結論テキスト
その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2006−89140(T2006−89140/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4973193号商標(以下「本件商標」という。)は、「千年一」の文字を横書きしてなり、平成16年6月7日に登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同18年7月28日に設定登録されたものである。
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、商標目録1、商標目録2及び甲第1号証ないし甲第164号証(枝番号を含む。)を提出した。
請求人が商品「日本酒」について使用している商標(以下「請求人商標」という。)は、別掲のとおりである。
請求人は、1875年(明治8年)に創業し、1951年(昭和26年)5月19日に株式会社を設立して以来、今日に至るまでの約130年余り、一貫して請求人に係る商号の要部となる「千年一」を商品「日本酒」の商標として、継続して使用きた(甲第113号証 陳述書)。
2000年(平成12年)、2001年(平成13年)と二年連続で全国新酒鑑評会において金賞を受賞し、平成16年にも入賞している(甲第6号証、甲第7号証、甲第34号証ないし甲第36号証、甲第51号証、甲第53号証、甲第56号証、甲第57号証、甲第66号証、甲第78号証、甲第86号証、甲第88号証、甲第150号証、甲第151号証、甲第152号証)。
1995年(平成7年)1月17日の阪神大震災により、多くの酒蔵が酒造りを断念する中、1960年(昭和35年)には島内に所在していた地酒メーカー14蔵のうち、現在では残存する2蔵のうちの一つとなっている(甲第3号証ないし甲第50号証、甲第103号証ないし甲第105号証、甲第113号証 陳述書)。
震災からの請求人の復興は、1996年(平成8年)2月25日株式会社サンテレビジョン「ふるさとステーション情報 兵庫紀行」で放映された。(甲第110号証のDVD)。
請求人は、酒蔵をミニ資料館として一般観光客等の見学にも無料で応じる等、淡路島の復興にも力を注いでいる(甲第3号証ないし甲第50号証)。
その間、第38類(大正10年法)「日本酒類及び其の模造品」について縦書き漢字文字「千年一」を1950年(昭和25年)9月27日より1970年(昭和45年)9月27日まで所有していた(甲第111号証 商標登録第392069号登録原簿、甲第112号証 商標出願公告昭25−7612号商標公報、甲第163号証 商標登録第392069号商標登録通知書)。
請求人は、少なくとも130年も前から、商品「日本酒」に請求人商標を付して製造・販売してきたものであり、しかも、「千年一」の商標を使用する日本酒は、近畿2府4県はもとより、全国に他にはない(甲第114号証 兵庫県酒造組合連合会証明書、甲第145号証 株式会社フルネット発行「日本酒 酒蔵 電話帳」2001年版182頁、甲第146号証 昭和53年12月15日 株式会社 彩光社発行 「日本酒大事典」 403頁、甲第147号証 醸界タイムス社刊「全国 酒類製造名鑑」1999年、甲第148号証 昭和58年10月1日 毎日新聞社刊 「日本酒」、甲第157号証 日本酒造組合中央会発行 通常総会議決権数 FAX写し)。
そして、兵庫県酒造組合連合会でも連合会内での、請求人商標の周知性は認めるものである(甲第114号証 兵庫県酒造組合連合会証明書)。
NHK スタジオパーク・パークギャラリーで開催された、NHKサービスセンター主催「日本酒の歴史と文化展」にも1997年(平成9年)9月23日から10月5日出品された(甲第149号証「日本酒の歴史と文化展」チラシ写し)。
2000年(平成12年)3月18日から9月17日まで、淡路島で開催された「国際園芸・造園博 ジャパンフローラ 2000」即ち、「淡路花博」は、6,945,336名の集客があったが、請求人の所属する東浦町観光協会も35番の展示ブースを有して請求人も展示販売した(甲第153号証 国際園芸・造園博「ジャパンフローラ2000日本委員会」、財団法人 夢の架け橋記念事業協会 2001年3月30日 編集・発行国際園芸・造園博「ジャパンフローラ2000」公式記録)。展示ブースでは、請求人は5,213.6リットル、11,491,089円の売上げを得た(甲第154号証 淡路花博 売上高証明書 淡路市観光協会発行)。
よって、少なくとも、取引者又は需要者の間では近畿圏においては、請求人商標は、請求人の商品日本酒を表す商標として周知著名であるといえる(甲第3号証ないし甲第96号証、甲第103号証ないし甲第110号証、甲第114号証)。
更に、今日の IT関連事業の普及により、2001年(平成13年)には請求人もインターネット上でホームページを立ち上げ、インターネットの通信販売によって全国の需要者又は取引者との取引も可能となっており、同インターネットで検索したところ、一般消費者が淡路島を観光した際に美味しかったお酒、お土産として購入した酒等としても既に数多く紹介されており、請求人商標の周知・著名度は現在も確実に拡大されつつあるものである(甲第3号証ないし甲第96号証、甲第103号証ないし甲第110号証)。
したがって、請求人商標は、商品「日本酒」について使用される周知・著名商標である。
本件商標と請求人商標とは、相互に「センネンイチ」の称呼を生じ、使用商品ないし指定商品も共通し、請求人商標は日本酒について周知著名であるから、両者は出所の混同を生じる。
被請求人株式会社ダイトウ・ライフは、酒類を販売する法人である。
(1)請求人とは、甲第116号証ないし甲第123号証 請求人宛被請求人からの未納税移入証明書写しに明らかなように、少なくとも2001年(平成13年)11月5日から2005年(平成17年)3月31日まで、被請求人は、請求人から清酒を購入し、輸出していた。
未納税移入証明書は、取引段階では、酒税が含まれていない取引をしたときに取り交わす書類である。未納税移出通知書は、請求人から被請求人に送付され、未納税移入証明書は、被請求人から請求人に送付され、未納税移入申告書は税務署に送付される。
(2)甲第124号証ないし甲第130号証は、2002年(平成14年)7月29日付けから2005年(平成17年)3月29日付けまでの、請求人より被請求人宛の清酒の送り状写しである。
(3)甲第131号証ないし甲第135号証は、2003年(平成15年)6月6日付けから同年10月9日付けまでの、被請求人より請求人宛の連絡書写しである。
(4)甲第136号証及び甲第137号証は、2005年(平成17年)3月18日付けないし同年3月19日付け請求人宛の被請求人注文書である。
(5)甲第138号証及び甲第139号証は、2001年(平成13年)11月8日付けないし20004年(平成14年)4月20日付け請求人宛の被請求人書類送付案内である。
(6)甲第140号証は、2005年(平成17年)3月29日付け被請求人宛請求人からの未納税移出通知書写しである。
(7)甲第141号証は、2001年(平成13年)6月18日付け須賀川税務署長 酒類販売業免許通知書写しである。被請求人より請求人に送付されたものである。
(8)甲第142号証は、2001年(平成13年)9月19日付け須賀川税務署長 酒類蔵置場設置許可通知書写しである。被請求人より請求人に送付されたものである。
このように、被請求人は、請求人商標が付された商品につき、請求人と取引関係にあり、請求人商標の存在については熟知しているものである(甲第155号証 請求人が被請求人に販売していたときに使用したラベル、甲第156号証 被請求人から請求人に提示された販売取引契約書案写し、甲第158号証 通信販売対象の課税移出数量証明書写し、甲第159号証 被請求人への得意先別・売上明細書写し)。
すなわち、甲第158号証「通信販売対象の課税移出数量証明書」とは、請求人が被請求人へ提出した課税移出数量であり、2003年(平成15年)4月ないし2004年(平成16年)3月までの期間が91キロリットルである。洲本税務署へ提出した実態調査による課税移出量は、2003年(平成15年)10月ないし2004年(平成16年)9月迄の期間の純課税移出数量は実数86キロリットルである。
ここに純課税移出数量とは、
課税移出−戻入−欠滅=純課税移出数量、をいう。
甲第159号証は、請求人が被請求人と取引した全数量である。
このような経緯から、請求人は、2002年(平成14年)3月被請求人と販売取引の契約を締結した(甲第143号証 販売取引契約書写し、甲第144号証 取引についての覚書写し、甲第113号証 陳述書)。同契約書に基づく「取引についての覚書」は2003年(平成15年)9月に締結された(甲第144号証)。
しかしながら、請求人と被請求人は商品「日本酒」の取引については契約したが、被請求人の商標登録出願については何等許諾したことはない。然るに、被請求人は請求人との取引の際に請求人商標が登録出願されていないことを確認し、請求人に商標に関する知識がなかったことを奇貨として商標登録出願したものである(甲第113号証 陳述書)。
実際に、被請求人は、本件商標の出願手続を済ませたことをおくびにも出さず、その翌日に淡路島へ来て、請求人が商標登録していない事実のみを指摘したため、請求人は念のため商標登録出願したところ、本件商標は請求人商標より約1ヶ月前(平成16年6月7日付)に登録出願されていた(甲第1号証、甲第113号証 陳述書、甲第160号証の1 請求人及び被請求人写真の説明、同の2 請求人及び被請求人写真の写し)。
淡路島での、被請求人の滞在費は、被請求人を信頼した請求人が負担した(甲第161号証 株式会社夢舞台 ウェスティンホテル淡路請求書 甲第162号証 株式会社夢舞台 ウェスティンホテル淡路請求書振込金受領書)。
「請求人及び被請求人写真の写し」は(甲第160号証の2)、被請求人の当時の社長が部長とともに淡路島に来た時、請求人とともに写真撮影を求め、後日写真を請求人宛に送って来たものである。
そこで、請求人は被請求人に対し書面にて詳細を問い合わせ、かつ、本件商標の返却を申し出たところ、被請求人は、あくまで請求人に代わって本件商標を登録出願した旨を主張するばかりか、韓国においても商標出願した旨の回答があった(甲第10号証、甲第99号証ないし甲第101号証、甲第113号証 陳述書)。
その後も、請求人は被請求人に対し、本件商標の返却をするよう再度求めたが、被請求人からは本件商標の取得後に譲渡をするという回答で、本件商標の返却について応じるところがない(甲第102号証、甲第113号証 陳述書)。
そこで、販売取引契約の更新拒絶、信頼関係破壊に基づく契約解除を通知した(甲第97号証の1ないし4 平成16年11月15日 千年一酒造株式会社書状 写し、甲第98号証の1ないし4 平成17年3月29日 千年一酒造株式会社 書状 写し)。
被請求人は、請求人商標が付された商品につき、請求人と取引関係にあり、請求人商標の存在については熟知しているものであるから、敢えて本件商標を取得することは、請求人の商標を取得する不正の意図が明確で、公正な取引秩序を乱すおそれがある。
本件商標は、請求人商標と称呼上類似するだけでなく、その指定商品「日本酒」についても請求人商標の使用商品「日本酒」と抵触し、100年以上の長きにわたって請求人商標を使用してきた事実から、少なくとも請求人商標が取引者又は需要者の間では近畿圏においては、請求人商標は、請求人の商品日本酒を表す商標として周知著名であるといえる(甲第3号証ないし甲第96号証、甲第103号証ないし甲第110号証、甲第114号証)。
したがって、本件商標は、その指定商品に使用した場合、需要者間に請求人の業務と出所の混同を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当する。
本件商標が、日本国内で指定商品「日本酒」について使用された場合には、周知・著名商標である請求人商標の出所表示機能を希釈化させ、その名声を毀損させるものであるとともに、被請求人には不正の目的があるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
請求人と被請求人は、3年以上にわたり請求人商標が付された商品につき、取引関係にあり、被請求人は、平成15年9月頃より請求人と販売取引の契約を締結し、両者間には信頼関係に基づく、継続的契約関係が形成されていたものである。したがって、請求人商標の存在については熟知しているとともに、通常の場合よりも両者は強い信頼関係で結びつけられているものといえる。
しかるに、本件商標の正当な権利者である請求人に対し、本件商標を無断で登録出願し、本件商標の返却依頼を言葉巧みに拒絶した事実は、信頼関係を破壊するに充分なものであって、被請求人に強い不正の意図ないし悪意があるのは明らかであり、公正な取引秩序を乱すおそれがあり、社会の一般的道徳観念に反するもので商標制度の趣旨に反するものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。
裁判例でも、商標法第4条第1項第7号に関して、契約関係にある当事者間で商標権者の商標を無断で取得してしまった事案(東京高裁平成11年12月22日判決「DUCERAM」 平10年(行ケ)第185号審決取消請求事件)がある。
本件も、国際的であるか、国内的であるかを異にするのみで、契約関係にある当事者間で商標権者の商標を無断で取得してしまった点で事案を共通とするものであり、同様に商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
請求人の名称である商号「千年一酒造株式会社」は、1951年(昭和26年)より現在まで継続的に使用されており、少なくとも兵庫県一帯及び淡路島周辺において周知・著名な名称、商号であることは明らかである。
商標「千年一」についても請求人の名称、商号の略称として名称、商号と同様に継続して使用されたものであり、本件商標が請求人の名称の著名な略称であることは、取引者又は需要者の間で既に十分認識されていることは明らかであるから、本件商標は商標法第4条第1項第8号にも該当する。
被請求人は、あくまで請求人に代わって本件商標を登録出願した旨を主張する(甲第99号証ないし甲第102号証)。よって、被請求人には自ら使用の意思がなく、商標法第3条第1項柱書に違反する。
(1)被請求人の答弁書における商標法第4条第1項第7号についての主張は、事実に反しており、本件商標登録後も譲渡がされないので、請求人は無効審判を請求したものである。
(2)被請求人の本件商標の認識
しかるところ、被請求人も、「被請求人株式会社ダイトウ・ライフは、請求人から清酒を購入していてこれを韓国に輸出していた会社であり、取引関係にあったことは認める」、「請求人と被請求人とは取引関係にあったことは認める」と自認する(答弁書5頁3ないし4行、8頁24行)。乙第1号証 陳述書においても同様であり、更に請求人の商標の存在、商標登録されていないことを確認した上で本件商標登録出願したことも自認している(乙第1号証 陳述書1頁14行ないし2頁5行、答弁書5頁22行ないし25行)。
(3)被請求人の不正の意思について
被請求人は、権利取得後に請求人に譲渡することを伝えているから、不正の意思はないと主張する(答弁書6頁4行ないし10行、8頁24行ないし27行)。
しかし、登録後も譲渡がされないので、請求人は無効審判を請求したものであり、無効審判請求後も、被請求人は依然として、本件商標を返却するとは申し出てこない。
更に、商標法第3条第1項柱書きの主張について、被請求人は、「被請求人は本件商標の付された日本酒を ... 今後も使用する予定であり商標法第3条第1項柱書に違反しない。」と主張しており(答弁書9頁7行ないし9行)、被請求人に本件商標権を請求人に返還する意思のないことを自ら認めている。返還するとの言葉と裏腹に、返還する意図のないことあきらかである。
よって、被請求人には、本件商標は請求人の商標であることを熟知しながら本件商標を取得し、請求人に返還の意思が全くないことあきらかである。
(4)すなわち、被請求人は、請求人商標が付された商品につき、請求人と取引関係にあり、請求人商標の存在については熟知しているものであるから、敢えて本件商標を取得することは、請求人の商標を取得する不正の意図が明確で、公正な取引秩序を乱すおそれがあるといえる。
よって、被請求人の主張は事実に反し妥当ではなく、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第19号、同第7号、同第8号及び同法第3条第1項柱書に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
被請求人は、「本件請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
本件商標は、被請求人「株式会社ダイトウ・ライフ」により登録出願され、請求人から刊行物の提出があり、これを証拠として拒絶査定がなされ、これを不服として平成17年4月5日付け審判請求(不服2005−58511)を行ない、審理の結果、登録の審決が出され、平成18年7月28日に設定登録されたものである。
請求人は、請求人商標を使用していたことを証拠で主張しているが、淡路島周辺の限られた地域の地酒としては知られていたとしても、近畿地方全域に亘って周知著名であるという証拠は示されていない。また酒造メーカーの一覧を証拠として挙げているが、一覧に掲載されているだけで、これら酒造メーカーで日本酒に使用しているという商標全てが、本件商標を無効にできる程度の周知著名性を有しているものではない。
請求人は、1875年(明治8年)に創業し、今日に至るまでの約130年余り、一貫して請求人に係る商号の要部となる「千年一」 を商標として使用を継続してきていると述べているが、地酒メーカーでは珍しいことではなく、もっと古くから創業している地酒メーカーは多数あり、淡路島周辺で長く使用していたとしても全国的に著名である証拠にはならない。
また、過去に登録商標を有していたとしても、更新せずに昭和45年で消滅しており、その後、今日まで36年もの長きに亘って、何ら商標を登録せずに放置しており、著名商標であればこのような商標の管理をすることは考えられない。少なくとも酒造メーカーにとって、その命ともいえる主要な銘柄について商標登録することは常識であり、そのまま放置して他人が類似の商標を取得したからといって、周知著名であると主張して他人の登録商標を無効とすることは、先願主義をとる商標制度の目的にも反し、先願主義の例外的として認められるとすれば、十分な周知著名性が認められた場合だけである。
請求人は「千年一」を使用しているのは、請求人だけであると主張するが、周知著名性を立証する証拠とはならない。
また、兵庫県酒造組合連合会証明書(甲第114号証)は、請求人の所属する連合会であり、会員である請求人の求めに応じて証明したもので、公的な証明ではなく私人の証明にすぎない。
2000年(平成12年)3月18日から9月17日まで、淡路島で開催された「国際園芸・造園博 ジャパンフローラ2000」、いわゆる「淡路花博」にも出品し請求人は、3店で合計11,491,089 円の売上げ(甲第154号証)があったと主張するが、請求人は多数の商標を付した日本酒(甲第5号証)を販売しており、全国新酒鑑評会で金賞を受賞したという「千代の縁」を始め全ての日本酒に本件商標が使用されていたかどうか不明である。また「淡路花博」ではそのうち「千年一」 を使用した日本酒の売上高の証明がなく、また月平均の売上高は約191万円で、1日6万円程度にすぎず周知著名であるとは到底いえない。
また、請求人もインターネット上でホームページを立ち上げ、インターネットの通信販売によって全国の需要者又は取引者との取引も可能となっていると主張するが、請求人商標がどこかのホームページ(甲第11号証ないし甲第96号証、甲第103号証ないし甲第110号証)に掲載されていたとしても、この程度のことは中小企業でも自社のホームページで宣伝したり、他のホームページに掲載されることは、通常多く行なわれていることであり、請求人商標が格別に他の日本酒より多く掲載されて、周知著名であるという証拠にはならない。
また、請求人の使用する請求人商標が掲載されている新聞は、何れも地方紙や全国紙でも地方版に掲載されたものが多く、この程度の掲載記事では淡路島周辺で周知になったとしても、少なくとも近畿地方全域で周知著名である証拠にはならない。
また、請求人の製造する他の商品についても、被請求人は更に輸出することを考えて請求人の工場を見学したところ、想像していたより余りに規模が小さく、多くの商品を今後も安定して被請求人に供給されるかどうか懸念した(乙第1号証)。
このような小規模の酒造メーカーは全国に多数あり、国内での日本酒の需要が低下して、中小酒造メーカーの廃業が多くある現状において、先行きに不安に感じた。
請求人は平成12年と平成13年と二年連続で全国新酒鑑評会において金賞を受賞し、平成15年にも入賞していると主張しているが、平成15年全国新酒鑑評会では出品点数1049点あった。その内、入賞529点、金賞278点で出品した8割は入賞と金賞(乙第2号証)であり、これが毎年行なわれていることから、2回金賞、1回入賞程度で周知著名であるとするならば、これらの会社は、商標出願しなくても他人の商標を無効にできることになる。
また、少なくとも周知著名というにはその銘柄について年間製造量も5000Kリットル以上で、少なくとも30億円程度の売上が必要である(乙第3号証)が、請求人の製造量は平成16年が86Kリットルで、年間売上高は8000万円程度と考えられ、全国的に見ても1407社の内で、最小規模のメーカーに区分されている。また周知著名であるとすれば、年間どの程度の金額の宣伝広告費を支払っているかも全く不明で、その証明もなされていない。
したがって、請求人商標は各甲号証からみても、商品「日本酒」について少なくとも近畿地方全域で周知著名であるとはいえない。
本件商標と請求人商標とは、相互に「センネンイチ」の称呼を生じ、使用商品ないし指定商品も共通しているが、請求人商標は日本酒について周知著名でないので両者の出所の混同を生じることはない。
(1)被請求人株式会社ダイトウ・ライフは、請求人から清酒を購入してこれを韓国に輸出していた会社であり、取引関係にあったことは認める。
請求人は、被請求人と商品「日本酒」の取引については契約したが、被請求人の商標登録出願については何等許諾したことはないと述べているが、周知でもない本件商標を保護するために、請求人の許諾が必要であるとは商標法に規定はない。
(2)不正の意思がないことについて
被請求人は、先に韓国に被請求人オリジナルの商品「国権郎」の銘柄の清酒を平成13年より輸出していた。「国権郎」は国権酒造株式会社で醸造した清酒であり、これを韓国に輸出するに当り、これを保護するため被請求人は国内に商標出願して平成15年7月11日付けにて「国権郎」の商標登録を受けた。また韓国にも「国権郎」を商標出願したが、他社に「国権」の商標が取得され、審査において「国権郎」は「国権」に類似すると判断されて拒絶された。被請求人は、韓国の権利者に対して、その使用の交渉をしたが不調に終わり、現在、被請求人は韓国への輸出を中止している。
また、被請求人は平成13年11月より、請求人の製造する佳撰「千年一」を購入して、韓国に輸出を開始した。請求人の販売する清酒のラベルには「登録商標」の文字が表示されており、被請求人は当然、登録を受けているものと思っていた。
韓国への輸出も順調に伸びて来たため、前回の韓国において「国権郎」の商標のトラブルのこともあったので、韓国で「千年一」の商標を取得して、韓国内でのトラブルを防止して安心して輸出することを考えた。この時、一応、「千年一」の国内の登録状況を確認したところ、登録されていないことが判明した。請求人がラベルに「登録商標」を表示していたことは虚偽の表示であり、今後、国内での取引もトラブルが発生することを懸念して、安心して販売できるように平成16年6月7日に本件商標を登録出願した。
また、請求人の製造する他の商品についても、被請求人は更に輸出することを考えると共に、国内や韓国に商標出願したことを伝えるため、請求人を訪問した。
請求人の工場を見学したところ、余りに規模が小さく、多くの商品を今後安定して被請求人に供給されるかどうか懸念した。この後、輸出品目を増やすことや、防衛のため国内や韓国に商標出願したことを請求人の代表者である社長に伝えた。その時、同社長は、もし登録していると確信しているのであれば、直ちにその旨を被請求人に伝えるはずであるのに「国内の商標は登録しているかどうか分からない」というあいまいな返事で、酒造メーカーとして最も大事な商標に対する認識の低さに驚いた。またこの時、被請求人としては「千年一」の商標が登録された時には、請求人に商標権を譲渡する旨を伝えた。
しかしながら、その後、請求人は被請求人に対し、本件商標の返却をするよう要求があり、これに対して被請求人は本件商標の取得後に譲渡するが、この件について理解を求めるため一度被請求人の会社に来社して話合いたい旨を回答(甲第102号証)したが、その後連絡のないまま、今回の唐突な無効審判を請求された。
また請求人は陳述書(甲第113号証)で「被請求人の社長と部長は酒蔵を見ても興味を示されなかった」と述べている。しかしながらこの時は、規模が小さく今後も安定して商品が供給されるか懸念していたもので、また「3年近く請求人を信用させ千年一の商標を取ることが目的で近づいてきたのかと、やっと今までの行動に気付きました」などと悪意に満ちたことを述べているが、不正の意志を持って商標を取ることが目的であるならば、もっと生産規模の大きな酒造メーカーの商標を登録する方が有利であり、請求人のように一地方の小さな酒造メーカーで販売する地酒の商標を取得しても、商標の譲渡料や使用料は僅かであり、利益のないことは明白である。
このように書面で被請求人の誠意を示し、被請求人が登録出願した事を、きちんと請求人に理解して解決することを提案し、円満な解決の機会があったにもかかわらず、請求人は話し合いを拒否し、事実を歪曲して不正の目的があるなど一方的に主張して無効審判を請求することは全く不当であり、被請求人には不正の意思が全くなかった事は明らかである。
本件商標の登録出願は、審査の段階で被請求人から刊行物の提出があり、これを採用した審査官の判断により拒絶査定を受けた。これを不服とし不服審判(不服2005−5851)を請求した。この審決の結論は「原査定を取り消す。本願商標は、登録すべきものとする。」というものであった。
また、その理由は「本願商標が、商標法第4条第1項第10号に該当するというためには、本願商標の登録出願時及び審決時において、引用商標が他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることが要件となるところ、当審において調査するも、千年一酒造株式会社が本願商標の登録出願前より現在に至るまで営業していることは認められるが、引用商標が本願商標の登録出願時において、千年一酒造株式会社の商品「日本酒」を表示するものとして需要者の間に広く認識されていると認めるに足りる証左を発見することができなかった。そうとすれば、本願商標が商標法第4条第1項第10号に該当するものとして本願を拒絶した原査定の拒絶の理由は、その要件を欠くものである。したがって、本願商標が商標法第4条第1項第10号に該当するものとして本願を拒絶した原査定は妥当でなく、取り消しを免れない。その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。よって、結論のとおり審決する。」というものであった。
すなわち、不服審判で提出された証拠も本件無効審判で提出された証拠も大部分が同じであり、これらから需要者の間に広く認識されていると認めるに足りる証拠はないと既に判断されている。
国内には請求人よりはるか昔から創業している地酒メーカーは多数あり、淡路島周辺で長く使用していたとしても全国的に著名である証拠にはならない。また請求人が過去に一時期登録商標を有していたとしても、更新せずに昭和45年で消滅しており、その後、今日まで36年もの長きに亘って、何ら商標を登録せずに放置しており、著名商標であればこのような商標の管理をすることは考えられない。
請求人は「日本国内に酒造会社は1831蔵あります。その中で、大手酒造メーカーを除けば地方の酒造会社1500蔵を余るのではないでしょうか、それら全てが、全国的に、全県的にあるいは大いに宣伝をし多数に周知されなければいけないのは疑問です。」と述べている(甲第113号証)。
宣伝し多数に周知されなければ他人の登録を無効にできないとするのは当然であり、少なくとも酒造メーカーにとって、その命とも言える商標を他人に取得されたからといって、請求人のように一地方の小さな酒造メーカーがあたかも周知著名であるかのような主張をして、これを無効にすることが許されるとすれば、商標法の先願主義の原則を無視することになり、小規模の酒造メーカーは出願しなくても商標法の保護を受けられることになる。また先願主義の例外規定を適用する場合には厳格な要件が必要とされるべきであり、請求人の主張する程度の使用状況では周知著名とはいえない。
本件商標は、請求人商標と称呼上、類似し、その指定商品「日本酒」 についても請求人商標と同一ではあるが、請求人が長期間に亘って単に使用していたことは認められるが、規模も売上高も全国レベルで見ると最下位のグループに属し、この程度の地酒メーカーは全国に多数あり、また各甲号証に記載されている程度のことは地酒メーカーでも行なわれていることであり、全国的若しくは近畿圏で著名である証拠は認められず、不服審判の審決でも認定されているように、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当しない。
また、商標法第4条第1項第15号は同第10号に該当するものを除いた規定であるので、択一的に適用されるべきもので、同第10号と同第15号が同時に適用されることはなく、また同時に適用される理由も明確でない。
請求人商標は、全国的若しくは近畿圏で著名である証拠は認められず、また被請求人は本件商標の取得後に譲渡する旨、被請求人の誠意を示し、被請求人が登録出願した事を、きちんと請求人に理解して解決することを提案し、円満な解決の機会があったにもかかわらず、請求人は話し合いを拒否したものであり、被請求人には不正の意思が全くなかった事は証拠からも明らかであり、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
請求人と被請求人とは、取引関係にあったことは認めるが、被請求人は今後の取引の障害とならないように防衛的に登録出願し、権利取得後に請求人に譲渡することを伝えていることから、不正の意思はなく、公正な取引秩序を乱すおそれはなく、商標法第4条第1項第7号に該当しない。むしろ請求人は、商標権を有していないにもかかわらず、長年に亘って使用したラベルに「登録商標」の虚偽表示を付しており、これを信用した結果、本件の問題が生じたものである。
このため、第三者により本件商標が取得され、被請求人が安定して販売できなくなることを懸念して緊急に登録出願したものであり、請求人の虚偽表示自体が公正な取引秩序を乱すものである。
請求人の商標は、淡路島周辺の狭い地域で使用されていたもので請求人の主張する程度の使用状況では周知著名とはいえず、本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当しない。
請求人は、被請求人が自ら使用の意思が無いと主張しているが、被請求人は本件商標の付された日本酒を請求人から購入して販売していたもので、今後も使用する予定であり商標法第3条第1項柱書に違反しない。
本件商標は、「千年一」の文字を書してなり、「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品とするものである。
一方、請求人商標は、別掲のとおりであり、請求人が商品「清酒」について使用しているものである。
(1)甲第9号証、甲第51号証、甲第63号証、甲第106号証、甲第113号証によれば、請求人は、1875年(明治8年)に酒造業を創業し、1951年(昭和26年)5月19日に千年一酒造株式会社を設立し、現在も同名称で清酒を生産、販売していることが認められる。
(2)甲第9号証、甲第111号証、甲第112号証及び甲163号証によれば、請求人の先代社長と認められる武田邦夫が、「千年一」の文字を縦書きし、「日本酒類及其の模造品」を指定商品とする登録第392069号の商標権を所有していたが、当該商標権は存続期間の更新登録がされていないことが確認できる。
(3)甲第5号証ないし甲第7号証、甲第17号証、甲第21号証、甲第22号証、甲第42号証、甲第44号証、甲第51号証、甲第52号証、甲第55号証、甲第60号証、甲第64号証、甲第69号証、甲第83号証、甲第85号証、甲第87号証、甲第92号証、甲第95号証、甲第106号証、甲第107号証によれば、酒蔵を見学コースとし、醸造期間中はその作業を見て酒蔵でしか味わえないしぼりたての生酒を利くことができること、明治初期の建築といわれる酒蔵の一角を改造したミニギャラリーには古い道具が並びその中で年中4〜5種類の利き酒を用意していること、清酒を販売していること、予約があれば団体客を受け入れていること、杜氏の話が聞けること、申し込みをすると原料米の稲刈りや瓶詰めなど秋からのイベントへの参加ができること、口コミで評判が広まり、観光バスも立ち寄るなど見学者はひっきりなしであることが認められる。
(4)甲第42号証、甲第46号証、甲第56号証、甲第57号証、甲第66号証、甲第72号証、甲第80号証、甲第83号証、甲第113号証、甲第150号証ないし甲第152号証によれば、請求人は、2000年(平成12年)及び2001年(平成13年)と二年連続で全国新酒鑑評会において金賞を受賞し、平成15酒造年度全国新酒鑑評会においても入賞していることが認められる。
(5)甲第114号証によれば、本件商標は、その登録出願日の2004年(平成16年)6月7日前より、少なくとも兵庫県酒造組合連合会傘下の組合員及び近畿2府4県の取引者・需要者間に広く認識されているものと認められる。
(6)甲第145号証によれば、株式会社フルネットが発行した「日本酒 酒蔵電話帳2001年版 全国2114蔵収蔵」に、本件商標が、請求人の名称等とともに、掲載されていることが認められる。
(7)甲第146号証によれば、株式会社彩光社が発行した「日本酒大事典」に、本件商標が、請求人の名称等とともに掲載されていることが認められる。
(8)甲第147号証によれば、株式会社醸界タイムズ社が発行した「全国酒類製造名鑑」の〔代表銘柄〕の欄に本件商標が掲載され、〔社名又は氏名〕の欄に「千年一酒造(株)」と掲載されていることが認められる。
(9)甲第148号証によれば、毎日新聞社が発行した「豪華写真集 日本酒」に、別掲に表した請求人商標中の毛筆体で縦書きされた「千年一」の文字部分がほぼ同一で全体として類似する商標及び本件商標が、請求人の名称等とともに掲載されていることが認められる。
(10)甲第154号証によれば、約半年間開催された淡路花博「ジャパンフローラ2000」において、物販代として、請求人に10,264,299円、請求人の社員に1,226,790円、請求人が納入し販売した旧東浦町観光協会に12,670円支払われていることが認められる。
(11)以上の証拠によれば、請求人の祖先が、淡路島において、明治8年に酒造業を創業し、昭和26年に請求人の名称である千年一酒造株式会社を設立して以来、請求人は、現在に至るまで清酒の製造するとともに、本件商標と類似し、請求人の略称と認められる「千年一」商標を付した清酒の販売を行っていることがわかる。そして、請求人は、独立行政法人酒類総合研究所主催の全国新酒鑑評会において、平成12年及び同13年には金賞を、同15年には入賞し、かつ、日本酒に係る全国的な名鑑、辞典及び電話帳などにも「千年一」商標とともに請求人名称である「千年一酒造株式会社」が記載されていることにより、地元淡路島や請求人が所属する兵庫県酒造組合連合会のある兵庫県はもとより、少なくとも全国の酒造メーカーや取引関係者においては、「千年一」商標が知られていたとみるのが相当である。
ところで、いわゆる地酒と称される清酒を製造する酒造メーカーは、全国を販売対象とする大手の酒造メーカーと異なり、酒蔵の規模そのものが小さいものであるから生産量も少なく、したがって、販売地域が地域限定となる特色がある。請求人は、明治の創業以来、一貫して清酒を製造しているところ、淡路大震災により清酒の生産規模が半減したこともあり、その生産量自体が決して多いとはいうことはできないものである。
しかし、明石海峡大橋の開通などにより、淡路花博が成功裏に終わり、淡路島が観光地として気軽に訪れることが可能となってからは、請求人酒蔵が新聞報道はもとより、多くの観光雑誌に取り上げられ、インターネットで紹介され、請求人自らも自社酒蔵を観光客の見学コースとするなど積極的に観光客を受け入れた結果、多くの観光客が請求人酒蔵を訪れ、本件商標の出願時及び査定不服審判審決時には、「千年一」商標が、地元兵庫県や対岸の徳島県を含め、少なくとも、同地管轄の国税庁大阪国税局が所管する2府4県(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県、滋賀県)に及ぶ範囲において、請求人の取り扱いに係る商品「清酒」の同業者、取引関係者又は需要者の間では広く認識されていたとみるのが相当である。
しかして、本件商標は、「千年一」の文字よりなるものであるから、「センネンイチ」の称呼を生じ、特定の観念を生じない造語とみるのが相当である。
一方、請求人商標は、別掲に表した構成からなるところ、構成中央に毛筆体で縦書きされた「千年一」の文字及び赤色で横書きされた「センネンイチ」の文字が、独立して自他商品識別標識としての機能を果たす部分と認められるから、これらの文字から「センネンイチ」の称呼をも生じ、特定の観念を生じない造語とみるのが相当である。
してみれば、本件商標と請求人商標とは、「センネンイチ」の称呼を共通にするものであるから、両商標の外観が相違し、観念上は比較できない点を考慮しても、互いに紛れるおそれのある類似する商標といわざるを得ない。
また、本件商標の指定商品中「日本酒」と請求人が使用する商品「清酒」とは、生産部門、販売部門、用途、需要者の範囲が一致するから同一又は類似するものである。
しかし、本件商標の指定商品中「洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」と請求人が使用する商品「清酒」とは、原材料及び品質が一致しないから類似しないものである。
したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と類似する商標であって、本件指定商品中、「日本酒」と請求人が使用する商品「清酒」とは同一又は類似する商品であるから、本件商標の指定商品中「日本酒」について、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものというべきである。
請求人商標は、前記2で認定したとおり、国税庁大阪国税局が所管する2府4県(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県、滋賀県)において周知であるものと認められる。しかし、甲各号証には請求人を記載した新聞記事等は存在するものの、請求人自身が請求人商標を宣伝、広告した事実が極めて少ないこと及び被請求人が提出した答弁書によれば、請求人商標を表示した清酒の年間出荷量が少ないことなどから、請求人商標の著名性は、未だ全国には及ばない程度のものであると認められる。
してみれば、請求人商標は、いわゆる著名商標ということができない。
そうとすれば、被請求人が、本件商標をその指定商品中「洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」に使用しても、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標ということはできないとみるのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものということができない。
(1)商標法第4条第1項第19号の「不正の目的」があるとして、本号が適用される具体例は次のとおりである。
a.外国において周知な他人の商標と同一又は類似の商標について、我が国において登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせたり、外国の権利者の国内参入を阻止したり、国内代理店契約を強制したりする等の目的で、先取り的に出願した場合
b.日本国内で商品・役務の分野を問わず、全国的に知られているいわゆる著名商標と同一又は類似の商標について、出所の混同のおそれまではなくとも出所表示機能を希釈化させたり、その名声を既存させる目的をもって出願した場合
c.その他日本国内又は外国で周知な商標について信義則に反する不正の目的で出願した場合
(2)本件商標は、外国において周知な商標ではなく、日本国内で全国的に知られているいわゆる著名商標ということもできない。そこで、本件商標が信義則に反する不正の目的で出願されたものかについて検討する。
(3)甲第116号証ないし甲第140号証、甲第144号証、甲第158号証、甲第159号証によれば、被請求人は、少なくとも、2001年(平成13年)11月5日から2005年(平成17年)3月31日まで請求人から商品「清酒」を購入し、輸出していたこと、その間の平成15年9月に請求人と取引についての覚書を取り交わしていたことが認められる。
(4)乙第1号証によれば、被請求人には他の商標権のトラブルにより自己の営業に支障をきたした経験が存在すること、登録済みと信じていた請求人商標が未登録であったこと及び被請求人は再度自己の営業に支障をきたすおそれから本件商標を出願したことが認められる。
(5)甲第1号証によれば、本件商標は、請求人と被請求人が取引を開始した約3年後の平成16年6月7日に出願されていることが認められる。
(6)以上の証拠によれば、被請求人による本件商標権の取得の経緯については、請求人及び被請求人の双方が取引の契約をしてから約3年を経過した後に、被請求人が本件商標を出願したことからすれば、被請求人は、他の商標権のトラブルにより自己の営業に支障をきたした経験から、すでに登録済みと信じていた請求人商標が未登録であり、再度自己の営業に支障をきたすおそれから本件商標を取得したにすぎないものとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、その登録出願の経緯が信義則に反する不正の目的で出願した場合に該当するものとは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものということができない。
商標権が適正な商道徳に反して社会的妥当性を欠き、その商標権が商標法の目的に反することになる場合には、その商標権は商標法第4条第1項第7号にいう商標に該当し、同法第46条によりその登録が無効となることもあり得ると解される。しかし、同法第4条第1項第7号が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」として、
商標自体
の性質に着目した規定となっていること、商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていること及び商標法においては、商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば、
商標自体
に公序良俗違反のない商標が同法第4条第1項第7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである。
しかして、
本件商標「千年一」自体
に公序良俗違反が存在しない点は、争いのないところである。
次に、被請求人による本件商標権の取得の経緯については、前記4で認定したとおり、信義則に反する等の著しく社会的妥当性を欠くものとは認められない。また、本件商標の登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当するものとも認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものということができない。
商標法第4条第1項第8号は、人格権保護の規定と解され、登記簿に登記される法人の名称と異なり、略称を全て商標法で保護することは行き過ぎとなるため、略称は著名なものに限られるものとみるのが相当である。
しかして、請求人の略称の一つと認められる「千年一」は、前記2で認定した請求人商標と同様、近畿地方の取引者または需要者の間では周知であるものと認められる。しかし、甲各号証には請求人を記載した新聞記事等は存在するものの、請求人自身が請求人商標を宣伝、広告した事実が極めて少ないことなどから、本件商標が、請求人の著名な略称からなる商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものということができない。
被請求人は、請求人商標の付された日本酒を請求人から購入して販売していたものであり、さらに、今後も本件商標を使用する予定とのことであれば、その使用意思を否定することはできず、また、否定するに足る証拠もない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書きの要件を具備していないものということはできない。
被請求人は、「査定不服審判の審決において、需要者の間に広く認識されていると認めるに足りる証拠はないと既に判断されている。」旨、主張しているが、本件審決が査定不服審判の審決に常に拘束されなければならないとする理由はないから、この点に関する被請求人の主張は、採用できない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであるから、その指定商品中「日本酒」については、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすべきものである。
しかし、本件商標の指定商品中「日本酒」以外の指定商品については、同法第3条第1項柱書き、同第4条第1項第7号、同第8号、同第10号、同第15号及び同第19号に該当しないから、それらについての商標登録は、無効とすることはできない。
なお、請求人は、証人申請書を提出し、請求人商標が周知著名であること、請求人と被請求人とが本件商標の登録出願前から取引関係があり、被請求
人は請求人商標を熟知していたことを立証する旨述べているが、証人尋問せずとも審理を進めることができると判断されるので、証人の申請は採用しないこととした。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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