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Trademark Appeal Case

周知商標と結合商標の類似性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年審判第35095号
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4098554号商標の登録を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

登録第4098554号商標は、「NARD BIO」の欧文字を横書きしてなり、第3類「化粧品」を指定商品として平成8年3月12日登録出願、同9年12月26日に登録されたものである。

2 請求の趣旨及び理由

(1)請求人は、結論同旨の審決を求め、以下にその理由を述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第15号証を提出している。

(2)無効事由の要旨 本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであり、したがって、本件商標の登録は商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効にすべきものである。

(3)無効原因 請求人は、いずれも本件商標よりも先願である、次の登録商標を有している(甲第3号証乃至同第6号証参照1)。

▲1▼ 登録第525562号商標(以下、「引用商標A」という。)は、「BIO」及び「ビオ」の文字を二段に横書きしてなり、商品の区分第3類(大正10年法)「香料及び他頬に属しない化粧品」を指定商品として、昭和32年8月31日登録出願、同33年8月16日に登録されたもので、現に有効に存続するものである。

登録第687787号商標(以下、「引用商標B」という。)は、「BIO」の文字を横書きしてなり、商品の区分第4類(昭和34年法)「化粧品および香料類(但し薫料を除く)」を指定商品として、昭和35年6月6日登録出願、同40年10月20日に登録されたもので、現に有効に存続するものである。

▲2▼ 本件商標と引用各商標との外観の対比

本件商標と引用商標Aは、いずれも「BIO」の文字列からなる構成部分を有する点において一致しているが、引用商標Aが「BIO」の部分以外に「ビオ」の文字列からなる部分を有するのに対し、本件商標は「BIO」の部分以外に「NARD」の文字列からなる部分を有する点において、外観上一応相違する。

次に、本件商標と引用商標Bは、引用商標Bが「BIO」のみからなる構成であるのに対し、本件商標は「BIO」の部分の外に「NARD」の部分を有する点において、外観上一応相違する。

▲3▼ 「NARD」なる文字列について

「NARD」なる文字列は、植物の「甘松」又は古代人が珍重した「甘松油」を意味する語として、英和大辞典(甲第12号証)及び仏和大辞典(甲第13号証)に収録されているが、甲第9号証の東京地裁判決でも認定されているように、「NARD」は我が国においては馴染みの薄い語であり、その称呼も、英語においては「ナード」、フランス語においては「ナール」、さらに、いわゆる逐字的なローマ字読みでは「ナルド」であって、一義的な称呼は生じ難い。

▲4▼ 「BIO」商標について

引用商標A及び同Bの構成要素であり、かつ、本件商標の構成に含まれている「BIO」は、次に述べるとおり、請求人の販売に係る商品(化粧品)を表示し、「ビオ」なる称呼を生じる商標として、広く知られたものである。

すなわち、請求人は、引用商標Aの出願の翌年である昭和34年頃から、商標「BIO」を付した商品(化粧品)の販売を開始しており(甲第7号証)、昭和35年9月に発行された請求人の広報誌「QUEEN」には、その商品の写真が掲載され(甲第7号証)、その頃発売された商品の当時の販売価格が記載され、また、「BIO」商標を付した商品の昭和36年及び同37年における生産量(但し、後に閉鎖された大井工場のみの生産量)が記載されている(甲第8号証)。

その後も、請求人は「BIO」商標を付した化粧品の販売を行っている(甲第8号証)。平成2年に編集されて同4年に発行された甲第8号証には、同2年以降の販売経過が記載されていないが、昭和62年度乃至平成8年度の請求人発行の商品カタログに示されているとおり、その後も、「BIO」商品の販売がなされていたことは明らかであり、昭和59年以来、数種類の女性向け週刊誌(いずれも発行部数は数十万部)に、それぞれ毎年20回程の「BIO」商品の広告をするとしていたこと、並びに昭和62年から本件商標が登録出願された平成8年に至るまでの10年間においては、毎年、約200万個乃至約700万個にのぼる「BIO」商品が販売されていたことが明らかである(甲第7号証)。

上記のような広告、販売活動の結果、本件商標が登録出願された平成8年3月12日現在においては、「BIO」商標は、「ビオ」なる称呼の下に、請求人の販売に係る化粧品を表示するものとして、化粧品の取引者、需要者の間で広く認識されていたことが明らかであり、東京地裁判決及び東京高裁判決においても、この事実が認定されている(甲第9号証及び同第10号証)。

▲5▼ 本件商標と引用商標A及び同Bとの類似性

上記のとおり、引用商標Aの構成部分であり、かつ、引用商標Bの構成そのものである「BIO」が、本件商標の登録出願時である平成8年3月においては、「ビオ」なる称呼を生じるところの、請求人の販売に係る化粧品を表示する商標として広く知られていたことと、前記▲3▼で述べたとおり、「NARD」なる文字列が、我が国においては馴染みの薄い文字列であって、その称呼も一義的に明確ではないこととを考え合わせると、「NARD BIO」なる本件商標を化粧品に使用した場合、取引者、需要者の目に、商品識別徴表として強く映じるのは「BIO」の部分であること、すなわち、本件商標の要部が「BIO」の部分にあることは明らかでである。

また、その称呼においても、本件商標を化粧品について使用した場合には、請求人の商品(化粧品)を表示する商標として広く知られている「BIO」の部分は、直ちに、「ビオ」なる称呼を生じうるのに対し、馴染みの薄い「NARD」の部分の称呼は、上記のとおり様々となり、称呼上の要部も、「ビオ」の部分にあると認められる。

これに対し、引用商標Aが「BIO」なる構成を要郡とし、かつ、その称呼が「ビオ」であること、並びに引用商標Bが「BIO」の構成からなり、かつ、「ビオ」の称呼を生じるものであることは明らかであるから、結局、本件商標と引用商標A及び同Bとは、「BIO」なる構成を要部とし、かつ、「ビオ」なる称呼を顕著に生じるところの、互いに類似する商標であると認められる。

このように、本件商標は、引用商標A及び同Bのいずれとも、その外観及び称呼において類似していることが明らかである。

▲6▼ 結論

以上のとおり、本件商標は、引用商標A及び同Bのいずれとも類似する商標であり、かつ、同一の商品(化粧品)について使用されるものであるから商標法第4条第1項11号の規定に該当するものであり、したがって、本件商標の登録は、同号の規定に違反してなされたものであり、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とされるべきものである。

(4)答弁に対する弁駁

請求人は、被請求人の平成11年5月11日付答弁に対し、次のとおり弁駁している。

▲1▼ 答弁書の「理由」(2)について

被請求人は、本件商標においては、「NARD」と「BIO」との間隔が半字分であるから「一目で見られる構成」であって、「外観上これが前後に分離されて認識されるもの」ではなく、「ナルドビオ」なる一連の称呼を生じるものであると主張しているが、「NARD」と「BIO」の間に明瞭な間隔が存在する以上、本件商標が、外観上、「NARD」と「BIO」に分けて観察され、その称呼も「ナルド」と「ビオ」とが分離された「ナルド ビオ」であることは、極めて明らかである。

▲2▼ 答弁書の「理由」(3)▲1▼について

被請求人は、甲第7号証の資料1乃至11には「BIO」が「ビオ」として宣伝広告されていたような形跡は見当たらず、むしろ「BIO」は「バイオ」であることを匂わしていると述べ、本件商標の登録出願時又は査定時には「BIO」に接する取引者又は需要者は、これを「バイオテクノロジー」をいうものと直ちに認識すると主張している。

しかし、「BIO/ビオ」の構成で商標登録出願され登録された引用商標Aは、その登録出願直後の昭和34年から、「ビオ」の称呼を伴う商標として化粧品に使用され続け、それにより、「ビオ」の称呼を伴う請求人の表示として定着していた(甲第7号証及び同第8号証並びに同第12号証及び同第13号証)。

したがって、たまたま、昭和58年に、いわゆるバイオテクノロジーによって生産された原料を含む化粧品が、「BIO」の商標を付して販売されたからといって、その商標がにわかに「バイオ」と称呼されることはなく、いわんや、その時点を境に、「BIO」商標が付された請求人の全商品(化粧品)が、「バイオ」と称呼されるようになったなどということはありえない。

被請求人が提出した乙第1号証及び同第2号証は、いずれも化粧品業界の関係者が執筆した文献ではなく、バイオテクノロジー関連分野の専攻研究者達が執筆したものである。そのような専攻研究者達が、自己の研究分野についての多分の思い入れもあって、バイオテクノロジーによって生産された原料を用いた化粧品を「バイオ口紅」、「バイオ化粧品」と呼ぶのは無理からぬことであるが、その種の人達がその種の商品をそのように呼んだからと云って、請求人の「BIO」商標の称呼がにわかに「バイオ」になるわけのものではない。

▲3▼ 答弁書の「理由」(3)▲2▼について

被請求人は、本件商標の「NARD」の部分は馴染みの薄い部分であるが故に商標としての識別性が強い筈であるから、「BIO」の部分に要部があるとするのは誤りである旨を主張しているが、理由がない。

「BIO」商標が、請求人の販売する化粧品を表示する商標として、多年にわたって極めて大量の商品に使用され、かつ、宣伝、広告されて、本件商標の登録出願時及び査定時において、広く知られた商標であることは、歴然たる事実である(甲第7号証、同第8号証、同第12号証、同第13号証及び同第14号証等)。

このように請求人の販売に係る化粧品を表示する商標として広く知られた文字列「BIO」と、馴染みの薄い文字列「NARD」とが歴然とした間隔を置いて配列されている商標を、「化粧品」の表示として観察した場合、「BIO」の部分により強い印象を受けることは必定である。

▲4▼ 答弁書の「理由」(3)▲3▼について

甲第9号証等に係る判決は、「『BIO』の標章は、原告の化粧品シリーズを表示するものとして、化粧品の取引者・需要者の間で周知であり、その標章自体が化粧品の分野において、強い商品識別力をもつものと言え、さらには、『BIO』と称呼を同一にする『ビオ』の標章にも、やはり化粧品の分野において強い商品識別力があるものといえる。」(甲第9号証)、「『NARD』と『BIO』との間に強い結び付きがあるとは認められず、両者が一連称呼されるべき必然性は認められない。」(甲第9号証)。これらの事実に基づき、「NARD BIO CREAM」、「ナルド ビオ クリーム」等の標章は引用商標A、同Bと類似であると判断したものであって、商標類否判断の通念に基づく適切な判断であると思われる。

片仮名書きの「バイオ」が「バイオテクノロジー」の略称としても用いられているという事実があるとしても、そのことは、上記の認定に基づく上記の判断を左右しうるものではない。

いずれにしても、「BIO/ビオ」の構成の下に登録出願されて登録された引用商標A及び同Bが、請求人によって長期かつ広範に使用されて、請求人の商品表示として広く知られていた事実を参酌すれば、「ナルド ビオ」と称呼される本件商標「NARD BIO」において、商標としての識別力が強く印象されるのは、引用商標A及び同Bであり、かつ、周知商標でもある「BIO」の部分にあって「NARD」の部分にはなく、したがって、本件商標において、外観及び称呼上も、強く印象される識別上の要部が、引用商標A、同Bの構成そのものである「BIO」の部分にあることは明らかである。

そうである以上、本件商標は、引用商標A及び同Bに、外観及び称呼上も類似するものであることが明らかである。

3 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。との審決を求めると答弁し、証拠方法として乙第1号証乃至同第5号証を提出している。

(1) 請求人の主張は、▲1▼本件商標と引用商標A及び同Bは、外観上は一応類似しない、▲2▼本件商標と引用商標A及び同Bは、「ビオ」の称呼を共通にすることから称呼上類似する、▲3▼したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する、というものである。

そして、請求人は、その論拠を請求人、被請求人間の「ナルド ビオクリーム」、「NARD BIO CREAM」なる商標の使用差止めについての訴訟の判決に求めている。しかしながら、本件商標と引用商標A及び同Bは、称呼上類似するものではなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

また、本件商標は、「ナルド ビオクリーム」、「NARD BIO CREAM」なる商標ではないから、上記訴訟における判断がそのまま当てはまる性質のものではない。

(2) 本件商標の称呼

本件商標「NARD BIO」は、「NARD」と「BIO」の結合からなるものであるが、前後に半字あけた構成は、この種結合語の通常の表わし方であり、いわば、一目でみられる構成のものであるから、外観上、これが前後に分離されて認識されるものでないことは明らかである上に、「ナルドビオ」なる称呼も冗長なものではないから、一連に称呼するのに支障はない。

したがって、本件商標からは「ナルドビオ」なる一連の称呼を生じ、少なくとも、これが取引上「ビオ」とのみ称呼されることはない。

(3) 本件商標及び引用商標の称呼についての請求人の主張に対する反論

請求人は、本件商標及び引用商標A及び同Bから,それぞれ「ビオ」なる称呼を生じるとして、その理由をいろいろ挙げている。

▲1▼ 引用商標A及び同Bの構成要素であり、かつ、本件商標の構成に含まれている「BIO」は、請求人の販売に係る商品(化粧品)を表示する、「ビオ」なる商標として、広く知られたものであるとする点については、提出されている資料に見る限り、「BIO」の文字を含むラベルのある商品の写真と「クイーン ビオ 化粧品」とか、「ビオ クリーンミルク」のような表示の広告がなされていたようであるが、「カネボウBIO」、「カネボウBIOライン」、「カネボウBIO(KB)」、「モルフェ/BIO」、「BIO メイクアップ化粧品」、「レディエィティBIOメイクアップ化粧品」のように表示されているだけであって(甲第7号証)、「BIO」が「ビオ」として宣伝、広告されていたような形跡は見られない。

「BIO」の文字が表示されている商品の写真においても、「ビオ」として取引されているという証拠は見当たらない。

それどころか、甲第7号証資科1乃至同4等には、「カネボウBIO BIOという言葉のもつ高品質・先取的なテクノロジーなどのイメージを生かし、品質に信頼感がもてるネーミングとしました。」と記載されている。

言い換えれば、これらの資料に表示される「BIO」の文字は、「ビオ」ではなく、「バイオ」であることを匂わしているものである。このことは、乙第1号証及び同第2号証(1988年及び1991年の刊行であり、前記資料9及び同6の出版年に当たる。)の刊行物の記載により明確である。

そこでは、「BIO リップスティック」の通称が「バイオ口紅」であると紹介し、「バイオ化粧品」なる観念の商品の開発ラッシュについての事情を挙げている。

請求人の「BIO」が「ビオ」と称されて著名であるというのは、昔時のいつかの時点にはあったことかも知れないが、少なくとも、本件商標の登録出願時又は査定時においては、「BIO」に接する取引者、需要者は、これを「バイオテクノロジー」をいうものと直ちに認識し、「ビオ」と称する請求人の商標として著名なものを表したものとして把握するというようなことはないものというべきである。

このことは、前述のように請求人自身がそのように説明して使用していることからも容易に窺えることである。

被請求人は、請求人との間の訴訟でも「BIO」が既に「バイオ(バイオテクノロジー)」を直ちに認識する語となっている旨を主張したが、裁判所は、これに対し、「接頭語として、わが国においても一定程度普及してきているものと認められるけれども、このことから直ちに『BIO』という語が一般用語であるとまでは認めることができない。」という判断をなしている(甲第9号証)。

この判決の判断は、10年以上前の判決例(乙第3号証)の判断と同じである。この判決が乙第1号証及び同第2号証のような事情に考慮を払っていないことは措くとしても、近年のいわゆる「バイオ技術」の発展に一顧も与えず、「BIO」に接する者は、請求人の使用する商標を想起するのみであるとする認識は、化粧品という商品との関連だけであるとしても、常識に反するといわざるを得ない。

なお、乙第4号証には、「バイオ」は、「バイオテクノロジー」を指す日本的略語として位置付けている。今日では、このような扱いとするのが当然であろう。

強いて例を挙げるまでもないと思われるが、例えば、特許庁の年次報告書(乙第5号証)でも,技術分野を表すのに、「バイオ」、「原子力」、「医薬」というような用語によっており、極く一般的な使い方であるから、これが一般に理解し難いというようなことになる訳がない。

このように見てくると、「BIO」が請求人の商標として著名であることから、本件商標「NARD BIO」に接する取引者、需要者は、その構成中の「BIO」の部分に注目し、「ビオ」と称呼して取り引きすることになるというのは、根拠のない全くの架空の議論である。

「NARD BIO」は、[NARD」に相応する[ナルド」の称呼によって取引きに当たられることがあるとしても、「BIO」に相応して「ビオ」の称呼のみによって取引きに当たられるということはない。

今日においては、「BIO」は、商品「化粧品」については、識別性がないか又はあったとしても極めて弱いものとなっているからである。

▲2▼ 本件商標の構成中馴染みの薄い「NARD」の部分よりも、請求人の商標として著名な「BIO」の部分に注目するという主張について

本件商標の構成中の「BIO」が「ビオ」と称呼されることは争わないが、これが請求人の商標として著名な「BIO」に結び付き、「BIO」が本件商標の要部として認識されるという点は争う。

特に、本件商標の構成中の「NARD」がなじみの薄い部分であるから、無視されるかのような主張は、全く理由のないことである。

本来、日常的な用語として馴染みのないものは、商品との関係においては説明的な位置付けにはならないから商標としての識別性が強いはずのものであり、これを無視して製法等を認識させる「BIO」が商標の要部とみられるようなことになるものとする考えは常識に反する。

この点についての判決における判断も誤りといわざるを得ない。

また、「BIO」が「バイオ」と読まれようと「ビオ」と読まれようと、その認識が変わることになるものとも思えない。

▲3▼ 商標「NARD BIO CREA」についての判決と商標の類否

請求人は、甲第9号証で示す判決が確定したから、この観点から本件商標と引用商標A及び同Bが類似するものであると主張されるが、本件商標は、「NARD BIO CREAM」でもなく、また、前述のように、いわゆるバイオ技術等についての判断が全くなされていない判決理由が、本件に通用するものとは考えられないので、提出する乙各号証などにより、あらためて正当な判断がなされるべき性質のものである。

(3) 以上のとおり、本件商標は、引用商標A及び同Bと類似するものではないから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないことは明白である。

よって、答弁の趣旨のとおりの審決を求める。

4 当審の判断

(1) 請求人は、本件商標「NARD BIO」は引用商標A及び同Bと類似する旨主張し、その理由として、引用商標A及び同B「BIO」が指定商品「化粧品」について使用した結果、請求人に係る化粧品を表示するものとして広く認識されている商標であることを挙げているのに対して、被請求人は、これを否定する。

甲第7号証資料11雑誌「QUEEN」昭和35年9月号及び同第8号証「カネボウ化粧品30年の歩み」によれば、請求人は、昭和35年頃から化粧品ローション、クリーム等について「BIO」又は「ビオ」を要部とする商標の使用を開始し、平成元年まで継続していること、同第7号証の「商品カタログ」によれば、1987年から1996年まで「BIO」を要部とする商標を直接化粧品の各容器に付して又はパンフレットに表示して宣伝、広告に使用していること、その中で、資料2の「95商品ガイドブック」では基礎化粧品としてはクレンジングクリームからホワイトニングデイエッセンスまで15種の各化粧品について、ベースメイクアップ化粧品としてはメイクアップベースからミニ口紅まで6種の各化粧品等に「BIO」の商標を使用して販売していることがそれぞれ認められる。

そして、甲第7号証の陳述書によれば、1987年から本件商標の登録出願前である1994年まで、「BIO」商標が使用された一連のシリーズ商品の売上個数が毎年200万個から400万個の間で推移し、直前の1995年には700万個に達してその売上高が70億円に至っていることが認められる。

そうとすれば、引用商標A及び同Bは、化粧品については本件商標の登録出願前には、その取引者、需要者の間では請求人に係る化粧品を表示する商標として広く認識されて、いわゆる周知、著名な商標に至ったものと認めるのが相当である。

これに対して、被請求人は、請求人の使用においては、「カネボウBIO」、「カネボウBIOライン」、「カネボウBIO(KB)」等のように表示されているだけであって、「BIO」が「ビオ」として使用されていること又は「BIO」が「ビオ」と称呼されて取り引きされていることを示す証拠は見当たらない旨主張する。

しかしながら、「カネボウ」は請求人が全化粧品について使用する代表的出所表示であり、「BIO」が各単品に使用されるシリーズ商標と認められることは甲第7号証等により明らかであから、前示の「カネボウ」と共に使用されていることをもって「BIO」商標の周知、著名性を否定することはできないと言うべきであり、また、「BIO」商標が「ビオ」と称呼されるものであることは甲第7号証資料11請求人広報誌「QUEEN」昭和35年9月号及び同第8号証により認められるところであり、この使用がその後も継続しているのであるから被請求人の主張は理由がない。

また、被請求人は、乙第1号証及び同第2号証を提出するなどして、少なくとも、本件商標の登録出願時又は査定時においては、「BIO」に接する取引者、需要者は、これを「バイオテクノロジー」をいうものと直ちに認識し、「ビオ」と称する請求人の商標として著名なものを表したものとして把握することはない旨主張する。

しかしながら、引用商標A及び同Bは昭和35年以来請求人により化粧品について継続して使用された結果、本件商標の登録出願時には周知、著名な商標に至っていたもので、「ビオ」と称呼されているのに対して、乙第1号及び同第2号証は、1988年以降発行の資料であるからこれのみをもって、また、引用商標A及び同Bが被請求人の主張するバイオ口紅等について使用されているとも認められないから、先の認定を覆すには足りないと言うべきである。

(2) 本件商標は「NARD BIO」の欧文字を書してなるところ、請求人はこれより「ビオ」の称呼を生ずると主張するのに対して、被請求人は、これを否定する。

本件商標は「NARD」の文字と「BIO」の文字とが半字程離れて表示され、しかも、両語により熟語が形成され又は一定の意味合いを生ずるという文字の組合せとも認められない。

しかして、本件商標を構成する「BIO」の文字は、先に認定した請求人が本件商標に係る指定商品「化粧品」について周知、著名な商標に相当するものである。

してみれば、本件商標は、その指定商品「化粧品」との関係においては、その全体の構成にかかわらず、「BIO」の文字部分にのみ着目して取引きに供される場合も少なくないと言うべきである。

したがって、本件商標は、「ナードビオ」等の外に、「BIO」の文字部分より「ビオ」の称呼をも生ずると言うのが相当である。

被請求人は、甲第7号証において「BIO」の文字が表示されている商品の写真においても、「ビオ」として取り引きされているという証拠は見当たらない旨及び今日においては、「BIO」は、商品「化粧品」については、識別性がないか又はあったとしても極めて弱いものとなっている旨主張し、本件商標より「ビオ」の称呼を生ずることを否定する。

しかしながら、前示したように、引用商標A及び同Bは「ビオ」と称呼されて周知、著名になっていると認められること、また、「BIO」がバイオテクノロジーを認識させ同技術を利用して生産された化粧品があるとしても、本件商標に係る指定商品がそのような商品に限定されているわけでもなく、本件商標の査定時に同商品についてのみ使用意志があったとも又は使用していたとも認められないことから、被請求人の主張は採用できない。

そうとすれば、本件商標と引用商標A及び同Bは「ビオ」の称呼を同一にする類似の商標であると言わざるを得ず、また、指定商品についても同一又は類似のものである。

5 結論

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものであるから、これを無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

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