結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2004−89001(T2004−89001/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4554584号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成13年5月25日に登録出願、第16類、第20類、第25類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同14年3月22日に設定登録されたものである。
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用した登録商標は、以下の(1)及び(2)に示すとおりである。
(1)登録第2324652号商標は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、昭和63年6月30日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成3年7月31日に設定登録され、その後、同13年8月7日に商標権存続期間の更新登録がされ、さらに、指定商品については、同14年5月15日に第20類、第22類、第24類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品とする書換の登録がされたものである。
(2)登録第2329483号商標は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、昭和63年6月30日に登録出願、第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成3年8月30日に設定登録され、その後、同13年8月7日に商標権存続期間の更新登録がされ、さらに、指定商品については、同14年5月15日に第18類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品とする書換の登録がされたものである。
(上記登録商標をまとめて、以下「引用商標」という。)
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第10号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)請求の理由
(ア)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、図形の中心に動物の足跡と思しき図形を有し、その動物を明確に特定することはできないが、単純に捉えて足跡(foot print)印の称呼、観念が生ずる。
引用商標は、ある動物の足跡を連想し、指先に爪跡のようなものを描いてなるが、全体的印象は、どのような動物の足跡が特定できないとはいえ、足跡(foot print)印の称呼、観念が生ずる。
なお、本件商標についてされた登録異議の申立てに対する異議の決定では、「動物の足跡」という観念はその範囲が広すぎて、その観念において商品の出所標識として混同を生ずるおそれはないとするのが相当であるとしたが、動物の足跡であれ人間の足跡であれ、本件商標の場合、中心に描かれた足跡以外の図形から特定の称呼・観念が生じないため、看者の注意は自ずと中心の図形に向けられ、これより「足跡」印の称呼、観念が生ずることは明らかである。
したがって、本件商標は、引用商標と「足跡」印の称呼、観念において類似する商標であり、その指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品を含むものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(イ)商標法第4条第1項第10号及び同第15号ついて
請求人の創業者であるウーリッヒ・ダウズインは、学生時代に生協向けにテントやザック、スリーピングバック等の製造・販売を始め、その後「使う身になってこそ、良い製品を作ることができる」と考え、世界各地でアウトドア旅行をし、川に残された野生動物の足跡を見て「人間を過酷な自然環境から守る、野生動物たちの毛皮(スキン)のような製品」を作ることを思い立ち、特に環境を破壊することなく自然の掟に従い、自然と共存する狼(ウルフ)をイメージした「ウルフスキン」の名前を生み出した。また、彼の愛読書の著者である「ジャック・ロンドン(Jack London・1876〜1916・米国の小説家)」から「ジャック(Jack)」と「狼の皮」を意味する「ウルフスキン・wolfskin」を組み合わせたブランドネームと「狼の足跡」の図形マークが誕生し、これらは、今日請求人の商品を象徴するものとして、世界中のアウトドア・スポーツの愛好家に知られた存在となっている。
請求人会社の設立は1981年(昭和56年)で、その取扱いに係るアウトドア関連製品は、国内では東京都豊島区在の株式会社キャラバンを通じ、1986年(昭和61年)に初めて輸入販売され、今日では三越、小田急、京王の各百貨店をはじめ14の直営店のほか、全国で340の特約店で販売されている。また、アウトドア専門誌である「山と渓谷」(山と渓谷社発行)や「BE−PAL」(小学館発行)等に広告を掲載している(甲第5ないし8号証)。
本件商標は、引用商標に類似していることから、これをその指定商品中第16類及び第25類(25類は28類の誤記と思われる。)(特に運動具)の商品に使用すれば、請求人の取扱いに係る商品と出所について混同を生ずるおそれは否定し得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当する。
(2)答弁に対する弁駁
(ア)被請求人は、本件商標と引用商標を抽象的な図形と断定するが、本件商標の中心にある図形は誰が見ても足跡を表現したもので、どのような動物の足跡かが特定できないからといって抽象的であるとはいえない。また、「足跡」という言葉も象印、パンダ印といった具体的動物ほど明確なものではないにしても、少なくとも「足跡」印を商標の称呼として採択することは決して不自然なものとも思われない。
したがって、被請求人の称呼・観念に関する主張は失当である。
(イ)引用商標の著名性について、被請求人は、請求人の商品が14の直営店、340の特約店で販売されていること、また、その広告がマイナーな専門誌であるから、これらをもって引用商標が著名であるとはいえない旨主張する。
しかし、請求人の商品は、アウトドアスポーツの愛好家を対象としており、このような商品を扱う販売店が全国にどの位あるのか定かではないが、引用商標を付した商品を扱う特約店が340店舗あるということは決して小さな数字ではない。もちろん、老若男女全ての人がアウトドアスポーツに興味があるわけではなく、その著名度も極めて広く知られているとはいえないにしても、少なくともアウトドアスポーツ愛好家の間で、あるいは当該業界においては広く知られたものといえる。
また、広告掲載媒体である月刊「山と渓谷」の創刊は、これを発行する「山と渓谷」社が設立された昭和5年(1930年)と古く、その発行部数は日本雑誌協会によれば23万部であり、これは決してマイナーものではない。また、「BE−PAL」は昭和56年(1981年)の創刊で、発行部数は22万部と公表されており(甲第10号証)、いずれも専門誌として、発行部数の多い方で、年間200万部以上という数字も決して小さいものではない。
したがって、その宣伝効果は、被請求人が認識している以上に大きく、商標自体も動物そのものの図形と違い、その足跡という特異なもので、消費者に与える印象は強く「足跡」印として記憶・回想されるものである。
(3)むすび
以上、本件商標と引用商標は、称呼、観念上類似する点において商標法第4条第1項第11号に、また、引用商標の著名性において本件商標の第16類及び第28類への使用は、請求人との関係において商品の出所混同を来すことから同法第4条第1項第10号及び同第15号にも該当し、その登録は無効とされるべきである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べた。
(1)本件商標と引用商標の類否について
(ア)請求人は、本件商標と引用商標は、「足跡」印の称呼・観念において類似すると主張する。
しかしながら、本件商標と引用商標は、請求人も自認するように、どのような動物の足跡か特定することができないような極めて抽象的な図形からなる。このように、極めて抽象的に表現された図形商標においては、これに接する需要者・取引者は漠然としたイメージしか観念できず、特定の具体的な称呼・観念は生じないというべきである。
(イ)請求人の主張によれば、およそある特定のモチーフに基づく図形商標は全て当該モチーフの称呼・観念が生じて類似することになり、抽象的な図形商標の類似範囲を不当に拡大して、当該モチーフの図形商標をある特定人に独占させる結果になるものである。
もちろん、このような抽象的な図形であっても、例えばそのような図形がある特定の称呼・観念と結びついて著名となり、その特定の称呼・観念をもって取引に供される等の特段の事情があれば、そのような特定の称呼・観念が生じることもあろう。しかし、そうでなければ、抽象的なモチーフの図形に接する取引者・需要者は、かかる標識の外観の相違に着目して取引にあたると考えるのが自然である。
(ウ)本件商標と引用商標は、上述のように、特定の称呼・観念を生ずる等の特段の事情は認められない。
そして、本件商標と引用商標は、本件商標中央に配された足跡自体の指の数及び爪跡の有無において相違するほか、本件商標では周囲に配された黒色の歯車状の円図形及び白抜きの小楕円からなる円輪郭を有し、これらの相違は顕著に把握され全体の外観に与える影響は極めて大きく、両図形は全く別異の印象を与えるものである。
以上から、本件商標と引用商標は、称呼・観念において比較ができず、また、外観は大きく異なるから、外観、称呼、観念のいずれもが異なる互いに紛れるおそれのない商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第10号に該当することはない。
(2)引用商標の著名性について
(ア)請求人が示す引用商標の著名性についての証拠は、単に全国で14の直営店及び340の特約店があることを示すにすぎない。すなわち、全国に数千あるいは数万とも考えられる小売店中、たかだか14の直営店がある程度では引用商標が著名であるとは到底いえず(しかも、その殆どが百貨店等のインショップ又は平売り場での販売と考えられ、これらによってブランドイメージが浸透するものではない。)、また、特約店なるものは現実の販売額や販売実績とは何ら関係なく、これらの数によって引用商標が著名であるということもできない。
(イ)請求人が示す広告も、そもそも発行部数が明らかでない上に、ごくマイナーな専門誌であり、しかも継続的に広告掲載がされているのは単に1誌にすぎず、その余についてはごく単発的に掲載されているものにすぎない。
(ウ)以上から、請求人の示す証拠は、引用商標が著名である事実を何ら証明するものではなく、また、上述のように本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれのある商標ではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標は、別掲(1)のとおり、歯車様の黒塗り円図形(以下「歯車様黒塗り円図形」という。)内に、白抜きの楕円の点を連ねた綱様の円輪郭(以下「白抜き綱様円輪郭」という。)を配し、さらに、該白抜き綱様円輪郭内に、白抜きの山形図形を配し、その上部に5つの白抜き縦長楕円形を該白抜きの山形図形の凸部に沿うように並べてなるのものであり、これらの白抜きの山形図形及び5つの白抜き縦長楕円形は、全体として、獣類の足跡を表したと理解させるものといえる(本件商標中の上記白抜きの山形図形及び5つの白抜き縦長楕円形を合わせ、以下「本件足跡図形」という。)。
(イ)引用商標は、別掲(2)のとおり、黒塗り山形図形を配し、その上部に4つの黒塗り縦長楕円形を該黒塗り山形図形の凸部に沿うように並べ、さらに、これら4つの黒塗り縦長楕円形の図形の上部には、それぞれ小さな黒塗り三角形を配してなるものであり、全体の図形は、仮想垂直線より右方向に約45度の傾きをもって描いてなるものである。そして、引用商標は、構成全体をもって、爪を有する獣類の足跡を表したと理解させるものといえる。
(ウ)そうすると、本件足跡図形と引用商標は、いずれも獣類の足跡を表したと理解させるものと認めることができる。
しかしながら、本件商標は、その構成中の歯車様黒塗り円図形及びその内部に配された白抜き綱様円輪郭は、きわめて看者の注意を引く態様よりなるものであり、本件商標に接する需要者がこれらの構成要素を無視して、本件足跡図形のみに印象づけられるとみることはできない。
してみれば、本件商標は、その構成中の本件足跡図形のみに看者の注意が強く引かれるものではなく、構成全体の特異性をもって、看者に印象づけられるものであるから、これより特定の称呼、観念は生じないというのが相当である。
一方、引用商標は、前記のとおり、全体として、爪を有する獣類の足跡を表したと理解させるものといえるから、これより「ジュウルイノアシアト」の称呼及び「獣類の足跡」の観念を生ずるものというのが相当である。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、称呼及び観念において比較することができないものである。
次に、本件商標と引用商標の外観についてみるに、本件商標は、前記のとおり、構成中のいずれかの部分のみが独立して把握、認識されるものではなく、構成全体をもって一つの商標を表したと認識されるものであり、加えて、本件足跡図形が白抜きで描かれているのに対し、引用商標は、黒塗りで描かれていること、小さく描かれているとはいえ、看者の印象に強く残る爪を有することなどの差異を併せ考えれば、両商標を時と所を異にして離隔的観察した場合においても、外観上互いに紛れるおそれはないというべきである。
(エ)したがって、本件商標と引用商標とは、称呼、観念及び外観のいずれの点においても非類似の商標というべきであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではない。
(2)商標法第4条第1項第10号及び同第15号について
甲第5号証ないし甲第10号証(枝番を含む。但し、甲第8号証及び甲第9号証において、本件商標の登録査定日以降に発行されたと認められるものについては除く。)を総合すれば、請求人は、引用商標と同一の構成よりなる商標(以下「引用標章」という。)、若しくは引用標章と「Jack Wolfskin」の文字を結合させた商標をアウトドア関連商品に使用し、関東地方、東北地方、北海道等において販売活動をし、かつ、アウトドア関連の雑誌に宣伝広告をしていた事実を認めることができ、引用標章は、請求人の取扱いに係るアウトドア関連商品を表示するためのものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、この種商品分野の需要者の間では広く認識されていたものと認め得るところである。
しかしながら、前記(1)で認定したとおり、本件商標と引用商標とは、互いに紛れるおそれのない非類似の商標であり、別異の商標として印象づけられるものであるから、本件商標に接する需要者は、これより引用標章を想起又は連想することはないというのが相当である。
してみれば、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、該商品が請求人若しくはこれと何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれのない商標といわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に違反してされたものではない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同第10号及び同第15号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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