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Trademark Appeal Case

「花粉」商標の識別力と類似性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2006−89176(T2006−89176/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4969807号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成14年10月9日に登録出願、第30類「赤紫蘇エキス・甜茶エキス・カリンエキスを加味した花粉入りのど飴」を指定商品として、同18年7月14日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用する商標

請求人が本件商標の登録の無効の理由に引用する登録第1650420号商標(以下「引用商標」という。)は、「花粉」の漢字と「かふん」の平仮名文字とを二行に縦書きしてなり、昭和55年12月24日に登録出願、第30類「菓子、パン」を指定商品として、同59年1月26日に設定登録されたものである。その後、指定商品については、平成16年6月23日に指定商品の書換登録がされ、第30類「菓子及びパン」となっている。

3 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第3号証(枝番号を含む。)を提出した。

(1)請求の理由

本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とすべきものである。

(ア)商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、請求人がその指定商品中「のど飴及びその他のキャンデー」につき専用使用権を有する引用商標と同一又は類似であり、指定商品も専用使用権に係る商品と同一のものである。

本件商標は、その中央に大きく表示された「花粉のど飴」の部分が商標としての主たる部分である。そして、「のど飴」の部分は、第30類「菓子及びパン」の「あめ」に包含されるものであり、商品の普通名称に過ぎず、その要部は「花粉」の部分にあるものである。

一方、引用商標は、漢字2文字の「花粉」をゴシック体活字で縦書1列に記載し、その右側にひらがな「かふん」をゴシック体小活字で振り仮名様に添え字として縦書1列に記載してなるものである。

したがって、本件商標の要部たる「花粉」の部分は、引用商標と同ー又は類似と判断されるものである。

(イ)商標法第4条第1項第15号について

本件商標の「花粉のど飴」の文字が「花粉入りのど飴」若しくは「花粉症対策用のど飴」を表示するものに過ぎないものであるとしても、厳に「花粉/かふん」なる登録商標が存在する限り、「花粉のど飴」なる表示は、「花粉/かふん」商標の権利者若しくは専用使用権者の商品と混同を生ずるおそれがあるものである。

更に云えば、本件商標が出願される以前に、本件商標と軌を一にする商標「花粉のど飴」、「花粉のど飴2」に対し、本件請求人が為した商標専用使用権侵害差止等請求事件(平成14年(ワ)第10522号)の裁判においても、「花粉のど飴」なる表示は甲第2号証商標と類似であり、本件請求人の専用使用権を侵害するものであるとの判決(甲第3号証)が確定している。

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。

(2)答弁に対する弁駁の要旨

(ア)商標法第4条第1項第11号についての答弁に対して

被請求人は、本件商標の「花粉」の文字はその指定商品との関係から商品の原材料表示に該当するものである旨主張している。

しかしながら、通常一般人が「種子植物の雄性の配偶体」を意味する「花粉」の語が商品の原材料を表わす語であると認識するとは考えられないものである。「花粉」なる語は、本件商標の商品関係にあっても、自他商品識別力を有する語意を持つものである。

また、被請求人は、本件商標中の「花粉のど飴」の部分は、全体で一体不可分のものとのみ理解され、同時にこれが「花粉症に効果のあるのど飴」といった商品の品質、用途等の表示であると理解されるものである旨主張している。

しかしながら「花粉」なる語が、即「花粉症」を表わすものとは理解され難いところである。被請求人が例として挙げている「花粉あめのち晴れ」、「瞬間/花粉/STOP!/キャンデー」、「花粉退治」等の商標は、その語全体で「花粉を遮蔽する」、「花粉を絶滅する」等の意味を有するものであり、何れも「花粉」の語と結びついて一定の意味を生ずるものである。

一方、本件商標の「花粉のど飴」は、「花粉症」に効果があるとの意味は察することが出来ないものである。これは、被請求人が本件商標からは「花粉入りのど飴」を理解するものと主張する事からも明らかである。

(イ)商標法第4条第1項第15号についての答弁に対して

被請求人は、本件商標と引用商標とは非類似であり、非類似である以上、両者が混同を生ずるおそれはなく、商標法第4条第1項第15号にも該当することはない旨主張し、その証拠として、「花粉」の文字を附した商標が多数登録されている事実を挙げている。

しかしながら、先に述べた如く、これら商標は、「花粉」の語と結びついて、全体で固有の観念を有するとして登録されたものであり、被請求人の主張は認められない。

また、被請求人は、「花粉」の文字を有するにも拘らず、自他商品識別力がないとして拒絶されている例を挙げているが、これらの商標も「花粉」と結合されたその全体で自他商品識別力を有さないとされたものであり、「花粉」の語そのものが自他商品識別力を欠くとされたものではない。

さらに、被請求人は、本件商標は全体で一体の図形商標であり、甲第3号証の判決における客体の標章とは全く構成が異なるものであるから、本件と上記判決は事例を異にするものである旨主張している。

しかしながら、上記したとおり、本件商標の要部は、その中央に大きく表示された「花粉のど飴」の部分にあるものであるから、甲第3号証の判決の効力は本件商標にも及ぶものである。

4 被請求人の答弁の要旨

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証の1ないし同第30号証(枝番号を含む。)を提出した。

(1)商標法第4条第1項第11号について

請求人は、本件商標の要部は「花粉」の部分にあるとし、本件商標は引用商標と同ー又は類似である旨主張している。

しかしながら、本件商標中、「花粉のど飴」の文字部分は、本件商標の指定商品「赤紫蘇エキス・甜茶エキス・カリンエキスを加味した花粉入りのど飴」との関係においては、商品の原材料、品質、用途等を表示する自他商品識別力を有しない文字部分であることは明らかである。

そうとすれば、当該文字部分を要部と認定し、かかる文字部分を分離・抽出してなされた請求人の主張は明らかに誤りである。

近年、我が国において花粉症は国民病とも呼ばれており、花粉症対策の商品としてキャンデーやガムなどの菓子類についても「花粉症に効く」「花粉症対策用」と称するものが市場に流通している実情にある。

因みに、本件商標の登録審決時である平成18年(2006年)5月19日以前から、現実の市場において「花粉症対策用のど飴」、「花粉症対策用のキャンデー」、「花粉症対策用ガム」等が多数販売されている(乙第24号証ないし同第30号証)。

かかる状況下においては、本件商標に接する取引者・需要者は、本件商標中、「花粉のど飴」の文字部分を全体で一体不可分のものとのみ理解し、同時に、これが「花粉症に効果のあるのど飴」といった商品の品質、用途等の表示であると理解するものである。

よって、本件商標中の「花粉のど飴」の表示は、指定商品との関係で「花粉入りのど飴」、「花粉症に効果のあるのど飴」であることを示す品質、内容、用途表示にすぎず、本件商標に接する需要者・取引者は、この構成中「花粉のど飴」の表示から上記意味合いを直感するものである。

故に、本件商標における「花粉のど飴」の表示は、自他商品識別力を発揮し得ない文字部分であるから、需要者・取引者が当該文字部分を商標と認識し、かつ、「花粉」と「のど飴」を分離した上で、その要部が指定商品との関係で識別力の乏しい「花粉」の文字部分であると認識することは到底あり得ない。

本件商標は、長方形の着色された図枠中に、「サクマ製菓(王冠の図形、船の図形と組み合わせてなる被請求人のハウスマーク)」、「サクマ」、「花粉のど飴」等の文字や図形を配してなる図形商標であり、かかる構成において自他商品識別力を発揮する商標である。

そこで、本件商標と引用商標を対比するに、外観においては、本件商標は上記の構成よりなる図形商標であるのに対して、引用商標は「花粉」と「かふん」の文字を二列に縦書きしてなる構成であるから、両者は明らかに相違する。

称呼において、本件商標からは、仮に「花粉のど飴」の文字部分に照応した称呼が生ずるとしても、「カフンノドアメ」なる一連不可分の称呼のみを生じ、引用商標から生ずる「カフン」の称呼とは「ノドアメ」の音の有無により明らかに非類似である。

観念において、本件商標は、図形商標であり、一義的な観念が生じるものではないが、その構成中「花粉のど飴」の文字部分からは、指定商品との関係で、「花粉入りのど飴」、「花粉症に効果のあるのど飴」の意味合いが理解されるものであるのに対し、引用商標からは「花粉」に照応した「雄しべの葯(やく)の中にできる粉状の生殖細胞」の観念が生じるものであるから、両者は明らかに非類似のものである。

よって、本件商標は、引用商標と明らかに非類似の商標であり、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

(2)商標法第4条第1項第15号について

(ア)上記で述べたとおり、そもそも、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、非類似である両者が混同を生じるおそれは皆無であること論を侯たないところである。

さらに言えば、本件商標中の「花粉」の文字部分は、原材料表示、品質表示等に該当するものであるから、本件商標中に「花粉」の文字を含むことのみを理由に、本件商標が引用商標と混同を生じるおそれがあるとするのは、商取引の実情を度外視した暴論であると言わざるを得ない。

このことは、指定商品中に「菓子」と同一又は類似の商品を含む乙第1号証ないし乙第16号証の登録商標(例えば、「花粉飴」、「花粉注意報」、「花粉警報」、「花粉の季節」、「花粉前線」等々)が存在することからも首肯されるところである。

さらに、「菓子」と同一又は類似の商品を指定商品とし、構成中に「花粉」の文字を含む乙第17号証ないし乙第23号証の商標(例えば、「花粉サプリ」、「花粉/せんべい」、「花粉すっきりサプリ」等々)が自他商品識別力がないとして拒絶査定されている。

よって、これらの登録商標例、拒絶査定例よりすれば、図形商標と認識される本件商標がその構成中に「花粉」の文字を有することのみを理由に引用商標と混同を生ずるとすべき合理的な理由は一切見当たらない。

(イ)請求人は、平成14年(ワ)第10522号の判決を提出して、「花粉のど飴」なる表示は、甲第2号証商標と類似であり、本件請求人の専用使用権を侵害するものであるとの判決が確定していると主張し、これを請求人の主張に有利に援用すべく試みている。

しかしながら、そもそも、全体で一体の図形商標である本件商標と上記判決における標章とは、全く構成が異なるものであるから、本件と上記判決は事例が全く異なるものであり、本件商標の有効性になんら影響を与えるものではない。

(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものではない。

5 当審の判断

(1)商標法第4条第1項第11号について

(ア)請求人は、本件商標の要部が「花粉」の文字部分にあることを前提として、本件商標の登録は商標法第4条第1項第11号に違反してされたものである旨主張している。

ところで、最高裁昭和39年(行ツ)第110号判決によれば、「商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。・・」と判示されており、また、「・・・商標の外観、観念または称呼の類似は、その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず、従って、前記三点のうちその一つにおいて類似するものでも、他の二点において著しく相違することその他取引の実情等によって、なんら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては、これを類似商標と解すべきではない。・・」と判示されている。

そこで、この最高裁判決に沿って、本件商標と引用商標との類否について判断する。

(イ)本件商標の構成について

本件商標は、別掲に示したとおり、着色された縦長長方形内に文字と図形を配した構成からなるところ、その縦長長方形は、縦に略3等分され、中央部分を紫色の地色で表し、左側部分を黄色系の濃淡をもった色彩の地色で表し、右側部分を赤色系の濃淡をもった色彩の地色で表されている。そして、中央部分には、「花粉のど飴」の文字が白抜きの文字で大きく表されており、その上部に、「『王冠』の図形と『サクマ製菓』の文字と『船』の図形」とを組み合わせてなる被請求人のハウスマークが表され、該ハウスマークの右側に「サクマ」の文字がやゝ大きな白抜きの文字をもって表されている。また、左側部分には、「2つのおいしい効果」の文字及び「[甜茶エキス]配合/すっきりかりん味!!」の文字とかりんの図形や飴の図形が表され、該図形の下には、「強力ミントで/はな・のど爽快!」の文字が青色の楕円形内に書されている。右側部分には、「[赤紫蘇エキス]配合/さっぱり梅味!!」の文字と赤紫蘇や梅、飴の図形が表されている。

(ウ)花粉症対策用のど飴等の取引の実情について

近年、我が国においては、花粉症は国民病とも呼ばれている状況にあるところ、被請求人の提出に係る証拠によれば、花粉症対策用の商品として、のど飴やガム等も数多く販売されており、これら商品の包装には、以下のような記載がされている。

(a)アサヒビール薬品株式会社の「花粉あめのち晴れ」(乙第24号証)には、「花粉が気になり始めたら『花粉あめのち晴れ』。レモンバームとシソ種子エキスを配合した、気分爽快、スッキリメントール味のキャンディです。」とあり、原材料名の欄に「みつばち花粉」が原材料の一つとして記載されている。

(b)ライオン菓子株式会社の「のど鼻清涼飴/花粉本舗」(乙第25号証)には、「精選中国甜茶・みつばち花粉使用」「強烈なるミントの刺激にて、のど鼻スースー爽やかとなる清涼飴なり。中国渡来の甜茶・みつばち花粉を使用せし健康飴を御賞味下さい。」と記載されている。

(c)株式会社扇雀飴本舗の「花粉/クールアップタイム/Cool UP Time」(乙第26号証)には、「3つの爽快ミントキャンデー/甜茶エキス配合/テアニン配合/バラの花びらエキス配合」と記載されている(賞味期限として2003.01の表示がある)。

(d)カネボウフーズの「花粉にミントGUM」(乙第27号証)には、「花粉症は5人に1人といわれる今も増え続ける現代病/お鼻スースー!お口スッキリ!!気分爽快/気分爽快成分を配合/<ターゲット>花粉症に悩む人々」と記載されている。

(e)ノーベル製菓株式会社の「瞬間/花粉/STOP!/キャンデー」(乙第28号証)には、「『フィトレックス−5』配合のミントキャンデーで、さわやかな甜茶のシロップを包んだ花粉の季節には欠かせないキャンデーです。」と記載されている(賞味期限として2001.1の表示がある)。

(f)春日井製菓株式会社の「花粉退治」(乙第29号証)には、「春の大敵、花粉に勝つ」「つらい季節にまず一粒、目鼻スッキリ、さわやか気分、てん茶、しその葉エキス配合の花粉退治のどあめです。」と記載されている(賞味期限として01年1月の表示がある)。

(g)カバヤ食品株式会社の「花粉注意報」(乙第30号証)には、「はな・のどにスッキリおいしい!/しその葉エキス、しその実エキス、月見草抽出油/3種のエキス配合+ペパーミントオイル/ミツバチ花粉入り」とあり、原材料欄に「みつばち花粉」が原材料の一つとして記載されている(賞味期限として’99.12の表示がある)。

これら商品の包装の記載によれば、商標の構成中に「花粉」の文字が採択されているばかりでなく、その商品説明文においても、「花粉が気になり始めたら・・・」、「<ターゲット>花粉症に悩む人々・・・」、「花粉の季節には欠かせないキャンデーです・・・」、「春の大敵、花粉に勝つ/つらい季節にまず一粒・・・」等のように、「花粉」の文字が使用されており、更には、原材料として「みつばち花粉」が使用されていることを謳っている商品も見受けられるところである。

(エ)本件商標構成中の各文字・図形についての検討

上記した花粉症対策用のど飴等の取引の実情を踏まえて、本件商標の構成をみるに、その構成中の「2つのおいしい効果」の文字、「[甜茶エキス]配合/すっきりかりん味!!」の文字、「強力ミントで/はな・のど爽快!」の文字及び「[赤紫蘇エキス]配合/さっぱり梅味!!」の文字は、その指定商品である「赤紫蘇エキス・甜茶エキス・カリンエキスを加味した花粉入りのど飴」なる商品の原材料や品質を記述的に表示したとみられるものであり、かりんの図形や赤紫蘇、梅の図形は、上記した商品の品質等を表す文字に相応した図形を描いたものであり、また、飴の図形は該商品が飴であることを示したものということができる。

そして、中央上部に表されている「『王冠』の図形と『サクマ製菓』の文字と『船』の図形」を組み合わせた構成部分は、被請求人のハウスマークと認められるものであり、その指定商品の品質、用途等とも関係のない表示であるから、この部分は、自他商品の識別標識として強い出所表示機能を果たす部分といえるものである。

次に、請求人が本件商標の要部であると主張している「花粉のど飴」の文字部分についてみるに、確かに、該部分は、本件商標構成中にあって、最も目立つ状態に表現されているということができる。しかしながら、菓子をはじめとする各種食品の包装に、商品名ないしは商品名に近い表示を大きく表示することは必ずしも珍しいことではないから、大きな文字をもって表されているからといって、直ちに、該文字部分が商標の要部であると判断することはできない。

上記したとおり、本件商標においては、その構成中に、自他商品の識別標識として強い出所表示機能を果たすものと認められる被請求人のハウスマークが表示されており、その他の要素として、商品の原材料や品質を記述的に表示した文字やその文字に相応する図形が表示されている。これらの表示と花粉症対策用のど飴等の取引の実情とを併せみれば、本件商標に接する取引者・需要者は、自他商品の識別標識としての機能を果たすのは、被請求人のハウスマークの部分であって、「花粉のど飴」の文字部分については、該商品が「花粉入りのど飴」であること、あるいは、「花粉症対策用のど飴」であることを理解・認識するにとどまるものとみるのが相当である。

そうとすれば、本件商標のような構成からなる商標においては、「花粉のど飴」の文字部分は、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないか、果たし得るとしても、その機能は極めて弱いものといわなければならない。

(オ)本件商標と引用商標との類否について

引用商標は、前記したとおり、「花粉」の漢字と「かふん」の平仮名文字とを二行に縦書きした構成からなるものであるから、該文字に相応して、「カフン」の称呼を生ずるものと認められる。

一方、本件商標は、その構成中、請求人が本件商標の要部であると主張している「花粉のど飴」の文字部分については、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないか、果たし得るとしても、その機能は極めて弱いものである。

そうとすれば、「花粉のど飴」の文字部分が自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものとみた場合には、「花粉のど飴」の文字部分から、識別標識としての「カフン」なる称呼は生じないものであるから、引用商標との類否を検討する余地はないものといわなければならない。

また、「花粉のど飴」の文字部分について、極めて弱いものであるとしても自他商品の識別標識としての機能を果たし得るとみた場合には、これより「カフンノドアメ」あるいは、「のど飴」の部分を商品名と把握すれば、「カフン」の称呼をも生ずることを否定することはできないから、この場合には、本件商標と引用商標とは、一応、「カフン」の称呼を共通にするものということができる。

しかしながら、その場合においても、先に記載した最高裁昭和39年(行ツ)第110号判決に照らしてみれば、本件商標には、被請求人のハウスマークという強い出所表示機能を果たす部分があるばかりでなく、引用商標とは、全体の外観においても顕著な差異があり、また、観念の点についても、本件商標は殊更「雄しべの葯の中にできる粉状の生殖細胞(花粉)」なる観念を意識させるものでもないから、これらの構成要素を総合して全体的に考察し、これに、先に認定した花粉症対策用のど飴等の取引の実情をも併せみれば、「カフン」の称呼を共通にするとみた場合においても、本件商標に係る商品が引用商標に係る商品と商品の出所について誤認混同をきたすおそれがあるものとは認め難いから、結局、本件商標と引用商標とは、類似の商標ということはできない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものということはできない。

(2)商標法第4条第1項第15号について

商標法第4条第1項第15号おける「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきであるとされている(最高裁平成10年(行ヒ)第85号判決)。

しかして、本件商標と引用商標とは、指定商品においては同一又は類似するものであり、取引者及び需要者も共通にするものと認められる。しかしながら、本件商標と引用商標との類似性の程度は極めて低いものというべきであり、また、少なくとも、花粉症対策用のど飴等においては、商品説明文中等に「花粉」の文字が頻繁に使用されていることからみて、引用商標に独創性があるものとは認められない。

加えて、請求人は、「花粉/かふん」なる登録商標が存在する限り、「花粉のど飴」なる表示は、「花粉/かふん」商標の権利者若しくは専用使用権者の商品と混同を生ずるおそれがあるものである旨主張するのみで、引用商標の周知著名性を裏付ける証拠を何ら提出していない。

してみれば、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者をして引用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が請求人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきである。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものということはできない。

(3)請求人の主な主張について

請求人は、本件商標が引用商標と類似するものであることの理由付けとして、本件商標と軌を一にする商標「花粉のど飴」及び「花粉のど飴2」に対し、本件請求人が為した商標専用使用権侵害差止等請求事件(平成14年(ワ)第10522号)の判決を挙げ、該判決においては、「花粉のど飴」なる表示は引用商標と類似であり、本件請求人の専用使用権を侵害するものであるとされ、該判決は既に確定している旨主張している。

確かに、上記判決においても認定されているとおり、「花粉のど飴」の文字のみからなる商標及び「花粉のど飴2」の文字のみからなる商標においては、「のど飴」の文字部分が自他商品識別機能を備えていない部分であるから、引用商標が存在していることとの関係においては、「花粉」の文字部分をもって、商標の要部と捉えざるを得ないものということができる。

しかしながら、本件商標と該商標専用使用権侵害差止等請求事件において対象となった「花粉のど飴」及び「花粉のど飴2」とは、「花粉のど飴」の文字を共通にしてはいるが、上記したとおり、本件商標の構成中には、被請求人のハウスマークという強い出所表示機能を果たす部分を有するばかりでなく、他にも多くの構成要素を有するものであって、本件商標と「花粉のど飴」及び「花粉のど飴2」の商標が構成の軌を一にする商標であるとは到底いい難いものである。

そして、請求人が提出している平成14年(ワ)第10522号判決(甲第3号証)においても、その理由中には、「・・・本件においては,前記のとおり被告標章のうち『のど飴』の部分は自他商品識別機能を全く備えない部分であるから,『花粉』の部分に自他商品の識別機能を認めざるを得ないものであり,また,被告標章が外観において『花粉』以外の部分が特に見る者の目をひくような構成となっているわけでもないから,『花粉』の部分を被告標章の要部と認める上で妨げとなるものでもない。」と判示されている一方で、「・・・本件登録商標(本件無効審判における引用商標)は,それ自体として強い商品出所識別機能を有するものではなく,また,特定の商品につき長期間継続的に使用されたことを通じて市場における信用ないし顧客吸引力を備えたものということもできないことに照らせば・・・」とも判示されているところである。

そうとすれば、本件商標は、該商標専用使用権侵害差止等請求事件において対象となった「花粉のど飴」及び「花粉のど飴2」の文字のみからなる商標とは、その構成において顕著な差異を有するものであるから、この点についての請求人の主張は採用できない。

また、請求人は、通常一般人が「種子植物の雄性の配偶体」を意味する「花粉」の語が商品の原材料を表わす語であると認識するとは考えられないものであるから、「花粉」なる語は、本件商標の指定商品との関係においても、自他商品識別力を有する語意を持つものである旨主張している。

しかしながら、先に認定したとおり、乙第24号証、乙第25号証及び乙第30号証には、該商品が「みつばち花粉」入りの商品であることが謳われており、その中でも、乙第30号証に係る商品は、請求人自身が販売している商品と認められるものである。そうとすれば、「花粉」の語(文字)が「のど飴」等の商品について、直ちに、自他商品識別力を有しないとまではいえないとしても、上記判決においても判示されているように、それ自体として強い商品出所識別機能を有するものとはいえないから、この点についての請求人の主張も採用できない。

(4)まとめ

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすべき限りでない。

よって、結論のとおり審決する。

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