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Trademark Appeal Case

著名地名と商標登録

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2005−89093(T2005−89093/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4803373号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成15年4月21日に登録出願、第25類「シャツ,ショーツ,ドレス,婦人用肌着,ガードル及びワンピースボディブリーフ,ブラジャー,スリップ,カラコ,ストッキング,タイツ,昼用下着,夜用下着,メリヤス下着,メリヤス靴下,パンティー,パンティーストッキング,ソックス,下着又は寝巻きに属するひざ下までの履き物,下着及び水着製品(被服に属するもの),その他の被服,サスペンダーベルト,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同16年9月17日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第38号証を提出した。

1 請求の利益について

(1)請求人の歴史及び活動内容について

請求人は、1953年インド紅茶法第4条(甲第2号証)の下にインドにおいて設立されたインド政府の機関であり、インド政府によって任命されたチェアマンにより指揮されている。

1953年インド紅茶法第10条に規定されている請求人の機能は、インドの紅茶産業の発展の促進、紅茶の生産の規制、紅茶の販売及び輸出の規制、生産者・中介入・紅茶かす業者及び紅茶の配合業務に従事する者の登録及びライセンス、統計データの収集及び提供、インド及び諸外国における紅茶のマーケティングの改善等を含む(甲第2号証)ものであり、請求人の主要な役割は、その本質において、インドの紅茶産業に関するインド政府の方針を実施することにあり、請求人はインドで生産される全てのダージリン紅茶を保証及び証明するインドにおける唯一の政府機関である。

(2)「DARJEELING」について

「DARJEELING」は、ダージリン紅茶の産地及びダージリン地方で生産された紅茶の銘柄として広く知られている。

さらに、甲第3号証ないし甲第6号証により、「DARJEELING」又は「ダージリン」の文字は、日本人にとって紅茶の産地、名称及び観光地として広く知られているものと解される。

ちなみに、ダージリン地方は、約150年の茶葉の栽培の歴史があり、今日では19,000ヘクタールの農地で86の茶園が、毎年1000万から1100万キログラムのダージリン紅茶を栽培している(甲第7号証)。ダージリンの茶園の多くが標高1000メートル以上の場所にあり、昼夜の寒暖の差が激しく、霧の多い気候であることから、繊細で、マスカットのような味わいと芳醇な香りのある茶葉が育ち、世界中の茶の鑑定士が、ダージリン紅茶を「お茶のシャンパン」と評し、ダージリン紅茶は、世界中でインド紅茶の中で最も人気の高い銘柄であることが知られている(甲第8号証及び甲第9号証)。

(3)「DARJEELING」に関する請求人が行なうライセンスプログラムについて

請求人は、同ライセンスプログラムの一環として、「DARJEELING」のロゴが表示された紅茶の販売を希望する紅茶生産者、包装業者、配合業者、輸出業者及び取引業者と、ダージリン産であることを表示する商標を使用するライセンス契約を結ぶ。

上記契約により、請求人は、「DARJEELING」のロゴの下で供給される紅茶の品質及び真正を保証し、「DARJEELING」のロゴの独占排他的な一般認識を促進し、市場におけるダージリン紅茶の模倣を防止する役割を担っている(甲第11号証及び甲第12号証)。

上記ライセンスプログラムで使用される商標は、別掲(2)のとおりの構成よりなる紅茶葉を手に持った女性の図形及び「DARJEELING」の欧文字からなる商標(以下「引用商標」という。)であり、請求人は、日本国、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国、アメリカ合衆国、国際登録(ドイツ連邦共和国その他7カ国)、カナダ、ベネルクスの各国で商標登録を得ている(甲第13号証ないし甲第18号証)。

(4)ダージリン紅茶の著名性について

ア 日本での著名性について

日本に輸出されたダージリン紅茶の莫大な量及び莫大な広告宣伝費用に鑑みて、ダージリン紅茶は、日本の需要者において明らかに著名になっている(甲第19号証ないし甲第21号証)。

イ 「ダージリン紅茶」の諸外国での著名性について

なお、ダージリン紅茶は諸外国においても著名である。例えば、以下のような事実からも明らかである。

(a)フランス共和国での著名性について

請求人は、フランス共和国にもダージリン紅茶を輸出し、フランス共和国で以下の広告宣伝活動を行っている。

1996年にパリで開催された販売促進のための展覧会で、欧文字「DARJEELING」を含む商標を使用した(甲第22号証)。

フランス最大手の航空会社「Air France」の機内雑誌「Air France」に 、欧文字「DARJEELING」を含む商標を使用した広告を掲載致した(甲第23号証)。

インド工芸品を販売する下記のフランスのウエブサイトに、欧文字「DARJEELING」及び引用商標を掲載している(甲第24号証)。

(b)グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国での著名性について

請求人は、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国にもダージリン紅茶を輸出し、「DARJEELING」の欧文字のみからなる商標についてもグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国で使用による識別力を獲得した商標として登録されている(甲第25号証)。

(c)アメリカ合衆国での著名性について

請求人は、アメリカ合衆国にもダージリン紅茶を輸出し、「DARJEELING」の欧文字のみからなる商標についてもアメリカ合衆国で商標登録を得ている(甲第26号証)。

なお、上記登録商標に関し、アメリカ合衆国では、CERTIFICATION MARK(証明標章)として商標登録を得ている。証明標章は、許可を受けた者の使用により、インドのダージリン地方で生産された紅茶を少なくとも100%含む紅茶又は証明者が定めた仕様をみたすブレンドであることを証明する。

ウ 以上より、日本及び諸外国において「DARJEELING」又は「ダージリン」は、紅茶の産地であるダージリン地方及び紅茶の銘柄であるダージリン紅茶として著名となっている。

したがって、請求人は本件商標の登録無効請求について利害関係を有している。

2 無効理由について

(1)商標法第3条第1項第3号について

本件商標は、「DARJEELING」の欧文字及び葉の図形を普通に用いられる方法で表示した商標である。

「DARJEELING」は、紅茶の産地であるダージリン地方及び紅茶の銘柄としてのダージリン紅茶として広く知られている。したがって、取引者又は需要者は単に商品の産地を表示したものと認識するに止まり、欧文字「DARJEELING」は自他商品識別力を有しない。

前記葉の図形は、甲第10号証に示されたダージリン茶葉の写真の茶葉と酷似している。

したがって、前記葉の図形を「DARJEELING」の欧文字と共に表示することは、紅茶の産地であるダージリン地方を連想させるため、単に商品の産地を表示するに止まる。

商標法第3条第1項第3号の産地は、指定商品が実際に当該土地で生産されていない場合でも、取引者又は需要者が、当該土地で指定商品が生産されていると一般に認識することで足りる。したがって、本件商標をその指定商品「シャツ,ショーツ,その他の被服,バンド,履物」等に使用した場合、取引者又は需要者はダージリン地方で製造された「シャツ,ショーツ,その他の被服,バンド,履物」等と一般に認識するので、「DARJEELING」の欧文字及びそれと共に使用される葉の図形は、単に産地を表示したにすぎず、全体として識別性を欠く商標である。

商品の産地を表示する2以上の標章からなる商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。

したがって、本件商標は、指定商品の産地を表示したにすぎず、自他商品識別力を有しないので、商標法第3条第1項第3号に該当し、無効にされるべきである。

(2)商標法第3条第1項第6号について

上述のとおり、本件商標は、指定商品の産地を表示したにすぎないものであるが、万が一、本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当しない場合でも、 欧文字「DARJEELING」及び該欧文字と共に表示される葉の図形は、いずれも紅茶の産地を表示したにすぎず自他商品識別力を有していないため、本件商標は取引者又は需要者が何人の業務に係る商品であるかを認識できない商標である。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第6号にも該当し、無効にされるべきである。

(3)商標法第4条第1項第16号について

本件商標が、ダージリン地方で製造又は生産されない商品に使用された場合は、需要者は指定商品との関係において、商品の品質、すなわち商品の産地について誤認するおそれがある。

例えば、本件商標を、その指定商品に使用した場合、取引者又は需要者はダージリン地方で製造された「シャツ,ショーツ,その他の被服,バンド,履物」等と誤認するおそれがある。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当し、無効にされるべきである。

(4)商標法第4条第1項第15号について

本件商標は、請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標である。

本件商標は、欧文字「DARJEELING」及びそれと共に葉の図形からなるものであり、著名な紅茶の産地のダージリン地方を連想させる。本件商標が「シャツ,ショーツ,その他の被服,バンド,履物」等に使用された場合、本件商標を付した商品に接する取引者又は需要者は、本件商標が請求人の業務に係る商品又は請求人の許諾を受けた者の業務に係る商品と認識する。

しかしながら、本件商標の商標権者は、本件商標の登録出願に際して請求人の許諾は受けておらず、請求人と何ら取引関係を有しないため、需要者が、請求人の業務に係る商品又は請求人の許諾を受けた者の業務に係る商品と認識することは、出所の混同を生じさせるおそれがある。

この出所の混同を生じるおそれは、他人の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれがある場合のみならず、その他人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれがある場合をもいう。

本件商標の商標権者は、経済的又は組織的に請求人と何ら関係していない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、無効にされるべきである。

(5)商標法第4条第1項第7号について

請求人はインド政府産業省により権限を授けられた唯一の機関である。

請求人は、本件商標の商標権者に対して本件商標の登録出願について許可を与えていない。

本件商標は、請求人を侮辱するものであり、また、請求人はインド政府の機関であることから、インド政府の名及び名誉をも侮辱するものである。本件商標を登録することは、本件商標の商標権者に商標法第4条第1項第7号に規定する公の秩序又は善良の風俗を害する業務及び国際信義に反する業務に従事することを許すことになる。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当し、無効にされるべきである。

以上によれば、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同6号、同法第4条第1項第16号、同15号及び同7号に該当する。

3 答弁に対する弁駁

(1)本件無効審判請求の利害関係の有無について

商標登録無効審判請求の要件としての利害関係は、「ある商標の登録の存在によって直接不利益を被る関係にある者は、それだけで利害関係人として当該商標の登録を無効にする審判を請求することにつき、利害関係を有する者に該当すると解するのが相当である。」と、審決で判断されている(甲第27号証)。

被請求人は、答弁書において、「DARJEELING」ないし「ダージリン」の文字が、紅茶の産地又は名称として知られていることを認めているように、「DARJEELING」の文字を含む商標を付した商品に接した需要者は、同商品は、「DARJEELING」(「ダージリン紅茶の産地」又は「ダージリン地方で生産された紅茶の銘柄」)に関係がある商品と認識するものである。これにより、ダージリン紅茶と関係を有しない者が、「DARJEELING」の文字を含む商標を使用した場合には、あたかもダージリン紅茶と関係があるかのような印象を需要者に与えかねない。このことは、「DARJEELING」のロゴの下で供給される紅茶の品質及び真正を保証し、「DARJEELING」のロゴの独占排他的な一般認識を促進し、市場におけるダージリン紅茶の模倣を防止する役割を担う請求人に直接不利益を与えるものであり、請求人は、本件無効審判請求の利害関係を有していることは明らかである。

被請求人は、請求人がインドで生産される全てのダージリン紅茶を保証及び証明するインドにおける「唯一」の政府機関であるか否かは、不明である旨を述べている。

しかしながら、被請求人が疑問を提起しているのは、請求人が「唯一」の政府機関であるか否かであり、請求人がインドで生産される全てのダージリン紅茶を保証及び証明していること自体に関しては同意している。したがって、被請求人の答弁は、請求人の利害関係を否定するものではない。

被請求人は、請求人は「『DARJEELING』の英文字そのものの使用のライセンスを他人に与える権限もなければ、その第三者の使用を広く規制する権利も持つ者ではない。」旨を述べ、請求人の本件無効審判請求の利害関係を否定している。

しかしながら、商標登録無効審判請求の要件としての利害関係は、「ある商標の登録の存在によって直接不利益を被る関係」の有無であり、「DARJEELING」の英文字そのものの使用のライセンスを他人に与える権限の有無、及び、その第三者の使用を広く規制する権利の有無とは関係はないので、被請求人の答弁書における上記主張は失当である。

被請求人は、ダージリン紅茶が日本及び諸外国において著名であるとは認められないので、請求人は、本件無効審判請求の利害関係を有しないと述べている。

この点について、ダージリン紅茶が日本及び諸外国において著名であることは、請求人が、本件無効審判請求の利害関係を有することの証明になるが、著名性の否定は直ちに上記利害関係を否定するものではないので、請求人が、本件無効審判請求の利害関係を有することを否定しないものである。

また、被請求人は、ダージリン紅茶の輸入割合が少ないことから、請求人の利害関係を否定している。

しかしながら、ダージリン紅茶の生産量は元々多くない(甲第8号証)。具体的には、インド全紅茶収穫量の2%程度にすぎない(甲第28号証)。したがって、日本の総紅茶輸入量における割合を算出することに意味はない。

また、ダージリン紅茶の輸入量自体の多寡を他の紅茶銘柄の輸入量と比較し、ダージリン紅茶の著名性を否定することは、失当である。すなわち、ダージリン紅茶はダージリン地方でしか生産されず、世界中のいかなるところでも真似て生産することができず、それゆえ金の重さにも匹敵するといわれ、オークションでは常に最高値で取引されているので(甲第28号証)、ダージリン紅茶の著名性は、単に同紅茶の輸入量の多寡では否定されない。

(2)本件商標が無効理由を有することについて

ア 商標法第3条第1項第3号について

商標法第3条第1項第3号の該当性は、「当該指定商品が当該商標の表示する土地において現実に生産され又は販売されていることを要せず、需要者又は取引者によって、当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識されることをもって足りる」とされている(甲第29号証)。

したがって、本件商標の指定商品である「被服類」についての名称として現実に知られていないことを以って、上記結論を直ちに導くのは失当である。

また、被請求人が証拠として提出している登録第4799496号は英単語「DARJEELING」及び英単語「DAYS」から構成される商標であり、また、登録第4762824号はカタカナ「ダージリン」及びカタカナ「アッシュ」から構成される商標であるので、商標法第3条第1項第3号の要件である、いわゆる記述的標章「のみ」からなる商標にはあたらないので、上記各商標には、商標法第3条第1項第3号は適用されない。したがって、上記2商標は、商標法第3条第1項第3号の適否に関する証拠としては不適当である。

被請求人は、本件商標を構成する植物の葉は茶葉であると特定できない旨を述べ、「当該図形部分のみを抽出しても、指定商品との関係において十分識別性を有する」と述べている。

しかしながら、請求人は「葉の図形を『DARJEELING』の欧文字と共に表示することは、紅茶の産地であるダージリン地方を連想させるため、単に商品の産地を表示するに止まる」旨を主張している。当該図形部分のみから直ちに、当該植物の葉の図形がダージリン紅茶の茶葉であると認識すると主張しているのではない。被請求人の反論は、請求人の主張内容を正確に理解してなされておらず失当である。

被請求人は、「『DARJEELING』ないし『ダージリン』なる文字は、『紅茶』の産地としては知られていることがあるとしても、本件商標の指定商品である『シャツ、ショーツ、その他の被服』等の産地と認識されている事実は全くない。」と述べ、「DARJEELING」又は「ダージリン」が、本件商標の指定商品である「シャツ、ショーツ、その他の被服」等の産地と一般に認識されることすらないと結論付けている。

しかしながら、「DARJEELING」が、被服の産地と認識される可能性は十分ある。

インドの民族衣装として、「サリー」が良く知られている。インターネット検索エンジンとして著名な「Google」において、「インド」及び「民族衣装」をキーワードとして、日本語のページに限定して検索したところ、約152,000件ヒットし、そのうちの最初の3ページを見たところ、民族衣装「サリー」に関するページが多く掲載されている(甲第30号証)。また、「特別展 インド サリー展」が日本国内において開催されいる(甲第31号証)。これらの事実から、「サリー」が日本国内において、良く知られていることが裏付けられる。

そして、上記検索結果でヒットしたウエブページを見ると、「インドでは、特に女性は民族衣装をいつも身につけている。世界でも自国の民族衣装を常用している割合は屈指のものだろう。」と掲載されており(甲第32号証)、日常的に着用する民族衣装は、同国内において生産されていると考えるのが通常である。そして、「DARJEELING」(ダージリン)は、インドにある地域であることは広く知られているので(甲第3号証ないし甲第6号証)、インド国内において常用されている民族衣装「サリー」が「DARJEELING」(ダージリン)において生産されていると一般的に認識される。

上記事実を看過して、「『DARJEELING』ないし『ダージリン』なる文字は、『紅茶』の産地としては知られていることがあるとしても、本件商標の指定商品である『シャツ、ショーツ、その他の被服』等の産地と認識されている事実は全くない。」と断定することは、適切ではない。

なお、被請求人は、紅茶と被服類は、商品として共通性がなく、商品としての類似性がないことを述べているが、このことと、「DARJEELING」又は「ダージリン」の文字が、本件商標の指定商品である「シャツ,ショーツ,その他の被服」等の産地と認識されうるか否かという問題とは関係がない。

イ 商標法第3条第1項第6号について

本件商標は、全体的一体的に把握されるものであり、被請求人の述べるように、文字部分及び図形部分にそれぞれ分離して、識別性を判断するものではない。本件商標は、欧文字「DARJEELING」及び葉の図形からなる商標であり、全体的統一的に把握すると、「ダージリン」という称呼及びダージリン地方という観念を生じる。そして、ダージリン地方は、民族衣装「サリー」の生産地であるという認識を需要者に生じさせるので、本件商標に係る指定商品との関係において、識別力を有しないものである。

ウ 商標法第4条第1項第16号について

本件商標全体としては、ダージリン地方、という観念が生じるので、ダージリン地方で生産されない被服類に本件商標を使用した場合には、本件商標に係る指定商品の産地の誤認を生じさせる。

エ 商標法第4条第1項第15号について

ダージリン地方において民族衣装「サリー」が生産されていることは容易に連想されるので、需要者はダージリン地方が被服類の産地表示であると誤認する。

また、被請求人は、請求人に係る引用商標(登録第2153713号:別掲(2))は、日本国内において需要者の間に広く認識されている商標ではないので、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生じるおそれがないと述べ、その証拠として請求人に係る登録商標が特許庁電子図書館の「日本国周知・著名商標検索」に掲載されていないことを挙げている。

しかしながら、上記検索結果に掲載されていないことは、直ちに日本国における周知性及び著名性を否定するものではない。その証左として、上記特許庁電子図書館の「日本国周知・著名商標検索」において、ガス供給会社として著名な「東京ガス」、電力供給会社として著名な「関西電力」、及び全国放送局として著名な「NHK」について調べたところ、検索結果はいずれも0件であった(甲第33号証ないし甲第35号証)。しかしながら、「東京ガス」、「関西電力」、及び「NHK」は商標登録されている(甲第36号証ないし甲第38号証)。したがって、請求人に係る登録商標が特許庁電子図書館の「日本国周知・著名商標検索」に掲載されていないことのみを以って、同登録商標が周知又は著名でないと推認されない。

商標法第4条第1項第15号における「出所の混同を生じるおそれ」とは、他人の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれがある場合のみならず、その他人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれがある場合をもいう。

「DARJEELING」(ダージリン地方)は、日本国において広く知られているので、欧文字「DARJEELING」を含む商標が使用された場合は、同商標が付された商標は、請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれがある。被請求人は、上記の点に関して、何ら反論をしていない。

オ 商標法第4条第1項第7号について

インド政府と何ら関係のないフランス国に住所を有する一企業が、本件商標を使用することは、取引者・需要者にインド国と何らかの関係がある者の取扱に係る商品であるかの如く誤認を生じさせるので、インド国の権威と尊厳を損ね、ひいては国際信義に悖るものである。

また、高級紅茶であるダージリン紅茶を想起させる「DARJEELING」を本件商標に係る指定商品である「ブラジャー,パンティー,下着,履物」等に使用することは、高級紅茶であるダージリン紅茶のイメージが連想によって汚染されるおそれがある。このことは、社会公共の利益に反し、又は社会の一般道徳観念に反するような場合に当たるので、公の秩序又は善良の風俗を害するものである。

カ 被請求人は、請求人が欧州共同体商標権、フランス商標権及びノルウェー商標権に対しても異議申立を提起したが、これらいずれの異議申立事件においても、被請求人の主張の正当性が認められ、請求人の主張は退けられている旨を述べている。

しかしながら、被請求人の諸外国における主張内容は明らかでなく、本件審判事件答弁書における答弁の理由と同一であるか否かは不明である。したがって、諸外国において被請求人の主張の正当性が認められたことは、本件答弁書における被請求人の主張を正当化するものではない。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証を提出した。

1 請求の利益について

(1)請求人の歴史及び活動内容について

請求人は、1953年インド紅茶法第4条(甲第2号証)の下において設立されたインド政府の機関であって、インドで生産される全てのダージリン紅茶を保証及び証明するインドにおける唯一の政府機関であると主張している。しかし甲第2号証その他を見る限り、少なくとも請求人が「唯一の」政府機関であるかどうかは不明である。

(2)「DARJEELING」のロゴに関する請求人の行うライセンスプログラムついて

請求人は、「上記契約により、請求人は「DARJEELING」のロゴの下で供給される紅茶の品質及び真正を保証し、「DARJEELING」のロゴの独占排他的な一般認識を促進し、市場におけるダージリン紅茶の模倣を防止する役割を担っております」と主張し、請求人のライセンスプログラムで使用される商標を掲載する。

しかしながら、甲第2号証、甲第12号証並びに甲第13号証から明らかなとおり、請求人の地位はダージリン紅茶の真正の保証をするものであるとしても、その保証をする際に使用する請求人の商標は、甲第12号証ないし甲第18号証のとおりのものであって、茶葉と思われる葉を手にした女性の図と「DARJEELING」の文字が円状に一体となった引用商標のみである。通常、ライセンスができるのは商標権者が所有する商標と同一の商標そのものであるべきことから考えれば、請求人には広く一般的に「DARJEELING」の英文字そのものの使用のライセンスを他人に与える権限もなければ、その第三者の使用を広く規制する権利も持つものではない。ただ単に、請求人のいうライセンスプログラムはダージリン地方で生産された紅茶以外の紅茶の茶葉を含まない紅茶商品であることを証明する、紅茶の産地を特定するためのものである(甲第11号証)。したがって、請求人はいかなる第三者の「DARJEELING」からなる文字自体の使用を規制する権限もなく、請求人の主張は不当なものである。

(3)ダージリン紅茶の著名性について

ア 日本でのダージリン紅茶の著名性

日本紅茶協会の統計によれば、2000年度中に日本へ輸入された紅茶(バルク)15,953,224kgのうち、インドからの輸入量は4,056,591kgであり、総輸入量の25%である。また同年度に、3kg以下の直接包装した紅茶の総輸入量1,996,332kgのうち、インドからの輸入にかかるものは230,407kgであり、総輸入量の11%にすぎない。こうしてみると、日本はアジア各国、欧州各国など広く世界から大量の紅茶を輸入しているが、インドからの紅茶の輸入量が最も多いというわけではないのが分かる(乙第1号証)。

さらに、請求人の示す2001年度のダージリン紅茶の日本への輸出量142,990kgの、2000年度の日本の総紅茶輸入量(バルクのみ)15,953,224kgとの割合を検討すると(乙第1号証)、わずか0.9%に止まるものである。とすれば、日本の紅茶の輸入量自体は多いものの、ダージリン紅茶に特定した輸入量は決して多くないことが分かる。

また、請求人が主張する、請求人が世界各国へ輸出した紅茶の量(200年度)2,663,000kgの、世界各国がそれぞれ輸出している総世界紅茶輸出量(2000年度、日本紅茶協会のデータ)1,331,295tに対する割合は、0.2%にしかすぎない(乙第2号証)。しかも、請求人は自ら甲第2号証、甲第12号証、甲第13号証で明らかにしているように、ダージリン紅茶のみを対象に産地の証明をする機関ではないことを考えると、請求人の主張する2000年度の輸出量2,663,000kgのうちダージリン紅茶はそのごく一部に当たる量でしかないことに留意すべきである。よって、請求人がその真正を証明して各国へ輸出するダージリン紅茶を含む紅茶の量は、世界的にみて大部分を占めると推認できるような事実はない。

次に、請求人が費やした広告宣伝費の2001年から2002年までにかけた費用は約3,915,000円(1ルピー2.61円換算)であり、一般的にみて広告宣伝費としては高いものとはいえない。また日本国内での宣伝の頻度について何等言及がなく、請求人との関連において日本国内で広く需要者に知られていると判断するに足りる証拠が提出されているとはいえない。

以上から、ダージリン紅茶が日本において著名であると断言はできないものであり、ましてや請求人との関連での著名性となればなおさら、その著名性の認定はできないものである。

イ 諸外国での「ダージリン紅茶」の著名性について

(a)請求人はフランス共和国での博覧会、大手航空会社の機内雑誌、インド工芸品を販売するフランスのウエブサイトの情報を掲載しているが、その頻度や期間などが示されておらず、請求人との関係でダージリン紅茶をフランス国民に広く知られるほど広告宣伝活動していると納得できる資料が提出されていない。したがって、係る請求人の主張は認められない。

(b)また、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国における著名性については、商品「茶」についての使用による識別性の獲得により、商標登録を得た旨主張しているが、そもそも商標登録をしたことのみをもってその商標が著名性をも獲得しているとはいえないものである。たとえ使用による識別性を認めた上での登録だとしても、その商標が著名になったとまでは認定されていないのであるから、かかる請求人の主張も認められない。

(c)さらに、アメリカ合衆国での著名性についても、「DARJEELING」の文字を含む請求人の標章を証明商標として登録したことをもって主張しているが、前述のとおり、商標登録の事実のみをもって著名性の獲得までも主張し得るものではない。また請求人は何ら著名性の獲得を証明するに足る資料を添付しておらず、かかる主張も認められない。

2 以上から、被請求人は、日本及び諸外国において「DARJEELING」及び「ダージリン」が紅茶の産地であるダージリン地方及び紅茶の銘柄であるダージリン紅茶として著名であると認めることはできないし、請求人との関係においてダージリン紅茶が著名であると認めることもできない。

したがって、被請求人は、請求人が本件無効審判請求の利害関係を有していないと考える。

3 無効の理由について

(1)商標法第3条第1項第3号について

請求人は「DARJEELING」は、紅茶の産地であるダージリン地方及び紅茶の銘柄としてのダージリン紅茶として広く知られていることをもって、需要者ないし取引者は当該部分を、単に商品の産地を表示したものと認識するものに止まり、欧文字「DARJEELING」は自他商品識別力を有しないと主張する。

しかしながら、商標法第3条第1項第3号は、「その商品の産地...を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」と規定している。

つまり、「その商品」なる文言は、商標の識別性を本件商標の指定商品との関係で具体的に判断するとの主旨であるから、本件の場合も「DARJEELING」の文字が本件商標の指定商品である被服類について識別性を有するか否かを具体的に判断すべきである。

ここで、請求人は審判請求書の「請求の利益について」の項目において主張しているように、「DARJEELING」の文字は、「紅茶」の産地又は名称としては知られていることが分かる。しかし、市場において需要者に、本件商標の指定商品である「被服類」についての名称として現実に知られている事実はない。したがって、本件商標ないしこれに含まれる「DARJEELING」の欧文字部分は指定商品について識別力を有しているといえる。例えば、「DARJEELING」の語を商標に含み、指定商品を被服類としている登録第4799296号があり(乙第3号証)、被服類以外を指定商品とする登録第4762824号(乙第4号証)がある。つまり、特許庁においても、指定商品との関係において「DARJEELING」の語の識別性を判断し、本件商標と同じ被服類の分野においては、識別性のある語として商標登録を認めている。

また、請求人は、本件商標を構成する図形の部分がダージリン茶葉の写真の葉と酷似していると主張し、本件商標の図形を「DARJEELING」の文字と共に表記すると、紅茶の産地であるダージリン地方を連想させ、単に商品の産地を表示するに止まると主張する。

しかしながら、請求人が指摘する部分的な茶葉の写真から、需要者ないし取引者が即座に「茶葉」であると認識するとは考え難い。茶葉であるのか、他の植物の葉であるのかは、実際にその葉を見なければ通常分からないものであり、本件商標の図をもって茶葉であると特定し、さらに請求人が比較する他人の茶葉の写真と類似するとの主張は妥当性を欠くと考える。仮に本件商標の図が茶葉であったとしても、ダージリンの紅茶の茶葉であるかどうかまで認識することは困難である。

さらに、本件商標の当該図形は、樹木の葉をデフォルメして描写しているものであり、請求人の指摘する写真と酷似していると判断することは認容できない。樹木の葉の形状・構造は一般的に共通しているものであって、樹木の種類、大きさが違っても葉の生え方などは共通性を持っているので、本件商標の図形の葉の描写が一般的な葉の形態を有しているのは自然なことであり、それをもって、請求人の提示する1枚の葉の写真と「酷似している」と断定するのは妥当ではない。しかも、本件商標を構成する当該葉の図は広く一般的に誰もがその葉を描くような汎用的なものではなく創作されたものであるので、図そのものに識別力が備わっているのである。

また指定商品との関係を検討してみても、普通に用いられる標章ということはできない。

したがって、当該図形部分のみを抽出しても、指定商品との関係において十分に識別性を有するものである。

つぎに、請求人は、商標法第3条第1項第3号の産地表示の判断について、指定商品が実際に当該土地で生産されていない場合でも、取引者ないし需要者が、当該土地で生産されていると一般に認識することで足りるため、本件商標も被服についての産地表示にすぎない旨主張している。

しかし、当該地名にかかる地方で生産されていると需要者が認識するかどうかは、具体的な指定商品との関係で決まるものであり、需要者の一般的な注意力をもって、関係性があると判断しない商品にまで産地表示であると認定するのは妥当でない。本件商標について検討するに、請求人も再三述べているように、「DARJEELING」ないし「ダージリン」の文字は、「紅茶」の産地としては知られていることがあるとしても、本件商標の指定商品である「シャツ、ショーツ、その他の被服」等の産地と認識されている事実はない。

市場において、紅茶と被服類等とでは、商品そのものの性質、用途、目的が異なっているばかりか、生産地、販売地、需要者、購入時期、使用目的なども大きく異なっており、商品として共通性がなく、商品としての類似性のないものである。

例えば、販売地について、各商品が配置される場所は通常、食品のエリアと衣料品のエリアとで離れており、配置が仮に近い場所にあったとしても、陳列される棚、陳列場所は隣り合わせになるようなことは、製品の性質上考えにくいことである。また、被服業者と茶などの植物栽培業者では生産者の観点からも大きく異なっており共通性がない。

したがって、需要者は本件商標の指定商品である被服類等がダージリン地方で生産されるものであると連想するのは極めて困難であり、「DARJEELING」の文字を本件商標の指定商品についての産地表示と捉えて、識別性を欠くと判断することは到底できない。

以上から明らかなように、本件商標には、指定商品との関係においてそれぞれ識別力のある欧文字「DARJEELING」と、識別力のある樹木の葉を描いた図形部分が含まれており、その各部分及び全体は、指定商品との関係で識別性があるのであるから、商標法第3条第1項第3号で規定するような、指定商品との関係で普通に用いられる識別性のない標章のみからなる商標には該当しない。よって、本件商標にはかかる無効理由は存在しない。

(2)商標法第3条第1項第6号について

請求人は、商標法第3条第1項第3号に該当しない場合であっても、本件商標は取引者ないし需要者が何人の業務に係る商品であるかを認識できない商標であり、商標法第3条第1項第6号の無効理由を有すると主張する。

しかしながら、上述の第3号での被請求人の主張にあるように、本件商標を構成する文字部分、図形部分それぞれ、及び全体としても指定商品との関係において識別性を有する標章であり、指定商品との関係において識別性を有する。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第6号の無効理由には該当しない。

(3)商標法第4条第1項第16号について

請求人は、本件商標がダージリン地方で製造又は生産されない商品に使用された場合には、需要者が指定商品との関係において、商品の品質、すなわち商品の産地について誤認するおそれがあると主張する。

しかし、前記同法第3条第1項の規定について検討・主張したとおり、本件商標自体が識別性のある商標であり、需要者が指定商品との関係において、その産地を示すものであると推認するような関係にはないのであるから、本件商標に商標法第4条第1項第16号の無効理由は存在しない。

(4)商標法第4条第1項第15号について

請求人は、本件商標が、請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあると主張する。つまり、本件商標に含まれている「DARJEELING」の文字と葉の図形が、紅茶の産地のダージリン地方を連想させ、本件商標の指定商品に使用されることにより請求人の業務に係る商品又は請求人の許諾を受けた者の業務に係る商品と認識され、ないしは請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認され、需要者が商品の出所について混同するおそれがあると主張する。

しかしながら、これまで被請求人が述べてきたように、本件商標の識別性、本件商標の指定商品の産地を検討するにあたっては、本件商標とその指定商品との関係とを個別具体的に検討して判断する必要があるところ、本件商標はその指定商品の被服類等との関係において、一般的に需要者が産地表示であると判断する事実は全くない。したがって、需要者が本件商標を看取した場合に、ダージリン産の紅茶であることを証明することを業とする請求人が提供する商品ないしはその関係者が提供する商品であると誤認するようなおそれは生じない。

さらに、本規定は「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある」ことを適用の要件としているが、「他人の業務に係る」ということから考えれば、「本件請求人の業務に係る」商品又は役務と混同を生じるおそれがあるものと考えるべきである。ここで、本規定のいう混同のおそれがある商標の認定をするには、当該他人の商標が日本国内において需要者の間に広く認識されている商標であることが前提である。そうしたいわゆる周知・著名な商標であるかどうかは、「日本有名商標集」(乙第5号証)に掲載された商標であるか、日本国特許庁の特許電子図書館にて検索できる「日本国周知・著名商標検索」(乙第6号証)において掲載されている商標であれば、周知・著名商標であると推認できるところ(乙第7号証)、引用商標(乙第8号証)は、このどちらの文献等にも掲載されていない。したがって、請求人の登録商標は日本国内において周知・著名とは認定できないものであり、被請求人の商品を目にした一般需要者が、請求人の業務に係る商品又は役務と出所の混同を起こすおそれはないと考えるのが妥当である。

また、被請求人と請求人の商標を対比するに、両商標ともに「DARJEELING」の文字と図形とが結合しているが、結合商標を捉える場合にはまず文字と図形と一体として捉えるのが原則であり、次に文字と図形を区別できるときは分離して判断するところ、一体として、また各部分を分離して捉えて両商標を対比すると、被請求人の商標は、葉の図形と「DARJEELING」の文字とが2段に記載されているのに対し、引用商標は、葉を持った女性の図と「DARJEELING」の文字とが円形にまとまって記載されており、文字部分は共通しているものの、図形部分は、葉と女性の像とで大きく異なっており、商標の類似性がないものである。

加えて、上記したとおり、市場における商品としての紅茶と被服類等とは類似性がないのであるから、両商品を混同する可能性は極めて低いものである。

上述のように、請求人の商標が需要者に広く知られていない現状においてはなおさら、両商標の類似性は否定され、需要者は両商標をたとえ同時に看取したとしても区別して認識することができ、被請求人の商品を請求人の商品と出所の混同を生じるおそれはない。

よって、本件商標には、本号の無効理由は存在しない。

(5)商標法第4条1項第7号について

請求人は、被請求人が、請求人の承諾を得た上で本件商標の登録出願をしていないことを不服としているが、請求人の権限には、各国での商標登録出願の権利を与える権限までは含まれているものではないと考えるので、かかる主張は受け入れることはできない。

また、請求人は、本件商標の登録を認めることが、請求人やインド政府の名及び名誉を侮辱する、公の秩序又は善良の風俗を害する業務及び国際信義に反する業務を許すことになると主張する。

しかし、商標審査基準(改訂第7版)によれば(乙第9号証)、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」とは、その構成がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものであることを意味するところ、本件商標の構成は、樹木の葉の図と、「DARJEELING」の文字のみからなり、どの部分もきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるようなものではないのは明らかである。

さらに、国際信義に反する商標であるという請求人の指摘に対しても、本件商標にはインド国ないしインド政府を侮辱するような文言ないし図を含んでいるものではないため、かかる主張も到底受け入れられない。

したがって、本件商標には、本号の無効理由は存在しない。

4 むすび

以上のとおり、本件商標は、請求人が指摘する商標法第3条第1項第3号、同第6号、同法第4条第1項第16号、同第15号及び同第7号の理由には該当しないので、本件商標の登録は維持されるべきものである。

第4 当審の判断

1 請求の利益について

被請求人は、本件審判の請求について、請求人は本件無効審判請求の利害関係を有していないと主張しているので、この点についてみるに、「1953年インド紅茶法」(甲第2号証)及びこの点に関する請求人の主張よりすると、請求人は、1953年インド紅茶法下に設立されたインド政府機関と認められ、我が国を始め各国において、別掲(2)の引用商標の登録を得ており(甲第13号証ないし甲第18号証)、この商標の下で供給される紅茶の品質及び真正を保証していることが認められる。

そうすると、請求人は、「DARJeeLING」の欧文字を構成中に有している本件商標の存在によって直接不利益を被る関係にある者といえ、本件商標の登録を無効にする審判を請求することにつき、利害関係を有する者に該当するというのが相当である。

2 商標法第3条第1項第3号について

本件商標は、別掲(1)のとおり、四角形内に植物の葉とその茎の部分が渦を巻くようにデフォルメされた図形の下に「DARJeeLING」の欧文字を配したものであって、上部の図形部分そのものは独創性を有する特異な植物図形というのが相当である。

そして、下部の「DARJeeLING」の文字は、紅茶の産地、あるいは紅茶の銘柄名としては我が国において知られているとしても(甲第3号証ないし甲第6号証)、商品「紅茶」と本件商標の指定商品「シャツ、ショーツ、被服」等との関係においては、その用途、目的が大きく異なっており、商品としての共通性がほとんどなく、類似性の程度が極めて低いものといえるものであるから、本件商標の指定商品の被服等の需要者・取引者が本件商標の「DARJeeLING」の文字部分をその商品の産地、販売地の自他商品識別標識として捉え認識、理解するとはいい難いものである。

そうすると、本件商標は、指定商品との関係からすると、文字部分、図形部分及び全体としても、自他商品識別標識としての機能を果たし得るというべきである。

なお、請求人は、本件商標の指定商品との関係において、インドの民族衣装「サリー」が良く知られ、本件商標をその指定商品に使用するときは、サリーがダージリンにおいて生産されていると一般的に認識する旨主張しているが、サリーがインドの民族衣装として知られているとしても、本件商標の構成中「DARJeeLING」の文字は、紅茶の産地、あるいは紅茶の銘柄名として知られていること前記のとおりであり、該文字がサリーの生産地と認識されるとする証拠もないことより、その主張は採用することができない。

3 商標法第3条第1項第6号について

本件商標は、その指定商品との関係において、上記のとおり、文字部分、図形部分及び構成全体がそれぞれ商品の産地、販売地として認識し得ないものであって、自他商品識別標識としての機能を果たし得るものであるから、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標とはいえないものである。

4 商標法第4条第1項第16号について

本件商標は、上記のとおり、文字部分、図形部分及び構成全体がそれぞれ商品の産地、販売地として認識し得ないものであるから、その指定商品との関係において、商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標とはいえないものである。

5 商標法第4条第1項第15号について

本件商標と引用商標とは、それぞれ別掲(1)及び(2)のとおりであり、本件商標が四角形内に植物の葉とその茎の部分が渦を巻くようにデフォルメした独創性を有する特異な植物図形の下に「DARJeeLING」の欧文字を配したものであるのに対し、引用商標は、円内の中央右よりから円の三分の二程度円の内側に沿って、黒く塗りつぶされた影絵のような葉を持った女性の図と「DARJEELING」の文字とが円形にまとまって描かれており、文字部分は共通しているものの、図形部分は、植物の葉と極めて小さい葉を持った女性の像という極端な差を有するものである。

そうすると、引用商標が請求人に係る業務(ダージリン紅茶の保証及び証明)に使用され、我が国において、第29類「ダージリン産の紅茶および紅茶入り清涼飲料」を商品とし商標登録(甲第13号証)されているとしても、上記のとおり、本件商標は、指定商品を「被服」等とするものであり、その用途、目的が引用商標と全く異なっており、商品としての共通性がほとんどなく、かつ、商標としても、要部である図形部分が外観上全く異なる類似性の程度が極めて低いものである。

したがって、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が引用商標を連想、想記して、その指定商品である商品「被服」等が請求人又は請求人との間で経済的若しくは組織的に関係ある者の業務に係る商品であるかのように誤認するおそれはないというべきである。

6 商標法第4条第1項第7号について

本件商標は、別掲(1)のとおり、四角形内に植物の葉とその茎の部分が渦を巻くようにデフォルメした独創性を有する特異な植物図形の下に「DARJeeLING」の欧文字を配した構成よりなるものであって、その構成中に、請求人やインド政府の名及び名誉を侮辱するような、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形を有するものでないし、また、全体をもってしても、請求人やインド政府の名及び名誉を侮辱するような、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるようなものではない。

さらに、本件商標は、上記第1のとおりの商品を指定商品とするものであるところ、本件商標をこれらの指定商品に使用することがインド政府の名及び名誉を侮辱するものとはいい難い。

また、請求人が1953年インド紅茶法(甲第2号証)の下に設立されたインド政府機関であるとしても、本件商標は、その指定商品が前記のとおり「シャツ,ショーツ,被服」等であり、1953年インド紅茶法に係る「紅茶」とは、その用途、目的が全く異なっており、商品としての共通性がほとんどなく、かつ、本件商標と引用商標とは、商標としても、要部である図形部分が外観上全く異なるものであることからすると、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものとはいい難いし、国際信義に反する商標であるともいえないものである。

7 したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同第6号、同法第4条第1項第16号、同第15号及び同第7号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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