44年に大日本体育協会の名称で創立され、昭和21年に現在の「財団法人日本体育協会」となった。

▲3▼引用標章の周知・著名性について

引用標章は、昭和49年(1974年)に制定され(甲第4号証)、以降、請求人の実施する各事業に明示されており、様々な機会に公衆の目に触れていて、日本中で周知・著名になっている。

例えば、請求人の発行する雑誌「体協時報」は、スポーツに関連する全国の各団体・学校・役場その他で購入され、閲覧されるが、これには必ず引用標章が表示されている。

請求人が文部省の委嘱を受けて行っている、社会体育指導者の審査・証明事業のスポーツ指導者認定証に引用標章が印刷されている(甲第7号証)。

請求人と株式会社時事通信社の共同事業として昭和59年6月から発行されている「体協スポーツニュース」は、必ず引用標章が表示され、全国各地の公立の小・中・高等学校、役場・市役所、体育館、銀行等々の掲示板に掲示されている。

▲4▼本件商標は、公益団体と認められる請求人の事業の周知・著名なシンボルマークである引用標章と酷似するものであり、引用標章の周知・著名性が本件商標の出願時より前に確立されていたことは明白であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第6号に該当する。

▲5▼引用標章とこれほど酷似したマークが引用標章の存在を知らずに偶然採択されたとは信じ難い。引用標章の公益性の高いイメージに“ただ乗り”しょうとした意図が見受けられ、請求人の立場からしても、このような商標が登録され使用されることを黙認することはできない。また、引用標章の創作者の著作権を侵害するものと理解される。本件商標は公の秩序に反するから、商標法第4条第1項第7号に該当する。

▲6▼請求人は、スポーツ振興事業をより一般に促進するためにスポーツ振興事業に関連する情報の提供や競技者向け、一般向けの運動用具の開発・販売促進、その他を有償で行っている。

したがって、「運動用具」や「(情報を記録した)録音済みテープ・ディスク」などの指定商品を含む本件商標が、その指定商品に使用されて流通したとするならば、深刻な混同が懸念される。その意味から、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(2)弁駁の内容

▲1▼被請求人の主張によれば、本件商標は引用標章とは異なるイメージを想起させるものであるとのことで、本件商標から生ずるイメージについて、6種もの異なるイメージを述べている。しかしながら、特定の図形があるイメージを想起させる、少なくも派生させる、という為には、その図形に接した公衆が少なくも7・8割以上の確率で”当該特定のイメージ”を想起する、といったかなり具体的事実、少なくも客観的観察の結果としての裏付けが必要である。被請求人の主張される本件商標のイメージなるものの描写の中に、本件商標を構成する図形から当然に想起される特定のイメージというものは、何ら述べられていないと考える。

本件商標から当然に想起される具体的な特定のイメージというものは、上記の通り存在しないから、想起されるイメージ(観念)の相違という論に至る前提条件が存在しない。

(3)被請求人は、引用標章を回転させて使用する等ということは有り得ないと述べているが、請求人は、勿論、自己の商標(引用標章)を回転させて使用する、といったことは考えていないし、そのようなことをしたこともない。しかし、本件商標は我が国において著名であり多分に公的な色彩も帯びた引用標章(請求人のシンポルマーク)と図形としてほぼ同一であるから、本件商標が回転されて、あるいは位置を違えて見られたら、正に彼我商標は混同される蓋然性が高い。そして、敏速を尊ぶ取引社会において、例えば本件商標が「テープ、CD」等に付されて販売されれば、売り場に置かれた状態で消費者が360度の方向から商品を眺めることは十分に有り得ることであり、一寸違う角度から本件商標が消費者の目にとまることは極めて容易に想定される。上述の次第で、取引社会において本件商標また引用標章が多少異なった角度から視覚的に捉えられることは十分に可能であり、そのような場合に、彼我商標の混同・誤認の危険性の度合いは極めて高いというべきである。

3,被請求人の主張

被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べている。なお、請求人の平成10年7月29日付審判証拠差し出し書に対して、答弁書差し出しの機会を与えたが、被請求人は、答弁していない。

(1)両者の構成及び呈する印象

本件商標は、黒色のほゞ椀形状の2個の肩部を、「左右対称」にやや外方に傾斜して配し、その中に黒色の「複数本の直線を放射状に均等に配して」構成されている。そして、この構成を有することにより、本件商標からは、

▲1▼「白い頂きを有する富士山」の印象

▲2▼「くす玉が割れた状態」の印象

▲3▼「放射状に下放された状態」の印象

▲4▼「物が下方にこぼれ落ちる状態」の印象

▲5▼「左右対称な図形」の印象

▲6▼「黒色」の印象

等の顕著かつ具体的な印象を呈している。

一方、引用標章は、その制作の意図が「のぼる太陽のイメージを基調にして、若いスポーツマンの結集した力が、より高く、たくましく伸びていくさまをシンボライズした。色彩については、若々しい体力と情熱を、ストレートに赤一色で表現してみた。(甲第4号証)」と述べられているように、赤色の複数本の「直線部」が右斜め「上方に拡散上昇」する構成・態様を有している。

この構成及び制作の意図より、引用標章からは、

▲1▼「太陽がまさに地平線又は山の頂から昇ろうとしている状態」の印象

▲2▼「御来光が射し始めた状態」の印象

▲6▼「朝日」、「旭日」、「旭日旗」又は「旭日章」等の印象

▲4▼「斜め上方に拡散し、伸びていくが如く、放射状に上放れ」の印象

▲5▼「左右非対称な図形」の印象

▲6▼「赤色」の印象

等の顕著かつ具体的な印象を呈している。

(2)両者の差異

本件商標と引用標章の比較

本件商標と引用標章とは、上記のようにその構成・態様が全く相違するため、そこから受けるイメージ、印象も全く異なるものである。すなわち、本件商標は、上記の▲1▼乃至▲6▼の印象を容易に呈するのに対して、引用標章は、このような印象を一切呈しない、顕著な違いが認められ、両者は、外観、観念(特定の称呼は生ぜず)において相互に非類似である。

(3)請求人の主張に対する反論

(イ)不自然な使用による類似性

請求人は、引用標章を回転させれば、若しくは違う位置から見れば、本件商標と引用標章が外観上同一の商標と見受けられることには、疑義を挟む余地がない、と主張する。

しかし、請求人のこの主張は、引用標章、すなわち、請求人のシンボルマークを、全面的に否定するものと思料される。引用標章は、前記の制作の意図があり、「回転させ」あるいは「違う位置から見」た場合には、それは、もはや、請求人のシンボルマークとはいえないのであり、それはまさしく、本件商標なのである。

加えて、扇の要の位置を合致させるために、すなわち、他人の商標と類似させるために、引用標章を「回転させて使用する」ことは、あり得ない。また、独立した構成・態様を有する商標を、敢えて「違う位置から見る」必要性はなく取引社会において、そのようなことは、およそあり得ない。

更に、簡易迅速を尊ぶ、通常の商取引において、商品に付された商標を、わざわざ無理に引っ繰り返したり、回転させたりする等という不自然なことを、敢えてする必要性はないものと思料され、同時に「違う位置から見る」必然性もないものと思料される。

本件商標も引用標章もそのままの状態で使用されるのであり、他人の商標に無理に似させるために、意図的に「回転させ」たり、「違う位置から見」たりすることは、およそ商取引の社会において、考えられないことである。

(ロ)引用標章の周知・著名性

請求人は、引用標章が周知・著名である旨主張される。しかし、著名性に関する証明は、一切なされていない。仮に、著名性に関する証拠の提出がなされていたとしても、本件商標と引用標章とは、前記した如くその構成・態様が非類似であるので、本件商標は、商標法第4条第1項第6号に該当しない。

(ハ)商標法第4条第1項第7号の該当性

本件商標と引用標章とは、前記した如くその構成・態様が全く非類似であるので、”ただ乗り”の意図は見受けられず、また、著作権の侵害はないものと容易に理解され、いわんや、公の秩序に反しないことは自明である。

(ニ)商標法第4条第1項第15号の該当性

本件商標と引用標章とは、前記した如くその構成・態様が非類似であるので、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

4.当審の判断

(1)請求の理由及び甲第1号証ないし甲第3号証によれば、請求人である財団法人日本体育協会は、国内国外の体育スポーツ事業を行い、国民の体育文化の向上を図ることを目的とする財団法人であることが認められる。

(2)本件商標と引用標章の類似性

▲1▼本件商標は、別紙の構成のとおり、真円状の外周の内側に、その頂点部分から下方へ外周に向かって幅が広くなる黒塗りの7本の線を左右に約60度展開する扇状に描き、扇状部分の両外側に扇状部分と外周部分に囲まれた部分を黒塗りに描いてなるものである。なお、扇部分の黒塗りの線は、扇の要部分に白抜き部分を残し、扇のやや内側部分から描いてなるものである。

▲2▼引用標章は、別紙の構成のとおり、真円状の外周の内側に、その真下よりやや左上外周部分から対角線方向に外周に向かって幅が広くなる黒塗りの7本の線を左右に約60度展開する扇状に描き、扇状部分の両外側に扇状部分と外周部分に囲まれた部分を黒塗りに描いてなるものである。なお、扇の要部分は、7本の線が集中し、黒く描かれてなるものである。

▲3▼そうとすると、本件商標と引用標章は、扇状部分の向き及び扇の要部分の形状に差異を有しているものであるが、全体としては、真円上の一点を扇の要とし、そこから扇状に外側に向かって幅が広くなる7本の線を左右に約60度展開する扇状に描き、扇状部分の両外側に扇状部分と外周部分に囲まれた部分を黒塗りに描いてなる点において構成の軌を一にするものであり、いずれも特定の事物、事象を表現したものとも認められないから、これらは一定の観念、称呼をもって取り引きされるとは認めがたいものである。さらに、両者は、該形象よりなるものと強く印象づけられるものであるから、実際の商取引上においては、この種図形よりなる商標の向きの相違は、比較的看過されやすいといえることと相俟って、時と所を異にし、離隔的に観察するときは、外観上、彼此相紛れるおそれがあるものといわざるを得ない。

(3)次に引用標章の著名性について判断するに、甲第4号証によれば、引用標章は、昭和49年に請求人のシンボルマークとして制定されたことが認められる。

甲第7号証によれば、引用標章は、社会体育指導者の知識・技能審査事業の認定証に印刷されていることが認められる。

甲第8号証ないし甲第10号証によれば、昭和59年6月から、引用標章を付した体協スポーツニュース(1セット4枚)が月3回、年間約161万セット発行され、全国の公立小学校・中学校・高等学校、公立体育館・公民館・婦人会館・教育委員会等に配布されていることが認められる。そして、甲第8号証には、「閲覧率95.6%」「掲示率87.6%」の記載があり、該ニュースが日本人の体力向上、学校教育、健全な社会環境の形成に役立つことを趣旨として、編集されていること及び教育委員会を通じて配布されていることよりすれば、前記の閲覧率、掲示率は、ほぼ事実に近いものであると推認されるものである。

以上の事実よりすると、前記の公共の施設の利用者の多くが該ニュースを閲覧し、該ニュースに付されている引用標章も目にしているものといえるから、引用標章は、本件商標の登録査定時である平成4年頃には、請求人又は請求人の事業のシンボルマークとして、著名なものとなるに至っているものというのが相当である。

(4)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第6号に違反して登録がなされたものであるから、他の請求理由について判断するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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