結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成9年審判第4816号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第2717193号商標(以下「本件商標」という。)は、別紙に表示するとおりの構成よりなり、第3類「染料、顔料、塗料、印刷インキ、くつずみ、つや出し剤」を指定商品として、平成2年5月16日に登録出願され、同8年10月31日に設定登録がなされているものである。
請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第14号証(枝番号を含む)を提出している。
(1)本件商標の「LIONCLUB」は、その出願時(平成2年5月16日)には既に日本国内において営利を目的とせず、社会奉仕等の公益に関する事業を営む請求人を表示する標章として周知・著名となっていた「LIONSCLUB」又は「ライオンズクラブ」(以下、「引用標章」という。別紙に表示。)と類似し、商標法第4条第1項第6号に該当するにも拘らず登録されたものであるからその登録は同法第46条第1項第1号により無効とされるべきである。
(2)本件審判請求人の正式名称は「The International Association of Lions Clubs」又は「ライオンズクラブ国際協会」であるが、世界各地区における各クラブの単位を指称する場合には「LIONSCLUB」、「ライオンズクラブ」と称されている。このことは、ライオンズクラブ会員の総てが所有する「ライオンズ必携」(甲第1号証)の第15頁乃至第29頁「ライオンズクラブについて」、第33頁乃至第73頁「ライオンズクラブ国祭協会会則および付則」、第79頁乃至第100頁「ライオンズクラブ会則および付則標準版」、第102頁乃至第121頁「複合地区会則」内の記載、あるいはライオンズクラブ自身、又はライオンズクラブのメンバーが奉仕活動を行うに際して公的もしくは私的に使用し、所持し、佩用する物品を掲載している毎年発行の「SUPPLYCATALOG」(サプライカタログ)(甲第2号証)中、第1頁B−18他の記章、第52頁掲載の表彰盾、第86頁D−3他のライオンズクラブ旗、第88頁のライオンズクラブ友好旗、第100頁A−25のエプロン、第101頁A−171,A−132−Bの帽子、第102頁A−4の腕章、第103頁D−113の車両用ライセンスプレート等に記載されていることからも明らかであるばかりでなく、後述のあらゆる奉仕活動に際して用いられる垂幕,横断幕,のぼり,立看板,プラカード,帽子,バッヂ,エプロンや、寄贈物品への表示等により明らかである。
(3)請求人の団体は、1917年(大正6年)アメリカ合衆国シカゴ市で誕生して以来、現在までの約80年間に亘り、世界各国において地域社会に対し奉仕活動を続けて来ており、1995−1996年版の「ライオンズクラブ続計」(甲第3号証)で明らかなように、1996年6月30日(1995年度末)現在では世界の179カ国において43,373のクラブ数を擁し、1,425,310人の会員が市民,教育,視力保護・盲人福祉,保健,レクリェーション,社会福祉,公衆安全,環境保全,国際サービス,聴力保護・言語障害者福祉,その他の福祉事業のために奉仕活動を続けている(甲第3号証・第4頁〜第23頁)。
(4)日本国でも1952年(昭和27年)の発足以来、現在まで40余年問に亘り日本国各地において前記奉仕活動を続けて来ており、1995年度末(1996年6月30日)現在のクラブ数は3,220クラブ、会員数は165,729名に達している(甲第3号証・第10頁)。そして1995年度1年間だけでも前記奉仕活動の件数は112,408件で、金額にして約96億7千万円強の奉仕をしており(甲第3号証・第16頁〜第23頁)、日本のライオンズクラブ発足以来から1994年度末までの奉仕活動の総合計件数は1,889,701件で、金額にして約1,776億6干万円強にも達している(甲第1号証・第182頁)。
(5)このように、日本国内は勿論、世界的規模で長年に亘り大々的に奉仕活動を行って来た請求人の名称(略称又は単位クラブ名を含む)は、前記各種奉仕活動に携わってきた人々は当然のことながら、奉仕を享受した莫大な人々の間において周知・著名となっており、その数は計り知れないもので、殊に「LIONSCLUB」又は「ライオンズクラブ」といえば、請求人を指称する社会奉仕事業団体として、本件商標登録出願の際、既に日本国内で周知・著名となっていたことは明白である。
このことは、事案を異にし、外観類似についての判断ではあるが、請求人が行った異議申立事件の決定からも明白である。
(6)本件商標の出願公告中に、請求人が本件商標について登録異議の申し立てをしたところ、本件登録異議の申立ては理由がないものとされたが、外観上はあるいは非類似と認められるとしても、称呼及び観念上類似の商標である。
(7)本件における商標の類否判断は、本件商標「LIONCLUB」をその指定商品、例えば「染料」に使用した場合、この「染料」が、社会奉仕等の公益に関する事業を営む団体として周知・著名な請求人によって、製造又は販売されたものと認識されるか否かという観点から判断されなければならないが、「LIONCLUB」という商標が使用された「染料」を見れば、需要者、取引者を問わず誰もが、それを社会奉仕等の公益に関する事業を営む請求人、すなわち「ライオンズクラブ」「LIONSCLUB」によって製造又は販売されたものであると認識するのは明白である。この様に認識されると、非営利団体である請求人があたかも営利事業を行っているかの如く世人に誤認されるため、奉仕団体である請求人の権威が著しく害され、その奉仕目的が根底より覆されることになる。
(8)以上のように、本件商標と請求人を表示する標章とは、互いに類似する商標であり、かつ「LIONSCLUB」又は「ライオンズクラブ」は、社会奉仕等の公益に関する事業を営む請求人を表示する標章としてわが国内で周知・著名である。
(9)請求人は、甲第5号証の1乃至甲第11号証の4を提出し、本件商標「LIONCLUB」が請求人を表示する標章である「LIONSCLUB」又は「ライオンズクラブ」に類似することを立証するものである
(1)被請求人の提出する審決例は、本件と事案を全く異にするものであり、本件の審理に影響を与えるものではない。
第1に「中間におけるサ行音の有無で非類似とした例」とする乙第2号証は、「中間における『ソ』の有無により語韻語調が異なる」と判断したものであり、乙第3号証は、「中間において『ン』の音に続く『ス』の音の有無により語韻語調が異なる」と判断したものであるから、本件とは、比較する商標(標章)の差異がサ行音の有無である点で共通するが、同じサ行音であるという一事を以って、商標の称呼上の類否判断において、比較すべき商標の相違点が濁音の「ズ」という音の有無である事案と、清音の「ソ」又は「ス」という音の有無である事案を同一に扱う理由はない。
「ライオンズクラブ」という称呼は、全体の語呂、語調から格別冗長ともいえず、平滑にしてよどみなく一連に称呼し得るものであり、構成全体をもって一体不可分のものと認識されるとみるのが自然である。
観念の点においても「ライオンの団体」という観念が生じるのが自然である。
(2)商標法第4条第1項第6号が、公共団体の権威を尊重するために規定されたものであることから、本件における類否判断は、同号に該当する公共団体の実際の公共事業を行なっていることを考慮して行う必要があるところ、請求人が動物のライオンのマークを使用して公共事業を考慮すれば、「ライオンクラブ」という称呼が生じる商標が、「ライオンズクラブ」という称呼が生じる請求人を表する標章と称呼上、観念上区別し得ないとするのが相当である。
(3)以上のように、本件商標と請求人を表示する標章とは、互いに類似する商標であり、かつ被請求人も認めるように「LIONSCLUB」又は「ライオンズクラブ」は、社会奉仕等の公益に関する事業を営む請求人を表示する標章としてわが国内で周知・著名であるので、本件商標は、商標法第4条第1項第6号の規定に該当する。
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第14号証を提出している。
(1)請求人は、本件商標が類似するとして「LIONSCLUB」「ライオンズクラブ」からなる標章を引用している。
「L.I.O.N.S.CLUB」なる団体が1917年にアメリカ合衆国において、実業家が集まり、地域の社会に奉仕することモットーとして創立した国際的社交団体であることは、我が国においても、大方の人々に承知されているといえる。そして、その命名がLIBERTY、INTELLIGENCE、OUR、NATION’S、SAFETYの語のイニシャルをもって「L.I.O.N.S.」、その音として「ライオンズ」即ち「L.I.O.N.S.CLUB」(ライオンズクラブ)にかかるものであることも承知している。、
(2)一方、本件商標は、国内外において盛大に事業を展開する被請求人、ライオン株式会社の著名な略称であり識られた登録商標でもある「LION」の文字と一つの集まり、団体をあらわす「CLUB」の文字とで「LIONCLUB」と書してなるものであって、全体としてライオン株式会社を巡る一つの集合体、団体、倶楽部を指称する実在の倶楽部名称を表示したものである。
(3)そこで両者を比較すると、LIONS(ライオンズ)の語尾の(S)(ズ)文字の有無の差があるところ、その(S)(ズ)は決して所有をあらわす(S)(ズ)、複数をあらわす(S)(ズ)ではなく、SAFETYのイニシャルを表すことは前述のとおりであるから引用標章を省略して「LIONCLUB」や「ライオンクラブ」とすることは想定もできず、即ち、「LIONSCLUB」(ライオンズクラブ)とのみ表示され、称呼され観念されるというべきである。
(4)そうしてみると、両者がそれぞれに一つの団体名を表わすものであり、略称されることが決してなく、しかも強くアクセントがおかれる(S)(ズ)の有無の明瞭な差異がある訳であるから、例え引用にかかる標章が公益に関する事業であり、営利を目的としない上に、知られた団体ライオンズクラブの標章「ライオンズクラブ」「LIONSCLUB」であっても、本件商標とは上記理由から類似しないというべきである。特許庁において、本件と同趣旨の、そして本件請求人による異議申立が支持されなかった事実は、先刻御承知のことであろう(乙第1号証)。
(5)本件商標が引用にかかる標章と非類似の商標である以上、商標法第4条第1項第6号の規定に該当するということはできない。従って、本件商標を無効とする理由はない。
(1)請求にかかる法条は、商標法第4条第1項第6号である。申す迄もなく、本号の立法の趣旨は公益保護であって、商標の類否を規定するものではない。ここで云う類似は、当該標章が著名である場合、これと同一の商標や類似の商標は登録しないとする中での類似であって、前記趣旨の一過程、一手段である。
(2)被請求人は、両者はそれぞれに立派な団体を表示する一の商標又は標章(全体としてまとまった一つの商標又は標章)とみるのが日本国商標法の伝統的な見方であり、100年来の文化といっても差し支えない程定着したものである。従って、生ずべき称呼、観念もたった一つ「ライオンクラブ」「ライオンズクラブ」である。
(3)請求人は「被請求人は他の審決例を敢えて無視して乙各号証を提出した」と述べているが、被請求人は本件と事案の異なる、何のかかわりもなく参考ともならない審決を、単に提出書類にボリュームを与えるため提出することは好まないので無視したことに間違いはない.
(4)「LIONSCLUB」「ライオンズクラブ」が社会奉仕等の公益に関する事業であることについて、請求人は「わが国で周知・著名」と述べているが、周知・著名であるか否かより前に、請求人にとっては他国である日本国商標法で保護を受けようとする請求人が自国、アメリカ合衆国において周知・著名であることを主張されても、日本国政府をはじめ、大方の日本国民の支持を受け難いのではないかと考えるものである。
(5)被請求人は、「ライオンクラブ」「LIONCLUB」の文字からなる登録商標を平穏無事に所有していることを申し添える。
(6)申す迄もなく商標法第4条第1項第6号は、いわゆる公益的規定であって、当該公益団体の標章と同一のものは勿論のこと、類似の標章も、これに接する者が誤認することを防止することもその目的の一つである。
従ってここで云う類似とは、誤認する程近似している必要がある。
ところで被請求人は、明治24年に創業し(ただし、会社組織となったのは大正7年である。)、国内のみならず外国においても広く営業を行っている歯磨き等の製造販売会社であって、本件商標中の「LION」の標章は、それ自体高い自他商品の識別力を持っている。
従って、本件商標を付した本件商標の指定商品に接する者が、商品を取り扱わない非営利の公益事業を行う団体である請求人を想起し、誤認することはありえないことである。
よって、本件商標の登録を無効にすべき理由の有無について判断する。
そうとすれば、引用標章は、我が国においても十分正確に認識されているものとみるのが相当である。
これに対し、引用標章は、それぞれ「LIONSCLUB」「ライオンズクラブ」よりなるものであるから、その構成文字に相応して、「ライオンズクラブ」の称呼が生ずるものと認められる。
そうすると、本件商標より生ずる「ライオンクラブ」と引用標章より生ずる「ライオンズクラブ」の称呼とは、第5音において「ズ」の有無の差異がある。
請求人は、「ズ」の音の有無にかかわらず、比較的長い称呼からなるから両者は相紛らわしい旨主張する。
しかしながら、その音の商標の中での発音の強弱の程度や称呼全体に与える影響については、当該商標の具体的構成及び意味内容に即して検討されなければならず、引用標章の「ズ」の音は、全音「ン」が鼻音の弱音であること、かつ「ズ」の音にアクセントが置かれ強く聴取されること、そして「ズ」の音で一拍おかれ、「ランオンズ」と「クラブ」の二音節として聴取されるものと認められる。
これに対し、本件商標は全体として一気一連によどみなく「ライオンクラブ」と称呼し得るものである。
更に、両商標のように一見共通する部分または似通った部分が認められるがごとき称呼にあっても、その称呼の全部または一部に明らかに特定の観念を生じさせるものであれば、聴者である取引者、需要者はその称呼を明確に聴別することができるものと認めるのが相当である。
これを本件についてみれば、「ランオンズクラブ」と称呼される引用標章と「ランオンクラブ」と称呼される本件商標において、これが一連に称呼され、その発音を表記した場合、文字の配列が一見似通ったところがあるとしても、引用標章が我が国において上記1で認定したとおり、世界的に著名な団体を表すものとして理解されている以上、需要者が両者を称呼の紛らわしいものとして聴取混同するおそれはないものというべきである。
そして、請求人の行う事業は、非営利の公益事業であり、本件商標の指定商品は、「染料、顔料、塗料、印刷インキ、くつずみ、つや出し剤」であり、比較的日用品といい得る商品であることと、引用標章が著名な団体名であることを考慮すれば、本件商標を称呼或いは発音を聴取した者が、引用標章を称呼或いは発音したものと誤認することは、極めて希であるものというべきである。
そうとすれば、本件商標と引用標章とは上記の差異により、称呼上区別し得るものとみるのが相当である。
次に、外観上からみるに、本件商標と引用標章の「ライオンズクラブ」とは、明らかに区別し得るものである。また、本件商標と引用標章「LIONSCLUB」とはその綴り文字において中間の「S」の有無の差であるとしても、上記2で認定したとおり、引用標章が我が国においても十分正確に認識されている事情を考慮すれば、時と処を異にして本件商標に接した場合、これを引用標章の「LIONSCLUB」と誤認するものとは考え難く、外観上区別し得るものとみるのが相当である。
さらに、観念においても、引用標章は、前記したように世界的に著名な団体の観念を生ずるものと認められる。これに対し、本件商標は「LION」と「CLUB」の2語の英単語が結合した商標であり、特別の観念を生ずるものとはいえないものと判断するのが相当であって、両者は紛れるおそれのないものである。
なお、請求人は、平成9年8月28日付上申書及び同10年4月2日付審判事件弁駁書において、本件と同様の類似性が争われた審決に対する審決取消訴訟が提訴されているとして、本件の審理につき暫時猶予を求めているが、当該事件は、平成11年1月28付で本件審決と同様の趣旨の判決(平成9年(行ケ)228号、平成9年(行ケ)229号)がなされており、また、請求人においてその後相当の期間を経過したにもかかわらず、この点に関し何ら釈明するところもない。
したがって、これ以上本件の審理を遅らせるべき理由はないものと認め、審理を行うこととした。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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