sokuhyo

Trademark Appeal Case

介護タクシーの識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2006−26752(T2006−26752/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、「介護」の文字を書してなり、第39類に属する「車両による輸送,船舶による輸送,航空機による輸送」を指定役務として、平成15年11月12日に登録出願されたものである。その後、同16年6月27日付け提出の手続補正書において、第39類「タクシーによる輸送」に補正されたものである。

2 原査定における拒絶理由の要点

原査定は、「本願商標は、『高齢者・病人などの要介護者を介抱し(例えば、移動も含めた)日常生活を助けること』の意味合いにて一般に使用されている『介護』の文字を普通に用いられる方法で表してなるところ、その指定役務中の、例えば『車両による要介護者の輸送,船舶による要介護者の輸送,航空機による要介護者の輸送』に使用の場合、役務の質、内容(『要介護者の輸送』と云う。)を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記役務以外の役務に使用の場合、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

(1)「介護」の語について

本願商標は、上記1のとおり「介護」の文字よりなり、該語は「高齢者・病人などを介抱し、日常生活を助けること。」(岩波書店「広辞苑第5版」433頁)の意味合いを有する語と認められる。

(2)車いすを積載可能なタクシーについて

本願の指定役務に係るタクシー業界では、タクシー仕様ではないが車いすを積載できる車種がある。また、車いすを積載できるタクシーには8ナンバーの特種用途自動車の登録となっているものもある(別掲(1))。

(3)乗降サポート車両について

自動車メーカーでは、車いすのまま乗り降りするタイプの車種、セカンドシートが車外に出てくるタイプの車種などが販売されている(別掲(2)参照)。

(4)有資格者運転手による送迎

昨今、タクシーの利点の1つである「旅客をドアtoドアで輸送できる」利点を活かして、身体障害者や高齢者など、移動に大きな制約を伴う人々を対象にするタクシー事業者が増加し、中には、運転手にホームヘルパーなどの公的資格を取得させている事業者もある(別掲(1)参照)。

(5)介護事業者による送迎

本業がタクシーではない介護事業者(特に訪問介護・居宅介護事業者)が、介護サービスの利用者を病院などへ移送することを目的に、一般乗用旅客自動車運送事業(患者等輸送限定)という種別の許可を受けることも多くなってきている(「介護タクシー」)(別掲(1)参照)。

また、ホームヘルパーなどの資格を有する運転手が高齢者の介助と送迎を行うタクシーを一般に「介護タクシー」と称している(別掲(4)参照)。

(6)過去の登録例(原審で提出の「引用商標登録文献一覧」)について

本願商標と請求人(出願人)の挙げた登録例は、これらを構成する文字、またはその文字から生ずる意味合いにおいて異なり、さらには使用する役務又は商品も異なるものも存在するものであり、出願された商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かは、当該商標の査定時又は審決時において、その商標が使用される商品の取引の実情等を考慮し、個別具体的に判断されるものであるから、請求人(出願人)の挙げた登録例は、本願商標と事案を異にするものといわざるを得ない。そして、本願商標は、商品の質を表示するものであって、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないことは上記のとおりであり、請求人(出願人)の挙げた登録例の存在によってその認定が左右されるものではない。

(7)商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号に該当することについて(昭和54年4月10日判決 最高裁昭和53年(行ツ)第129号)

商標の本質は、自己の営業に係る商品又は役務を他人の営業に係る商品又は役務と識別するための標識として機能することにあるから、商標法は、第3条において、商標登録の要件を定め、同条第1項第1号ないし第6号に該当する商標は、自他商品又は自他役務を識別する標識となり得ないものとして、登録を受けることができないと規定している。

そして、同法第3条第1項第3号において、「その商品の産地、販売地、品質、・・・又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」と規定し、同号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは、「このような商標は、商品の産地、販売地その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである。」(昭和54年4月10日判決 最高裁昭和53年(行ツ)第129号)とされている。

したがって、登録出願に係る商標について、それが指定役務の取引者、需要者に単に役務の質等を表したにすぎないものとして認識される可能性があり、これを特定人に独占使用させることを不適当とする公益上の理由がある場合には、同法第3条第1項第3号に該当する。

(8)商標法第3条第2項について

仮に、本願商標について使用された結果、識別性が生じているとするならば、使用にかかる商標は、本願商標と同一であって、本願の役務と同一の役務に関する場合に限られると解されている。そして、例えば、次のような証拠方法をもって、本願商標の使用時期、使用期間、使用地域、使用規模等を示すことによって、証明するものとしている(特許庁商標課編「商標審査基準」[改訂第8版])。

(ア)納入伝票、注文伝票、請求書又は領収書等

(イ)広告宣伝等が掲載された印刷物(新聞、雑誌、カタログ、ちらし等)

(ウ)商標が使用されていることを明示する写真等

(エ)広告業者又は印刷業者等の証明書

(オ)同業者、取引先又は需要者等の証明書

しかしながら、請求人(出願人)は、原審での意見書において「介護」の文字が輸送役務に使われる以前に新聞などで報道された実績、介護用の改造車両を特許申請した時期(平成13年1月16日(2001年1月16日))などから勘案して頂きたい旨主張し、平成12年(2000年)11月10日付け「ならリビング」の新聞掲載記事(当該新聞記事中には、「本格派介護タクシーいよいよ日本初12月スタート」の記事が掲載されている。)及び平成13年(2001)2月18日付け奈良新聞掲載記事(当該記事中には、「介護タクシー」の説明記事が掲載されている。)を提出している。 そこで、職権で新聞記事を調査するに、1998年8月22日付け共同通信の新聞記事で、「介護タクシーあす発車 運転手はホームヘルパー」(別掲(4)参照)の掲載記事を見出すことができる。

そうとすれば、本願商標出願日前より、既に「介護タクシー」の役務において「介護」の文字は一般に使用されていたことは明らかであり、他に本願商標が識別力を得るに至ったとする証左の提出がないから、上記請求人(出願人)の主張を採用することはできない。

(9)まとめ

以上の(1)ないし(8)を総合的に判断すると、

(ア)商標法第3条第1項第3号について

「介護」の文字よりなる本願商標は、これをその指定役務中「高齢者や障害者、妊婦の通院、買い物の際になどの介護、介助を必要とする者の送迎の役務」において、車いすの利用者、乗降に不自由な利用者が安心して、かつ容易に乗降できるように、車両後部に車いす乗降用スロープ、リフトを備えた車両や後席回転スライドシート付き又は後席回転シート付きの車両(別掲(2)参照)を役務の用に供する役務に使用した場合、これに接する取引者、需要者をして、単に役務の質、内容を表示したものと認識させるにとどまるものであるから、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないというべきである。

さらに、このような表示は、別掲(2)のとおりタクシー業界においても、介護資格を有する運転手を養成し、そして、有資格者が介助(介護)を含めた送迎(輸送)を行う「タクシー」に「介護」の文字を冠して用いられていることからすれば、単に役務の質等を表示するものとして、この種の役務を提供する業界において一般的に使用されているものであるから、特定人に独占使用させることを不適当とする公益上の理由があるというべきである。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録の要件を具備しないというべきである。

(イ)商標第4条第1項第16号について

また、本願商標をその指定役務中の上記の役務(「高齢者、身障者、妊婦などの介助などを必要とする者に対して、車いすでの乗降機能付きなど乗降サポート機能付きの車両により行う送迎をするタクシーによる輸送」以外の役務、例えば、いわゆる通常のタクシーによる輸送について使用するときは、これに接する取引者、需要者は、これがあたかも、上記役務であるかのごとく、役務の質について誤認を生ずるおそれがあるものであるから、本願商標は、商標法第4条第1項第16号に該当するというべきである。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号および同法第4条第1項第16号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すべき限りでない。

よって、結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。