Trademark Appeal Case
ホリスティックの品質表示性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2005−90202(T2005−90202/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4836264号商標(以下「本件商標」という。)は、「ホリスティック」の文字を標準文字で書してなり、平成16年7月5日に登録出願、第31類「ペットフード」を指定商品として、同17年1月28日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、異議の申立ての理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。
(1)本件商標は、ペットフードについて、商品の品質を表示するにすぎないから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)本件商標は、「ホリスティック」の語により認識される品質以外の品質を有する商品に使用するときには、商品の品質について誤認するおそれがあるものであるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。
(3)したがって、本件商標は、商標法第43条の3第2項の規定により、その登録が取り消されるべきものである。
3 本件商標の取消理由
登録異議の申立てがあった結果、商標権者に対し、期間を指定して意見を述べる機会を与えて通知した本件商標の取消理由(平成18年2月14日付取消理由通知)は、要旨次のとおりである。
<取消理由>
申立人の提出に係る甲第2号証(枝番号を含む。)の「ワンちゃんパラダイス ペット用品ガイド ドッグ編 2005年版」(平成17年4月発行)には、「4種の新鮮なミート、野菜、フルーツ、穀物、ハーブをバランス良く含んだホリスティックドッグフード。」、「『予防こそ最善の治療』とのホリスティックケアの考え方をベースに作られたフード。」、「ホリスティック(Holistic)とは、... ギリシャ語のHolos(全体)を語源としており、全体・全体観・関連性・バランスなどの意味合いを含んでいます。...その中において、栄養素(食事)はホリスティックケアの基本であり、最も簡単に、継続的に行える治療です。...」、「ホリスティックケアとは、身体全体のケアを意味します。ホリスティック栄養学・自然療法学博士、Dr、リサ・S.ニューマンのペットの健康に対する実証と体系的な研究に基づいて開発されたアズミラはホリスティック処方により、健康な心身の基本となる栄養素を供給できるフードです。...」、甲第3号証の「ペット経営 MARCH 2005」(平成17年3月10日発行)には、「ホリスティックレセピーは、愛犬が毎日健康で元気に過ごすために必要な成分は勿論、アレルギー・整腸・抗酸化作用・免疫力・便臭・皮膚・被毛などを多角的に考えて作られています。」、甲第4号証ないし甲第11号証のホームページ(アクセス日2005年(平成17年)5月29日)には、「ホリスティックケアは全体観的ケアは、身体全体のケアを意味し、身体全体、精神、心、そしてさらに生活環境に至るまでを防御のために包囲することです。」、「ANF ケイナイン ホリスティック」、「総合栄養食(ドライフード)/ホリスティックフード」、「...ホリスティック(健康について食事における予防こそ最善である)の考え方を基にパーフェクトな栄養バランスを実現。...」等と「ホリスティック」の語に関して記載されている事実を認めることができる。
ところで、前記甲各号証は、いずれも本件商標の登録査定後のものであるが、その記載内容は、本件商標の指定商品を取り扱う分野において、本件商標の登録査定前には知られていたものと推認し得るものである。
そして、申立人の提出に係る甲各号証を総合勘案すれば、「ホリスティック」の語は、ホリスティック栄養学やホリスティックケアの考え方に基づいて製造、調合された商品の意味をもって普通に使用されているものと認められる。
そうすると、本件商標は、「ホリスティック」の文字を表したものと認められるから、本件商標に接する取引者、需要者は、これより「ホリスティック栄養学やホリスティックケアの考え方に基づいて製造、調合された商品」であることを容易に理解し、認識するにすぎないものとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、これをその指定商品中「ホリスティック栄養学やホリスティックケアの考え方に基づいて製造、調合されたペットフード」について使用しても、単にその商品の品質、効能を表示するというべきであり、また、その指定商品中前記商品以外の「ペットフード」に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。
4 商標権者の意見
上記の取消理由に対して、商標権者は、その意見を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証を提出した。
(1)商標法第3条第1項第3号は、「その商品の・・・品質、原材料、効能、用途・・・を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標については自己の業務に係る商品について商標登録を受け得ない旨規定する。この点、「Holistic」、「ホリスティック」は、広辞苑、現代用語の基礎知識、大辞林等には、説明が存しないし、ジーニアス英和辞典第3版、新英和大辞典第5版には、「[哲]全体論の、全体論的な、[薬]全身用の」の意味が記されているが、ペットフード業界において、略語ないし接頭語として「普通に用いられる方法で表示」され、汎用されていた事実は存在しない。
なお、現在「Holistic」は、特定の医学分野において「全体」、「関連」「つながり」「バランス」といった意味を全て包含する言葉として解釈されている。ホリスティック医学の視点における健康とは、「精神・身体・環境がほどよく調和し、与えられている条件下において最良の生の質を得ている状態」を健康であると考える。
このように、「Holistic」、「ホリスティック」はきわめて限定された医学分野において、独自な定義付けの下に使用されている言語であり、一般的、普遍的な語ではない。
(2)商標権者は、平成18年3月17日から同月27日までの11日間、ホームページにおいて記名式アンケート(ホリスティック(Holistic)という語を知っているか、知っていると回答した場合、その意味を知っているか、という内容。)を実施した。アンケートの結果、99件の回答を得たが、そのうちホリスティック(Holistic)という語を知っていると回答した者は10名存在し、その内6名はその意味を知らないと回答し、知っていると回答した者も、本願指定商品の特定の品質や効能を表示するものと考えられるものは存在しなかった。
アンケートの結果からも、「Holistic」、「ホリスティック」が、ペットフードの品質を普通に用いられる方法で表示したものではないことが裏付けられる。
(3)申立人が提出した「Holistic」、「ホリスティック」の用語が使用されているペットフードは、全て海外製(アメリカ製)の商品を我が国に輸入したものであって、日本製は皆無である。また、僅か5種類の輸入ペットフードの名称の一部に使用されているに過ぎず、これを以て汎用されているということを裏付けるものとはいえない。
そもそも、甲第2号証及び甲第3号証が頒布された時期、部数、地域は全く不明であり、かかる証拠を以て本件商標がペット業界において汎用されていることの証左ということはできない。
とすれば、本件商標は仮にその意味について知識を有する者がこれを目にした場合、せいぜい商品の特性を暗示する程度のものに過ぎず、ペットフード業界において、一般にその商品の特性を表示するものとして取引上使用されているとはいえないから、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号の該当性は当然否定される。
(4)取消理由には、申立人の提出に係る甲各号証について、「前記甲各号証は、いずれも本件商標の登録査定後のものであるが、その記載内容は、本件商標の指定商品を取り扱う分野において、本件商標の登録査定前には知られていたものと推認し得るものである。」とし、いずれも登録査定後の公刊物であるにもかかわらず、専ら上記資料の記載に依拠して本件商標の登録を取り消すと判断しており、商標法の立法の趣旨に照らし誤った判断を下したものである。
(5)以上のとおり、本件異議の申立てによる取消の理由はない。
5 当審の判断
商標権者は、4.取消理由通知に対する意見書において、「Holistic」、「ホリスティック」は、きわめて限定された医学分野において、独自な定義付けの下に使用されている言語であって、一般的、普遍的な語ではないこと、商標権者が実施した記名式アンケートの結果、「ホリスティック(Holistic)」が本願指定商品の特定の品質や効能を表示するものとの回答はなかったこと及び証拠として提出された資料が僅かであり、全て海外で製造され、輸入された商品であり、その証拠の発行日等は登録査定後のものであること等を主張している。
しかしながら、当該アンケートは、短期間に実施されたものであり、それも出願人のホームページにアクセスした者に限定されるから、その結果について客観的な結果と認めることはできない。
また、本件指定商品の取引者、需要者は主にペットの飼い主であること及び、近年、ペットの医療保険が存在するようにペットの健康に気を遣う飼い主が少なくないこと、さらに輸入商品であることについてもインターネットの普及やペットに関する雑誌において、海外のペットに関する商品の情報についても容易に入手、購入するもできること等の事情も考慮すれば、前記取消理由通知の認定を相当とすることから、商標権者の意見は採用することができない。
さらに、甲各号証の発行日及びインターネットの打出し日が登録査定後であっても、例えば、甲第2号証の1ないし7における平成17年4月発行の「ペット用品ガイド ドッグ編 2005年版 ワンちゃんパラダイス」の記事中には「ホリステイック栄養学博士・自然療法学博士 Dr.Lisa S.Newmanによって、様々な病気に苦しむペットをサポートする商品の開発が手掛けられ、1985年に最初の商品が開発された。1988年、長年の研究を元にクレイトン大学において『ホリスティック栄養学』及び自然療法学の博士号を取得しました。」(甲第2号証の7)との記載があること、及び、該刊行物(2005年版)に記載される商品は、発行日以前には我が国において輸入、販売されているものと推認されることから、その内容については、少なくとも本件商標の登録査定時(平成17年1月14日)前のものとみるのが相当であり、商標権者の意見は妥当性を欠くものであって、採用の限りでない。
したがって、本件商標についてした上記3の取消理由は妥当であって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるものといわざるを得ないから、その登録は、同法第43条の3第2項により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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