結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2006−89003(T2006−89003/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4769354号商標(以下「本件商標」という。)は、「海」の文字を標準文字で書してなり、平成15年6月17日に登録出願、第5類に属する商標登録原簿に記載されたとおりの商品を指定商品として、同16年5月14日に設定登録されたものである。
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用した登録商標は、以下の(a)及び(b)に示した2件である。
(a)登録第2368832号商標(以下「引用A商標」という。)は、「快」の文字を書してなり、昭和49年4月30日に登録出願、第1類に属する商標登録原簿に記載されたとおりの商品を指定商品として、平成4年1月31日に設定登録、その後、商標権の存続期間の更新登録がされ、平成15年6月18日に指定商品を、第5類及び第10類に属する商標登録原簿に記載されたとおりの商品を指定商品とする書換登録がされたものである。
(b)登録第4415346号商標(以下「引用B商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成11年7月30日に登録出願、第1類ないし第34類に属する商標登録原簿に記載されたとおりの商品を指定商品として、同12年9月8日に設定登録されたものである。
請求人は、本件商標の指定商品中「薬剤」についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第4号証を提出した。
(1)請求の理由
(ア)請求人適格
請求人は、国際登録番号第823679号に係る国際登録(以下「本件国際登録」という。)の名義人である。
本件国際登録に係る国際商標登録出願は、本件商標を引用して商標法第4条第1項第11号に該当することを理由に、2005年5月19日付で拒絶査定がされた(甲第1号証)。
請求人は、2005年8月16日付で拒絶査定に対する審判を請求し、同審判は係属中である。
したがって、請求人は、本件商標に対して無効審判を請求する利害関係を有していることは明らかである。
(イ)請求の根拠
本件商標は、標準文字に係る「海」の文字を書してなるところ、本件商標から「カイ」の称呼が生じることは明らかである。
一方、引用A商標は「快」の文字を書してなり、引用B商標は装飾化された「KAI」の文字を書してなるところ、引用A商標および引用B商標から「カイ」の称呼が生じることは明らかである。
そこで、本件商標と引用A商標および引用B商標とを比較すると、これらの商標からはともに「カイ」の称呼が生じる。よって、これらの商標が称呼を同じくする互いに同一または類似の商標であることは明らかである。
本件商標と引用A商標および引用B商標とが互いに同一または類似であることは、本件国際登録に係る国際商標登録出願の審査において、本件商標と引用A商標および引用B商標がともに引用されたことからも明らかである。
すなわち、本件国際登録に係る商標は「KAI」の文字を書してなるところ、同商標から「カイ」の称呼が生じることは明らかである。そして、同商標に対し本件商標、引用A商標および引用B商標がともに引用されたことは、本件商標と引用A商標および引用B商標からはともに「カイ」の称呼が生じることを示すものであると言える。
このことからも、本件商標と引用A商標および引用B商標とが、称呼を同じくする互いに同一または類似の商標であることは明らかである。
次に両商標の指定商品を比較すると、本件商標の指定商品中「薬剤」は、引用A商標の指定商品中「薬剤」および引用B商標の指定商品中「植物成長調整剤類,薬剤」と同一または類似である。
以上より、本件商標は、引用A商標および引用B商標を引用して商標法第4条第1項第11号に該当することを理由に登録が拒絶されるべきであったところ、同号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項に基づき無効とされるべきものである。
(2)答弁に対する弁駁
(ア)被請求人は、引用A商標の登録の経緯を引き合いに出し、その経緯と同様に本件商標からは「ウミ」の称呼しか生じない旨指摘する。
しかしながら、引用A商標に対し引用されたのは「図形+海」であり、図形の有無という点で本件商標とは異なる。図形の有無による商標全体の印象は大きく変わることから、図形を有しない本件商標と同視することはできない。さらに、被請求人が引用する審決例は昭和59年に発せられたものであるが、これは今から20年以上も前であり、類否判断の基準は社会の動向、趨勢に応じて当然変化するものであるから、20年以上も前の判断例を本件に当てはめることは適切ではない。
そこで、引用A商標の登録の経緯とは無関係に、本件商標「海」の称呼について検討すると、被請求人の言うとおり、本件商標からは確かに「ウミ」の称呼が生じる。それを否定するものではない。しかしながら、誰もが知るとおり漢字には訓読みと音読みがあるところ、どちらの読み方も生じ得ると考えるのが自然であるから、本件商標からは「ウミ」に加えて「カイ」の称呼も生じるというべきである。
この点、被請求人は「海」一文字の場合は観念と相俟って「ウミ」と称呼されると指摘する。もちろん、上記の通り「ウミ」の称呼も生じるであろう。しかしながら、一文字であることが、訓読みしか生じないとする理由には全くならない。むしろ、訓読みと音読みの称呼の発生という観点からは、どんな漢字でも必ず音読みは生じる一方、訓読みは生じないという場合があるほどで、訓読みしか生じない場合というのはないのである(なお、音読みしか生じないという場合とは、被請求人も述べているようにたとえば引用A商標の「快」などである。「快」は「い」の送り仮名がなければ訓読みはできず、音読みしか生じない。)。
以上の次第で、本件商標は「ウミ」以外に「カイ」の称呼も生じることから引用A商標と類似である。
(イ)本件商標から「ウミ」の称呼のみが生じるとの被請求人の主張は、上記の理由で失当であり、本件商標からは「カイ」の称呼も生じ得る。
また、被請求人は判決例を引用し、本件商標と引用商標との外観および観念上の顕著な相違を理由に混同のおそれがない旨を主張する。もちろん、外観及び観念の相違が商標の類否判断に影響することはあろう。
しかしながら、商標の類否は当然ながら、外観および観念のみならず、称呼も判断要素に含まれなければならない。そして、どの判断要素を重視して商標の類否を判断するかは、商品との関係および取引実情を考慮して決められるべきものである。
この意味で、商品との関係や取引実情によっては、確かに被請求人が引用したような外観および観念上の顕著な相違を持って商標が非類似と判断されることもあろう。
そこで、本件審判請求の対象となる指定商品をかえりみると、対象となるのは「薬剤」である。そして、薬剤は、例えば日用品や衣服類等とは異なり、人間の健康・生命に直結する商品である。もし、一般消費者や専門家(医師、薬剤師等)が薬剤を取り違えて処方、服用した場合、それは人間の健康・生命に極めて重大な影響を与えるおそれがある。この意味で、薬剤は、決して取り違えることが許されない商品の一つといえる。したがって、薬剤についての混同のおそれは厳密に判断されるべきである。
この点、薬剤に係る実際の取引現場においては、薬剤をその呼び名をもって特定することが日常的に行なわれている。したがって、本件商標と引用商標との間でたとえ外観や観念に相違があったとしても、称呼が同一であれば取り違えるおそれは十分にあると言える。取り違えることにより生じる危険が極めて大きいことは前述のとおりである。この意味で、こと「薬剤」に係る商標の類否判断では、外観や観念以上に称呼の同一・類似性が極めて大きな比重をもって判断要素とされるべきであり、その意味で、称呼を同じくする本件商標と引用商標とは、互いに類似する商標であると言うべきである。
(ウ)請求人が名義人となっている商標「KAI」についての国際登録番号第823679号に係る国際商標登録出願で引用された引用A商標、引用B商標および本件商標は、それぞれ外観、観念が異なる。それにもかかわらずこれら引用商標が上記国際登録に係る商標「KAI」に引用されたのは、これら引用商標がすべて「カイ」の称呼を生じ、そのことをもって上記国際登録に係る商標「KAI」(これも「カイ」の称呼を生じる)と類似すると判断したからにほかならない。よって、少なくとも上記国際登録出願における審査については、引用商標はそれぞれ「カイ」の称呼を同じくする互いに類似の商標であると言える。
(エ)請求人は現在、引用A商標の商標権者と商標権の譲受けその他の交渉を継続中である。よって、本件商標が登録無効となれば請求人所有の国際商標登録出願は登録され得る見込みは十分にあるものである。また、そのような交渉の事実とは別に、審判請求の利害関係(すなわち審判請求の利益)は、本件商標が請求人の所有する国際登録出願に対し引例として挙げられ、現実に障害となっている事実をもって、十分に存すると言うべきである。
被請求人は、結論同旨の審決を求める。と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第7号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)本件商標と引用商標との対比
(ア)引用A商標との対比
引用A商標は、原審査において拒絶査定に対する不服審判を経て登録されたものである。引用A商標の出願書類は既に廃棄処分され、拒絶理由等に関しては詳らかではないが、前項記載の審判の審決(乙第2号証)によれば、拒絶理由で登録第373947号商標が引用されており、この原審引用商標は、「図形と『海』の文字」からなるものである(乙第3号証の2)。
この審判において、商標「快」と「海」の称呼の類否が争われ、その結論として「海」の文字は「1字のみの場合には通常訓読みにして『ウミ』と発音されるものであって、『カイ』と発音することは自然ではない。」と審決され、両者の称呼上の類似が否定されている。
本件商標も原審引用商標と同じく「海」であるから、同審決と同様に、引用A商標とは非類似と判断されるべきである。
本件商標は、その観念を説明する必要もないくらい一般に親しまれている語であり、広く水をたたえたところの意味を有する、すなわち「海(うみ)」である。
これに対して、引用A商標は、「気持ち良い」を意味する「快い」の送り字を省略した「快」である。
したがって、送り字の省略された引用A商標からは「カイ」の称呼が第1に生じると見るのが自然である。そして第2として「ココロヨイ」の称呼が考えられる。
これに対して、本件商標「海」は、熟語として「日本海」「海峡」等のように使用される場合は「ニホンカイ」、「カイキョウ」のように音読みされて「カイ」と称呼される場合があるが、1字のみの場合は、誰でもが知っているその観念と相まって「ウミ」と称呼されるとみるのが自然である。
してみれば、本件商標「海」と引用A商標とは、称呼上明確に区別しうるものである。また、観念・外観において相違すること明らかであるから、両者は類似しない商標である。
さらに、別件審判昭59−5129(乙第4号証)においても、商標「友」について、「これを音読みすべき特段の事情がない限り、これを訓読みするのが経験則に徴し自然であるから、その文字に照応して「トモ(友)」の称呼、観念を生ずるものといわなければならない。」として、ローマ字商標「YOU」との称呼の類似を否定した。
この審判昭59−5129の審決も前記被請求人の主張を是認するものである。
(イ)引用B商標との対比
前記したように本件商標「海」からは「ウミ」の称呼が生じるとみるのが自然であるから、たとえ引用B商標を「KAI」の構成と解し得たとしても、そこからはローマ字読みした「カイ」の称呼が生じるものであるから、両商標も称呼上類似することはない。何ら意味を認め得ない引用B商標と観念において類似することなく、また外観において相違することは言うまでもないから、両商標は類似するものではない。
別件無効審判2004−89128における、商標「源気」と「元気」との対比において、乙第6号証のように判断している。
本件に置き換えて述べると、引用B商標は特殊態様からなり、いわれてみればローマ字「KAI」と認めうるものであり、「カイ」の称呼を認め得る。これに対して、本件商標は前記したように「ウミ」と読むのが自然であるが、「カイ」の音読みも存するので、ここでは両者の称呼が同じ「カイ」であると仮定して論を進めてみる。
称呼を同じくするも、両商標の外観は著しく相違し、また、引用B商標からは特定の観念を想起し難く、これに対し、本件商標は、一般に親しまれており、説明すべくもなく特定の意味を有する語であるから、両者は観念においても類似しない。本件商標と引用B商標とは非類似の商標である。
(2)国際商標登録の国内審査との関係
ある商標の審査において、複数の商標が引用された場合、ある商標と各引用商標が類似するとの理由であり、その理由をもって直ちに各引用商標同士が類似すると結論することは論理的でない。前記したように、この国際登録商標での引用商標のうちに一つである本件商標と他の引用商標とは類似しないものであり、この請求理由は誤りである。
(3)審判請求の利害関係
本件審判請求は、商標法第4条第1項第11号に該当することを理由として、本件商標に対してなされたものである。さらに引用B商標に対しても同様であると思われる。
しかしながら、本件商標および引用B商標より先願である引用A商標に対しては本件審判請求時はもちろん今日に至るも審判請求がされていない(乙7号証)。すなわち引用A商標の登録は存続するものである。
しかれば、たとえ本件商標あるいは引用B商標が登録無効となっても、引用A商標が存在する以上拒絶理由は解消されないものであるから、本件審判請求は、請求人の国際商標登録の国内審査・審判の帰趨に関係しないものであり、利害関係を有しないものである。
以上に述べたように、本件商標登録には無効理由が存しない。
(1)利害関係について
請求人が本件審判の請求をするについて当事者間に利害関係の争いがあるので検討するに、請求人の国際登録第823679号に係る国際商標登録出願は、本件商標を引用して商標法第4条第1項第11号に該当することを理由に拒絶され、その出願は拒絶査定に対する審判が現在係属中であるから、本件商標の商標権の存否によって、請求人はその権利に対する法律的地位に直接の影響を受けるか、又は受ける可能性のあるとみられるものである。
したがって、請求人は、本件審判を請求することについて法律上の利益を有するものである。
(2)本件商標と引用A商標及び引用B商標の類否について
本件商標は、上記のとおり「海」の文字を書してなるものであって、その構成文字に相応して「ウミ」又は「カイ」の称呼及び「海」の観念を生ずること明らかである。
これに対し、引用A商標は、上記のとおり「快」の文字を書してなるものであって、その構成文字に相応して「カイ」の称呼及び「こころよい」の観念を生ずること明らかである。
そうすると、本件商標と引用A商標は、たとえ「カイ」の称呼を共通にするところがあるとしても、本件商標と引用A商標とは、上記のとおり観念が明らかに相違するものであり、また、外観においても著しく異にするものであるから、本件商標と引用A商標を同一又は類似する商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、その出所について誤認混同するおそれはないものとみるのが相当である。
さらに、引用B商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、その構成は、一種の幾何図形よりなるといえるものであって、これより直ちに特定の称呼及び観念を生ずるものとはいい得ないから、本件商標と引用B商標とは、称呼及び観念上において比較すべくもない。また、外観においても著しく異にするものであるから、外観上相紛れるおそれはないものといわざるを得ない。
他に、本件商標と引用A商標及び引用B商標とが、類似するものとすべき理由は見出せない。
してみれば、本件商標と引用A商標及び引用B商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれよりみて、十分に区別し得る非類似の商標である。
なお、請求人は、「薬剤は、決して取り違えることが許されない商品の一つといえるから、薬剤についての混同のおそれは厳密に判断されるべきである。」旨主張しているが、本件については、上記認定のとおり非類似の商標であるから、この点に関する請求人の主張は採用の限りでない。
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中「薬剤」について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたもとはいえないから、その登録は、商標法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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