結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2006−30931(T2006−30931/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4666704号商標(以下「本件商標」という。)は、「モンスターバス」の文字と「Monster Bass」の文字とを二段に横書きしてなり、平成14年8月2日に登録出願、第9類「電線及びケーブル」を含む、別掲記載の商品を指定商品として、同15年4月25日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証(枝番号を含む。)を提出した。
本件商標は、その指定商品中「電線及びケーブル並びにそれに類似する商品」について継続して3年以上日本国内において使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
被請求人の答弁は、次のとおり、理由がない。
(1)「正当な理由」について
(ア)我が国の商標法が、商標権者による商標の現実的使用を重視している(商標法第3条第1項柱書、第50条)ことからすると、商標法第50条第2項にいう「正当な理由」があるというためには、商標権者において登録商標を使用できなかったことが真にやむをえないと認められる特別の事情が具体的に主張立証される必要があると解される(甲第1号証の下級審裁判例を参照)。
したがって、商標権者が自己の判断により登録商標の使用を差し控えていたにすぎない場合は「正当な理由」があるということはできず、また、単に商標の使用の準備が進められていたという事実があることの一事をもって「正当な理由」があるということはできないと解される。
(イ)上記のとおり、被請求人は、請求人が使用している商標との混同防止の必要があり、また、請求人らとの訴訟上の和解交渉中であったことから、本件商標を本件審判請求にかかる指定商品に使用することを差し控えていたというのであるが、これは、被請求人が自己の判断により登録商標の使用を差し控えていたにすぎない。
現に、本件商標の商標権者は被請求人であったのであるから、被請求人としては、本件商標を使用しようと思えば、いつでも本件商標を使用できる状態にあったのである。
かかる事情の下では、登録商標を使用できなかったことが真にやむをえないと認められる特別の事情があるとは到底いえない。
なお、東京高等裁判所平成14年9月20日判決(平成14年(行ケ)第67号事件(甲第2号証))は、商標権者である原告が審判請求人である被告との間で世界各国における商標の使用のルールをめぐって交渉していたため、商標権者において、交渉への影響に配慮して商標の使用を差し控えていたという事案において、「正当な理由」があるとの商標権者の主張を排斥している。
ところで、被請求人は、請求人に対して使用許諾の意思のあることを表示して警告を行った旨主張しているが、そのような事実はない(甲第5号証の1ないし7)。
また、被請求人は、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントが販売している家庭用ゲーム機プレイステーション2(甲第3号証の1)用のゲームソフト「Monster Bass」(甲第4号証)に、本件商標を付して販売しているものであるところ、プレイステーション2にはその付属品としてケーブルが付属している(甲第3号証の2)。
そして、この付属品のケーブルは、被請求人を含む各社により多数販売されているプレイステーション2用の家庭用ゲームソフト全てに共通して用いられるものであって、ユーザがこれらのゲームソフトをプレイするにあたって、ゲームソフトごとに異なるケーブルを使用することは、およそありえない。
したがって、被請求人が、家庭用ゲームソフトに使用している本件商標をケーブルに使用することは考えられない。
被請求人は、本件商標をケーブルに使用することを差し控えていたというのではなく、むしろ、およそ本件商標をケーブルに使用する予定を有していなかったものと考えられる。
(ウ)被請求人は、上記訴訟の判決後、本件商標の使用の準備を進めていたと主張するが、かかる使用の準備の存在を立証する証拠は何ら提出されていない。
かえって、上記のとおり、被請求人においては、およそ本件商標をケーブルに使用する予定を有していなかったものと考えられる。
したがって、被請求人の主張はその前提を欠く。
また、上記のとおり、商標法第50条第2項にいう「正当な理由」があるというためには、商標権者において登録商標を使用できなかったことが真にやむをえないと認められる特別の事情が具体的に主張立証される必要があるのであり、単に使用の準備をしたということの一事のみをもって「正当な理由」があるということはできない。
なお、上記甲第2号証の判決においては、「原告は、まず、企業の内部において商標の使用の準備がされている場合には、商標法50条2項ただし書き所定の正当理由がある旨主張するが、例えば、商標権者において商標の使用の準備を進めていたにもかかわらず、商標権者の責めに帰することのできない特別の事情により現実の使用に至らなかったなどの事実関係が、具体的に主張立証されるのであれば格別、単に商標の使用の準備が進められていたという事実のみから、上記正当理由を認めることはできない。」と判示している。
(エ)以上からすれば、被請求人が本件商標を本件取消請求にかかる指定商品に使用していないことにつき、商標法第50条第2項にいう「正当な理由」があるとはいえない。
(2)請求人適格について
被請求人は、請求人が本件審判請求における請求人適格を有しないと主張する。
しかし、商標法第50条第1項は、「何人」とあるとおり、文字通り、利害関係の有無等を問わず、「何人」であっても請求人適格を認める趣旨で平成8年に改正されたものである。
したがって、請求人が本件審判請求における請求人適格を有することは自明である。
また、被請求人が自ら認めるとおり、請求人は「Monster Bass」の商標を用いて、日本においてケーブルを輸入販売している者であり、本件商標の商標権者である被請求人から、商標権の行使を受け得る立場にある。
したがって、請求人は本件審判請求につき利害関係を有している。
現に、請求人らと被請求人との間の上記訴訟において、「Monster Gate」の商標のみならず本件商標をも和解交渉の対象に含むこととなったのは、上記訴訟の弁論準備手続期日において、被請求人が、「被請求人は本件商標の商標登録を有しており、請求人に対して本件商標権に基づく差止請求及び損害賠償請求訴訟を提起する可能性がある。」旨述べたためである。
よって、請求人が本件審判請求における請求人適格を有することは自明である。
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)請求人並びにMonster社は、被請求人に対して、平成16年8月2日、平成16年(ワ)第16445号で、東京地方裁判所民事部(民事第40部)に商標権に基づく差止請求権不存在確認請求事件を提訴した。
当該事件は、登録第4506258号、登録第4562510号、登録第4668755号、登録第4682598号の商標、いわゆる「モンスターゲート/MonsterGate」に関する商標を対象とし、「Monster GAME」とは類似せず、出所の混同も生じないとの主張を行ったものである。
(2)和解案の検討
請求人とMonster社及び被請求人は、米国においては和解し契約済みであるが、それ以外の国においては係争関係にある。
被請求人は、全世界においてMonster社との和解を望んでいたが、日本においては前記商標権を保有していたため、請求人及びMonster社に警告をしていたところ、上記訴えが提起された。
請求人(Monster社を含む。)と被請求人とは、全世界において和解するべく、裁判所の指導により交渉を行っており、その和解の交渉の上では「Monster Gate」のみならず、請求人が日本において使用を行っている「MonsterBass」についても、和解交渉の中に含まれていた。
そして、被請求人は、請求人に対して使用許諾の意思のあることを表示して警告を行っている(乙第2号証)。
被請求人は、裁判所の仲介によって和解がなされていたので、被請求人は、「ゲーム用ソフト」においては「MonsterBass」を使用していたが、それ以外の商品への使用については、請求人が使用していたため、被請求人は和解交渉中であることもあり、他の商品への使用は差し控えていた。
(3)判決
平成16年8月2日より、1年7ヶ月後の平成18年3月7日付で、判決がなされ、被請求人である被告勝訴の判決がなされた(乙第2号証)。
そしてMonster社は「訴えの利益はない」とされた。
当該事件は控訴され、かつ、請求人である原告は、本件不使用取消審判請求もなされたものである。
(4)商標法第50条第2項に規定する「正当な理由」について
被請求人は、Monster社と前記裁判において和解交渉のため誠実に対応していたところ、請求人の1人である「Monster社」との和解交渉を行っていたため、前記商品がある「ゲーム用ソフト以外」への商品の展開を差し控えざるを得なかった。
けだし、請求人は、Monster社の日本における輸入販売会社であり、日本において「ケーブル」に「MonsterBass」を使用していたことから、出所の混同を生ずることを防止するためであった。
(5)請求人の背信性
本件不使用登録取消審判は、「Monster社」ではなく、請求人のみでなされている。
理由は、上記原判決において、Monster社は「訴えの利益」が認められなかったためであるように思われるが、商標法第50条第1項の規定による請求は「何人」も請求可能となっていることからすると、不自然である。
上記原判決における裁判の和解交渉において、請求人は、被請求人の商標である「モンスターバス/MonsterBass」(登録第4666704号)により警告の他、訴えを提起されることを知り得た者であり、被請求人の事情を、和解交渉を通じて知り得た立場にある者である。
しかるに、請求人は、「Monster社」とは別に単独で不使用登録取消審判を請求した。
(6)利益享受者
本件取消審判によって利益を受ける利益享受者は、本件商標と同一又は類似の商標に係る商標権を獲得する者であるから、請求人ではなく、「Monster社」である。
けだし、請求人は輸入販売会社にすぎないものであり、「Monster社」が実質的利益享受者であるからである。
そうであるとすると、商標法第50条第1項でいう「何人」との要件は、本件のような場合には適用はないとするのが相当である。
被請求人は、1年7ヶ月もの間、「MonsterBass」をゲーム用ソフトに用いながら、他の商品への展開をすることができず、しかも、ゲーム用ソフトの商品に近い「ゲーム用ケーブル」について「Monster社」も「MonsterBass」を使用していることから、同一又は類似の商品へは使用することができないという事情があったこと、裁判上の和解交渉中であったため、当事者である請求人、Monster社と被請求人との間では、和解交渉中の事実は秘匿事項であって、第三者が知り得る情報ではなかったこと、和解が成立するべく努力していたにも関わらず、Monster社は最善の努力をしなかったこと等の理由から不成立になったこと等により、請求人の本件取消審判請求は違法である。
その反射的側面から被請求人は、商標法第50条第2項の「正当な理由」がある。
(7)被請求人の使用準備
上記原判決を受けて、被請求人は、請求人(Monster社を含む。)から、商標法第50条により不使用登録取消審判における対策として、ケーブル等への使用の準備を行っていたところ、突然審判請求をされた。
請求人の不使用登録取消審判の請求と被請求人の使用準備のウェイトを考慮すれば、後者の方が大変な作業であることは明白である。
被請求人の商標権がかかる場合にまで取消されるとするならば、商標制度は無意味と化してしまうこととなる。
したがって、このような被請求人の使用の準備は「正当な理由」として救済されるべきである。
(8)以上のとおり、被請求人には「正当な理由」が存在するものであるから、請求人の本件商標に対する登録取消の請求は成り立たない。
従って、本件商標は、商標法第50条の規定には、該当しない。
被請求人は、本件商標の使用の事実について、何ら主張立証するところがない。
そして、本件商標の不使用について正当な理由がある旨を主張している。
したがって、本件審判請求の登録がなされた平成18年8月21日前3年内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが指定役務のいずれかについて本件商標の使用をしていた事実は、認められない。
商標法第50条第2項ただし書きにいう登録商標の不使用についての「正当な理由」としては、例えば、その商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって工場等が損壊した結果その使用ができなかったような場合、時限立法によって一定期間(3年以上)その商標の使用が禁止されたような場合等が考えられるものであって、被請求人において登録商標を使用できなかったことが真にやむを得ないと認められる特別の事情が具体的に主張立証される必要があるといい得るものである。
そして、本件の場合、被請求人は、請求人が使用している商標との混同防止の必要があり、また、請求人らとの訴訟上の和解交渉中であったことから、本件商標を請求に係る指定商品に使用することを差し控えていた旨主張しているが、これは、被請求人が自己の判断により登録商標の使用を差し控えていたにすぎず、これをもって、上記特別の事情と認めることはできない。 さらに、被請求人は、上記訴訟の判決後、本件商標の使用の準備を進めていたと主張しているが、単に使用の準備をしていたということの一事のみをもって「正当な理由」があるということはできない。
被請求人は、請求人について、商標法第50条第1項でいう「何人」との要件は、本件のような場合には適用はないとするのが相当である旨主張しているが、商標法第50条の審判の請求人適格は、「利害関係」の有無について争われることにより審理の結論が出るのが遅れるというケースも存在すること等を背景にして、不使用商標の整理についての一層の促進を図ることとして、平成8年の一部改正で「何人」にも認めることとなったから、請求人は、利害関係の有無等を問わず、本件審判の請求人適格を有するものである。
以上のとおり、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが指定役務のいずれかについて使用をしている事実が認められず、かつ、本件商標の不使用について商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかに正当な理由があるとも認められないものであり、また、本件審判の請求について請求人適格が認められるものであるから、商標法第50条の規定により、その指定商品中「電線及びケーブル並びにそれに類似する商品」についての登録を取り消すべきものである。
なお、被請求人は、控訴審の裁判手続における和解交渉の結論がでるまで、本件の審理の猶予を申し出ているが、該控訴審(平成18年(ネ)第10060号)は、平成19年3月6日に判決言渡があったにもかかわらず、被請求人は、何等の手続もしていないので、それを待たずに処理する。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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