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Trademark Appeal Case

識別力と使用意思

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2006−89142(T2006−89142/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4983085号商標(以下「本件商標」という。)は、「東京医専」の文字を標準文字で表してなり、平成16年12月10日に登録出願され、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授」を指定役務として、同18年9月1日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び弁駁の理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第36号証を提出した。

1.請求の理由

(1)請求理由の要約

本件商標は、以下の理由から明らかなように、商標法第3条第1項柱書き、同第3号、同第4号及び同法第4条第1項第7号、同第10号及び同第15号に該当するものであるから、本件商標は同法第46条第1項第1号により無効にすべきものである。

(2)本件商標を無効とすべき理由

(2−1)本件商標について

本件商標は、「東京医専」の標準文字からなる商標であり、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授」を指定役務としている。平成16年12月10日に、医療法人社団岡田会を出願人として出願をし、平成17年5月25日に、商標法第4条第1項第7号を理由に拒絶理由が発せられた。平成17年6月22日に、出願人を医療法人社団岡田会から学校法人青丹学園に変更するための出願人名義変更届を提出し、さらに、当該拒絶理由を解消すべく、平成17年12月12日に、学校法人青丹学園から学校法人東京医科大学に変更するための出願人名義変更届を提出した。平成17年12月21日に意見書を提出し、平成18年9月1日に設定登録されたものである(甲第1号証)。

(2−2)無効事由について

前記請求の理由の要約のとおりである。

1)商標法第3条第1項柱書違反について

〔請求人の専門学校の計画承認について〕

請求人は、本件商標と同名の「東京医専」という名称の医療専門学校を設立予定であり、平成16年3月2日に新宿区総務課の担当者と面談して設置認可申請について相談し、看護師紹介・派遣業務会社と業務提携する(甲第2号証)等、早期から設立に向けて準備しており、平成18年5月2日新宿区に設置認可申請(甲第3号証)、平成18年7月18日東京都より学校設置計画承認との答申(甲第4号証)、同7月26日新宿区より設置計画承認(甲第5号証)という経緯で準備を進めている。請求人は、既に、パンフレットや授業で使用する教材等の作成も行っており、「東京医専」との学校の名称を使用することから、平成18年8月25日、同年9月19日及び同年9月21日に「東京医専」を表す商標について、商標登録出願をしている(甲第6ないし同第10号証)。

上述のように、学校設置については、請求人が「東京医専」の名称で教育事業が認められ、請求人以外の第三者については、東京都私立専修学校設置認可取扱内規第14条により、「東京医専」との専修学校の学校名称を使用することはできない。本件商標は、実際に使用できない専修学校の名称であるゆえに、他の学校の名称としても使用することは現実的に想定できないことから、当該商標を学校名称に使用する機会がなく、自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標とはいえない(甲第11号証)。即ち、本件登録商標権者である学校法人東京医科大学を含む第三者が商標登録出願し、商標登録を受けても、そもそも当該商標について使用することができず、商標法第3条第1項柱書にいう「自己の業務係る商品又は役務に使用する商標」に該当しないものと考える。

商標法第3条第1項柱書には、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。」と規定され、自己の業務に係る役務等について使用する意思を必要とすると解される。

請求人が「東京医専」の名称による学校の開設を阻止するため、及び、母校の略称を守るために商標登録を得ることは、自己の業務に係る役務等に使用する意思はないものであり、商標法第3条第1項柱書に違反するものである。

他方で、被請求人は、請求人の専門学校の開設を知ったうえで、母校の略称を守るとはいえ、同一名称の「東京医専」の名称で商標登録出願し、商標権を得ることは、商標法第3条第1項柱書に違反をし、商標法の趣旨とは異なるものと考える。

2)商標法第3条第1項第3号違反について

本件商標は、行政区画名の一つである「東京」と、「医療に関する知識を主として教える専門学校」の略称と認められる「医専」の文字を結合して「東京医専」と標準文字で表している。

したがって、本件商標は、その役務の提供の場所である「東京」と、その役務の質を示す「医専」を結合したものであり、その役務の質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当し、商標法第3条第1項第3号に違反する。

3)商標法第3条第1項第4号違反について

本件商標の「東京医専」は、ありふれた名称である「東京」と、「医療に関する知識を主として教える専門学校」の略称と認められる「医専」の文字を結合して「東京医専」と標準文字で表しているので、総合的に判断すると、ありふれた名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当する。例えば、東京医専は、被請求人の主張する「東京医科大学」の前身の「東京医学専門学校」の略称であるほか、「東京医療専門学校」「東京医学技術専門学校」「東京医薬専門学校」「東京医療福祉専門学校」「専門学校東京医療学校」のように複数の専門学校が存在しており、これらの学校名の略称も、「東京医専」となると考えられることからも、本件商標は、商標法第3条第1項第4号に違反する(甲第12ないし同16号証)。

なお、「医専」という名称は、「医療に関する専門的業務」とも考えられることからも、本件商標は、商標法第3条第1項第4号に違反する(甲第17号証)。

4)商標法第4条第1項第7号違反について

請求人が「東京医専」の名称で、学校開設の計画準備をしている旨は、後述するように広く告知しているので、本件商標が無効とならない場合には、需要者の混乱を生じるおそれがある。加えて、請求人は、本件商標の査定登録前に、平成18年7月26日新宿区より設置計画承認(甲第5号証)を得ているにもかかわらず、本件商標が無効とならない場合には、学校教育法に基づく許可を受けたものの、学校名称として使用に支障を来たすことになる。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反する。

事前に他人の事業計画を察知して、これを阻止するために、これと同一の名称の「東京医専」との商標登録出願をして、本件商標を取得することは、商標権の独占性を乱用するものであり適当ではない。このような、自己の業務に係る役務等に使用するものとは関係なく、単に他人の事業活動を阻止して、その略称を守るための本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反すると思料する。

また、平成17年11月19日に開催された「イキイキばんびオープン祈念講演」シンポジウムは、被請求人である学校法人東京医科大学に属する東京医科大学霞ヶ浦病院が開催したものであり、被請求人自らが請求人である学校法人モード学園の担当者を招待していながら、請求人の事業活動を牽制することを目的として、請求人が開校予定の名称について、特段の調整もなく、先に商標登録出願をすることは穏当ではなく、商標法第4条第1項第7号に該当する。

上記の「3)商標法第3条第1項第4号違反について」のなかで、複数の専門学校の略称が、「東京医専」となり得ることを説明した。本件商標は、被請求人の前身も「東京医専」と略称されていたことを鑑みても、別の学校名称でも使用されることがあり、これを被請求人が商標として採択使用することは穏当ではなく、商標法第4条第1項第7号に該当する。

5)商標法第4条第1項第10号違反について

請求人は、被請求人の本件商標の出願日である平成16年12月10日前の平成12年4月に、大阪府大阪市において「大阪医専」の名称の専門学校を開校している。「大阪医専」の専門学校の設置許認可については、平成11年6月30日に大阪府知事に対して、大阪医専設置認可申請書を提出し(甲第23号証)、平成12年3月31日に、大阪府知事より学校名を大阪医専とした設置認可を受けている(甲第24号証)。また、大阪医専は、医療系の専門学校であるが、各医療系従事者の養成施設の指定に関しては、平成11年9月に、厚生大臣に対して、理学療法士作業療法士養成施設設置申請書、精神保健福祉士養成施設等指定申請書、言語聴覚士学校養成所設置申請書、臨床工学技士学校養成所設置申請書、視能訓練士養成所設置申請書、介護福祉士養成施設等設置申請書をそれぞれ提出し、厚生大臣より平成12年3月1日に社会福祉士及び介護福祉士の養成施設として指定を受け(甲第25号証)、その他は平成12年3月31日に指定を受けている(甲第26ないし同30号証)。

また、大阪医専は、本件商標の出願日である平成16年12月10日までに、計527名の卒業生を輩出して、その後には、平成16年度に640名、平成17年度に689名に、合計1856名の卒業生を輩出している。

また、大阪医専は、学科毎に年に1回、公開講座を実施しており、内部生及び外部生を併せて、1356名が参加をしている。

また、大阪医専への学生募集等の活動については、数多くの広告活動を実施している。広告の種類としては、関西地区の鉄道広告、テレビCM、高校生向けの進学情報誌への掲載、新聞広告を行っている。(甲第31号証ないし甲第33号証)。

さらに、「大阪医専」が新聞報道を受けて、記事として掲載された事例(甲第2号証、甲第18号証、甲第34号証、甲第35号証)がある。

上記のように、「大阪医専」の名称の専門学校は、被請求人の本件商標の出願日である平成16年12月10日の時点においても、また現在に至るまで、在校生や卒業生の数、また、公開講座、広告実績などから大阪府を中心として需要者の間に広く知られた商標であるといえる。

また、「大阪医専」の名称の専門学校は、医療関係従事者のための養成施設であり、本件商標の指定役務である第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授」の指定役務と同一である。

本件商標の「東京医専」と請求人が教育事業を実施している「大阪医専」については、「医専」については共通し、「東京」と「大阪」の地理的名称のみが異なるものである。一般に、地理的名称については、指標性を発揮する部分ではないので、「医専」が商標の指標性を有する部分である。しかし、前述のように、「医専」とは、「医療に関する知識を主として教える専門学校」の略称と認められるものの、これをそのまま正式名称として、専門学校の事業を実施している事例は、請求人に関する学校以外にないものと考えられる。すわわち、「医専」とは役務の質を表す名称の略称であるものの、これをそのまま専門学校等の正式名称で採用している事例がないこと、請求人の使用実績により、「大阪医専」が需要者の間に広く知られた商標であること、請求人が、「名古屋医専」「東京医専」と一連のものとして専門学校の事業を計画して広告している事業を総合的に考慮すると、本件商標の「東京医専」は、請求人の「大阪医専」の需要者に広く知られた商標と類似することを理由に商標法第4条第1項第10号に違反する。

なお、請求人は、2008年4月に愛知県名古屋市においても、「名古屋医専」の名称の専門学校を開校する予定であり、2006年6月下旬より、求人広告により、教員募集のために「名古屋医専」の名称を掲載している(甲第36号証拠)。

6)商標法第4条第1項第15号違反について

上述のように、本件商標の「東京医専」は、請求人の「大阪医専」の需要者に広く知られた商標と類似すること、その他、「名古屋医専」や「東京医専」の名称の専門学校の開設やそのための広告活動から、地理的名称に「医専」を加えることは、請求人の役務として、需要者に定着しているものであり、本件商標は、他人の業務と混同を生じるおそれのある商標である。請求人の「大阪医専」の名称については、本件商標の出願時(平成16年12月10日)及び現時点においても、専門学校事業の実施及びそれに関連する広告活動等から関西地方を中心に広く知られた商標である。

また、「東京医専」の名称については、本件商標の出願日である平成16年12月10日時点においては、上述したように、医療系の専門学校の開設予定である旨を告知しており、また、その旨を多くの新聞紙にも取り上げられている。

これらの事情から、請求人は「大阪医専」「名古屋医専」「東京医専」の名称の専門学校の開設準備や教育事業の実施、またはそのための広告活動を通じて、広く周知されているものである。「医専」の名称は、「医療に関する知識を主として教える専門学校」の略称と認められるものの、この略称をそのまま専門学校の正式名称として採用している事例の無いこと、請求人による使用実績を有していること、及び「大阪」「名古屋」「東京」の地理的名称は日本国内における三大都市として一連のものとして認識されることが多いことを総合的に考慮すると、「東京医専」は請求人の業務として定着されており、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反する。

(3)むすび

以上により、本件商標は、商標法第3条第1項柱書、同第3号、同第4号、同法第4条第1項第7号、同第10号並びに同第15号に該当し商標登録を受けることができないものであるから、本件商標は、同法第46条第1項第1号により無効にすべきものである。

2.弁駁の理由

被請求人より提出された答弁書の内容について反論する。

(1)商標法第3条第1項柱書違反について

請求人は、東京都私立専修学校設置許可取扱内規第14を根拠として、「専修学校の名称は、既存の許可学校の名称と同一若しくは紛らわしいものであってはならない」との規定から、被請求人の商標権は使用する機会が無く、また、東京都からの計画承認との関係により、商標法第3条第1項柱書違反及び同法第4条第1項第7号の規定に違反することを主張したものである。請求人は、平成18年5月2日に新宿区に設置許可申請、平成18年7月18日東京都より学校設置計画承認との答申、この答申を受け、平成18年7月26日新宿区により設置計画承認という複数の過程を経て、滞りなく承認等が認められている。

したがって、被請求人が述べるように、「請求人の場合には、『学校設置計画』の承認(乙第8号証)を受けたに過ぎず、未だ最終的許可を受けているわけではない。」ので、東京都私立専修学校設置許可取扱内規第14の規定を根拠とすることは不適当であるような主張は、請求人の学校設置に関する一連の許認可の事実を軽んずる認識であり、また請求人の学校設置に関する実績を考慮していないものであり、適当ではない。

次いで、被請求人は、答弁書第5頁の中で、「これら『大阪医専』・『名古屋医専』.『東京医専』は、いずれも旧専門学校(『大阪医学専門学校』・『名古屋医学専門学校』・『東京医学専門学校』)の略称であって、(中略)不正目的の意図が窺えるのである。一校のみであればいざ知らず、3校も続くことは、その意図を疑わざるを得ない。」と主張している。

しかし、請求人は審判請求書の中で、「そもそも本件商標の『東京医専』は、ありふれた名称である『東京』と、『医療に関する知識を主として教える専門学校』の略称として認められる『医専』を結合しているのみであり、ありふれた名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当する」と述べていること、「大阪医専」の名称の使用にあっては、請求人が創作したシンボルマークを付して使用していることからも、不正目的は無いことは明白である。また、大阪医専に籍を置く学生や教職員についても、旧大阪医学専門学校と混同して入学、就職する者もおらず、被請求人は、これらを考慮せず、一方的に不正目的の意図を述べているのは、遺憾である。

(2)商標法第3条第1項第4号違反について

被請求人は、答弁書の中で「被請求人の姉妹校である『東京医科大学看護専門学校』及び『東京医科大学霞ヶ浦看護専門学校』の略称も『東京医専』となるが、何故この2校は例として挙げていないのであろうか。」と述べているが、仮に被請求人の姉妹校の事例が加わったところで、ありふれた名称、若しくはこれら名称の通常の方法による略称になることを裏付ける事例の補強になるだけであるので、被請求人の答弁は反論する根拠とはならない。

また、被請求人は「請求人は、何故、甲第6号証ないし甲第10号証のように、『東京医専』がらみの商標を出願しているのでしょうか。」と述べているが、請求人が、無効すべきと主張しているのは、「東京医専」と標準文字のみからなる商標であって、請求人のように、識別力のある「メディカル総合学園」やシンボルマークを付した商標であれば、商標法第3第1項第4号違反とならないと考えており、矛盾することはない。

(3)商標法第4条第1項第7号違反について

請求人は適式な手続きにしたがって、「東京医専」との名称で専修学校の許認可手続きの遂行とともに、「東京医専」との名称で、その開校準備や広報活動等のために各種行事への参加、新聞等の媒体でも大きく取り上げられていることは、審判請求書の中でも述べたとおりである。

被請求人は、請求人が「需要者の混乱」を生じさせているとしているが、仮に被請求人が同窓会組織等を強化、機能の多様化をして、「東京医専」や「現代医療研究所 東京医専」との名称で活動することと、請求人が、主に医療系の資格(医師免許を除く)の取得を目指した専修学校として開校し活動を展開したとしても、需要者の層が異なり、また、その業務内容等から「需要者の混乱」が生じることは想定できない。

逆に、被請求人が、請求人の事業計画を察知して、何らの調整無しに、「東京医専」の文字のみからなる商標を取得することは、請求人の計画している専修学校の名称について、将来においてその名称の変更等も余儀なくされることも否定できず、請求人の設置する専修学校に在籍する者、入学を目指す者、また同専修学校から輩出された人材を雇用等する関係者等をして「需要者の混乱」を生じる可能性がある。この点で、被請求人の答弁は成り立たない。

また、被請求人は答弁書の多岐に渡り、「被請求人の前身校名「東京医学専門学校」の略称に由来する被請求人の周知・著名な別称として現在も一般的に通用しているもの」と主張しているが、本件商標の査定処分時の平成18年8月15日(起案日)時点においては、「東京医専」との名称で教育事業等を展開しているわけではなく、歴史的事実として、主に関係者の間で運用しているものと認められるものであり、他者の使用態様によっては、学校名称の選択にも制限を加えることができ得る商標権を認めるほどの保護価値は無いものと思料する。逆に、請求人が審判請求書の中で説明したように、被請求人の本件商標の登録査定時までに、「東京医専」との名称で、専修学校の許認可の手続きが事故無く処理されていること、これに併せて、同名称での学校設置に関する広報活動をしていることを鑑みると、請求人の期待権は保護されるべきである。

本件商標が無効にされないと、現に進められている教育事業に影響を与える可能性も否定できず、取引秩序を乱し、需要者を混乱させ、さらには産業の発展を目的とした法目的にも合致しないことになる。他方で、被請求人も認めているように、本件商標の商標登録出願にあっては、請求人の事業を阻止し、被請求人の過去の旧名称・略称を守るといった、商標法の趣旨に沿わないものであることは明白である。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反されて登録されたものであることに変わりは無い。

(4)むすび

以上、述べたとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書、同第3号、同第4号、同法第4条第1項第7号、同第10号及び同第15号に該当するので、同法第46条第1項第1号により無効とすべきものである。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第14号証を提出した。

(答弁の理由)

(1)本件商標は、甲第1号証のとおりの経過により商標登録されたものであって、その商標登録は請求書の各無効理由には該当しない。

(2)商標法第3条第1項柱書違反について

(ア)請求人の専門学校の計画承認について

請求人は、「東京医専」の校名で学校設置計画が承認された(甲第5号証)旨を述べ、「請求人以外の第三者については、東京都私立専修学校設置認可取扱内規第14条により、『東京医専』との専修学校の学校名称を使用することはできない。」と述べていることについて答弁する。

まず、学校教育法第7章の2第83条の2(乙第4号証)、私立学校法第4章雑則第65条(乙第5号証)、専修学校設置基準第5章第28条(乙第6号証)の「学校の名称」や「類似名称の使用禁止」の規定は、他校の名称との関係、を規定したものではなく、学校教育法で決められている大学・高等学校・中学校・小学校・専修学校・各種学校(東京都私立専修学校設置認可取扱内規第14でいう法1条校)の認可を受けた者以外は、それぞれ校名中「大学・高等学校・中学校・小学校・専修学校」等の文字(類似する文字)を含めた名称を用いてはならない旨を規定しているに過ぎない。

例えば、専修学校の設置認可を受けた者以外の者が「00専修学校」・「専修学校00」或いは「00専門学園」等の校名を用いてはならないと、一種の業態的文字の使用について規定するに止まり、「00」の部分についてまでは規定していないものと思料する。

また、請求人の場合は、「学校設置計画」の承認(乙第8号証)を受けたに過ぎず、未だ最終的認可を受けているわけではない。

(イ)母校の略称を守るための商標出願について

我が国の商標法は、商標登録を受けるにあたっては登録主義を採用し、登録の要件として出願商標の使用を必要とせず、使用の意思を有すれば足りることとしており、このことを表した商標法第3条柱書きは「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。」と規定し、商標登録を受けられる商標は「現に使用している商標」ばかりでなく、「将来に使用する商標」も含ませていると共に「現在行っている自己の業務」及び「近い将来開始する予定の自己の業務」について使用する商標であるとしている。

本件商標の場合を見ると、以前から被請求人の組織内において被請求人の前身である「東京医学専門学校」の略称に由来する被請求人の周知・著名な別称として通用している「東京医専」の名称を用いた組織化が唱えられていた折りに、請求人の動きを察知した被請求人のOBである岡田重憲が被請求人に相談なく(学内組織に図る時間を考慮して)本件商標の出願をした時点(平成16年(2004)12月10日)においては母校の略称を守るという意識が強かったことがあったとしても、本件商標の出願以前より「東京医専」の名称を用いた組織化が学内およびOBの間で唱えられていたことからして「東京医専」の名称を用いた組織化のことが念頭になかった訳ではないので、出願時に本件商標の使用の意思が全く無かったことにはならない。

また、商標法第3条柱書きの判断時期は、一般の行政処分の判断時期である処分時主義にならい査定処分時とされている。本件商標の場合は、平成17年(2005)12月12日に被請求人が本件商標の出願人となる手続をとっており、平成18年(2006)8月15日に本件商標に対する登録査定処分がなされたのであるから、商標法第3条柱書きにいう登録要件が備わったことになり、平成18年(2006)9月1日に本件商標が商標登録されたのである。

さらに、本件商標は、平成17年(2005)4月1日に被請求人理事長より被請求人のOB・現役学生および職員宛てに現代医療研究所「東京医専」設立についての挨拶状(乙第9号証)が発せられ、同計画についての準備がOBの岡田重態(本件商標の出願人であった)に委託され(乙第10号証)、平成l8年(2006)9月5日に「東京医科大学組織機構図(案)」、「東京医専事業概要(案)」及び「東京医専事業計画(案)」が作成され、平成l8年(2006)12月8日に「東京医専事業概要」(乙第11号証)、「東京医専事業計画」(乙第12号証)及び「東京医専規程」(乙第13号証)が作成され、インターネットのホームページ(乙第14号証)にもそれらが掲載され、その指定役務について使用が開始されている。

「東京医専事業概要」、「東京医専事業計画」及び「東京医専規程」には、「東京医専」の設置目的として「本学のみならず一般市民を対象として、医科学に関する包括的な知識及び技術の教授を行うことを目的とする」とし、教育事業として生涯学習で「本学の学術研究の成果を広く社会に還元するために、一般市民を対象とした公開講座、講演会、シンポジュウム、セミナー等を開催し、研究事業として「都市型災害に対する医科学的研究」し及び公報・普及活動として「論文、学会等での研究発表、ホームページによる広報活動」等を行うこととしている。まず、そのかわぎりとして平成l9年(2007)1月26日に東京オペラシティ・リサイタルホール(新宿)において学校法人東京医科大学および財団法人東京フィルハーモニー交響楽団の協力の下で東京医科大学校歌・応援歌のCD製作を行う予定である。

他方、請求人は、「大阪市及び名古屋市で、それぞれ『大阪医専』『名古屋医専』の名称で専門学校を開設又はその準備をしており、その一連の事業展開として、東京都において『東京医専』の名称で専門学校を開設する準備をしている(甲第2〜5号証)。」と述べている。これら「大阪医専」・「名古屋医専」・「東京医専」は、いずれも旧専門学校(「大阪医学専門学校」・「名古屋医学専門学校交」・「東京医学専門学校」)の略称であって、これらには永年積み重ねてきた信用が化体されているものである。

請求人の名称の選定には他人の名声・信用を利用しようとしていることが窺われる。つまり、これら旧専門学校の略称であることを知りながらこれらが商標登録をしていないことを奇貨としてこれらが永年積み重ねてきた信用を利用せんとする不正目的の意図が窺えるのである。一校のみであればいざ知らず、3校も続くことは、その意図を疑わざるを得ない。特に、「東京医専」については、被請求人の前身校名「東京医学専門学校」の略称に由来する被請求人の周知・著名な別称として現在も一般的に通用しているもの(乙第1号証〜乙第3号証)であるから、不正目的の意図が強く窺える。

また、請求人は、恰も被請求人が請求人の事業展開を阻止するために本件商標の登録を得たかのように述べているが、これは主客顛倒の理屈である。

(ウ)旧名の略称についての商標登録出願と開校準備中の学校名称の保護について

請求人は、「東京医専」を旧名称の略称と述べているが、「東京医専」は被請求人の前身校名「東京医学専門学校」の略称に由来する被請求人の周知・著名な別称として現在も一般的に通用しているものであって、単なる旧名称の略称ではない。

また、恰も被請求人の本件商標が請求人の事業展開を阻止しているかの如く述べているが、被請求人の前身校名「東京医学専門学校」の略称に由来する被請求人の周知・著名な別称として現在も一般的に適用しているものを校名としようとしているのは、請求人であるから、開校準備中の学校名称の保護の議論は、主客顛倒したものであって、商標法の目的を逸脱する行為をなそうとしているのは請求人自身である。

(エ)したがって、本件商標の商標登録は、商標法第3条柱書きに違反してなされたものではない。

(3)商標法第3条第1項第3号違反について

本件商標は、被請求人の前身校名「東京医学専門学校」の略称に由来する被請求人の周知・著名な別称として現在も一般的に通用しているものであるから、「東京医専」一体として把握・認識されるものである。略称・通称や別称として適用しているものは、それ以下に分解されることはないのである。

本件商標が商標法第3条第1項第3号に違反しているものとするならば、請求人は、何故、甲第6号証ないし甲第10号証のように「東京医専」がらみの商標を出願しているのであろうか。

したがって、本件商標の商標登録は、商標法第3条第1項第3号に違反してなされたものではない。

(4)商標法第3条第1項第4号違反について

本件商標は、被請求人の前身校名「東京医学専門学校」の略称に由来する被請求人の周知・著名な別称として現在も一般的に通用しているものであるから、「東京医専」一体として把握・認識されるものである。例えば、略称ではないが、前身校名が未だに別称として適用しているものとして一般に通用している「東京理科大学」の「東京物理学校」或いは「物理学校」がある。

また、請求人は、本件商標が商標法第3条第1項第4号に違反するとする例として「東京医療専門学校」・「東京医学技術専門学校」・「東京医薬専門学校」・「東京医療福祉専門学校」・「専門学校東京医療学院」を掲げるが、これらが「東京医専」と略称されている事実を立証していない。請求人の理屈からすると被請求人の姉妹校である「東京医科大学看護専門学校」及び「東京医科大学霞ヶ浦看護専門学校」の略称も「東京医専」となるはずであるが、何故この2校は例として挙げられないのであろうか。請求人のこの理屈は、机上の空論に過ぎないものである。商標法は、現実社会の流通を秩序立てることを目的としているものである。

さらに、本件商標が商標法第3条第1項第4号に違反しているものとするならば、請求人は、何故、甲第6号証ないし甲第10号証のように「東京医専」がらみの商標を出願しているのか。

したがって、本件商標の商標登録は、商標法第3条第1項第4号に違反してなされたものではない。

(5)商標法第4条第1項第7号違反について

(ア)請求人による「東京医専」の学校設置許可等との関係について

本件商標は、被請求人の前身校名「東京医学専門学校」の略称に由来する被請求人の周知・著名な別称として現在も一般的に通用しているものであること。

「大阪医専」・「名古屋医専」・「東京医専」が旧専門学校(「大阪医学専門学校」・「名古屋医学専門学校」「東京医学専門学校」)の略称であることを知りながら、これらが商標登録をしていないことを奇貨として、これらが永年積み重ねてきた信用を利用せんとする不正目的の意図が窺えること。

特に、「東京医専」については、被請求人の前身校名「東京医学専門学校」の略称に由来する被請求人の周知・著名な別称として現在も一般的に通用しているものであるから、不正目的の意図が強く窺えること。

恰も被請求人の本件商標が請求人の事業展開を阻止しているかの如く述べているが、被請求人の前身校名「東京医学専門学校」の略称に由来する被請求人の周知・著名な別称として現在も一般的に通用しているものを校名としようとしているのは、請求人であるから、開校準備中の学校名称の保護の議論は、主客顛倒したものであって、商標法の目的を逸脱する行為をなそうとしているのは請求人自身であること。

また、請求人は、未だ設置認可を受けておらず、名称の変更も可能であるのに、恰も認可を受け、名称は確定したかのような主張をしていること。

さらに、請求人は「請求人の学校設立により被請求人の使用は制限されない」旨の主張をしながら、他方では、自ら商標登録出願(甲第6号証〜甲第10号証)をしており、後願となった自己の出願を通し、先願として登録済みの被請求人の商標権を不当に制限しようとする意図が明らかであること。

さらにまた、請求人は、「需要者の混乱」を主張するが、「需要者の混乱」を仕掛けているのは請求人自身であること。

以上を総合勘案すれば、請求人の行為には不正の目的が窺えるから、この行為こそが公序良俗違反に該当するものである。

したがって、本件商標の商標登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してなされたものでないことは明白である。

(イ)複数の専門学校の略称が「東京医専」となる点について

上記で述べたとおりであるから、本件商標の商標登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してなされたものでないことは明白である。

(6)商標法第4条第1項第10号違反について

本件商標は、被請求人の前身校名「東京医学専門学校」の略称に由来する被請求人の周知・著名な別称として現在も一般的に通用しているものであるから、「東京医専」一体として把握・認識され、それ以下に分解されることはないのである。仮に「大阪医専」なる専門学校名および商標が大阪を中心として需要者の間に広く知られているのであれば、これも「大阪医専」一体として把握・認識され、それ以下に分解されることはないのである。よって、「東京医専」と「大阪医専」とは、全く別異のものと把握され認識されるものであるから、互いに類似しないものである。

なお、「大阪医専」は平成12年(2000)4月に開校と述べているが、被請求人の前身である「東京医学専門学校」の開校は、大正7年(1918)4月であり、現校名になったのが昭和27年(1952)4月であるから、「東京医専」が校名の略称であったのは大正年代から、別称となったのは昭和戦後の年代からである。

また、請求人の「東京医専」は、未だ開校すらしていないのであるから、それに対する周知著名性が発生することは全くないのである。

したがって、本件商標の商標登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してなされたものではない。

(7)商標法第4条第1項第15号違反について

上記のとおりであるから、「東京医専」と「大阪医専」とは全く誤認するおそれのないものであり、それが付された役務の出所についても全く混同を生じるおそれのないものである。

したがって、本件商標の商標登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものではない。

(8)結び

以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書、同第3号、同第4号、同法第4条第1項第7号、同第10号及び同第15号のいずれにも該当しないから、本件商標を無効にすべき理由は存在せず、同法第46条第1項第1号を適用すべき余地がないものである。

第4 当審の判断

(1)商標法第3条第1項柱書について

商標登録を受けることのできる商標は、現に使用している商標ばかりでなく将来に使用をする予定のある商標も含まれると解されるところ、本件商標の商標権者(出願人)は、「学校法人東京医科大学」であり、その前身校名は「東京医学専門学校」であることが認められ、本件商標の「東京医専」はその旧校名の略称に由来すると認め得るものである。さらに、被請求人が答弁書に添付し提出した乙第9号証ないし乙第13号証によれば、本件商標の指定役務に関する役務ついて「東京医専」の文字からなる商標の使用をする旨の事業概要、事業計画及び規程(平成19年1月1日から施行)が既に作成されていることからすれば、本件商標の商標権者(出願人)は、「自己の業務に係る役務ついて本件商標の使用をするもの」と認め得るものである。

してみれば、本件商標は、商標法第3条第1項柱書きに規定する登録要件を備えているものである。

(2)商標法第3条第1項3号及び同第4号について

本件商標は、前記のとおり「東京医専」の文字よりなるところ、その構成中の「東京」が著名な地理的名称であり、また「医専」の語は、「医療に関する知識を主として教える専門学校」の略称であるとしても、「東京医専」が商標権者の前身(旧名称)の略称として一般的に通用していることを勘案すると、同書、同体に一連に書された本件商標は、分離することなく一体の名称の略称的な商標として看取されるとみるのが相当であって、本件商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者・需要者は役務の質及びありふれた名称等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として把握・認識するものではないとみるのが相当である。

してみれば、本件商標は、指定役務について使用しても十分に自他役務識別標識としての機能を果たし得るし、また、ありふれた名称を普通に用いられる方法で表示してなる標章のみからなる商標とはいえない。

(3)商標法第4条第1項第7号について

請求人は、本件審判の請求書において本件商標の登録査定前(平成18年7月26日)に「東京医専」という名称で新宿区より学校開設の設置計画承認(甲第5号証)を得ているにもかかわらず、被請求人は事前に他人の事業計画を察知して、これを阻止するために本件商標を出願して、本件登録商標を取得することは穏当でなく本号に該当する旨を種々主張している。

しかしながら、本件商標は、前記(1)及び(2)で認定・判断したとおりであり、その商標権者(出願人)との関係で登録の要件を満たし商標登録されたものと認め得るところであり、そもそも、私立学校設置の許可と商標法における名称の使用の規制とは、その法目的等を全く異にするものであるから、学校設置許可の如何に関わらず、他人の登録商標と同一又は類似の商標(学校名称等)を同一又は類似の役務について使用することが商標法上認められないことは自明のことである。また、本件商標は、他にその構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形からなるものではなく、本件商標をその指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会ひいては国際信義に反するものでなく、さらに、他の法律によってその使用が禁止されているなど、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるものとは認められない。

してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しないものである。

(4)商標法第4条第1項10号及び同第15号について

請求人は、本件審判の請求書の中で、本件商標の出願日前の平成12年4月には大阪市において既に「大阪医専」の名称の専門学校を開校しており、大阪医専への学生募集など数多くの広告活動を実施してきた使用実績により「大阪医専」は需要者の間に広く知られた商標であるから、これに類似する本件商標は、上記法条に違反して登録されたものである旨を主張している。

そこで、請求人より提出のあった証拠をみるに、大阪医専の周知・著名性を立証するものとして提出されたと認め得る証拠は甲第31号証ないし甲第35号証のみで少なく、かつ、このうち新聞記事は3件のみであることを勘案すると、これら証拠のみによっては、本件商標の出願前に「大阪医専」が需要者の間に広く認識されていたとまでは、にわかには認め難いものであり、加えて、本件商標は、前述のとおり、「東京医専」という不可分一体の名称の略称的な商標として把握・認識されるといえるものであるから、例え、請求人の使用に係る商標「大阪医専」が需要者の間に相当程度知られていたとしても、両商標は、外観、称呼、観念のいずれからみても、十分に区別し得る非類似の商標と判断するのが相当である。

そうとすると、本件商標をその指定役務に使用しても、請求人の使用に係る商標「大阪医専」を連想・想起することはなく、該役務が請求人又は同人と経済的・組織的に何等かの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く、役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものとは認められない。

してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当しないものである。

(5)結び

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書、同第3号、同第4号、同法第4条第1項第7号、同第10号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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