Trademark Appeal Case
低トランスの識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2006−90652(T2006−90652/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4988886号商標(以下「本件商標」という。)は、「低トランス」の文字を横書きしてなり、平成17年12月7日に登録出願され、第29類「食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類,冷凍果実,肉製品,豆乳,油揚げ,加工水産物,加工野菜及び加工果実,凍り豆腐,こんにゃく,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,ふりかけ,お茶漬けのり,なめ物,豆,食用たんぱく」及び第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー及びココア,氷,菓子及びパン,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,すし,しゅうまい,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,食用粉類,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みの大麦,食用グルテン」を指定商品として、同18年9月22日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由の要旨
(1)登録異議申立人「日清オイリオグループ株式会社」(以下「申立人1」という。)は、要旨以下のとおり述べ、その証拠として甲第1号証ないし甲第17号証を提出した。
本件商標は、量計を表示した「低」の漢字と、「トランス酸」の意を指称する「トランス」の片仮名を普通に用いられる方法で表示したにすぎないから、これをその指定商品に使用しても商品の品質を表示するにすぎず、自他商品識別標識としての機能を果たし得ない。
また、該商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものであり、本件商標の登録は取り消されるべきである。
(2)登録異議申立人「不二製油株式会社」(以下「申立人2」という。)は、要旨以下のとおり述べ、その証拠として甲第1号証ないし甲第48号証を提出した。
本件商標は、その指定商品のうち、低トランス酸の油脂を含むものに使用したとしても、これに接する取引者・需要者は、単にその指定商品中に含まれる油脂が「トランス脂肪酸の含量が低い」ものであるという品質を表したものと認識するにとどまるから、該商標は、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。
そして、本件商標を上記以外の指定商品に使用した場合、需要者・取引者は、その指定商品が油脂を含むものであるとして、また、その油脂が低トランスタイプのものであるとして商品の品質の誤認を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同第6号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものであり、本件商標の登録は取り消されるべきである。
3 本件商標に対する取消理由の要旨
(1)(ア)申立人1の提出に係る甲各号証(いずれも本件商標の登録査定(平成18年7月19日)前に発行されたもの)を総合すると、「トランス脂肪酸(トランス酸)」は、マーガリン・ショートニングなど加工油脂やこれらを原材として製造される食品のほか、牛などの反芻動物の肉や脂肪中に含まれる脂肪酸の一種であり、その作用は、悪玉コレステロールといわれているLDLコレステロール(低比重リポたん白質:肝臓から体内の各部へコレステロールを運ぶ物質)を増加させ、善玉コレステロールといわれているHDLコレステロール(高比重リポたん白質:体内の各部から肝臓へコレステロールを運ぶ物質)を減少させる働きがあるといわれ、心臓病など健康に影響を及ぼすことが懸念されていること、トランス脂肪酸(トランス酸)は、上記のような作用を有するため、トランス脂肪酸の摂取量が比較的多いとされる欧米諸国では、脂肪中のトランス脂肪酸の含有量を制限したり、加工食品中のトランス脂肪酸の含有量の表示を義務づけるなどの措置が取られていることなどが認められる。
(イ)申立人2の提出に係る甲第5号証ないし甲第30号証及び甲第37号証ないし甲第47号証によれば、前記(ア)で認定した事実に加え、欧米諸国をはじめ、日本においても、食品を取り扱う業界では、トランス脂肪酸の含有量の少ない、若しくは有しない商品の開発が盛んに行われている実情にあり、たとえば、「日本では、欧米ほどのトランス酸摂取量は高くないので静観視されているが、低トランス酸油脂への技術的対応は避けられない情勢となっている。」(2005年12月28日付け日本食糧新聞:甲第11号証)、「低トランス製品の開発」(平成14年4月1日発行「オレオサイエンス」:甲第12号証)、「米マクドナルドがフライ油を切り換え/・・今回の低トランス酸、低飽和脂肪酸の油脂がどういうものであるかについて、米マクドナルドは発表していないが、要はトランス酸を生成する硬化(水素添加)技術を使わないで作った油ということだ。」(「油脂」2002年10月号:甲第13号証)、「米国食品医薬局(FDA)は昨年、2006年には食品中のトランス脂肪酸含有量の表示を義務付ける方針を明らかにした。以来、これを商機ととらえる企業の低トランス脂肪油開発競争が加速している。」(2004年10月11日付け日本農業新聞:甲第14号証)、「現在、北米では食用油(硬化油タイプ)に含まれるトランス脂肪酸が問題化。悪玉コレステロールを増やし、肥満や心臓病などを引き起こす可能性があるとされている。06年には、食品にトランス酸含有量の表示が義務づけられることもあり、油脂業界では低トランス酸商品の開発が相次いでいる。」(2004年11月19日付け日刊工業新聞:甲第15号証)、「近年トランス酸の健康への影響が注目されており、1990年代後半からは、欧米を中心に加工油脂製品に含有されるトランス酸を低減する動きが活発化し、パーム油やエステル交換油を用いた低トランス製品が開発されてきている。」(平成18年3月1日発行「オレオサイエンス」:甲第23号証)、「2006年の業務用マーガリン類市場は、・・マーケットが低迷する中で、・・諸経費アップ、さらには昨年来の低トランス酸問題対応といった懸念材料もあって、ある意味で窮地に立たされている。各社とも・・市場性の高い商品開発・提案型営業を展開している。/主要メーカーの動向(54頁)・・ADEKA=・・超微細シリーズの低トランス酸のユーザーニーズに応えた仕様で、商談も順調なスタートを切った。・・カネカ=年初から低トランス酸ニーズに対応できる体制を敷いて臨んだ今期4〜6月は、昨年4月好調の・・。日清オイリオグループ=粉末酵素エステル交換による独自の構造油脂技術を用いて、油脂結晶の微細化および低トランス化に取り組んでいる。/価値を再度見直す時期に(57頁)・・今年の業務用マーガリン類市場は、昨年に引き続き低トランス酸対応が第一の核となっている。」(「酒類食品統計月報」:甲第30号証)などのように、トランス脂肪酸の含有量の少ない商品について、本件商標の登録査定前にはすでに、「低トランス製品」、「低トランス酸」、「低トランス脂肪油」などのように使用されていたことが認められる。
さらに、本件商標の登録査定前より、油脂の「低トランス化」あるいは「低トランス」の商品などに関する発明が多数特許出願されていたこと(甲第37号証ないし甲第47号証)が認められる。
(2)前記(1)で認定した食品分野における取引の実情にかんがみれば、「低トランス」の文字よりなる本件商標に接する需要者は、「トランス脂肪酸の含有量の少ない商品」なる意味合いを表したと直ちに理解するというのが相当である。
したがって、本件商標は、これをその指定商品中、「低トランス酸の油脂を含むもの」について使用しても、上記意味合いをもって、単に商品の品質を表したと認識するにとどまり、自他商品の識別標識としての機能を発揮し得ないものというべきであり、また、上記商品以外の商品について使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
(3)以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものといわざるを得ない。
4 商標権者の意見
商標権者は、3の取消理由について、指定した期間内に意見を述べていない。
5 当審の判断
平成19年4月12日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、商標権者からは何らの応答もない。そして、上記3の取消理由は妥当なものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、本件商標の登録は、商標法第43条の3第2項の規定により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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