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Trademark Appeal Case

建築物形状の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2006−24711(T2006−24711/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1.本願商標

本願商標は、商標の構成を別掲に表示するものとし、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、平成17年9月22日に立体商標として登録出願されたものである。

2.原査定の理由

原査定は、「本願商標は、建物が表されてなり、第3及び第4図面に表された壁面上部には、上から弓形の二重線、植物と思しき図形そして『粉とクリーム』の文字が書されている。そして、本願商標を構成する建物の図形は、商品を販売する店舗の一形態を表したものと容易に理解できるものであり、『粉とクリーム』の文字は指定商品との関係においては、商品の原材料を表したものにすぎず、さらに弓形の二重線と植物と思しき図形は係る態様からすると未だ店舗の装飾の範疇と解される。そうすると、その構成にいくらかの工夫は認められるとしても、上記のように、特定の要部を定めることが出来ない本願商標は、全体として自他商品の識別標識としての機能を果たすものと認め難いから、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者は何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標と認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断して本願を拒絶したものである。

3.当審の判断

(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用をするものを登録する立体商標制度を導入した。立体商標も商品又は役務に使用されるものでなければならないことは、平面商標と異ならないところ、不動産である建築物も立体商標を構成し得るものであるということができる。

しかしながら、商標の本質的機能は、商品・役務(以下、「商品等」という。)の出所を明らかにすることにより、自己の業務に係る商品等と他人の業務に係る商品等との品質・質等の相違を認識させること、即ち、自他商品・役務(以下、「自他商品等」という。)の識別機能にあるということができるところ、一般的に家屋や店舗、事業所等の建築物は、住居や商品の製造・販売の場又は役務の提供の場等として利用されるものであることから、本来、商品等の出所を表示し、自他商品等を識別するために使用をする標識として採択されるものではない。

そして、このような建築物の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは建築主又は事業主が自己の好みに合わせ他の建築物との差別化を図るためや、建築物としての美感を際だたせることを目的として施されたものであって、前示したように、自他商品等を識別するための標識として採択されるものではなく、全体としてみた場合、家屋や店舗、事業所等の建築物の形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は、当該建築物のある所で商品の製造・販売又は役務の提供が受けられるものと認識するに止まり、自他商品等を識別するための標識として認識し得ないものといわなければならない。

また、このように本来的には自他商品等を識別するための標識として採択されるものではない立体商標については、登録によって発生する商標権が全国的に及ぶ更新可能な半永久的な独占権であることを考慮すれば、その自他商品等の識別力について厳格に解釈し、適用することが商品等の取引秩序を維持するということを通じて産業の発達に貢献するという商標法の目的に沿うものといえるところである。

そうとすれば、建築物全体が立体的識別標識(広告塔)と認識されるような場合などはともかくとして、建築物の形状として認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標のみをもって、取引者、需要者間において自他商品等の識別標識として明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、自他商品等の識別力を有しないものとして商標法第3条第1項の規定に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。

(2)これを本願についてみれば、本願商標は、1階及び2階部分に出窓と壁面に煙突を有する2階建ての建物(店舗)を表現した立体的形状からなるといえるものである。

そして、本願商標の指定商品、第30類「菓子及びパン」においては、一般に取引に係るその商品の全体像をイメージしやすいように、例えば、売買の対象となる菓子やパンを製造・販売する店舗の建築物を示して広告され、取引されている実情が認められるものである。

そうとすれば、本願商標をその商品に使用するときは、取引者、需要者は、単に取引の対象となる建築物(店舗)であること、すなわち、その商品を取り扱う店舗の形状としてその一形態を表したものとみられるものであって、当該建築物の形状が立体的識別標識(広告塔)として機能しているとは認められないから、これをその指定商品について使用しても、取引者、需要者は、単に当該建築物のある所で商品の提供(菓子及びパンの提供)が受けられるものと認識するに止まり、自他商品を識別するための標識としての機能を有するものとは認識し得ないものであって、結局、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものと判断するのが相当である。

(3)請求人の主張

(ア)請求人は、本願商標は、壁面の右側に瓶の形状をした煙突が極めて大きく外方に突出するように配置され、当該煙突の表面には石貼りされている。即ち、無数の石が石貼りされている煙突は商標全体の25%を占めている。そして壁面の上端には切り妻屋根の稜線があり、壁面の中央部の上部には、湾曲した二重線が配置されていて、当該二重の湾曲線の下方には小麦の穂と焼きたてのパンの図柄が配置されているとともに、前記図柄の下方には「粉とクリーム」の文字が配置されている。そして、前記「粉とクリーム」の下方には、3つの小窓が横方向に連続して存在する大窓があり、前記大窓の下方には、左右に観音扉がある左窓及び同様に左右に観音扉を有する右窓がある。左窓の左方にはランプが存在する。前記煙突、大窓及び左右窓が存在する壁面の左側には、連続して建物があり、建物の屋根には切り妻屋根を有する屋根窓があるとともに、屋根窓の下方には出入り口用のドアがあり、ドアの上部には鮮明ではないが「Kanal&Clean」との文字があり、ドア左右には縦方向に柱が二重に取り付けられていて、ドアの右上方にはレトロなランプがあり、レトロなランプの真下には二重線の輪郭があり半円状の図形が画かれている。このように、本願商標は、表面に大小の石が無数に石貼りされている瓶形の巨大な煙突を壁面に突設させている点、左右窓、連続する窓、リボン状のような帯を湾曲した弓形の二重線としてイメージ化した点等で外観において極めて特徴がある旨主張している。

しかしながら、前記したとおり商品の立体的形状は、本来、商品の目的とする機能を効果的に発揮させたり、あるいはその美感を高める等の見地から選択されるものであって、本来的(第一義的)には商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として採択されるものではない。

そして、商品の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは前記したように商品の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品の形状を表示したものであると認識するにとどまり、このような商品の機能又は美感に由来する形状は、多少特異なものであっても、未だ商品の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。

また、当該商品そのものの立体的形状に、単なる地模様的装飾、その他自他商品の識別機能を有しない文字等が付加されている場合には、商標全体として自他商品の識別力を有しないことはいうまでもない。

本願商標についてみるに、建物の壁面の煙突、大窓、小窓、二重の湾曲線の下方の図柄等は、建物(店舗)の美感を高めるための装飾とみられないこともないが、単なる地模様的装飾を表したと理解されるものであり、格別顕著なものであるとの印象をその需要者に与えるものとは認めることはできない。

加えて、「粉とクリーム」の文字部分は、「粉」は「砕けてこまかくなったもの。すりつぶしてこまかくしたもの。」及び「クリーム」は「牛乳から分離採取した脂肪分。料理・菓子に使用。」(広辞苑第五版)を意味するものとして、需要者の間で広く知られているものであり、「粉とクリーム」は、菓子及びパンを作るための原材料となり得るものであることからすれば、自他商品の識別機能は極めて弱いものというべきである。

さらに、判読できるものとはいい難いが、仮にドア上部の「Kanal&Clean」の文字部分については、「Kanal」の文字は親しまれた語ではなく、また、「Clean」の文字は「汚れていない。清潔な」の意味を有するものであり、付記的なものと認められる。

以上を総合すれば、本願商標は、建物の立体的形状そのものに、煙突、窓、二重の湾曲線の下方の図柄等を施されているものであるとしても、それは建物(店舗)の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであり、また、「粉とクリーム」の文字は、それ自体自他商品の識別機能が極めて弱いものであると認められるから、構成全体をもって、この種商品の分野において普通に用いられる商品を取り扱う建物(店舗)の形状の範囲内のものといわなければならない。

したがって、本願商標は、前示の形状をもって自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないというべきである。

(イ)請求人は、本願商標の称呼は、「ニジュウセン コムギノノホ パン コナトクリーム」又は「エントツ」であり、「一つ一つは目に見えないほどの粒と生クリームのような流動体の食品」及び「瓶の形をした煙を外に出すための筒状のもの」との観念が生ずる旨主張するが、請求人の主張する称呼及び観念自体が,いずれも一般的な言語表現とはいえず,その具体的意味すら明らかでないものであるから,これを本願商標に係る指定商品の取引者・需要者である一般消費者が直ちに想起できるということ自体にも無理があるというべきである。

したがって,自他商品を識別するための標識としての機能を有するとは認めがたいものである。

(ウ)請求人は、「粉」「クリーム」を含む商標が登録されている既登録例が多数存在するとして甲第2号証ないし同第6号証及び建物の図形からなる立体商標が登録されているとして同第7号証を提出し、本願商標の登録的確性を主張しているが、請求人の挙げる登録例は、商標の具体的構成において、本願商標とは事案を異にするばかりでなく、その事例をもって、本願商標の登録の適否を判断する基準とするのは、必ずしも適当でない。そして、本願商標が識別機能を果たすものとはいえないとの判断を左右することになるものではないから請求人の主張は採用できない。

(エ)その他、本願商標が、自他商品の識別標識としての機能を有するものであるとして、需要者に認識されているという格別の理由は見出せない。

したがって、請求人の上記主張は採用することができない。

(4)結論

以上のとおりであるから、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとした原査定は、妥当なものであって取り消すべき理由はない。

よって、結論のとおり審決する。

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